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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1202262
審判番号 不服2006-24474  
総通号数 118 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-10-30 
確定日 2009-08-12 
事件の表示 特願2003-111501「光記録媒体の使用可能な交替ブロックのサーチ方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 9月26日出願公開、特開2003-272314〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成11年9月3日(パリ条約による優先権主張 1998年9月7日 大韓民国)に出願した特願平11-249720号の一部を平成15年4月16日に新たな特許出願としたものであって、平成17年9月27日付け拒絶理由通知に対して平成18年4月3日付けで手続補正がなされたが、平成18年7月25日付けで拒絶査定がされた。これに対し、平成18年10月30日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成18年11月28日付けで手続補正がなされた。
その後、平成20年9月24日付けで審尋がなされ、平成20年12月25日付けで回答書が提出されたものである。

第2 平成18年11月28日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成18年11月28日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.平成18年11月28日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)について

本件補正は、明細書の特許請求の範囲についてするもので、補正前(平成18年4月3日付け手続補正書)に、
「【請求項1】 データ領域の各ゾーンにスペア領域が配置され、かつ欠陥リストを有する光学記録媒体から最初の利用可能な正常な交替ブロックを探すサーチ方法において、
(a)あるゾーンにおいて前記欠陥リストに少なくとも1つのエントリがあるか否かを判別し、
(b)前記(a)において前記欠陥リストに少なくとも1つのエントリがあると判定された場合、前記少なくとも1つのエントリが、欠陥ブロックに対する交替ブロックの割り当てを示す、交替ブロック割り当てを有するか否かを判別し、
(c)前記(b)において前記少なくとも1つのエントリのいずれもが交替ブロック割り当てを有しないと判断された場合、当該ゾーンのユーザ領域のデータブロックに隣り合う正常なブロックを最初の使用可能な交替ブロックであるとし、かつ
(d)前記(b)において少なくとも1つのエントリが交替ブロック割り当てを有すると判定された場合、使用された交替ブロックのうち最も高い又は低いアドレスを持つ交替ブロックに隣り合う正常なブロックを、最初の利用可能な交替ブロックと決定する
ことを特徴とする方法。
【請求項2】 前記スペア領域がユーザ領域の後に来るようにデータ領域の各ゾーンに配置された場合、前記(a),(b),(c)及び(d)は、データ領域の最初のゾーンに対して実行されることを特徴とする請求項1の方法。
【請求項3】 前記(c)は、ユーザ領域中の最後のデータブロックに隣り合う正常なブロックを、その最初のゾーンの最初の利用可能な交替ブロックとして決定する
ことを特徴とする請求項2の方法。
【請求項4】 前記(d)は、
(d1)前記(b)において交替ブロック割り当てを持つ少なくとも1つのエントリがあると判定された場合、交替ブロック格納位置から最高のアドレス値を有するブロックを検索し、次いで
(d2)その最高のアドレス値を有する前記ブロックに隣り合うブロックを、その最初のゾーンの最初の利用可能な交替ブロックとして決定する ことを特徴とする請求項1の方法。
【請求項5】 さらに、
(e)前記(a)において欠陥リスト中にエントリがないと判定された場合、ユーザ領域の最後のデータブロックに隣り合う正常なブロックを、その最初のゾーンの最初の利用可能な交替ブロックとして決定する
ことを含む請求項2の方法。
【請求項6】 さらに
最初のゾーンに利用可能な交替ブロックが見つからなかった場合、前記(a),(b),(c)および(d)をデータ領域中の第2のゾーンについて繰り返すことを含む請求項2の方法。
【請求項7】 前記(c)において、前記スペア領域は、データ領域中に第1スペア領域として配置されている
ことを特徴とする請求項1の方法。
【請求項8】 前記(d)は、
(d3)前記(b)において交替ブロック割り当てを持つ少なくとも1つのエントリがあると判定された場合、交替ブロック格納位置から最低のアドレス値を有するブロックを検索し、 (d4)その最低のアドレス値を有する前記ブロックの直前のブロックを、最初の利用可能な交替ブロックとして決定する
ことを特徴とする請求項1の方法。
【請求項9】 さらに、
(f)前記(a)において欠陥リスト中にエントリがリストされていないと判定された場合、第1スペア領域の最初のブロックを、最初の利用可能な交替ブロックとして決定する
ことを含む請求項1の方法。
【請求項10】 ユーザ領域の前にスペア領域が配置され、かつ欠陥リストを有する光学記録媒体から最初の利用可能な交替ブロックを探す装置において、
その光学記録媒体の欠陥管理領域に登録された情報を読み出す欠陥管理情報読み出しユニットと、
この欠陥管理情報読み出しユニットからの情報を用いることによって、(a)前記欠陥リストに少なくとも1つのエントリがあるか否かを判別し、(b)前記欠陥リストに少なくとも1つのエントリがあると判定された場合、前記少なくとも1つのエントリが、欠陥ブロックに対する交替ブロックの割り当てを示す、交替ブロック割り当てを有するか否かを判別し、(c)前記少なくとも1つのエントリのいずれもが交替ブロック割り当てを有しないと判定された場合、前記ユーザ領域の最初のデータブロックの直前のスペア領域内における正常なブロックを利用可能な交替ブロックとして決定し、(d)前記(b)において少なくとも1つのエントリが交替ブロック割り当てを有すると判定された場合、前記スペア領域内の使用された交替ブロックのうち最も高い又は低いアドレスを持つ交替ブロックに隣り合う正常なブロックを、最初の利用可能な交替ブロックと決定する制御部と
を備えたことを特徴とする装置。
【請求項11】 前記制御部は、
欠陥管理情報を用いることによって欠陥リストに対する少なくとも1つのエントリがあるか否かを判定し、前記欠陥リストに少なくとも1つのエントリがあると判定された場合、前記少なくとも1つのエントリが、交替ブロック割り当てを有するか否かを判別する判別部と、
この判別部によって判定がなされ、前記少なくとも1つのエントリのいずれもが交替ブロック割り当てを有しない場合、ユーザー領域のデータブロックに隣り合う正常なブロックを利用可能な交替ブロックとして決定し、少なくとも1つのエントリが交替ブロック割り当てを有すると判定された場合、使用された交替ブロックのうち最も高い又は低いアドレスを持つ交替ブロックに隣り合う正常なブロックを、最初の利用可能な交替ブロックと決定する交替ブロック決定部と
を備えたことを特徴とする請求項10記載の装置。
【請求項12】 前記制御部はさらに、
前記利用可能な交替ブロックが交替ブロックとして用いられるようにリニア交替方法を制御する制御部
を備えることを特徴とする請求項10記載の装置。
【請求項13】 前記交替ブロック決定部は、
前記判別部によって、前記少なくとも1つのエントリが交替ブロック割り当てを有すると判定された場合、交替ブロック格納位置から最低のアドレス値を有するブロックを検索し、その最低のアドレス値を有する前記ブロックの直前のブロックを、最初の利用可能な交替ブロックとして決定する
ことを特徴とする請求項11記載の装置。
【請求項14】 光学記録媒体から最初の利用可能な正常な交替ブロックを検索する方法であって、
前記光学記録媒体は、リードイン領域とデータ領域とリードアウト領域とを有し、前記リードイン領域は、フォーマット中に発見された欠陥を管理する第1欠陥リスト(PDL)と、少なくともフォーマット後に発見された欠陥を管理する第2欠陥リスト(SDL)とを有する欠陥管理情報を含み、さらに、記録媒体の内周部に少なくとも第1スペア領域が配置されており、
(a)SDLを含む欠陥管理情報を読み出すステップと、
(b)SDLに交替ブロックがリストされていないかどうかを判別するステップと、
(c)ステップ(b)の結果としてSDL中に交替ブロックがリストされていない場合またはリスとされているが交替ブロックが割り当てられていない場合、データ領域の最初のデータブロックの直前の最初の正常なブロックを、第1スペア領域の最初の利用可能な交替ブロックとして承認するステップと、
(d)前記ステップ(b)の結果としてSDL中に交替ブロックがリストされ、少なくとも1つのエントリが交替ブロック割り当てを有すると判定された場合、前記第1スペア領域において、使用された交替ブロックのうち最も高い又は低いアドレスを持つ交替ブロックに隣り合う正常なブロックを、第1スペア領域の利用可能な交替ブロックと決定するステップ
からなることを特徴とする方法。
【請求項15】 SDLにリストされる交替ブロックをアドレス「0」として表示し、前記最初の利用可能な交替ブロックを検索するときにはその位置情報を無視することを特徴とする請求項14記載の方法。
【請求項16】 前記少なくとも1つのエントリが交替ブロック割り当てを有すると判定された場合、交替ブロック格納位置から最低のアドレス値を有するブロックを検索し、その最低のアドレス値を有する前記ブロックの直前のブロックを、最初の利用可能な交替ブロックとして決定することを特徴とする請求項14記載の方法。
【請求項17】 フォーマット中に発見された欠陥を管理する第1欠陥リスト(PDL)と、少なくともフォーマット後に発見された欠陥を管理する第2欠陥リスト(SDL)とを有する欠陥管理情報を含むリードイン領域と、
ユーザデータを含むデータ領域と、
リードアウト領域と
を備えた記録媒体であって、
さらに、記録媒体の内周部に少なくとも第1スペア領域を有し、SDL中に交替ブロックがリストされていない場合またはまたはリスとされているが交替ブロックが割り当てられていない場合は、データ領域の最初のデータブロックの直前の最初の正常なブロックが、前記第1スペア領域の最初の利用可能な交替ブロックとして使用され、SDL中に交替ブロックがリストされ、少なくとも1つのエントリが交替ブロック割り当てを有すると判定された場合、前記第1スペア領域において、使用された交替ブロックのうち最も高い又は低いアドレスを持つ交替ブロックに隣り合う正常なブロックを、第1ステア領域の利用可能な交替ブロックとして利用される
ことを特徴とする記録媒体。
【請求項18】 第1スペア領域の後にユーザデータ領域が続くことを特徴とする請求項17記載の記録媒体。
【請求項19】 前記少なくとも1つのエントリが交替ブロック割り当てを有すると判定された場合、交替ブロック格納位置から最低のアドレス値を有するブロックを検索し、その最低のアドレス値を有する前記ブロックの直前のブロックを、最初の利用可能な交替ブロックとして決定することを特徴とする請求項17記載の記録媒体。
【請求項20】 フォーマット中に発見された欠陥を管理する第1欠陥リスト(PDL)と、少なくともフォーマット後に発見された欠陥を管理する第2欠陥リスト(SDL)とを有する欠陥管理情報を含むリードイン領域と、
ユーザデータを含む複数のデータ領域と、
リードアウト領域と
を備えた記録媒体であって、
さらに、
記録媒体の前記複数のデータ領域に複数のスペア領域を含み、SDL中に交替ブロックがリストされていない場合、データ領域の最後のデータブロックの直後の最初の正常なブロックが、前記スペア領域の最初の利用可能な交替ブロックとして使用され、SDL中に交替ブロックがリストされ、少なくとも1つのエントリが交替ブロック割り当てを有すると判定された場合、使用された交替ブロックのうち最も高い又は低いアドレスを持つ交替ブロックに隣り合う正常なブロックを、第1ステア領域の利用可能な交替ブロックとして利用される
ことを特徴とする記録媒体。
【請求項21】 各データ領域の後に、それぞれのスペア領域が続くことを特徴とする請求項20記載の記録媒体。」

とあったところを、

本件補正後、
「【請求項1】 ユーザ領域の前にスペア領域が、高いアドレスから低いアドレスに順序通りに使用されるように配置され、かつ欠陥リストを有する光学記録媒体から最初の利用可能な交替ブロックを探す装置において、
その光学記録媒体の欠陥管理領域に登録された情報を読み出す欠陥管理情報読み出しユニットと、
この欠陥管理情報読み出しユニットからの情報を用いることによって、(a)前記欠陥リストに少なくとも1つのエントリがあるか否かを判別し、(b)前記欠陥リストに少なくとも1つのエントリがあると判定された場合、前記少なくとも1つのエントリが、欠陥ブロックに対する交替ブロックの割り当てを示す、交替ブロック割り当てを有するか否かを判別し、(c)前記少なくとも1つのエントリのいずれもが交替ブロック割り当てを有しないと判定された場合、前記ユーザ領域の最初のデータブロックの直前の前記スペア領域内における正常なブロックを利用可能な交替ブロックとして決定し、(d)前記(b)において少なくとも1つのエントリが交替ブロック割り当てを有すると判定された場合、前記スペア領域内の使用された交替ブロックのうち最も低いアドレスを持つ交替ブロックの直前の正常なブロックを、最初の利用可能な交替ブロックと決定する制御部と
を備えたことを特徴とする装置。
【請求項2】 前記制御部は、
欠陥管理情報を用いることによって欠陥リストに対する少なくとも1つのエントリがあるか否かを判定し、前記欠陥リストに少なくとも1つのエントリがあると判定された場合、前記少なくとも1つのエントリが、交替ブロック割り当てを有するか否かを判別する判別部と、
この判別部によって判定がなされ、前記少なくとも1つのエントリのいずれもが交替ブロック割り当てを有しない場合、ユーザー領域のデータブロックに隣り合う正常なブロックを利用可能な交替ブロックとして決定し、少なくとも1つのエントリが交替ブロック割り当てを有すると判定された場合、使用された交替ブロックのうち最も高い又は低いアドレスを持つ交替ブロックに隣り合う正常なブロックを、最初の利用可能な交替ブロックと決定する交替ブロック決定部と
を備えたことを特徴とする請求項1記載の装置。削除
【請求項3】 前記制御部はさらに、
前記利用可能な交替ブロックが交替ブロックとして用いられるようにリニア交替方法を制御する制御部
を備えることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項4】 前記交替ブロック決定部は、
前記判別部によって、前記少なくとも1つのエントリが交替ブロック割り当てを有すると判定された場合、交替ブロック格納位置から最低のアドレス値を有するブロックを検索し、その最低のアドレス値を有する前記ブロックの直前のブロックを、最初の利用可能な交替ブロックとして決定する
ことを特徴とする請求項2記載の装置。
【請求項5】 ユーザ領域の前にスペア領域が、高いアドレスから低いアドレスに順序通りに使用されるように配置され、かつ欠陥リストを有する光学記録媒体から最初の利用可能な正常な交替ブロックを検索する方法であって、
前記光学記録媒体は、リードイン領域とデータ領域とリードアウト領域とを有し、前記リードイン領域は、フォーマット中に発見された欠陥を管理する第1欠陥リスト(PDL)と、少なくともフォーマット後に発見された欠陥を管理する第2欠陥リスト(SDL)とを有する欠陥管理情報を含み、さらに、記録媒体の内周部に少なくとも前記スペア領域が配置されており、
(a)SDLを含む欠陥管理情報を読み出すステップと、
(b)SDLに交替ブロックがリストされていないかどうかを判別するステップと、
(c)ステップ(b)の結果としてSDL中に交替ブロックがリストされていない場合またはリスとされているが交替ブロックが割り当てられていない場合、ユーザ領域の最初のデータブロックの直前の最初の正常なブロックを、前記スペア領域の最初の利用可能な交替ブロックとして承認するステップと、
(d)前記ステップ(b)の結果としてSDL中に交替ブロックがリストされ、少なくとも1つのエントリが交替ブロック割り当てを有すると判定された場合、前記スペア領域において、使用された交替ブロックのうち最も低いアドレスを持つ交替ブロックの直前の正常なブロックを、前記スペア領域の利用可能な交替ブロックと決定するステップと
からなることを特徴とする方法。
【請求項6】 SDLにリストされる交替ブロックをアドレス「0」として表示し、前記最初の利用可能な交替ブロックを検索するときにはその位置情報を無視することを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項7】 前記少なくとも1つのエントリが交替ブロック割り当てを有すると判定された場合、交替ブロック格納位置から最低のアドレス値を有するブロックを検索し、その最低のアドレス値を有する前記ブロックの直前のブロックを、最初の利用可能な交替ブロックとして決定することを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項8】 フォーマット中に発見された欠陥を管理する第1欠陥リスト(PDL)と、少なくともフォーマット後に発見された欠陥を管理する第2欠陥リスト(SDL)とを有する欠陥管理情報を含むリードイン領域と、
ユーザデータを含むユーザ領域と、
リードアウト領域と
を備え、ユーザ領域の前にスペア領域が、高いアドレスから低いアドレスに順序通り使用されるように配置された記録媒体であって、
さらに、記録媒体の内周部に少なくとも前記スペア領域を有し、SDL中に交替ブロックがリストされていない場合またはまたはリスとされているが交替ブロックが割り当てられていない場合は、ユーザ領域の最初のデータブロックの直前の最初の正常なブロックが、前記スペア領域の最初の利用可能な交替ブロックとして使用され、SDL中に交替ブロックがリストされ、少なくとも1つのエントリが交替ブロック割り当てを有すると判定された場合、前記スペア領域において、使用された交替ブロックのうち最も低いアドレスを持つ交替ブロックの直前の正常なブロックが、前記スペア領域の利用可能な交替ブロックとして利用される
ことを特徴とする記録媒体。
【請求項9】 前記スペア領域の後にユーザデータ領域が続くことを特徴とする請求項8記載の記録媒体。
【請求項10】 前記少なくとも1つのエントリが交替ブロック割り当てを有すると判定された場合、交替ブロック格納位置から最低のアドレス値を有するブロックを検索し、その最低のアドレス値を有する前記ブロックの直前のブロックを、最初の利用可能な交替ブロックとして決定することを特徴とする請求項8記載の記録媒体。」
とするものである。(なお、上記下線は補正箇所で当審で付与した。)

上記本件補正の内容は、概略、本件補正前の請求項10については、「ユーザ領域の前にスペア領域が配置され」について、「ユーザ領域の前にスペア領域が、高いアドレスから低いアドレスに順序通りに使用されるように配置され」とし、また、「最も高い又は低いアドレス」との択一的な記載を削除して、「最も低いアドレス」とし、さらに、「交替ブロックに隣り合う正常なブロックを」とあるのを「交替ブロックの直前の正常なブロックを」とし、
本件補正前の請求項14については、「光学記録媒体」について、「ユーザ領域の前にスペア領域が、高いアドレスから低いアドレスに順序通りに使用されるように配置され、かつ欠陥リストを有する」との構成を付加し、また「最も高い又は低いアドレス」との択一的な記載を削除して、「最も低いアドレス」とし、
本件補正前の請求項17については、「記録媒体」について、「、ユーザ領域の前にスペア領域が、高いアドレスから低いアドレスに順序通りに使用されるように配置された」との構成を付加し、また「最も高い又は低いアドレス」との択一的な記載を削除して、「最も低いアドレス」としたものである。
そして、本件補正前の請求項1乃至10、20及び21は削除して本件補正前に請求項数が21であったところを請求項数10にして、請求項の項番を整理したものである。
要するに、本件補正は、請求項の削除及び発明特定事項を限定するものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号及び第2号に規定する請求項の削除及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項8に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか)否かについて、以下検討する。

なお、本願補正発明には、「またはまたはリスとされているが」(同9行目)と記載されているが、「またはリストされているが」の誤記と認められるので、以下「またはリストされているが」として検討する。

2.引用例

原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特許第2631378号公報(発行日 平成9年7月16日、以下「引用例」という。)には、図面と共に、以下の記載がある。(なお、下線は当審で付与した。)

(1)「【請求項1】情報を記録するユーザ領域と、上記ユーザ記録領域のセクタが欠陥セクタであるときに代替して情報を記録する代替領域と、欠陥の位置と上記欠陥セクタに対応する代替領域内の代替セクタの位置とを管理する代替管理情報を記録する代替管理領域とを有する記録媒体…。」(【特許請求の範囲】)

(2)「[産業上の利用分野]
本発明は、光磁気ディスク等の記録媒体における代替情報の配置方法に関する。」(1頁右欄8?10行)

(3)「[実施例]
第1図は、本発明の一実施例を示す光磁気ディスクのフォーマットを示す図である。
第2図(1)、(2)は、上記実施例における代替管理エリアを示す図である。
…(中略)…
光磁気ディスク中の欠陥情報が代替管理エリア105に記録され、この欠陥情報は光磁気ディスクを生産するときに初期登録されるか、ユーザのフォーマット処理または欠陥を新たに検出したときに追加登録される。
第3図は、代替管理エリア中の代替管理セクタ301を示し、この代替管理セクタ301のヘッダ部302はセクタ301の代替テーブル303を有する。ヘッダ部には、そのセクタのアドレスや同期信号が記録されている。第5図(1)は、代替処理を説明するユーザブロックと代替ブロックとを示す図であり、第5図(2)?(4)は、メモリ上の代替管理テーブルを示す図である。」(2頁左欄28行?右欄2行)

(4)「第8図は、上記実施例において、書込み処理の動作を示すフローチャートであり、欠陥セクタS3に書込みを行なう動作を示すフローチャートである。
まず、代替管理テーブルをサーチし、セクタS3(アドレス2170-5)が登録されているか否かを調べ(S11)、代替管理テーブルにセクタS3が登録されていると(S12)、このセクタが既に代替されているか否かを調べる(S13)。実際には、代替管理情報516の下位バイトが0か否かを調べる。その下位バイトが0であれば未代替であり、0以外であれば代替済みであり、代替されていないと、該当する代替ブロックの未使用先頭アドレスポインタ(この例ではポインタは506(アドレス2199-4)であり、第5図(1)に示してある)が示すセクタに代替書込みする(S16)。
そして、上記代替ブロックの未使用先頭アドレスポインタをインクリメントし(S17)、代替セクタアドレスを代替管理テーブルに登録する(第5図(3)の符号514が示す部分に、登録後の状態を表示してある)(S18)。その後、ベリファイすることによって、書込みが正しく行われたか否かを調べる(S19)。
次に、未登録欠陥セクタへの書込み動作について説明する。
第8図には、上記実施例において、未登録の欠陥セクタS4に書込むべき内容を代替管理テーブルに書込む動作をも示してある。
まず、代替管理テーブルをサーチし、セクタS4(アドレス2150-11)が登録されているか否かを調べ(S11)、代替管理テーブルにセクタ4が未登録ならば(S12)、このときにはセクタS4が欠陥セクタであるか否かは判明しないので、一旦、セクタS4(アドレス2150-11)へ書込む(S15)。そして、その書込が正しく行われたか否かについて書込みチェックを行い(S19)、書込みが正しくできなければ、同一セクタへ再び書込む(S20)。
このときに、同セクタS4を消去してから書込み、その書込みチェックを行ない(S21)、書込みが正しくできないと、該当する代替ブロックの未使用先頭アドレスポインタが示すセクタ(この例では507(アドレス2119-5)に代替書込みする(S16)。そして、代替ブロックの未使用先頭アドレスポインタをインクリメントし(S17)、セクタS4を符号507で示すセクタに代替するという代替管理情報を代替管理テーブルに登録する(S18)。この状態を、第5図(4)に符号515で示してある。
ここで、代替管理テーブルに上記代替管理情報を登録する場合、アドレス昇順に並ぶテーブルの該当箇所に、登録すべき代替管理情報を挿入する。
また、上記フローチャートにおいて、代替ブロック中に欠陥セクタが存在したとしても、その欠陥セクタには代替されず、未使用セクタに代替されるので正しく機能する。」(3頁左欄20行?右欄20行)

上記摘示事項及び図面の記載を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

「情報を記録するユーザ領域と、
ユーザ記録領域のセクタが欠陥セクタであるときに代替して情報を記録する代替領域と、
フォーマット処理または欠陥を新たに検出したときに登録される欠陥セクタの位置と欠陥セクタに対応する代替領域内の代替セクタの位置とを管理する代替管理情報を代替管理テーブルにして記録する代替管理領域と
を有する記録媒体であって、
代替管理テーブルをサーチし、代替領域の未使用先頭アドレスポインタが示すセクタに代替書込みする
記録媒体。」

3.対比

そこで、本願補正発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「代替管理情報」は、本願補正発明の「欠陥管理情報」に相当する。
引用発明の「代替管理領域」には、代替管理情報をフォーマット処理(中)または欠陥を新たに検出したときに登録されるから、引用発明は本願補正発明と「フォーマット中に発見された欠陥」「少なくともフォーマット後に発見された欠陥」「とを有する欠陥管理情報を含む」「領域」で共通する。
(2)引用発明の「情報」及び「ユーザ領域」は、本願補正発明の「ユーザデータ」及び「ユーザ領域」に相当する。
(3)引用発明の「代替領域」は、本願補正発明の「スペア領域」に相当する。また、引用発明の「代替領域」が順序通りに使用されるように配置されることは明らかであるから、引用発明は本願補正発明と「スペア領域が、」「順序通りに使用されるように配置」で共通する。
(4)引用発明の「代替セクタ」は、本願補正発明の「交替ブロック」に相当する。
引用発明の「代替管理テーブルをサーチし、代替領域の未使用先頭アドレスポインタが示すセクタ」についてであるが、上記2.(4)及び関連する書込み処理の動作を示すフローチャートである第8図乃至代替処理と代替管理テーブルを示す第5図を参照すると、未使用先頭アドレスポインタとして、506(アドレス2199-4)、507(アドレス2199-5)が示されており、これらのポインタが示すセクタは代替済み代替セクタの次の利用可能な代替セクタであるから、本願補正発明とは「交替ブロックがリストされ、少なくとも1つのエントリが交替ブロック割り当てを有する(と判定された)場合、前記スペア領域において、」「正常なブロックが、前記スペア領域の利用可能な交替ブロックとして利用される」で共通する。

そうすると、本願補正発明と引用発明とは、次の点で一致する。

<一致点>
「フォーマット中に発見された欠陥と、少なくともフォーマット後に発見された欠陥を管理する欠陥管理情報を含む領域と、
ユーザデータを含むユーザ領域と
を備え、スペア領域が、順序通り使用されるように配置された記録媒体であって、
さらに、交替ブロックがリストされ、少なくとも1つのエントリが交替ブロック割り当てを有する(と判定された)場合、前記スペア領域において、正常なブロックが、前記スペア領域の利用可能な交替ブロックとして利用される
記録媒体。」の点。

そして、次の各点で相違する。

<相違点>
(a)「記録媒体」について、本願補正発明は、フォーマット中に発見された欠陥を管理する「第1欠陥リスト(PDL)」と、少なくともフォーマット後に発見された欠陥を管理する「第2欠陥リスト(SDL)」とを有する欠陥管理情報を含む「リードイン領域」と、
「リードアウト領域」を備えるのに対し、引用発明は、そのような特段の記載がない点。

(b)「スペア領域」について、本願補正発明は、「ユーザ領域の前に」スペア領域が、「高いアドレスから低いアドレスに」順序通りに使用されるように配置され、かつ、記録媒体の「内周部に少なくとも前記スペア領域を有」するのに対し、引用発明は、そのような特段の記載がない点。

(c)本願補正発明は、「(SDL中に)交替ブロックがリストされていない場合またはリストされているが交替ブロックが割り当てられていない場合は、ユーザ領域の最初のデータブロックの直前の最初の正常なブロックが、前記スペア領域の最初の利用可能な交替ブロックとして使用され」としているのに対し、引用発明は、代替ブロックがリストされていない場合またはリストされているが代替ブロックが割り当てられていない場合においての代替ブロックの利用についての記載がない点。

(d)「(SLD中に)交替ブロックがリストされ」た場合について、本願補正発明は、「使用された交替ブロックのうち最も低いアドレスを持つ交替ブロックの直前の正常なブロック」が、スペア領域の利用可能な交替ブロックとして利用されるのに対し、引用発明は、そのような特段の記載がない点。

4.判断

そこで、上記各相違点について検討する。

相違点(a)について
記録媒体にリードイン領域、ユーザ領域及びリードアウト領域を設けることは引用例を挙げるまでもなく周知の技術であり、また、欠陥管理領域について「フォーマット中に発見された欠陥を管理する第1欠陥リスト(PDL)と、フォーマット後に発見された欠陥を管理する第2欠陥リスト(SDL)」とを欠陥管理情報として領域に備えることも周知(特開平9-320204号公報【従来の技術】の記載、特開平4-232670号公報【従来の技術】の記載等)であるから、引用発明において、記録媒体をフォーマット中に発見された欠陥を管理する「第1欠陥リスト(PDL)」と、少なくともフォーマット後に発見された欠陥を管理する「第2欠陥リスト(SDL)」とを有する欠陥管理情報を含む「リードイン領域」と、加えて「リードアウト領域」を備える上記相違点(a)の構成とすることは当業者が適宜になし得る程度のものである。

相違点(b)について
スペア領域を記録媒体の内周部に設けることは周知(特開昭63-48662号公報、特開平3-22266号公報、特開平3-276468号公報等)である。また、スペア領域における交替ブロックは通常順序通りに使用するものであって、交替ブロックをスペア領域の低いアドレスから高いアドレスにアドレス昇順に使用するか、又は高いアドレスから低いアドレスにアドレス降順に使用するかは交替ブロックの管理形態により当業者が適宜に選択すべき設計的事項にすぎず、引用発明において、代替領域の配置及び代替領域内の代替セクタのアドレス順序についてスペア領域をユーザ領域の前に高いアドレスから低いアドレスとして、上記相違点(b)のように構成することは当業者が適宜になし得るものである。

相違点(c)について
交替ブロックがリストされていない場合は、スペア領域の交替ブロックは使用されていないのであるから、スペア領域の最初の正常な交替ブロックがスペア領域の最初の利用可能な交替ブロックとして使用されることは極普通になし得ることである。また、上記相違点(b)で判断したように、スペア領域の交替ブロックを高いアドレスから低いアドレスに順序通りに使用する場合、ユーザ領域の最初のデータブロックの直前の最初のブロックが、スペア領域の最初に利用可能な交替ブロックとなることも自明のことであるから、交替ブロックがリストされていない場合、上記相違点(c)のように「ユーザ領域の最初のデータブロックの直前の最初の正常なブロックが、前記スペア領域の最初の利用可能な交替ブロックとして使用され」とすることは当業者が適宜なし得るものである。

相違点(d)について
上記相違点(b)で判断したように、スペア領域の交替ブロックを高いアドレスから低いアドレスに順序通りに使用する場合、使用された交替ブロックのうち最も低いアドレスを持つ交替ブロックの直前の正常なブロックがスペア領域の利用可能な交替ブロックとなることは明らかであるから、交替ブロックがリストされた場合、相違点(d)のように、「使用された交替ブロックのうち最も低いアドレスを持つ交替ブロックの直前の正常なブロック」が、スペア領域の利用可能な交替ブロックとして利用される構成とすることでの、上記相違点(d)は当業者が適宜なし得るものである。

そして、上記相違点を総合的に判断しても、本願補正発明が奏する効果は引用例及び周知技術から当業者が十分に予測できたものであって格別なものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

5.本件補正についてのむすび

以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項に規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明

1.本願発明について

平成18年11月28日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項17に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成18年4月3日付け手続補正書で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項17に記載された事項により特定される、前記「第2[理由」1.」の補正前の「請求項17」として記載したとおりのものである。

2.引用例及びその記載

原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、上記 「第2[理由]2.」に記載したとおりである。

3.対比・判断

本願発明は、上記 「第2[理由]3.4.」で検討した本願補正発明から「記録媒体」について、「ユーザ領域の前にスペア領域が、高いアドレスから低いアドレスに順序通りに使用されるように配置された」との構成を削除し、また「アドレス」について、「最も高い又は低い」との択一的な記載としたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記 「第2[理由]3.4.」に記載したとおり、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび

以上のとおり、本願の請求項17に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-02-27 
結審通知日 2009-03-10 
審決日 2009-03-24 
出願番号 特願2003-111501(P2003-111501)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
P 1 8・ 575- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 富澤 哲生  
特許庁審判長 小松 正
特許庁審判官 江畠 博
漆原 孝治
発明の名称 光記録媒体の使用可能な交替ブロックのサーチ方法および装置  
代理人 黒川 弘朗  
代理人 山川 政樹  
代理人 山川 茂樹  
代理人 紺野 正幸  
代理人 西山 修  

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