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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1202348
審判番号 不服2006-14257  
総通号数 118 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-07-05 
確定日 2009-08-13 
事件の表示 特願2002-231595「配線膜の形成方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 3月 4日出願公開、特開2004- 71960〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成14年8月8日の出願であって、平成18年5月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月5日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

第2 本願発明について
本願の請求項1及び2に係る発明は、平成18年3月17日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、そのうち、本願の請求項1に係る発明は、以下のとおりである。
「【請求項1】 基板上の、孔を有する絶縁膜の上に、純CuまたはCu合金よりなる配線膜をスパッタリング法により成膜した後、この配線膜を加圧加熱処理することにより前記孔の内部に充填する配線膜の形成方法において、前記孔の開口部の径が0.15μm未満であると共に、前記孔の下記式(1) で示されるアスペクト比(AR)が3以上であり、前記スパッタリング法により成膜する際の基板温度を-40?-5℃とすることを特徴とする配線膜の形成方法。
アスペクト比(AR)=D/d ------------------- 式(1)
ただし、上記式(1) において、D:孔の深さ(μm)、d:孔の開口部の径(μm)である。」

第3 引用刊行物及び該引用刊行物記載の発明
刊行物1.特開2001-7050号公報
原審の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物1(特開2001-7050号公報)には、「配線膜の形成方法」(発明の名称)に関して、図1ないし図5とともに、以下の事項が記載されている。
ア 「【0005】スパッタリング法での銅、銀の低温度での成膜が可能になれば、上記の有機系絶縁膜の観点からは問題がなくなる。このための一つの方法として水素あるいは水素と酸素の混合雰囲気(Redox)で熱処理を行う方法が提案されている。また、近年、上記の微細化の傾向からホール(孔)については現在の直径0.25μmから2003年頃には0.1μmにまで小径化することが予測されている。この場合、とくに0.15μm以下の微細化に対して、深さが直径の4倍以上になると、メッキ法はもちろんスパッタリング法が低温でできたとしても、このホール(孔)やトレンチ(溝)を金属配線材料で充填することは困難で、これらの材料の金属膜でホールやトレンチの開口部を塞いで、その後で、高温下で高圧ガス圧力を作用させる方法(高圧アニール法)が本発明者らによって提案されている。」
イ 「【0017】以下に、上記の5つの作用を前述の6層M1?M6のULSI製造を前提に説明する。本発明の第1番目の作用は、5,6層目等ULSIの上部層M5,M6でブロック間等長い距離を接続する配線が含まれる部分で利用される。すなわち、孔径は比較的大きく0.4?0.8μm程度で、深さが1μm弱のアスペクト比が小さな場合に適用される。図2は、このような、あまり直径が小さくなくてかつ深さも差程深くない孔及び溝を有する場合の本発明のプロセスを模式的に示したものである。図2(a)は絶縁膜2における溝2Cの底部に孔2Bが形成されたいわゆるデュアルダマシン構造のSi基板1の表面に、水素ガスを含む不活性ガス(アルゴン)雰囲気下で、スパッタリング法により、銅配線膜3を形成しているところを模式的に示したものである。スパッタリングターゲット(図示せず)とSi基板の距離は、アスペクト比によって選定するが、アスペクト比が2以下のような場合は、通常よく用いられている50mm程度で十分である。アスペクト比が2?4の場合(図1の第3層M3,第4層M4)には、100?300mmのいわゆるロングスロースパッタリング法を適用することにより、孔の奥まで金属配線膜材料を充填することが可能である。いずれにしても孔の中央部の金属配線膜3には図に示したような凹部3Aが残ることが多い。
【0018】この凹部を含む基板の表面を図2で示すようにできるだけ平滑化することにより次の工程であるCMP法(Chemical Mechanical Polishing 化学機械研磨をいい、定盤上の研磨布に半導体ウェーハを研磨剤を流しながら、摺り合わせて研磨することにより、ウェーハ表面の凹凸をなくすグローバルな平坦化方法をいう)での削り代を小さくすることが可能となり、CMP工程そのものを簡素化でき、時間の短縮も可能となる。この平滑化を行う方法として、基板全体を加熱して、金属配線膜材料の表面拡散現象を利用するリフロー法が知られている。一般に金属材料の拡散現象は、再結晶温度以上の温度に加熱すると顕著になるが、この再結晶温度は該材料の融点(絶対温度)の0.4倍に300K加えた程度の温度であり、融点1083℃の銅の場合には、842K(542℃)とかなり高温となる。
【0019】しかし、本発明の水素ガスを含む不活性ガス雰囲気下でスパッタリングを行うことにより、図3に示したようにスパッタリング法による成膜時において不可避的に形成された金属配線膜中の気孔(ボイド)中に水素ガスが取り込まれ、銅原子の拡散等が促進されるようになる。具体的には、図4(a)に示したように、スパッタリング成膜後の加熱処理(リフロー処理)時に、気孔内部に取り込まれた水素ガスはもちろん、金属配線膜結晶粒子内に固溶した水素原子が、図4(b)に示したように、結晶粒界や結晶粒子面(主として(111)面)での金属配線膜原子と相互作用を生じて金属配線膜原子の拡散による移動を促進する効果があり、結果として、上記のリフロー処理を400℃以下の温度で行うことが可能となる。
【0020】このような効果を得るために、スパッタリング法による成膜時にアルゴンガスに加える水素ガスの量は、アルゴンガスに対する水素ガスの体積での混合比率を1/99?20/80とする。水素ガスの量が少なすぎると水素ガスを金属配線膜にドープする効果が不充分となり、一方、あまり量が多すぎるとスパッタリング法による成膜時にアルゴンガスを励起してプラズマを発生させることが困難あるいは非常に不安定となる。なお、上記のリフロー現象は、金属配線膜の結晶粒径が小さいほど顕著であり、微細な結晶粒子、好ましくは平均結晶粒子が0.1μm以下の微細結晶粒子からなる膜をスパッタリング時点で形成することは非常に重要である。具体的には、スパッタリング時のSi基板の温度をあまり上昇させないよう、室温?200℃とすることが推奨される。もちろん強制的にSi基板を冷却して零下数10℃としても良い。
【0021】図5は、比較的直径が小さくて深さが結構大きい、すなわち小径で中程度のアスペクト比(3?4)の孔を有する場合における本発明による配線膜の形成プロセスを模式的に示したものである。6?7層のように多層化されたULSIでは下から2層,3層にこの程度の直径あるいは幅の孔や溝が含まれている。なお、本図では通常付与される金属配線膜と絶縁膜の反応を防止するバリア膜(図3参照)の記載は省略している。このようにアスペクト比が大きくなってくると、図5(a)に示したように、ロングスローのスパッタリング法を用いても孔の奥底部には金属配線膜が十分に充填されず、ボイドが発生することが多い。このようなボイドは、大気圧近傍の通常のリフロー法、スパッタリング法では、上記の本発明の第1の作用である水素による拡散現象の促進機能を駆使しただけでは、完全な埋め込みはできない。このため、このリフロー処理を、高温高圧の不活性ガスを主成分とするガス雰囲気下で行うことが推奨される。図5(b)は、この作用を模式的に示したものである。金属配線膜中に含まれた水素による金属配線膜原子の拡散現象促進機能により、金属配線膜材料の見掛けの変形抵抗が小さくなり、結晶粒子自体が塑性変形を生じやすくなることから、高圧のガス圧力により金属配線膜材料は溝や孔の奥底部まで押し込まれると同時に結晶粒界に形成された微小なボイドも消滅する。
【0022】この時の温度圧力は、例えば、直径0.25μm深さ約2μmの孔が形成された銅配線膜の場合、通常のスパッタリング法を使用した場合、475℃以上、圧力200MPa以上が必要なのに対して、本発明によれば、350℃100MPa程度で完全な埋め込みに十分となる。また、上記ではリフロー処理を、高温高圧の不活性ガスを主成分とするガス雰囲気下で行うこととしたが、この一部または全部を酸化性のガスで置き換えると処理時に金属配線膜材料の酸化が進行して、金属配線膜材料の酸化物が形成され、さらに還元性のガスを加えると再び、金属配線膜材料の酸化物はもとの金属配線膜材料に還元される。ここで、例えば酸化性のガスとして酸素、還元性のガスとして水素、金属配線膜材料を上記同様に銅とすると、その場合の反応式は下記のようになる。」
ウ 「【0029】更に、上記の水素・酸素のドーピングと平滑化や埋め込みを同時に、すなわち、水素と酸素の混合ガス(Redoxガス)もしくは水蒸気を含む高圧の不活性ガス雰囲気下でアニール処理を行って、金属配線膜内部および下部に気孔が発生しないように金属配線膜を形成して、工程を一体化することにより、全体の工程の短縮および設備の簡略化が可能となり、工業的に非常に有利とすることができる。なお、上記の水素・酸素のドーピングもまた、金属配線膜の結晶粒径が小さいほど顕著であり、微細な結晶粒子からなる膜をスパッタリング時点で形成することにより、より多くの水素・酸素をドーピングすることができるので推奨される。具体的には、スパッタリング時のSi基板の温度をあまり上昇させないよう、やはり室温?200℃とすることが推奨されるが、もちろん強制的にSi基板を冷却して零下数10℃としても良い。」
エ 「【0032】
【実施例】Si基板上に厚さ1.5μmの酸化シリコン(SiO_(2) )膜を形成して、パターニング後SiO_(2) 膜をエッチングして表1に示すような孔や溝を形成したサンプルを中心に本発明の効果を検証した。なお、孔や溝の内面にはバリア層としてTaN膜を形成してサンプルを準備した。TaN膜はArガスと窒素ガス混合雰囲気下でスパッタリング法を用いて形成するのが一般的である。このTaN膜は後に形成するCu膜がSi基板ならびにSiO_(2) 膜中へ拡散することを防止するために形成する。
【0033】処理の条件や配線膜材料は表1に示した通りである。また、別途一部のサンプルについては、従来の方法等による成膜・リフロー処理を行い比較用に使用した。」
オ 「【0034】
【表1】の一部
穴・溝の寸法等 スパッタリング リフロー
配線膜 成膜条件 処理条件
穴径 全深さ 材料 温度 圧力 温度
(μm)(μm) A.R. (℃) (MPa) (℃)
実施例3 0.15 1 6.67 Cu 室温 120 350
実施例4 0.13 1 7.69 Ag 室温 100 300」
カ 「【0035】実施例1および比較例1-A?比較例1-Dの比較から、比較的アスペクト比が小さい孔の場合について、本発明の水素とアルゴンの混合ガスをスパッタリング成膜時に用いることにより成膜後のリフロー処理温度が380℃、すなわち、400℃以下のように低くても孔や溝への充填が可能なことが実証された。また、実施例2および比較例2でのテスト結果により、溝の底に孔が形成されたデュアルダマシン構造についても、アスペクト比が差程大きくなければ、スパッタリング時の水素ガスを添加したアルゴンガスを用いて、かつロングスローのスパッタリングとすることにより溝・孔の両方とも十分に金属材料が充填可能なことが示された。
【0036】実施例3および比較例3では、直径0.15μm、アスペクト比6,7という深孔に対しても、本発明による水素ガス添加のスパッタリングと高圧ガス雰囲気下でのリフロー処理を組合せることにより金属材料が充填可能であることが実証された。実施例4および比較例4では、金属配線膜材料が銀の場合について、直径0.13μmでアスペクト比が7.7といった深孔が、スパッタリングと高圧リフロー工程を通じての最高温度300℃という低い温度でも充填が可能であることが実証された。」
キ 「【0044】
【発明の効果】以上述べたように、本発明により、低電気抵抗化の観点から今後の配線膜材料として期待されている銅系材料あるいはさらに電気抵抗が小さな銀系の材料を、耐熱性が必ずしも高くない有機系の低誘電率絶縁膜材料との組合せで必須とされる400℃以下の温度での成膜および孔や溝への充填が可能となり、これら金属材料を用いた配線膜を用いたULSIの工業的な生産に寄与するところは極めて大きい。とくに、今後進展が予測される微細化に対して、本発明によれば、高圧ガス雰囲気下でのリフロー処理の組合せで、直径0.1μm以下の直径の微細な孔まで埋め込みが可能となり、かつ、高圧ガスの圧力が均一に作用する効果による歩留まりの向上効果が期待され、今後の微細化への対応の観点からも寄与するところは大きいものと期待される。」

以上の記載から、刊行物1には、【表1】の実施例3の記載に注目して、以下の発明が記載されている。なお、刊行物1には、「孔」(たとえば、【0017】段落を参照)と「穴」(たとえば、【表1】を参照)の2種類の「あな」が記載されているが、同義語であるので、「孔」に統一することにする。
「Si基板上の孔が形成された酸化シリコン膜の表面にスパッタリング法により銅配線膜を形成した後、高温高圧の不活性ガスを主成分とするガス雰囲気下でリフロー処理を行うことにより前記銅配線膜が孔の奥底部まで充填される配線膜の形成方法において、孔径が0.15μmであり、孔の全深さが1μmであると共に、アスペクト比(A.R.)が6.67であり、前記スパッタリング法により成膜する際の前記Si基板の温度を室温とすることを特徴とする配線膜の形成方法。」

刊行物2.特開平7-74177号公報
原審の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物2(特開平7-74177号公報)には、「半導体装置の製造方法及び製造装置」(発明の名称)に関して、図1、図2とともに、以下の事項が記載されている。
ア 「【請求項4】接続孔を有する半導体基板上に、少なくともスパッタ当初において0℃以下に基板を冷却しながらAl系材料をスパッタ法により形成する手段と、該Al系膜形成後、真空を破ることなく基板を300℃以上の温度で加熱する工程により接続孔を埋め込む手段を有することを特徴とする半導体装置の製造装置。」
イ 「【0020】
【作 用】本発明によれば、半導体基板の微細なコンタクトホールについても、以下に述べる作用によって、精度良くその埋め込みが実現できる。
【0021】通常のスパッタリング法では初期過程で島状に付着した粒子がマイグレートし合体しながら成長するが、ホールの底部付近では十分に粒子が飛散しないため、図2(a)に示すように膜が途切れ途切れになる。このようなAl膜を500℃程度に加熱しAlリフローを行うと図2(b)に示すように、表面張力によりホール側壁のAlが上部に吸収されコンタクトホールにボイド2′を生じてしまう。なお図2中、1はSi基板1aと層間絶縁膜1b(SiO_(2) )から成る基体、2は接続孔(コンタクトホール)、3はAl系膜である。
【0022】しかしながら、Al埋め込みプロセスにおいて、初めに従来の基板温度に比べて非常に低い液体窒素温度近辺の温度に基板を冷却すると、スパッタリングによりターゲットから飛行してきた粒子は基板上でマイグレートが抑制される。この結果、スパッタリング中の結晶粒の成長は抑制され、また、粒と粒の合体も殆ど生ぜず、図1(a)に例示するようにAl系膜3は接続孔2(コンタクトホール)内に膜厚の分布はあるものの膜が途切れること無く付着する。(図中1は基体、1aは基板、1bは絶縁膜である)。従来は、SiNなど、Alが成膜しやすいサイドウォールなどを用いていたが、本発明では必ずしもそのようなものを特につけなくても、Al系膜をホール内面に付着できる。
【0023】続いて、加熱チャンバーに基板を真空搬送し、300℃以上の温度で加熱すると、図1(b)に示すようにAlがリフローしコンタクトホール内に流れ込む。なお、ここでホール内部にAl膜が途切れ途切れになっていると、従来の如くコンタクトホールにボイドを生じる。」

刊行物3.特開平9-63992号公報
原審の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物3(特開平9-63992号公報)には、「金属層形成方法及び配線形成方法」(発明の名称)に関して、図1ないし図5とともに、以下の事項が記載されている。
ア 「【請求項1】 物理的気相蒸着方法により金属層を形成する方法において、
相応のエネルギーを持って入射されて、ウェーハ上に物理的に吸着される原子により稠密な核を生成のために、ウェーハを冷却してウェーハの温度を低下させた中で、金属層を物理的気相蒸着法により形成することを特徴とする金属層形成方法。
【請求項2】 前記ウェーハの冷却により、ウェーハの温度を-25℃?常温の間にすることを特徴とする請求項1に記載の金属層形成方法。
【請求項3】 前記金属層は、配線材料であるところのAl,Cu,Ag,Au及びWのいずれか1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の金属層形成方法。」
イ 「【請求項8】 半導体基板上に積層された層間絶縁膜に形成されたコンタクトホールの表面に拡散防止膜を蒸着する工程と、
-25℃?常温の蒸着温度で前記拡散防止膜上にアルミニウムまたはアルミニウム合金の薄膜を蒸着する工程と、
前記アルミニウムまたはアルミニウム合金の薄膜を溶融点以下の温度で熱処理して前記コンタクトホールを埋め込む工程と、
を有することを特徴とする配線形成方法。」
ウ 「【0032】図1乃至図3は、アルミニウム金属膜の蒸着条件を変えて、TiN下地膜上のAl核生成の状態を走査型電子顕微鏡(SEM)で観測した断面写真を示す。
【0033】即ち、図1は、従来の方法により高温(約450℃)で蒸着したアルミニウム膜30aの表面を、図2は、本実施の形態に係る冷却工程なしに低温(約20℃)で蒸着したアルミニウム膜30bの表面を、図3は、本実施の形態に係る冷却工程を適用して蒸着したAl薄膜30cの表面を示す。
【0034】基板10としてはシリコン基板を用い、基板10上に形成される下地膜20としては約600Åの厚さのTiNを、温度200℃、圧力2mTorr、Ar:N_(2) =40:85などの同一の蒸着条件で蒸着した。Al膜30a,30b,30cは60Åの超薄膜を蒸着により形成した。
【0035】アルミニウム薄膜を本実施の形態に係る冷却工程を経ることなく通常の方法で蒸着した後に、Alの初期核生成における膜の連続性を調べた結果、図1及び図2の断面写真のAl膜30a,30bが示すように、島状のグレインが現れた。
【0036】即ち、蒸着温度が高いほどウェーハに蒸着されるAl膜に島状のグレインが現れるが、ウェーハを冷却した後にAlを蒸着すると、均質な膜が得られることが理解される。これはスパッタリングにより、熱的に高温状態のAlの吸着原子が下地膜20に吸着されるとき、本実施の形態に係る冷却工程を適用することにより冷却され、Al吸着原子の移動度が最適な移動度まで低下し、Al原子の移動量が最適な量になるからである。
【0037】また、図3から観測されるように、ウェーハ10を-25℃?常温までの間に保持しながら、AlまたはAl-1%Si-0.5%Cuのようなアルミニウム合金30cを60Åの厚さで蒸着した場合の観察結果によれば、極めて稠密で均一な膜が得られ、20Åまでの超薄膜を得ることもできた。
【0038】前記金属層は、配線材料として用いるために、AlまたはAl合金の他、Cu,Ag,Au,Wなどの電気伝導度が優れた物質のいずれかを用いることもできる。」
エ 「【0048】図4の断面写真から明らかなように、TiN障壁層20の上に蒸着されたアルミニウム300aのグレインサイズは大きく、コンタクトホールの側壁の一部にはアルミニウムが蒸着されていない部分も観察される。一方、冷却工程を実行した場合には、図5の断面写真から明らかなように、微細なAlグレイン300Aが均一に蒸着されて、ステップカバレージが向上することがわかる。この結果は、コンタクトホールがない下地膜上のAlグレインの成長と類似している。」
オ 「【0056】
【発明の効果】本発明に拠れば、金属層の蒸着工程の前に、冷却工程を実行し、ウェーハの温度が-25℃?常温の範囲となる状態で蒸着工程を行うことにより、スパッタリングされた金属原子が下地膜に吸着し易い程度を示す湿潤性を向上させ、核生成の位置数を増加させ、単位体積当たりの粒界エネルギーを増加させることができる。
【0057】その結果、蒸着された金属層の表面状態を改善して稠密かつ均一な超薄膜の金属膜が得られる。また、高いアスペクト比を有するコンタクトホールにおけるアルミニウム等の充填特性を向上させ得る。」

刊行物4.特開平11-186195号公報
原審の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物4(特開平11-186195号公報)には、「半導体装置の薄膜形成方法」(発明の名称)に関して、図6、図7とともに、以下の事項が記載されている。
ア 「【0020】図6を参照すると、ウェット層250が形成された半導体基板200をプラテン300に装着する。以後に、スパッタ蒸着工程を遂行して前記ウェット層250上にアルミニウム層270を蒸着する。この時、前記ウェット層250の蒸着が遂行される反応チャンバ100とは異なるの反応チャンバ100で前記アルミニウム層270の蒸着反応が遂行されることが望ましい。しかし、前記ターゲット400をアルミニウム系物質に交替して利用すると同じ反応チャンバ100で蒸着工程を遂行する方策も可能である。
【0021】アルミニウム層270を蒸着する以前に、プラテン300に冷媒を循環させて温度を概略50℃以下に、望ましくは概略-10℃乃至45℃程度に維持させる。以後に、前記アルミニウム系ターゲット400をイオン爆撃で気化させて、気化した粒子を前記半導体基板200上に移動させて前記ウェット層250上にアルミニウム層270を形成する。本実施例で前記したアルミニウム層270の蒸着工程途中でも前記プラテン300が概略50℃以下の温度にずっと維持されて、前記半導体基板200を低い温度にずっと維持させる。
【0022】前記のように蒸着されるアルミニウム層270は小さなグレーンで優れた段差を有して均一に形成される。このような現象は低い反応温度による低いグレーン成長速度に起因する。即ち、前記アルミニウム層270が蒸着される反応が前記したように低い温度に維持される条件で進行されるので、蒸着反応は低いグレーン成長速度を有する。これにより、グレーンの過大成長が防止できて段差が優秀になり、均一にアルミニウム層270が塗布される。
【0023】図7を参照すると、アルミニウム層270を蒸着した後半導体基板200に概略580℃程度の温度を適用して、蒸着されたアルミニウム層270をリフローさせる。この時、本実施例では概略50℃以下の低い温度でアルミニウム層270が蒸着されるので、蒸着されたアルミニウム層270が均一で小さなグレーンを有する。従って、前記蒸着されたアルミニウム層270は小さなグレーンを有して熱力学的に高いエネルギー状態にあるので、低い温度でも容易にフローできる。即ち、アルミニウム層270のリフロー特性が増大するので概略580℃程度の低いリフロー温度でもコンタクトホールが完全に埋立される。
【0024】これにより600℃以上の高いリフロー温度を印加しなくても、ボイドのようなコンタクトホール充填不良の発生が防止できるようにリフローされたアルミニウム層270aが形成できる。従って、高いリフロー工程温度による金属コンタクトでのジャンクションスパイクのような熱工程による不良発生が抑制できる。本実施例により具現される効果は、以下の実験例によりさらに明確になる。」

刊行物5.特開平6-216260号公報
原審の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物5(特開平6-216260号公報)には、「半導体装置およびその製造方法」(発明の名称)に関して、図1、図3とともに、以下の事項が記載されている。
ア 「【0011】図1は、本発明の実施例における半導体装置の製造方法の工程断面図を示すものである。
【0012】図1aでは、半導体素子を形成したシリコン基板7上に絶縁膜8を形成し、接続孔9を形成した後、スパッタリング法により、バリアメタルとしてTi膜とTiN膜とからなる積層膜10を接続孔9内および絶縁膜8上に形成する。
【0013】次に図1bでは、液体窒素により基板温度を77K(-196℃)に設定し、Al膜11をスパッタリング法を用いて堆積する。この場合、基板温度TsとAlの融点Tm(933K)との比Ts/Tmは0.08である。
【0014】一般にTs/Tmが0.3より小さくなると、つまり、基板温度が279.9K(6.9℃)以下になると、結晶粒径の小さい金属膜が形成され、金属膜堆積中の再結晶化が起こりにくくなることが知られている。従来、半導体プロセスにおいては、基板温度298K(25℃)以上のスパッタリング法によりAl膜を堆積していた。例えば、基板温度473K(200℃)のとき、Al膜の平均結晶粒径は0.66μmである。図3にスパッタリング時の基板温度とAl膜の平均結晶粒径との関係を示す。この図より、基板温度279.9K(6.9℃)の場合のAl膜の平均結晶粒径は約0.45μmとなり、基板温度473K(200℃)の場合の68%に微細化できる。また、基板温度を77K(-196℃)の場合、平均結晶粒径は、基板温度473K(200℃)の場合の30%に微細化できる。このように、Al膜の結晶粒径を微細化すると、結晶粒界密度が高くなるので、Al膜の自由エネルギーが大きくなる。したがって、より少ないエネルギーで結晶状態を変化させることができるようになる。これは再結晶化温度が低くなることを意味する。再結晶化温度が低くなるとAl膜が流動を始める臨界温度が低くなるので、550℃より低い温度、例えば、450℃以下の温度の熱処理によりAl膜を加熱し流動させ接続孔に埋め込むことが可能となる。」
イ 「【0020】また、本実施例においては、Al膜を用いたが、SiやCuのような他の元素を含んだAl合金膜や、Al以外の元素から構成される膜、例えば、銅やタングステンからなる膜を用いても同様の効果がある。」

第4 対比
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)と刊行物1に記載された発明(以下、「刊行物1発明」という。)とを対比する。
(a)刊行物1発明の「Si基板」、「酸化シリコン膜」、「銅配線膜」は、それぞれ、本願発明1の「基板」、「絶縁膜」、「純CuまたはCu合金よりなる配線膜」に相当するので、刊行物1発明の「Si基板上の孔が形成された酸化シリコン膜の表面にスパッタリング法により銅配線膜を形成した後」は、本願発明1の「基板上の、孔を有する絶縁膜の上に、純CuまたはCu合金よりなる配線膜をスパッタリング法により成膜した後」に相当する。
(b)刊行物1発明の「高温高圧の不活性ガスを主成分とするガス雰囲気下でリフロー処理を行うこと」、「前記銅配線膜が孔の奥底部まで充填される」ことは、それぞれ、本願発明1の「加圧加熱処理すること」、「前記孔の内部に充填する」ことに相当するので、刊行物1発明の「高温高圧の不活性ガスを主成分とするガス雰囲気下でリフロー処理を行うことにより前記銅配線膜が孔の奥底部まで充填される配線膜の形成方法」は、本願発明1の「この配線膜を加圧加熱処理することにより前記孔の内部に充填する配線膜の形成方法」に相当する。
すると、本願発明1と刊行物1発明とは、
「基板上の、孔を有する絶縁膜の上に、純CuまたはCu合金よりなる配線膜をスパッタリング法により成膜した後、この配線膜を加圧加熱処理することにより前記孔の内部に充填する配線膜の形成方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1
本願発明1は、「前記孔の開口部の径が0.15μm未満であると共に、前記孔の下記式(1)(アスペクト比(AR)=D/d ----式(1) ただし、上記式(1) において、D:孔の深さ(μm)、d:孔の開口部の径(μm)である。)で示されるアスペクト比(AR)が3以上であ」るのに対して、刊行物1発明は、「アスペクト比(A.R.)が6.67であ」るものの、「孔径が0.15μmであ」る点。
相違点2
本願発明1は、「前記スパッタリング法により成膜する際の基板温度を-40?-5℃とする」のに対して、刊行物1発明は、「前記スパッタリング法により成膜する際の前記Si基板の温度を室温とする」点。

第5 当審の判断
まず、相違点2について検討する。
(a)刊行物1の摘記事項イには、「上記のリフロー現象は、金属配線膜の結晶粒径が小さいほど顕著であり、微細な結晶粒子、好ましくは平均結晶粒子が0.1μm以下の微細結晶粒子からなる膜をスパッタリング時点で形成することは非常に重要である。具体的には、スパッタリング時のSi基板の温度をあまり上昇させないよう、室温?200℃とすることが推奨される。もちろん強制的にSi基板を冷却して零下数10℃としても良い。」(【0020】段落)ことが記載されている。
(b)刊行物1の摘記事項ウには、「具体的には、スパッタリング時のSi基板の温度をあまり上昇させないよう、やはり室温?200℃とすることが推奨されるが、もちろん強制的にSi基板を冷却して零下数10℃としても良い。」(【0029】段落)ことが記載されている。
(c)上記(a)、(b)の記載によると、スパッタリング法により金属配線膜を形成する際に、「リフロー現象は、金属配線膜の結晶粒径が小さいほど顕著であ」るから、「微細な結晶粒子、好ましくは平均結晶粒子が0.1μm以下の微細結晶粒子からなる膜をスパッタリング時点で形成する」ために、「Si基板を冷却して零下数10℃としても良い」ことが、示唆されている。
(d)広辞苑によれば、上記(a)、(b)の「零下数10℃」の「数」の意味について、「2?3あるいは5?6の少ない数を漫然と示す語」であることが記載されているので、上記(a)、(b)の「零下数10℃」とは、零下20?30℃、あるいは、零下50?60℃のことであり、このうち、零下20?30℃は、本願発明1の「前記スパッタリング法により成膜する際の基板温度を-40?-5℃とすること」と、数値範囲が重なっており、刊行物1に記載の「微細な結晶粒子、好ましくは平均結晶粒子が0.1μm以下の微細結晶粒子からなる膜をスパッタリング時点で形成する」ために、「Si基板を冷却して零下数10℃としても良い」ことと、本願発明1の「前記スパッタリング法により成膜する際の基板温度を-40?-5℃とすること」とは、両者の基板温度が、同程度である。
(e)本願の発明の詳細な説明でも、「即ち、スパッタリング法により金属(純金属もしくは合金金属)よりなる配線膜を成膜するに際し、-40?-5℃という従来に無い、極めて低い基板温度にて成膜することによって配線膜の「結晶粒の微細化」および「結晶粒の軟化」を実現し、粒界滑り・転位滑り・拡散を促進させ、配線膜の300?400℃の加圧加熱処理時のリフロー性(孔内部への埋め込み性)を向上させることができたのである。」(【0013】段落)と、-40?-5℃という極めて低い基板温度にて成膜することによって配線膜の「結晶粒の微細化」を実現し、リフロー性(孔内部への埋め込み性)を向上できることが記載されている。
(f)刊行物2の摘記事項イには、Al系膜の場合ではあるが、「Al埋め込みプロセスにおいて、初めに従来の基板温度に比べて非常に低い液体窒素温度近辺の温度に基板を冷却すると、スパッタリングによりターゲットから飛行してきた粒子は基板上でマイグレートが抑制される。この結果、スパッタリング中の結晶粒の成長は抑制され、また、粒と粒の合体も殆ど生ぜず、図1(a)に例示するようにAl系膜3は接続孔2(コンタクトホール)内に膜厚の分布はあるものの膜が途切れること無く付着する。」(【0022】段落)ことが、記載されている。
(g)刊行物3の摘記事項ウには、「図3から観測されるように、ウェーハ10を-25℃?常温までの間に保持しながら、AlまたはAl-1%Si-0.5%Cuのようなアルミニウム合金30cを60Åの厚さで蒸着した場合の観察結果によれば、極めて稠密で均一な膜が得られ、20Åまでの超薄膜を得ることもできた。」(【0037】段落)こと、「前記金属層は、配線材料として用いるために、AlまたはAl合金の他、Cu,Ag,Au,Wなどの電気伝導度が優れた物質のいずれかを用いることもできる。」(【0038】段落)ことが、記載されている。
また、刊行物3の摘記事項エには、「冷却工程を実行した場合には、図5の断面写真から明らかなように、微細なAlグレイン300Aが均一に蒸着されて、ステップカバレージが向上することがわかる。この結果は、コンタクトホールがない下地膜上のAlグレインの成長と類似している。」(【0048】段落)ことが、記載されている。
(h)刊行物4の摘記事項アには、アルミニウム層の場合であるが、「アルミニウム層270を蒸着する以前に、プラテン300に冷媒を循環させて温度を概略50℃以下に、望ましくは概略-10℃乃至45℃程度に維持させる。」(【0021】段落)こと、「前記のように蒸着されるアルミニウム層270は小さなグレーンで優れた段差を有して均一に形成される。このような現象は低い反応温度による低いグレーン成長速度に起因する。即ち、前記アルミニウム層270が蒸着される反応が前記したように低い温度に維持される条件で進行されるので、蒸着反応は低いグレーン成長速度を有する。」(【0022】段落)ことが、記載されている。
(i)刊行物5の摘記事項アには、「次に図1bでは、液体窒素により基板温度を77K(-196℃)に設定し、Al膜11をスパッタリング法を用いて堆積する。」(【0013】段落)こと、「図3にスパッタリング時の基板温度とAl膜の平均結晶粒径との関係を示す。この図より、基板温度279.9K(6.9℃)の場合のAl膜の平均結晶粒径は約0.45μmとなり、基板温度473K(200℃)の場合の68%に微細化できる。また、基板温度を77K(-196℃)の場合、平均結晶粒径は、基板温度473K(200℃)の場合の30%に微細化できる。このように、Al膜の結晶粒径を微細化すると、結晶粒界密度が高くなるので、Al膜の自由エネルギーが大きくなる。したがって、より少ないエネルギーで結晶状態を変化させることができるようになる。」(【0014】段落)ことが、記載されている。
また、刊行物5の摘記事項イには、「本実施例においては、Al膜を用いたが、SiやCuのような他の元素を含んだAl合金膜や、Al以外の元素から構成される膜、例えば、銅やタングステンからなる膜を用いても同様の効果がある。」(【0020】段落)ことが、記載されている。
また、刊行物5の図3には、基板温度とAl膜の平均結晶粒径とが比例関係にあり、基板温度が低いほど、Al膜の平均結晶粒径が小さくなることが、示されている。
(j)上記(f)ないし(i)の記載をまとめると、Cu(銅)やAl(アルミニウム)の膜をスパッタリングで形成する際に、基板温度を低くすると、結晶粒を小さくできるということであり、これは、上記(c)に記載の刊行物1発明の「微細な結晶粒子」、及び、上記(e)に記載の本願の発明の詳細な説明の「結晶粒の微細化」に対応する。
(k)以上の点を考慮すると、刊行物1発明において、銅配線膜をスパッタリングで形成する際に、リフロー現象を顕著にするべく、銅配線膜の結晶粒子を微細化するために、基板温度を低くすることは、当業者が適宜なし得たことであり、その際、基板温度をどの程度低くするかは、必要な結晶粒子の微細化、ひいては、必要なリフロー性を考慮して、当業者が実験などにより、適宜決定し得たことである。
よって、刊行物1発明の「前記スパッタリング法により成膜する際の前記Si基板の温度を室温とする」ことに代えて、本願発明1のごとく、「前記スパッタリング法により成膜する際の基板温度を-40?-5℃とする」ことは、当業者が必要に応じて容易になし得たことである。

次に、相違点1について検討する。
(a)刊行物1発明は、「孔径が0.15μmであり、」「アスペクト比(A.R.)が6.67であ」るが、刊行物1発明において、「アスペクト比(A.R.)」を、6.67の代わりに、本願発明1の「アスペクト比(AR)が3以上」のうちの最低値である3に設定すると、刊行物1発明では、「アスペクト比(A.R.)が6.67であ」るときに、「孔径が0.15μmであ」る孔が充填できるので、「アスペクト比(A.R.)」が3であれば、さらに小径の、孔径が0.15μm未満の孔が充填できることは、明らかである。
(b)また、刊行物1の摘記事項オの【表1】の実施例4には、Cu(銅)ではなく、Ag(銀)の場合ではあるが、穴径(「孔径」と同義語)が0.13μm、アスペクト比(A.R.)が7.69の例が示されており、本願発明1の「前記孔の開口部の径が0.15μm未満であると共に、」「アスペクト比(AR)が3以上であ」ることに相当しており、刊行物1発明のCu(銅)の場合においても、孔径が0.15μm未満の孔が充填できることは、明らかである。
(c)また、本願発明1の「前記孔の開口部の径が0.15μm未満である」ことにおける「0.15μm未満」は、限りなく0.15μmに近い値まで、その数値範囲に含まれるので、本願発明1の「前記孔の開口部の径が0.15μm未満である」ことは、刊行物1発明の「孔径が0.15μmであ」ることとほぼ同程度の径も含まれる。
(d)上記相違点2で検討したとおり、刊行物1発明の「前記スパッタリング法により成膜する際の前記Si基板の温度を室温とする」ことに代えて、本願発明1のごとく、「前記スパッタリング法により成膜する際の基板温度を-40?-5℃とする」ことは、当業者が必要に応じて容易になし得たことである。
そして、基板温度を-40?-5℃とすると、Si基板の温度を室温とした場合よりも、結晶粒子の微細化が向上することは、例えば刊行物5の図3のグラフの傾向からも容易に推測できることであって、その結果としてリフロー性が向上することも、明らかであるから、刊行物1発明の「孔径が0.15μm」よりも孔径が小さいものも充填できることも、明らかである。
(e)以上の点を考慮すると、刊行物1発明の「孔径が0.15μmであり、」「アスペクト比(A.R.)が6.67であ」ることに代えて、本願発明1のごとく、「前記孔の開口部の径が0.15μm未満であると共に、前記孔の下記式(1)(アスペクト比(AR)=D/d ----式(1) ただし、上記式(1) において、D:孔の深さ(μm)、d:孔の開口部の径(μm)である。)で示されるアスペクト比(AR)が3以上であ」るようにすることは、当業者が容易になし得たことである。

したがって、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1ないし5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願の他の請求項に係る発明についての検討をするまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-06-18 
結審通知日 2009-06-23 
審決日 2009-06-26 
出願番号 特願2002-231595(P2002-231595)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 國島 明弘  
特許庁審判長 橋本 武
特許庁審判官 安田 雅彦
河合 章
発明の名称 配線膜の形成方法  
代理人 梶 良之  
代理人 竹中 芳通  

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