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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B67C
管理番号 1202364
審判番号 不服2007-1860  
総通号数 118 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-01-18 
確定日 2009-08-13 
事件の表示 特願2003-202915「プラスチック容器入り飲料及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年2月24日出願公開、特開2005-47509〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成15年7月29日の出願であって、平成18年11月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成19年1月18日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。そして、平成21年2月25日付けで当審から拒絶理由が通知され、平成21年5月7日付けで明細書を対象とする手続補正がなされたものである。

2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成21年5月7日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定されるものと認められるところ、この請求項1の記載は次のとおりである。(以下、「本願発明」という。)
「【請求項1】ビタミンEを含む清涼飲料中に溶存している酸素を窒素でバブリングして脱気する脱酸素工程と、
前記脱酸素工程により脱酸素された前記清涼飲料を透明プラスチック製容器に充填する充填工程と、
前記充填工程により前記清涼飲料が充填された前記透明プラスチック製容器において前記透明プラスチック製容器内に生じたヘッドスペースを、二酸化炭素で置換を行う置換工程と、
前記置換工程を経た後に前記透明プラスチック製容器をキャップで密封する密封工程と、を備える容器入り飲料の製造方法。」

3 引用例の記載事項
当審拒絶理由で通知した、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2003-63571号公報(以下、「引用例」という。)には、次の記載がある。
「【0002】【従来の技術及びその課題】一般に、飲料をプラスチック容器に充填し、自販機、ウオーマー機器等によって加温して、消費者に提供することが広く行われている。従来、比較的高温において飲料をプラスチック容器に充填し、加温して消費者に提供することが行われている。高温において飲料をプラスチック容器に充填すると、常温において、プラスチック容器内部の圧力が減少するため、加温して消費者に提供する際、容器内部の圧力はあまり上昇せず、容器が変形するという問題はなかった。他方、飲料の風味を損なわないようにする等の理由により、無菌常温条件において、飲料をプラスチック容器に充填することが行われるようになった。常温において、飲料をプラスチック容器に充填すると、加温して消費者に提供する際、ヘッドスペースの気体が膨張し、容器内部の圧力が上昇して、プラスチック容器が変形するという新たな問題が生じた。
【0003】【課題を解決するための手段】本発明に従うと、上記のとおりの課題を解決するために、プラスチック容器内に非炭酸飲料を常温充填し、非炭酸飲料が充填されたプラスチック容器のヘッドスペースに、二酸化炭素ガスを吹き込み、二酸化炭素ガスによって、ヘッドスペースの空気の一部を置換し、ヘッドスペースの空気の一部が二酸化炭素によって置換されたプラスチック容器の口をキャップで閉じて密封し、プラスチック容器内に密封された飲料を加温して、消費者に提供することことを特徴とする加温飲料の提供方法が提供される。」
「【0004】【発明の実施の形態】…充填される飲料としては、お茶(緑茶)、ウーロン茶、紅茶、ミルク紅茶、ブラックコーヒー、ミクルコーヒー、果汁飲料等の種々の非炭酸飲料を挙げることができる。非炭酸飲料が、公知の無菌充填装置によって、例えば、無菌の空気雰囲気において、5-40℃、好ましくは、15-35℃の常温でプラスチック容器に充填される。
【0005】非炭酸飲料が充填されたプラスチック容器のヘッドスペースに、例えば、二酸化炭素ガス、又は二酸化炭素ガス及び窒素ガス等の二酸化炭素ガスを含む混合ガスを吹き込み、キャップを閉じる。このようにしてヘッドスペース内の空気を二酸化炭素ガスで置換する。望ましくは、ヘッドスペース内の空気を、30-60%二酸化炭素で置換する。ヘッドスペースの空気、特に酸素は内容物の酸化を防止する為に、出来るだけ二酸化炭素により置換されることが望ましく、好ましくは、酸素量として1mg/100ml以下であることが望ましい。上記のとおりに二酸化炭素置換が行われた後、プラスチック容器にキャップが閉められ、密封され、無菌充填容器の外に搬送され、通常の販売ルートに従って、販売店に供給される。」
以上の記載によれば、引用例には、次の発明が記載されていると認められる。(以下、「引用発明」という。)
「茶や果汁飲料をプラスチック容器に充填する工程と、
茶や果汁飲料が充填されたプラスチック容器のヘッドスペースに二酸化炭素ガス、又は二酸化炭素ガス及び窒素ガス等の二酸化炭素ガスを含む混合ガスを吹き込み、ヘッドスペース内の空気を二酸化炭素ガスで置換する工程と、
二酸化炭素ガスで置換が行われた後、プラスチック容器をキャップで密封する工程と、
を備える容器入り飲料の製造方法。」

4 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「茶や果汁飲料」は、本願発明の「清涼飲料」に相当する(例えば、特開平9-252752号公報の段落【0013】(2)参照)。また、引用発明の「プラスチック容器」は、本願発明の「プラスチック製容器」に相当する。そうすると、引用発明の「茶や果汁飲料をプラスチック容器に充填する工程」、「茶や果汁飲料が充填されたプラスチック容器のヘッドスペースに二酸化炭素ガス、又は二酸化炭素ガス及び窒素ガス等の二酸化炭素ガスを含む混合ガスを吹き込み、ヘッドスペース内の空気を二酸化炭素ガスで置換する工程」及び「二酸化炭素ガスで置換が行われた後、プラスチック容器をキャップで密封する工程」は、それぞれ本願発明の「清涼飲料をプラスチック製容器に充填する充填工程」、「前記充填工程により前記清涼飲料が充填された前記プラスチック製容器において前記プラスチック製容器内に生じたヘッドスペースを、二酸化炭素で置換を行う置換工程」及び「前記置換工程を経た後に前記プラスチック製容器をキャップで密封する密封工程」に相当する。
したがって、本願発明と引用発明とは、
「清涼飲料をプラスチック製容器に充填する充填工程と、
前記充填工程により前記清涼飲料が充填された前記プラスチック製容器において前記プラスチック製容器内に生じたヘッドスペースを、二酸化炭素で置換を行う置換工程と、
前記置換工程を経た後に前記プラスチック製容器をキャップで密封する密封工程と、を備える容器入り飲料の製造方法。」
である点で一致し、次の点で相違する。
<相違点1>
本願発明では、清涼飲料がビタミンEを含むものであるが、引用発明の茶や果汁飲料はビタミンEを含むか不明な点。
<相違点2>
本願発明では、清涼飲料中に溶存している酸素を窒素でバブリングして脱気する脱酸素工程を備え、脱酸素工程により脱酸素された清涼飲料を容器に充填するのに対して、引用発明では、そのような脱酸素工程を備えるか不明な点。
<相違点3>
本願発明では、プラスチック製容器が透明であるが、引用発明では、プラスチック容器が透明か不明な点。

5 相違点の検討
そこで上記相違点1について検討すると、茶や果汁飲料にビタミンEを添加することは、例えば特開平7-132073号公報や特開2000-228952号公報に示されており、周知の事項であるから、引用発明の茶や果汁飲料にビタミンEを添加して、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
次に、相違点2について検討すると、酸化による飲料の劣化を防ぐために、容器に充填する前に窒素でバブリングして飲料中の溶存酸素を除去する脱酸素工程を設けることは、例えば特開平10-295341号公報、特開平1-206976号公報に示されており、周知の事項であるから、引用発明にこの周知の事項を適用して、相違点2に係る本願発明の事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。
相違点3について検討すると、茶や果汁飲料を充填する容器として、透明プラスチック製容器を用いることは、例えば上記特開平7-132073号公報や特開2000-228952号公報に示されており、周知の事項であるから、引用発明この周知の事項を適用して、相違点3に係る本願発明の事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。
しかも、本願発明が奏する効果も、引用発明及び周知の事項から当業者が予測し得たものであり、格別顕著なものとはいえない。
したがって、本願発明は、引用発明及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。

6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-06-09 
結審通知日 2009-06-16 
審決日 2009-06-29 
出願番号 特願2003-202915(P2003-202915)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B67C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柳田 利夫  
特許庁審判長 栗林 敏彦
特許庁審判官 熊倉 強
村山 禎恒
発明の名称 プラスチック容器入り飲料及びその製造方法  
代理人 正林 真之  

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