ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F |
---|---|
管理番号 | 1202369 |
審判番号 | 不服2007-6535 |
総通号数 | 118 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-10-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-03-05 |
確定日 | 2009-08-13 |
事件の表示 | 平成11年特許願第187133号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 1月16日出願公開、特開2001- 9117〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願の経緯概要は以下のとおりである。 特許出願 平成11年7月1日 審査請求 平成13年8月29日 拒絶理由 平成18年7月18日 手続補正 平成18年9月12日 拒絶査定 平成19年1月31日 審判請求 平成19年3月5日 手続補正 平成19年4月3日 拒絶理由・補正却下 平成21年3月12日 手続補正 平成21年5月18日 第2.本願発明 平成21年5月18日付の手続補正における特許請求の範囲の請求項1にかかる発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりのものである。 「識別情報を表示可能な表示エリアを有する表示手段を備えた遊技機において、 変動表示された識別情報を停止表示する際に、識別情報を前記表示エリア内で当該識別情報が判別不能となる図柄急変状態を生じない速度で移動させつつその表示エリアの枠外に出て行くようにその表示エリアから識別情報を消滅させてから、当該識別情報とは異なる識別情報であって且つ停止表示させる識別情報を前記表示エリアの枠外からその表示エリア内に当該識別情報が判別不能となる図柄急変状態を生じない速度で入り込んでくるようにその表示エリア内に出現させて停止表示させる表示制御手段を備え、 前記表示制御手段は、 遊技者にとって有利な遊技状態とするような識別情報を前記停止表示させる識別情報とし、これを前記表示エリア内に出現させて停止表示させる手段であることを特徴とする遊技機。」 第3.当審の判断 1.当審拒絶理由について 当審において平成21年3月12日付で通知した拒絶の理由2.の概要は、平成18年9月12日付の手続補正書における請求項1に係る発明は、特開平11-47372号公報 (以下「引用文献1」という。)に記載された発明及び技術に基づき、又は、引用文献1及び特開平9-262349号公報 (以下「引用文献2」という。)に記載された発明及び技術に基づき、遊技機において通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。 2.引用発明について 引用文献1の特許請求の範囲には、以下の記載がある。 【0020】この可変表示装置4は、たとえば液晶表示装置等で構成されており、特別図柄と呼ばれる識別情報を可変表示可能な表示領域を有する可変表示部5が設けられている。この可変表示部5においては、左特別図柄を可変表示可能な左可変表示部と、中特別図柄を可変表示可能な中可変表示部と、右特別図柄を可変表示可能な右可変表示部とに3分割されており、すべての可変表示部が一斉に可変開始することにより各特別図柄が可変表示され、まず左可変表示部の左特別図柄が停止制御され、次に右可変表示部の右特別図柄が停止制御され、最後に中可変表示部の中特別図柄が停止制御される。 【0091】左図柄5aが見え隠れ表示に移行することにより、図8の(c)に示されるように左図柄5aの可変表示速度が低速になり、その後、図8の(d)に示されるように左図柄5aが下方の遮蔽物50aに隠れる表示がなされる。この場合、左図柄5aは、図柄の上端部を除いた部分が遮蔽物50aに隠れる。すなわち、左図柄5aが遮蔽物50aに隠れた場合は、図柄の大部分が隠れ、図柄の一部である上端部が遊技者に視認可能に表示される。 【0092】そして、左図柄5aは、図柄の上端部が遮蔽物50aの上方に見え、それ以外の部分が遮蔽物50aに隠れている状態で、可変表示される。図柄が遮蔽物50aに隠れている状態での可変表示では、基本的に図柄が図柄の配列順序にしたがって1図柄分だけ次の図柄に変化する。この例では、図8の(c),(d)に示されるように、「0」を示す図柄が、遮蔽物50aに隠れて次の「1」を示す図柄に変化した状態が示されている。このように、隠れた図柄の一部が視認可能な表示を行なうことにより、その図柄の一部の形状から、隠れている図柄の種類を遊技者がある程度予想できるため、表示の面白みを増すことができるとともに、遊技者の期待感を盛り上げることができる。さらに、図柄の変化の状態を知りたい遊技者の注意を可変表示に引きつけることができ、遊技者を遊技に集中させることができる。また、見え隠れ表示が比較的低速で行なわれるようにしたことにより、図柄の動作が遊技者にとって見やすくなり、見え隠れ表示の可変表示の面白みを活かすことができる。 【0105】リーチ1の場合は、リーチ状態が発生した後、図13に示される表示が行なわれる。図13の(a),(b)に示されるように、中図柄5bが、スクロール表示から見え隠れ表示に移行する。この図13に示されている例は、大当りの発生が事前に決定されている場合であり、中図柄5bが、「8」を示す図柄で遮蔽物50bに隠れ、次の配列順序の「9」を示す図柄に変化せずに、配列順序を複数図柄分進めた図柄に該当する「2」に変化している状態が示されている。すなわち、図柄の配列順序にしたがった変化がなされていない。 【0106】「9」と「2」とは、上端部の形状が類似しているので、この場合、遊技者は、表示を見ただけでは、中図柄5bが「2」になっていることを判別できない。図柄の配列順序にしたがって図柄を変化させるという可変表示の基本的な表示態様にしたがうと、「8」を示す図柄で遮蔽物50bに隠れた場合、遊技者は、次の図柄である「9」の出現を予想する。 【0107】しかし、この場合には、隠れた中図柄5bが「2」を示す図柄になっているので、最終的に、隠れていた「2」を示す図柄の中図柄5bが、遮蔽物50bの上方に出現する表示がなされる。この出現表示により中図柄5bの停止図柄が確定する。この場合は、「2」が揃うことにより、大当りが発生している。 【0108】このように、遊技者の一般的な予想と異なる種類の図柄が出現して中図柄5bが確定する表示が行なわれると、表示の意外性により、可変表示の面白みを増すことができ、遊技者の興趣を向上させることができる。さらに、大当りを発生させる場合に、そのような意外性がある表示を行なうと、遊技者の喜びをより盛り上げることができるので、遊技者の興趣をより一層向上させることができる。 【0123】また、前述した通常の可変表示およびリーチ表示における見え隠れ表示においては、特別図柄の一部が視認可能な態様で特別図柄を隠した。しかし、これに限らず、見え隠れ表示においては、特別図柄の全体を隠すようにしてもよい。すなわち、見え隠れ表示においては、特別図柄の少なくとも一部を隠すようにすればよい。 【0125】次に、この発明の変形例等の特徴点を列挙する。 (1) 図2に示された基本回路40および図3に示された基本回路32により、可変表示装置(可変表示装置4)において複数種類の識別情報(特別図柄)を可変開始させた後表示結果を導出表示させる制御を行なう可変表示制御手段が構成されている。図8の(c)?図10の(c)等の表示画面図に示されるように、前記可変表示制御手段は、可変表示中の識別情報の少なくとも一部が隠れる表示を実行させた後、その可変表示中の識別情報の隠れた部分を再び出現させる表示を実行させる表示制御(見え隠れ表示)を行なう。そのような可変表示中の識別情報の少なくとも一部が隠れる表示を実行させた後、その可変表示中の識別情報の隠れた部分を再び出現させる表示を実行させる表示制御は、識別情報の可変表示速度を所定の高速の可変表示速度よりも低い可変表示速度にした状態で実行される。 上記における「識別情報」と「特別図柄」については「特別図柄」に用語を統一することする。また段落【0123】には「特別図柄の全体を隠すようにしてもよい」とあるから、引用発明における、図柄の「一部」が隠れるという事項に代えて「全体」が隠れる場合について引用発明を認定することとし、とすれば、「隠れた部分」という事項は「隠れた全体」と表現することができる。 また、段落【0105】?段落【0108】における見え隠れ表示ついては、図13に示されている内容も参照すれば、左図柄と右図柄とが「2」でリーチ状態となった場合であり、中図柄については「8」が隠れた後、「2」が出現し停止図柄が確定しているから、見え隠れ表示における再び出現させる表示に関して、「隠れた中図柄とは異なる中図柄であって且つ停止される中図柄」を出現させているものであると認められる。 よって、引用文献1の記載事項及び図面を総合的に勘案すれば、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「可変表示装置において複数種類の特別図柄を可変開始させた後表示結果を導出表示させる制御を行なう可変表示制御手段を備え、 前記可変表示装置は特別図柄を可変表示可能な表示領域を有する可変表示部が設けられており、 前記可変表示制御手段は、可変表示中の特別図柄の全体が隠れる表示を実行させた後、その可変表示中の特別図柄の隠れた全体を再び出現させる表示を実行させる表示制御(見え隠れ表示)を行い、 前記見え隠れ表示は、特別図柄の可変表示速度を所定の高速の可変表示速度よりも低い可変表示速度にした状態で実行され、 リーチ表示における前記見え隠れ表示においては、リーチ状態が発生した後、スクロール表示から見え隠れ表示に移行し、中図柄が遮蔽物に隠れ、次いで隠れた中図柄とは異なる中図柄であって且つ停止される中図柄が遮蔽物の上方に出現する表示がなされ、この出現表示により中図柄の停止図柄が確定し大当りが発生する遊技機。」 3.対比 ここで、本願発明と引用発明とを対比する。 引用発明における「特別図柄」は本願発明における「識別情報」に相当し、以下同様に、「表示領域」は「表示エリア」に、「可変表示装置」は「表示手段」に、「可変表示」は「変動表示」に、「表示結果を導出表示」は「停止表示」に、「可変表示制御手段」は「表示制御手段」にそれぞれ相当する。 引用発明における見え隠れ表示は「可変表示中の特別図柄の全体が隠れる表示を実行させた後、その可変表示中の特別図柄の隠れた全体を再び出現させる表示を実行させる」ものであるから、該見え隠れ表示は本願発明における「識別情報」を「表示エリアから識別情報を消滅させてから、」「その表示エリア内に出現」させるものということができる。また、引用発明の「中図柄」は本願発明の「識別情報」に相当するから、引用発明の「停止される中図柄」は本願発明の「停止表示される識別情報」に相当し、引用発明の中図柄が「遮蔽物に隠れ」る点、及び「遮蔽物の上方に出現」する点は、本願発明の「その表示エリアの枠外に出て行く」点、及び「前記表示エリアの枠外からその表示エリア内に…入り込んでくる」点に相当する。よって、引用発明における見え隠れ表示において、「中図柄が遮蔽物に隠れ、次いで隠れた中図柄とは異なる中図柄であって且つ停止される中図柄が遮蔽物の上方に出現する表示」は、本願発明における「識別情報を前記表示エリア内で移動させつつその表示エリアの枠外に出て行くようにその表示エリアから識別情報を消滅させてから、当該識別情報とは異なる識別情報であって且つ停止表示させる識別情報を前記表示エリアの枠外からその表示エリア内に入り込んでくるようにその表示エリア内に出現させて停止表示させる」点に相当する。 さらに、引用発明における見え隠れ表示は、「この出現表示により中図柄の停止図柄が確定」しているものであるから、本願発明における「変動表示された識別情報を停止表示する際」という点も満たしており、さらに、「この出現表示により中図柄の停止図柄が確定し大当りが発生する」のであるから、本願発明における「遊技者にとって有利な遊技状態とするような識別情報を前記停止表示させる識別情報とし、これを前記表示エリア内に出現させて停止表示させる」という点も具備するものである。 したがって、本願発明と引用発明は、 「識別情報を表示可能な表示エリアを有する表示手段を備えた遊技機において、 変動表示された識別情報を停止表示する際に、識別情報を前記表示エリア内で移動させつつその表示エリアの枠外に出て行くようにその表示エリアから識別情報を消滅させてから、当該識別情報とは異なる識別情報であって且つ停止表示させる識別情報を前記表示エリアの枠外からその表示エリア内に入り込んでくるようにその表示エリア内に出現させて停止表示させる表示制御手段を備え、 前記表示制御手段は、 遊技者にとって有利な遊技状態とするような識別情報を前記停止表示させる識別情報とし、これを前記表示エリア内に出現させて停止表示させる手段である遊技機。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点] 本願発明においては、識別情報を表示エリアから消滅させ、かつ表示エリア内に出現させる表示について「当該識別情報が判別不能となる図柄急変状態を生じない速度」としているのに対して、引用発明においては見え隠れ表示について「所定の高速の可変表示速度よりも低い可変表示速度にした状態で実行」しているものの、「識別情報の判別」が可能であるか否かについては不明である点。 4.相違点にかかる検討 上記相違点について検討する。 引用発明においては、見え隠れ表示について「所定の高速の可変表示速度よりも低い可変表示速度」とあるから、少なくとも低速で変動させることは意図しているものである。また引用文献1を参照すれば、段落【0092】において、左図柄の見え隠れ表示について「また、見え隠れ表示が比較的低速で行なわれるようにしたことにより、図柄の動作が遊技者にとって見やすくなり、見え隠れ表示の可変表示の面白みを活かすことができる。」とあるから、見え隠れ表示における図柄の動作が遊技者にとって見やすいか否かも考慮しているものである。とすれば、見え隠れ表示として低速で変動させる場合において、「遊技者にとって見やすい」という観点も考慮し、特別図柄の判別が可能な程度の速度を採用することは、当業者にとって格別の困難無く容易に想到できたことである。 5.当審の判断についてのむすび そうすると、相違点にかかる本願発明の構成は、引用発明から当業者が容易に想到できたものというべきである。 そして、本願発明の作用効果も、引用発明から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 第4.むすび 以上のとおり、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は拒絶を免れない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-06-09 |
結審通知日 | 2009-06-16 |
審決日 | 2009-06-30 |
出願番号 | 特願平11-187133 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(A63F)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 吉村 尚 |
特許庁審判長 |
小原 博生 |
特許庁審判官 |
森 雅之 池谷 香次郎 |
発明の名称 | 遊技機 |
代理人 | 内藤 嘉昭 |
代理人 | 森 哲也 |
代理人 | 崔 秀▲てつ▼ |