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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03G
管理番号 1202399
審判番号 不服2008-1987  
総通号数 118 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-01-24 
確定日 2009-08-13 
事件の表示 特願2006-136235「電子写真印刷装置および電子写真印刷方法、並びに板ガラス、セラミック板の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年11月29日出願公開、特開2007-309974〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成18年5月16日の出願であって、平成19年12月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成20年1月24日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。
そして、本願の請求項1ないし請求項12に係る発明は、平成19年11月19日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項12に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)
は、次のとおりである。

「移動する表面に形成される静電潜像の画線部に現像装置によって帯電されたトナーが付着される感光体と、
該感光体の表面の移動方向における前記現像装置よりも下流側位置に該感光体に対向して近接配置され所定の電位を付与される非画線部トナー除去部と、を備え、
該非画線部トナー除去部は、前記感光体に近接して移動し、磁力で稲穂状に形成されたキャリヤが前記感光体表面に接するように吸着搬送される担持体を有し、
前記非画線部トナー除去部における前記静電潜像の非画線部に対応する位置に形成される電場の向きが、前記感光体から被転写体に静電転写される際の前記静電潜像の非画線部に対する電場の向きと同じであることを特徴とする工業製品に導電性パターンを印刷する電子写真印刷装置。」

2.引用例
2.1 引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された特開平1-197785号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付与。)

(1a)「2.特許請求の範囲
静電潜像が形成される感光体と、
上記感光体に対向するように設けてあり、予め帯電したトナーを上記感光体の潜像部に付着させる現像手段と、
上記現像手段の下流側に上記感光体に対向するように設けてあり、上記感光体に付着した上記トナーを記録媒体に転写せしめる転写手段と、
上記現像手段と上記転写手段との間に、上記感光体と対向するように設けてありかつ上記感光体の非潜像部に付着しているトナーを電界の作用で除去する対向電極とを具備することを特徴とする電子写真記録装置。」(1頁左下欄4?16行)

(1b)「次に動作について説明する。
第1図において、感光体1は先ず帯電手段2によって-700Vに帯電された後、矢印A_(1)の方向に回転されることにより露光手段3との対向位置に至り、露光手段3を介して所定の画像パターンに露光される。これにより第2図に示すように、感光体1の露光部が導電性を呈し、露光部におけるマイナス電荷が導電層1bを介してリークされる。これにより、感光体1において露光された部分が潜像部9(第2図示)となり、露光されなかった部分が非潜像部10(第2図示)となる。なおこのとき、潜像部9の電位が-100Vとなり非潜像部(非露光部)10(第2図示)の電位が-700Vとなる。そしてその後、感光体1はさらに回転して現像手段4のスリーブ42との対向部に至る。
現像手段4において、スリーブ42に付着したトナー11は、スリーブ42上でバイアス電圧Vl(-600V)によりマイナス帯電される。
このトナー11はスリーブ42が矢印A_(2)方向に回転されることによって搬送され、ドクターブレード44(第1図示)にて所定の層厚に規制された後、感光体1との対向部、すなわち現像部に至る。
第2図に示すように、感光体1とスリーブ42との対向部(現像部)では、スリーブ42の電位がバイアス電圧V1により-600Vとなっており、潜像部9の電位が-100,非潜像部10の電位が-700vとなっている。このためスリーブ42上に付着しているマイナス帯電のトナー11は、スリーブ42と潜像部9との間に形成される現像電界により潜像部9に付着し、トナー像を形成する。なおこの現像部においては、上述した電位関係により原理的にはトナー11が非潜像部10に付着しないようになっているのであるが、トナー11の中には、トナー11aのように種々の原因によって非潜像部10に付着してしまうものがある。
その後、これらのトナー11(トナー11aも含む)は、さらに感光体1が回転することにより対向電極5との対向部に搬送される。対向電極5の電位はバイアス電圧V2により一300Vとなっており、潜像部9および非潜像部10の電位は、前述した現像部と同様にそれぞれ-100V,-700Vとなっている。このため、感光体1に付着しているトナー11(マイナス帯電)のうち非潜像部10に付着しているトナー11a(マイナス帯電)は、対向電極5と非潜像部10との間に形成される電界によって対向電極5に付着せしめられ非潜像部10から除去される。その後、第1図に示すように、対向電極5に付着したトナー11aは、対向電極5の矢印A3方向への回転によって搬送され、かきとり部材13によってかきとられて、トナー回収トレイ14に回収される。
なお潜像部9に付着しているトナー11は、前述した電位関係のため、対向電極5に付着せず、潜像部9に安定して保持される。
潜像部9に付着しているトナー11は、感光体1がさらに回転されることによって転写手段6との対向部に至り、転写手段6を介して記録媒体15に転写される。」(2頁左下欄19行?3頁右上欄19行)

(1c)「このように非潜像部10に付着したトナー11aは、転写手段6に搬送される前に対向電極5によって除去され、転写手段6との対向部には潜像部9に付着したトナー11のみが搬送されるため、記録媒体15には潜像部9に付着したトナー11のみが転写され、非潜像部10に付着したトナー11aが転写されることがない。したがって、記録媒体15にはカブリや汚れのない高品質の転写画像が形成される。」(3頁左下欄4?12行)

(1d)「[発明の効果]
以上詳細に説明したように本発明によれば、現像手段と転写手段との間に設けた対向電極により、感光体の非潜像部に付着したトナーを転写部に搬送される前に除去することができ、カブリや汚れが生じることがなくなり転写画像の品質が向上する。」(4頁左上欄7?13行)

引用文献1に記載の電子写真記録装置における、感光体に対する対向電極の対向部を「非潜像部トナー除去部」ということができることを考慮に入れて、上記摘記事項を総合して勘案すると、引用文献1には次の発明(以下、「引用文献1記載発明」という。)が、実質的に記載されている。

「移動する表面に形成される静電潜像の潜像部に現像手段によって帯電されたトナーが付着される感光体と、
該感光体の表面の移動方向における前記現像手段よりも下流側位置に該感光体に対向して近接配置され所定の電位を付与される非潜像部トナー除去部と、を備え、
該非潜像部トナー除去部は、前記感光体に近接して移動し、外周面にトナーを付着して搬送する対向電極を有し、
前記非潜像部トナー除去部における前記静電潜像の非潜像部に対応する位置に形成される電界の向きが、前記感光体から記録媒体に転写される際の前記静電潜像の非潜像部に対する電界の向きと同じである電子写真記録装置。」

2.2 引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-237024号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付与。)

(2a)「【0048】次に、本実施形態における感光体クリーニングユニット10及びベルトクリーニングユニット22について説明する。前述のセラミックトナーの成分である熱燃結性着色材、鉱化材、燃結材に硬度が高いものが多く(前記実施例中の金属酸化物及び微粉体混合物中の材料)、図3に示すクリーニングブレード10c、22bを用いたものでは、感光体9や中間転写ベルト19等を傷つけやすい。そこで、本実施形態では、感光体クリーニング10は図3に、ベルトクリーニングユニット22については図4に、それぞれ示すように、マグネットブラシ方式のクリーニング装置を用いる。
【0049】図3において、この方式のクリーニング装置は、スリーブ200に内包したマグネットの磁力線により、磁性体キャリヤ粒子201でブラシを形成し、回転する磁気ブラシでトナーを除去し、回収する。キャリヤ粒子は、現像で使用されるキャリヤと同様にトナーと逆極性に摩擦帯電する材料でコートされている。スリーブ200には、電源202によりトナーと逆極性にバイアス電圧を印加し、残留トナーを感光体9からキャリヤ粒子に捕捉させ、さらにバイアス電圧が印加された回収ローラ203で補集する。回収ローラ203からはブレード204で掻き取り、ガイド205でガイドしながらスクリュウ206で、図示しない廃トナータンクなどに搬送する。この磁気ブラシの穂先を、感光体9面に均一に当たるようにドクターブレードで規制してもよい。この方式は、静電的な力を多く利用しているため、クリーニング用部材としての上記スリーブ200および感光体9の駆動力が少なくてすみ、感光体9を摩耗させない特徴がある。」

(2b)図3は、以下に示すものである。

上記摘記事項を勘案すると、引用文献2は、以下の技術的事項が記載されている。

「感光体クリーニングユニットにおいて、感光体に対向して近接配置され所定の電位を付与されるトナー除去部が、該感光体に近接して移動し、磁気ブラシに形成されたキャリヤが感光体表面に接するように吸着搬送される担持体を有しているものとすること。」

3.本願発明1(前者)と引用文献1記載発明(後者)の対比
後者の「潜像部」、「現像手段」、「非潜像部トナー除去部」、「非潜像部」、「記録媒体」、「転写」、「電子写真記録装置」は、それぞれ、前者の「画線部」、「現像装置」、「非画線部トナー除去部」、「非画線部」、「被転写体」、「静電転写」、「電子写真印刷装置」に相当する。
また、後者の「対向電極」と前者の「担持体」は、共に回転体である点で共通する。
したがって、両者は、
「移動する表面に形成される静電潜像の画線部に現像装置によって帯電されたトナーが付着される感光体と、
該感光体の表面の移動方向における前記現像装置よりも下流側位置に該感光体に対向して近接配置され所定の電位を付与される非画線部トナー除去部と、を備え、
該非画線部トナー除去部は、前記感光体に近接して移動する回転体を有し、
前記非画線部トナー除去部における前記静電潜像の非画線部に対応する位置に形成される電場の向きが、前記感光体から被転写体に静電転写される際の前記静電潜像の非画線部に対する電場の向きと同じである電子写真印刷装置。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(3-1)相違点1
感光体に対向して近接配置され所定の電位を付与される非画線部トナー除去部における回転体が、前者は「磁力で稲穂状に形成されたキャリヤが前記感光体表面に接するように吸着搬送される担持体」であるのに対して、後者は「外周面にトナーを付着して搬送する対向電極」である点。

(3-2)相違点2
前者は「工業製品に導電性パターンを印刷する」電子写真印刷装置であるのに対して、後者の電子写真印刷装置(電子写真記録装置)は、用途が特定されていない点。

4.相違点についての判断
(4-1)相違点1について
前記「2.(2)」で述べたように、引用文献2には、
「感光体クリーニングユニットにおいて、感光体に対向して近接配置され所定の電位を付与されるトナー除去部が、該感光体に近接して移動し、磁気ブラシに形成されたキャリヤが感光体表面に接するように吸着搬送される担持体を有しているものとすること。」
が記載されている。
そして、電子写真印刷装置において、転写部の上流側に感光体に対向して近接配置され所定の電位を付与される非画線部トナー除去部(非潜像部トナー除去部)を備えるとともに、この非画線部トナー除去部が、稲穂状に形成されたキャリヤ(磁気ブラシ)が感光体表面に接するように吸着搬送される担持体を有するものとすることは、例えば、特開平1-239569号公報(1頁左下欄5行?2頁左上欄1行、第2図、第3図)、特開平6-27767号公報(【0061】?【0069】、【図6】)や、2成分現像剤を用いた電子写真印刷装置における現像同時クリーニング方式として特開2001-13786号公報(【図5】及びその説明文)、特開2001-343814号公報(【図4】及びその説明文)等に記載されているように、本願出願前に周知の技術的事項である。
してみると、引用文献1記載発明における、感光体に対向して近接配置され所定の電位を付与される非画線部トナー除去部における回転体として、「外周面にトナーを付着して搬送する対向電極」を用いる代わりに、「磁力で稲穂状に形成されたキャリヤが前記感光体表面に接するように吸着搬送される担持体」を用いることにより、相違点1に係る構成を有するものとすることは、当業者が適宜行う事項である。

(4-2)相違点2について
電子写真方式を用いて、工業製品に導電性パターンを印刷することは、拒絶査定時に周知例として例示された特開2000-221780号公報、特開平11-177213号公報、特開平7-121056号公報の他に、例えば、特開昭60-127787号公報、特開平4-78191号公報、特開平11-272125号公報、特開2001-7484号公報に記載されているように、本願出願前に周知の技術的事項である。
してみると、引用文献1記載発明に係る電子写真印刷装置(電子写真記録装置)を工業製品に導電性に導電性パターンを印刷するものとすることにより、相違点2に係る構成を有するものとすることは、当業者が適宜行う事項である。

(4-3)効果について
上記「2.1(1c)」及び「2.1(1d)」で摘記したように、引用文献1記載発明は、記録媒体にカブリや汚れがない高品質の転写画像が形成されるという、本願発明1と同様の効果を奏するものである。
してみると、本願発明1と引用文献1記載発明は、それぞれが奏する効果において、格別の差異を有しない。

(4-4)まとめ
上述したように、引用文献1記載発明において、相違点1に係る構成、及び、相違点2に係る構成を有するものとすることは、いずれも当業者が適宜行う事項である。
また、引用文献1記載発明において、相違点1に係る構成と相違点2に係る構成を組み合わせたことにより、当業者が予期せぬ格別の効果が奏せられるものでもない。
したがって、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された技術的事項、及び、周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された技術的事項、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-06-10 
結審通知日 2009-06-16 
審決日 2009-06-26 
出願番号 特願2006-136235(P2006-136235)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲高▼橋 祐介  
特許庁審判長 山下 喜代治
特許庁審判官 赤木 啓二
大森 伸一
発明の名称 電子写真印刷装置および電子写真印刷方法、並びに板ガラス、セラミック板の製造方法  
代理人 藤田 考晴  

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