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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01S
管理番号 1202515
審判番号 不服2007-16930  
総通号数 118 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-06-18 
確定日 2009-08-11 
事件の表示 平成 9年特許願第221249号「損失導波型半導体レーザー」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 4月10日出願公開、特開平10- 93200〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成9年8月18日(パリ条約による優先権主張1996年8月26日、米国)を出願日とする特許出願であって、平成19年1月29日に手続補正がなされたが、同年3月12日付けで拒絶査定がなされ、これに対し同年6月18日に拒絶査定不服審判請求がなされたが、当審において、平成20年11月10日付けで拒絶理由が通知されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成19年1月29日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認められる。

「レーザー領域を有する半導体レーザーデバイスであって、
基体と、
前記基体上に形成した複数の隣接する半導体層とから成り、
前記半導体層が、
III-V族窒化物の材料で作られ、第1屈折率を有している活性層と、
前記基体の表面に直角の方向に光とキャリヤを閉じ込めるため前記活性層をサンドイッチ状にはさんでいる一対のクラッド層と、
前記第1屈折率より高い第2屈折率の材料で形成された横導波層とを包含し、
前記横導波層は、前記基体表面に平行な方向において、前記レーザー領域を安定させるアウトカップリングを実現するように、前記レーザー領域の横方向外側にあって前記活性層に近接配置されており、
前記第2屈折率で形成された横導波層は、非結晶材料で成る、
ことを特徴とする半導体レーザーデバイス。」

3.引用刊行物
3.1.引用刊行物1
当審における拒絶理由通知に引用した、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平8-97502号公報(以下「引用刊行物1」という。)には,図とともに以下の事項が記載されている。
(1)「【0007】また、光の吸収材料により電流阻止層を形成するには、前述のようにチッ化ガリウム系化合物半導体からなる光の吸収材料の成膜が困難で、複素屈折率導波構造の半導体レーザがえられないという問題がある。
【0008】一般に横方向に屈折率差を有しない利得導波型の半導体レーザは戻り光ノイズは小さいが、横モードが不安定でキンクが生じ易い。一方屈折率導波構造型の半導体レーザは戻り光誘起ノイズを発生し易いが単一縦モードを発振し易く、可干渉性が高い。そのため、両タイプの長所を取り入れ、戻り光ノイズが小さく、キンクレベルを高くした安定な発振の半導体レーザをうるには、両タイプの構造を取り入れることが好ましいが、適当な吸収材料からなる電流阻止層がえられていない。
【0009】本発明はこのような問題を解決し、GaN系化合物半導体を用いた半導体レーザにおいて、GaN系化合物半導体と異なる半導体材料を用いて電流阻止層を光吸収層として形成することにより、発振光のノイズの制御(低ノイズ化)、横方向の光の広がり制御およびキンク、縦モードの制御が容易に行われうる半導体レーザを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明による半導体レーザは、チッ化ガリウム系化合物半導体からなる活性層が該活性層よりバンドギャップエネルギーが大きいチッ化ガリウム系化合物半導体からなる上部および下部クラッド層により挟持されてなる半導体レーザであって、前記上部または下部クラッド層の少なくとも一方の層中に前記活性層で発生せられる光を吸収する材料で、かつ、チッ化ガリウム系化合物半導体とは異なる半導体からなり、ストライプ溝が形成された電流阻止層が設けられている。
【0011】前記活性層がIn_(x)Ga_(1-x)N(0<x<1)化合物半導体からなり、前記上部および下部クラッド層がAl_(z)Ga_(1-z)N(0<z<1)化合物半導体から構成されうる。
【0012】前記電流阻止層が、該電流阻止層周囲の前記クラッド層と反対の導電型または抵抗率の大きい層であることにより、該電流阻止層が有効に電流を阻止する層として働くので好ましい。
【0013】このばあい、前記電流阻止層の材料として、SiまたはGeが適切である。また、前記電流阻止層は、GaAs、GaP、InP、AlGaAs系またはAlGaP系のうちの少なくともいずれか1種の化合物半導体材料からなるものであってもよい。
【0014】ここにたとえばAlGaAs系またはAlGaP系とは、たとえばAlとGaの混晶比を種々変化させたAlおよびGaとAsまたはAlおよびGaとPとの化合物半導体の全体を意味する。
【0015】
【作用】本発明によれば、GaN系化合物半導体からなる半導体レーザのクラッド層中に、活性層で発生されるレーザ光を吸収する層が設けられ、該層にストライプを形成して電流阻止層としているため、ストライプの幅や電流阻止層と活性層との間隔などを調整することにより、発振光のノイズの制御(低ノイズ化)、横方向の光の広がり制御およびキンク、縦モードの制御を容易に行える半導体レーザを設計することができる。
【0016】
【実施例】つぎに、本発明の半導体レーザを図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】図1は、本発明の半導体レーザの一実施例を示す断面説明図である。図1において、サファイア(Al_(2)O_(3)単結晶)などからなる基板1の上に、たとえばn型のGaNからなるバッファ層2が2?5μm程度、n型のAl_(z)Ga_(1-z)N(0<z<1、たとえばz=0.2)からなる下部クラッド層3が0.1?0.3μm程度、ノンドープまたはn型もしくはp型のIn_(x)Ga_(1-x)N(0<x<1、たとえばx=0.15)からなる活性層4が0.05?0.1μm程度、たとえばp型のAl_(z)Ga_(1-z)Nからなる上部第1クラッド層5が0.1?0.3μm程度、n型のSiからなる電流阻止層6が0.2?0.5μm程度、p型Al_(z)Ga_(1-z)Nからなる上部第2クラッド層7が0.5?2μm程度、p型のGaNからなるコンタクト層8が0.3?2μm程度それぞれ順次積層され、かつ、その積層体の表面にAuなどからなる上部電極9、およびその積層体の一部において表面から下部クラッド層3またはバッファ層2が露出する位置までエッチングされ、下部電極10が取りつけられている。また、電流阻止層6は、一部ストライプ状にエッチングで取り除かれて開口を有し、活性層に至る電流のための電流路を形成している。これらの各半導体層は、有機金属気相成長(以下、MOCVDという)法によって積層され、その積層工程の途中に電流阻止層6のエッチング工程が設けられている。基板1がサファイアなどの絶縁基板ではなく、半導体基板のばあいは、積層体の一部をエッチングしなくても裏面に下部電極を設けることができる。
【0018】本発明は電流注入領域を規制するため、ストライプ溝が形成された電流阻止層6を活性層4で発生する光を吸収する材料、たとえばGaN系化合物半導体とは異なるSiで構成し、電流注入領域を規制するための層としての機能のほか、活性層4で発生する光を吸収して活性層の横方向(ストライプ領域の外側)での屈折率差を設けて屈折率導波構造とする機能を併せ有していることに特徴がある。
【0019】電流阻止層6としては活性層4で発生する光を吸収する材料、すなわちバンドギャップエネルギーが活性層4の材料より小さく、かつ、屈折率が活性層4の材料より大きい材料が選定される。その例としては前述のSiのほかに、Ge、GaAs、GaP、InP、AlGaAs系、AlGaP系などを使用することができる。GaN系化合物半導体層の中に設けられる電流阻止層は本来GaN系材料であることが格子整合の点から好ましいが、前記バンドギャップエネルギーを満たす材料としては前述のようにInの組成比を増やす必要があり、膜質のよい半導体層がえられない。そこで本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、GaN系化合物半導体とは異なるが、Inの組成比が大きいGaN系化合物半導体よりクラッド層としてのAl_(z)Ga_(1-z)Nと格子整合のよいIV族半導体Si、GeやGaAs系、GaP系(GaPのほか、Gaの一部がAlなど他のIII族元素と置換したものを含む)、InP系の化合物半導体を用いることにより活性層の光を吸収し、膜質のよい半導体層がえられ高特性の半導体レーザがえられることを見出した。
【0020】クラッド層中にSiやGeからなる半導体層を形成するには、MOCVD装置で炉内温度を500?1000℃にし、導入ガスをSiH_(4)またはGeH_(4)などとドーパントのPH_(3)などに代えて気相反応させることにより単結晶層を成長させることができる。またGaAsやGaPを成長させるには、Gaの原料ガスとともにAsの原料ガスであるターシャリブチルアルシン(TBA)、Pの原料ガスであるターシャルブチルホスフィン(以下、TBPという)などを導入することにより同様にGaAsやGaPなどの単結晶層を成長させることができる。
【0021】本発明の半導体レーザによれば、電流阻止層6が光吸収材料からなっているため、電流阻止層6のストライプの幅Wおよび電流阻止層6と活性層4との間隔tの両方が半導体レーザを設計する上でのパラメータとして用いられており、たとえば、tを1μm以上と大きくすると電流注入領域が制御される構造(利得導波モード)がえられ、ノイズに強い半導体レーザとなる。また、tを0.1μm以下と小さくすると、屈折率が制御される構造(屈折率導波モード)がえられ、キンクベルが高くなる。一方で、Wを小さくして射出されるレーザ光の広がり角度が大きなものをうることも、Wを大きくしてその広がり角度の小さなものをうることもできる。たとえば、Wが2μmなら広がり角度は15°程度、Wが4μmなら広がり角度が9°程度となるが、この広がり角度9°のレーザ光は、一般に広く用いられている。
【0022】なお、本実施例においては、電流阻止層を上部クラッド層中に設ける構造としたが、下部クラッド層中に設けることも可能である。
【0023】また前記実施例では、バッファ層2、コンタクト層8としてGaN、クラッド層3、5、7にAl_(z)Ga_(1-z)N、活性層4にIn_(x)Ga_(1-x)Nを用いたが、活性層4がクラッド層3、5よりバンドギャップエネルギーが小さく、かつ、屈折率が大きい材料で電流阻止層6のバンドギャップエネルギーが前述の関係を満たせば、一般式Al_(r)Ga_(s)In_(1-r-s)N(0≦r<1、0<s≦1、0<r+s≦1)として表わされる化合物半導体の組成比を変えた材料を用いることができる。さらに前記一般式のNの一部または全部がPおよび/またはAsと置換したものでもよい。」
(2)図1からは、上部第1クラッド層5上に開口を有する電流阻止層6が積層され、前記開口において上部第1クラッド層5と接続するとともに前記電流阻止層6を覆う上部第2クラッド層7が積層された構造が見てとれる。

これらを総合すると、引用刊行物1には、
「基板の上に、n型のAl_(z)Ga_(1-z)N(0<z<1、たとえばz=0.2)からなる下部クラッド層、ノンドープまたはn型もしくはp型のIn_(x)Ga_(1-x)N(0<x<1、たとえばx=0.15)からなる活性層、p型のAl_(z)Ga_(1-z)Nからなり0.1?0.3μm程度の厚さの上部第1クラッド層、n型の単結晶Siからなり、ストライプ状の開口を有する電流阻止層、前記開口において上部第1クラッド層と接続するとともに前記電流阻止層を覆う、p型Al_(z)Ga_(1-z)Nからなる上部第2クラッド層が順次積層されており、
活性層は、下部クラッド層及び上部第1クラッド層よりバンドギャップエネルギーが小さく、かつ、屈折率が大きく、
電流阻止層は、電流注入領域を規制するための層としての機能のほか、活性層で発生する光を吸収して活性層の横方向(ストライプ領域の外側)での屈折率差を設けて屈折率導波構造とする機能を併せ有し、バンドギャップエネルギーが活性層の材料より小さく、かつ、屈折率が活性層の材料より大きい、
半導体レーザ。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

3.2.引用刊行物2
当審における拒絶理由通知に引用した、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平2-54591号公報(以下「引用刊行物2」という。)には,図とともに以下の事項が記載されている。
「〔従来の技術〕
第6図は・・・(略)・・・に示された従来の屈折率導波型半導体レーザ装置の一例を示す断面図である。
図において、1aはn型GaAs基板、2は約1μm厚のn型AlInP下クラッド層、3は約0.07μm厚のGaInP活性層、4は約1μm厚のp型AlInP上クラッド層、5aは約0.5μm厚のp型GaAs層、6aは約1μm厚のn型GaAsブロック層、7aは約3μm厚のp型GaAsコンタクト層、8は約0.5μm厚のn型GaAsバッファ層である。
なお、p型AlInP上クラッド層4はエッチングにより図に示すようなリッジ(Ridge)構造をなしている。
また、その他の各層2?4,5a?7aおよび8はいずれもMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法により形成される。
従来の屈折率導波型半導体レーザ装置は上記のように構成されるが、この構造においては導波路部(リッジ部分)以外では上クラッド層4は薄く、しかもブロック層6aの禁制帯幅は、活性層3および上クラッド層4より小さいため、上クラッド層4よりしみ出た光は、ブロック層6aに吸収される。したがって、導波路部分よりもその他の部分における屈折率は実効的に減少し、光は屈折率の高い導波路部分に閉じ込められる。この結果、基板1aとコンタクト層7a間に順バイヤスを印加し、活性層3に注入されたキャリア(正孔と電子)の再結合により発光が生じる際、レーザビームの横方向の広がりが制限されることになる。
〔発明が解決しようとする課題〕
上記に示すような屈折率導波型半導体レーザ装置は、熱抵抗の高いAlGaInP系材料により構成されているため、レーザ動作時の放熱が悪く動作電流が上がり発熱量が増加するため、しきい値電流の低減および高信顆性を実現し難いなどの問題点があった。
この発明は、上記のような問題点を解消するためになされたもので、レーザの熱抵抗を大幅に低減させ、低しきい値電流、高信頼性の半導体レーザ装置を得ることを目的とする。
〔課題を解決するための手段〕
この発明に係る半導体レーザは、半導体レーザの電流ブロック層に非晶質半導体または多結晶シリコンを用い、埋込み層に非晶質半導体を用い、さらにコンタクト層に多結晶シリコンを用いて構成したものである。
〔作用〕
この発明における半導体レーザは、化合物半導体に比して熱抵抗の低い非晶質半導体および多結晶シリコンを用いて半導体レーザを構成したことから、レーザの熱抵抗が大幅に減少する。
〔実施例〕
第1図はこの発明の一実施例を示す半導体レーザの断面図である。この図で、第6図と同一符号は同一構成部分を示すものであり、6bはアンドープa-Siまたはn型a-Siからなる電流ブロック層で、このブロック層6bは、プラズマCVD法、熱CVD法、スパッタリング法などにより形成し、約1μmの厚さとする。7bは約1μm厚のp型多結晶Siからなるコンタクト層であり、熱CVD法などにより形成する。・・・(略)・・・。
従来例では、電流ブロック層には高濃度にドーピングした化合物半導体を用い、少数キャリアの拡散長を短くすることによりLDのターン・オン現象を防ぐなどの方法がとられてきたが、この発明では、キャリア濃度制御などの困難さが回避されるのみならず、より優れた電流ブロック効果が期待できる。多結晶Siは、抵抗率を10^(-3)?10^(-4)Ωcmまで下げることが可能なため、コンタクト層として充分に使用し得る。従来、化合物半導体により構成されていた箇所を、a-Si、多結晶Siで構成することにより、熱抵抗を減少できるため、電流狭窄効果、放電効果の優れた低しきい値電流、高い信頼性のLDを実現できる。」(1頁左下欄16行-2頁右下欄5行)

4.対比
本願発明と引用発明とを以下に対比する。
(1)引用発明の、「基板」、「ノンドープまたはn型もしくはp型のIn_(x)Ga_(1-x)N(0<x<1、たとえばx=0.15)からなる活性層」、「『n型のAl_(z)Ga_(1-z)N(0<z<1、たとえばz=0.2)からなる下部クラッド層』及び『p型のAl_(z)Ga_(1-z)Nからなり0.1?0.3μm程度の厚さの上部第1クラッド層』」、「電流注入領域」、「活性層の横方向(ストライプ領域の外側)」及び「半導体レーザ」は、それぞれ、本願発明の「基体」、「『III-V族窒化物の材料で作られ』る『活性層』」、「一対のクラッド層」、「レーザー領域」、「レーザー領域の横方向外側」及び「半導体レーザーデバイス」に相当する。
(2)引用発明の「活性層」の「屈折率」は、本願発明の「第1の屈折率」に相当し、引用発明の「n型の単結晶Siからなり、ストライプ状の開口を有する電流阻止層」は、「屈折率が活性層よりも大きい」から、本願発明の「第1屈折率より高い第2屈折率の材料で形成された横導波層」に相当する。
(3)引用発明の「n型のAl_(z)Ga_(1-z)N(0<z<1、たとえばz=0.2)からなる下部クラッド層、ノンドープまたはn型もしくはp型のIn_(x)Ga_(1-x)N(0<x<1、たとえばx=0.15)からなる活性層、p型のAl_(z)Ga_(1-z)Nからなり0.1?0.3μm程度の厚さの上部第1クラッド層、n型の単結晶Siからなり、ストライプ状の開口を有する電流阻止層」は、「基板の上に」、「順次積層されて」なるから、本願発明の「基体上に形成した複数の隣接する半導体層」に相当する。
(4)引用発明の「下部クラッド層」、「活性層」及び「上部第1クラッド層」が、基体上に「順次積層」され、「活性層は、下部クラッド層及び上部第1クラッド層よりバンドギャップエネルギーが小さく、かつ、屈折率が大き」いことは、本願発明の「一対のクラッド層」が「基体の表面に直角の方向に光とキャリヤを閉じ込めるため前記活性層をサンドイッチ状にはさんでいる」ことに相当する。
(5)引用発明の「電流阻止層」は、活性層上の「0.1?0.3μm程度の厚さの上部第1クラッド層」上に積層されており、「バンドギャップエネルギーが活性層の材料より小さく、かつ、屈折率が活性層の材料より大き」く、「活性層で発生する光を吸収して活性層の横方向(ストライプ領域の外側)での屈折率差を設けて屈折率導波構造とする機能を併せ有」するものである。そして、この屈折率導波構造は、引用刊行物1の段落【0008】及び【0009】の記載からみて、レーザの横モードを安定させ、横方向の光の広がり制御を容易にするものであると認められるから、引用発明の「電流阻止層」は、本願発明の「基体表面に平行な方向において、前記レーザー領域を安定させるアウトカップリングを実現するように、前記レーザー領域の横方向外側にあって前記活性層に近接配置されて」なる構成を具備している、といえる。
(6)したがって、両者は、
「レーザー領域を有する半導体レーザーデバイスであって、
基体と、
前記基体上に形成した複数の隣接する半導体層とから成り、
前記半導体層が、
III-V族窒化物の材料で作られ、第1屈折率を有している活性層と、
前記基体の表面に直角の方向に光とキャリヤを閉じ込めるため前記活性層をサンドイッチ状にはさんでいる一対のクラッド層と、
前記第1屈折率より高い第2屈折率の材料で形成された横導波層とを包含し、
前記横導波層は、前記基体表面に平行な方向において、前記レーザー領域を安定させるアウトカップリングを実現するように、前記レーザー領域の横方向外側にあって前記活性層に近接配置されている、
半導体レーザーデバイス。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点:
横導波層が、本願発明では、「非結晶材料」で成るのに対し、引用発明では、単結晶Siで成る点。

5.判断
上記3.2.によると、引用刊行物2には、「上クラッド層4よりしみ出た光」が「ブロック層6aに吸収される」従来の屈折率導波型半導体レーザ装置において、「電流ブロック層に非晶質半導体または多結晶シリコンを用い」る技術が記載されているから、引用発明において、電流阻止層の材料として、単結晶Siに代えて非晶質半導体または多結晶シリコンを適用して上記相違点に係る本願発明の構成をなすことは、引用刊行物2の記載に基づいて、当業者が容易になし得たことである。

そして、本願発明が奏する効果は、引用発明及び引用刊行物2の記載から予想できた程度のものである。

6.むすび
したがって、本願発明は、引用刊行物1に記載された発明及び引用刊行物2の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-03-13 
結審通知日 2009-03-16 
審決日 2009-03-30 
出願番号 特願平9-221249
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 居島 一仁門田 かづよ  
特許庁審判長 稲積 義登
特許庁審判官 岩本 勉
吉野 公夫
発明の名称 損失導波型半導体レーザー  
代理人 大塚 文昭  
代理人 宍戸 嘉一  
代理人 小川 信夫  
代理人 中村 稔  

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