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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C23C
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C23C
管理番号 1202610
審判番号 不服2007-29315  
総通号数 118 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-10-29 
確定日 2009-08-19 
事件の表示 特願2003-340109「クリーニング用ツール」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 4月22日出願公開、特開2004-124260〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 [1]手続の経緯
本願は、平成15年9月30日(パリ優先権主張2002年9月30日、米国)の出願であって、平成18年12月7日付けで拒絶理由通知がなされ、平成19年6月12日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成18年12月7日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって、平成19年7月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成19年10月29日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成19年11月28日付けで手続補正書が提出されたものである。

[2]平成19年11月28日付け手続補正について
<結論>
上記手続補正を却下する。

<理由>
(2-1)補正の内容
上記手続補正は、特許請求の範囲の請求項1を、
「【請求項1】コーティング装置におけるアノードをクリーニングするためのツールであって、前記コーティング装置のコーティングされる部品を保持するために使用されるシャフトに前記ツールを連結するための手段と、アノードをクリーニングするための手段と、および前記クリーニング手段を駆動するための手段とを有してなり、前記駆動手段が前記連結手段に接続されており、および前記支持構造体に取り付けられた光源をさらに有してなる、ことを特徴とするツール。」と補正することを含むものである。

(2-2)補正の適否
上記請求項1についての補正は、補正前の請求項1に対して、「前記支持構造体に取付けられた光源をさらに有してな」るという事項を付加するものである。
そして、当該補正は、「コーティング装置におけるアノードをクリーニングするためのツール」が、「光源をさらに有してなる」ことを限定しようとするものと解されるから、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものに該当する。
そこで、上記補正後の請求項1に係る発明が、特許出願の際、独立して特許を受けられるものかどうかを検討すると、上記補正後の請求項1には、「前記支持構造体に取付けられた光源をさらに有してなる」という記載があるものの、他に「支持構造体」なる記載はないために、「コーティング装置におけるアノードをクリーニングするためのツール」において、「支持構造体」及び「光源」が、それ以外の構成要素と、どのような関係を有するのか不明であり、「ツール」全体としての構成を明確に把握できない。
よって、上記補正後の請求項1には、特許を受けようとする発明が明確に記載されておらず、補正後の請求項1に係る発明は、特許法第36条第6項第2号の規定により独立して特許を受けることができない。
したがって、補正後の請求項2-6に係る発明について検討するまでもなく、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

[3]本願発明
平成19年11月28日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願請求項1-8に係る発明は、平成19年6月12日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲1-8に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は以下のとおりである。

「【請求項1】コーティング装置におけるアノードをクリーニングするためのツールであって、前記コーティング装置のコーティングされる部品を保持するために使用されるシャフトに前記ツールを連結するための手段と、アノードをクリーニングするための手段と、および前記クリーニング手段を駆動するための手段とを有してなり、前記駆動手段が前記連結手段に接続されている、ことを特徴とするツール。」

[4]引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願日前に頒布された刊行物1(特開平5-179417号公報)には、以下の事項が記載されている。

(a)「【従来の技術】処理容器内でプラズマ溶射ガンにて被溶射物に溶射物をプラズマ溶射する図5に示すようなプラズマ溶射装置に於ては、…まず処理容器1内を真空引き後、不活性ガスを封入して溶射雰囲気を設定する。そして、処理容器1に隣接する副容器2のドア3を開け、ガイドレール15にガイドされた搬送装置5の先端部にこの副容器2内で被溶射物6を装着する。……その後、……搬送装置5を駆動し、被溶射物6を処理容器1内に搬送する。被溶射物6と溶射ガン7のノズル8が対向する位置に被溶射物6が搬送されたら……実際に溶射を行う。そして、溶射終了後、被溶射物6を処理容器1から副容器2に搬送し、…被溶射物6を取り出す。」(第2頁第1欄第27-46行)

(b)「次に、被溶射物6の搬送装置5を利用して溶射ガン7のノズル清掃方法の改善が可能な実施例2を図3……に従って説明する。……本実施例に於けるプラズマ溶射装置の構造は概ね従来のプラズマ溶射装置と同様であるが、搬送装置5の先端部にノズル清掃装置10を保持し得るようになっている。」(第3頁第3欄第47行-第4欄第3行)

(c)「被溶射物6に対する溶射処理が終了し、被溶射物6を取り出した後、……処理容器1内はプラズマ溶射雰囲気のまま副容器2内を大気圧にしてドア3を開け、搬送装置5を操作して所定の位置に定め、ノズル清掃装置10を搬送装置に保持させてからドア3を閉める。次に副容器2内を真空引きし、……所定圧力までの真空引き完了後、不活性ガスを封入して処理容器1内と同雰囲気とした後……、仕切り弁4を開けて……ノズル清掃装置10を保持した搬送装置を処理容器1の中心方向へ前進させ、ノズル8の中心直下にブラシ11の中心が一致する位置で停止する……。その後、溶射ガン7を垂下させ、ノズル8内面にブラシ11を当接及び回動させてノズル8内面を清掃する……。ノズル8内面を清掃完了後、ブラシ11の回動を停止し、溶射ガンを垂上させて所定の位置に戻し、搬送装置5を副容器2の方向へ後退させて所定の位置に定めてから……、仕切り弁4を閉めて……処理容器1内の溶射雰囲気を維持する。次に副容器2内を大気圧にしてからドア3を開け…、ノズル清掃装置10を抜脱する……。この後、……被溶射物6を搬送装置5に保持させ、再度溶射作業を開始する。……この方法により、処理容器1内をプラズマ溶射の雰囲気に保持した状態で溶射ガン7のノズル8内面を清掃することができ、……従来の溶射ガン7のノズル清掃方法に比較して、処理容器1内の大気開放、真空引き、不活性ガス封入に要する時間を短縮できる。」(第3頁第4欄第8-39行)

(d)図5には、シャフト状の搬送装置5の先端部に装着された被溶射物6が処理容器内に搬送され、溶射が行われる様子が示されている。

(e)図3には、シャフト状の搬送装置5の先端部に、ブラシ11とブラシを回動させる駆動ユニット12からなるノズル清浄装置10が、連結部材(番号なし)を介して連結され、該駆動ユニット12が連結部材に接続された状態で、処理容器内に搬送される様子が示されている。

[5]引用刊行物記載の発明
上記記載事項(b),(c),(e)によれば、プラズマ溶射装置における溶射ガンのノズル内面を清掃するための装置であって、シャフト状搬送装置に前記清掃装置を連結するための部材と、ブラシと、ブラシを回動させる駆動ユニットとを有してなり、前記駆動ユニットが前記連結部材に接続されている装置が記載されており、上記(a),(d)によれば、前記搬送装置は被溶射物を装着するために使用されるものであるから、引用刊行物には、
「プラズマ溶射装置における溶射ガンのノズル内面を清掃するための装置であって、前記プラズマ溶射装置の被溶射物を装着するために使用されるシャフト状搬送装置に前記清掃装置を連結するための部材と、ノズル内面を清掃するブラシと、前記ブラシを回動させる駆動ユニットとを有してなり、前記駆動ユニットが前記連結部材に接続されている装置。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

[6]対比・判断
本願発明1と引用発明とを対比すると、引用発明における「プラズマ溶射装置」、「清掃するための装置」、「被溶射物」、「装着」、「シャフト状搬送装置」、「連結するための部材」、「ブラシ」、「駆動ユニット」は、それぞれ、本願発明における「コーティング装置」、「クリーニングするためのツール」、「コーティングされる部品」、「保持」、「シャフト」、「連結するための手段」、「クリーニングするための手段」、「駆動するための手段」に相当するから、両者は、
「コーティング装置におけるクリーニングするためのツールであって、前記コーティング装置のコーティングされる部品を保持するために使用されるシャフトに前記ツールを連結するための手段と、クリーニングするための手段と、および前記クリーニング手段を駆動するための手段とを有してなり、前記駆動手段が前記連結手段に接続されている、ことを特徴とするツール。」である点で一致し、
クリーニングされるのが、本願発明ではアノードであるのに対して、引用発明ではプラズマ溶射ガンのノズル内面である点でのみ相違する。
そこで、上記相違点について検討すると、プラズマ溶射ガンにおいて、そのノズルがアノード(陽極)と一体になったものは、本出願優先日前周知であり(例えば、「溶射技術ハンドブック」日本溶射協会編、(株)新技術開発センター刊、1998年5月30日、第146頁、図3・34には、プラズマ溶射ガンのノズル部が陽極と一体に構成されていることが示されており、また、実開平4-131649号公報(原査定の拒絶の理由において引用)の図1にも、同様のことが示されている。)、これらアノード表面にも、当然付着物が生成し、クリーニングの必要性が生じることは明らかであるから、引用発明のクリーニングツールを、アノードのクリーニングツールに適用することに格別の困難性は認められず、クリーニングのための中断時間を減らすことができ、生産性を高められるという効果も刊行物記載事項および周知技術から予想される範囲内のことである。

[7]むすび
したがって、本願請求項1に係る発明は、引用刊行物に記載された発明および周知技術に基いて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そのため、本願請求項2-8に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-03-18 
結審通知日 2009-03-24 
審決日 2009-04-06 
出願番号 特願2003-340109(P2003-340109)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C23C)
P 1 8・ 575- Z (C23C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 市川 篤祢屋 健太郎日比野 隆治  
特許庁審判長 徳永 英男
特許庁審判官 鈴木 正紀
國方 康伸
発明の名称 クリーニング用ツール  
代理人 鈴木 正剛  

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