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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63B
管理番号 1202652
審判番号 不服2006-44  
総通号数 118 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-01-04 
確定日 2009-08-18 
事件の表示 特願2000-201165「ウエイト調整部材付きのアイアンタイプのゴルフクラブヘッド」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 2月13日出願公開、特開2001- 37929〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成12年 7月 3日(パリ条約による優先権主張1999年 7月 1日、米国)の出願であって、平成17年 9月 7日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として平成18年 1月 4日付けで本件審判請求がされるとともに、同月27日付けで明細書についての手続補正(以下、「本件補正」という。)がされたものである。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成18年 1月27日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正内容
本件補正後の【請求項1】?【請求項6】の記載は次のとおりである(下線部が補正により追加された箇所である。)。
「【請求項1】
アイアンタイプのゴルフクラブヘッドであり、
ゴルフボールが衝突するフロントフェースと、その背後のバックフェースと、ヒール部と、トウ部を有するボディと、
フロントフェースから後方に伸びてバックフェースに第1キャビティを形成する周囲重し部であり、ボディの上部に沿ってヒール部とトウ部間に伸びているトップレールと、ボディの下部に沿ってヒール部とトウ部間に伸びているソールを有する周囲重し部と、
ボディのヒール部付近の周囲重し部に連続する第1端部からトップレールとソールの間の第1キャビティ内を通ってボディのトウ部付近の周囲重し部に連続する第2端部に至るまで伸びて、第1キャビティ内に第2キャビティを形成する内壁と、
その第2キャビティに内に配置される重量調整部材を備えており、
前記内壁は、第1端部と第2端部の間で高さが変化しており、第2端部における高さが第1端部における高さよりも大きく形成されており、 第1端部と第2端部の略中間における内壁の高さが、第1端部と第2端部の略中間におけるソールの高さよりも小さく形成されており、 第1端部及び第2端部は、周囲重し部のソールに接続しているアイアンタイプのゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
前記内壁は、第1キャビティの底と一体的に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
重量調整部材が、異なる重さを持つ複数種類の重量調整部材のなかから選択されていることを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
アイアンタイプのゴルフクラブヘッドであり、
ゴルフボールが衝突するフロントフェースと、その背後のバックフェースと、ヒール部と、トウ部を有するボディと、
フロントフェースから後方に伸びてバックフェースに第1キャビティを形成する周囲重し部であり、ボディの上部に沿ってヒール部とトウ部間に伸びているトップレールと、ボディの下部に沿ってヒール部とトウ部間に伸びているソールを有する周囲重し部とを有するアイアンタイプのゴルフクラブヘッドにおいて、
ボディのヒール部付近の周囲重し部のソールに連続する第1端部からトップレールとソールの間の第1キャビティ内を通ってボディのトウ部付近の周囲重し部のソールに連続する第2端部に至るまで伸びて、第1キャビティ内に第2キャビティを形成しており、第1端部と第2端部の間で高さが変化しており、第2端部における高さが第1端部における高さよりも大きく、第1端部と第2端部の略中間における高さが第1端部と第2端部の略中間におけるソールの高さよりも小さい内壁と、
その第2キャビティに内に配置される重量調整部材が付加されたことを特徴とするアイアンタイプのゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
重量調整部材は、表面と裏面と側面を持ち、その側面にはその重量調整部材を一周する溝が形成されていることを特徴とする請求項4に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
重量調整部材は、裏面に接着剤が塗布された状態で第2キャビティ内に挿入されてボディに固定されており、余分の接着剤が前記溝に収容されていることを特徴とする請求項5に記載のゴルフクラブヘッド。」

2.補正の目的について
本件補正は、以下の補正事項からなる。
〈補正事項1〉補正前の請求項1?3を引用する請求項4、及び同請求項5?7を引用する請求項8に係る特定をそれぞれ補正前の請求項1又は請求項5に追加して、これら請求項4及び8を削除して、請求項5?7の番号を繰り上げて補正すること。
〈補正事項2〉
補正前の請求項1に記載されていた発明の構成事項である「第1キャビティ内に第2キャビティを形成する内壁」について、
「第1端部と第2端部の略中間における内壁の高さが、第1端部と第2端部の略中間におけるソールの高さよりも小さく形成されており、 第1端部及び第2端部は、周囲重し部のソールに接続している」との特定を補正後の請求項1に追加補正すること。
〈補正事項3〉
補正前の請求項5に記載されていた発明の構成事項である「内壁」について、
「第1端部と第2端部の略中間における高さが第1端部と第2端部の略中間におけるソールの高さよりも小さい」との特定を補正後の請求項4に追加補正すること。

補正事項1に係る補正前の請求項4及び8の削除は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号に規定される請求項の削除に該当する。
補正事項2及び補正事項3に係る追加補正は、いずれも請求項1及び5に記載されていた発明の構成事項である「内壁」について、更に構成上限定するものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるもの(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項の規定において準用する同法第126条第5項の規定)であるかについて以下に検討する。

3.独立特許要件の判断
3-1 引用刊行物
原査定において引用された、いずれも本願の優先権主張日前に頒布された刊行物には、以下に示すごとくの記載がある。

3-1-1 登録実用新案第3038925号公報(以下、「引用文献1」という。)
次のア?ウの記載が図示とともにある。

ア.【実用新案登録請求の範囲】
「【請求項1】 強度の高い合金材質をもって鋳造、ダイカスト、鍛造等の方法により製造されたゴルフクラブのヘッドにおける背部に一つ以上の凹槽(11)が形成され、この凹槽(11)は、背部に位置し、また、凹槽(11)の槽底は槽口の位置より低く構成され、これら凹槽(11)には、重り(2),振動吸収材料(3),嵌め板(4)が嵌め込まれていることを特徴とするゴルフクラブのヘッドの構造。
【請求項2】 凹槽(11)には、重り(2),振動吸収材料(3),嵌め板(4)のうち所望するものが嵌め込まれている請求項1記載のゴルフクラブのヘッドの構造。
【請求項3】 重り(2)の材質の比重は、ヘッド(1)の材質の比重より比較的大きい材料で形成されている請求項1あるいは請求項2記載のゴルフクラブのヘッドの構造。
【請求項4】 振動吸収材料(3)の材質の比重は、ヘッド(1)の材質の比重より比較的小さい材料で形成されている請求項1あるいは請求項2記載のゴルフクラブのヘッドの構造。
【請求項5】 クラブのヘッド(1)の凹槽(11)は各種の形状、幾何図形、規則または不規則な図形や形状にすることができるように構成されている請求項1あるいは請求項2記載のゴルフクラブのヘッドの構造。
【請求項6】 背部の凹槽(11)に、重り(2),振動吸収材料(3),嵌め板(4)を入れた後、その表面は透明な蓋(5)により封をするように構成されている請求項1あるいは請求項2記載のゴルフクラブのヘッドの構造。
【請求項7】 重り(2)に穴(21)を設け、この穴(21)に振動吸収材料(22)を入れるように構成されている請求項1あるいは請求項2記載のゴルフクラブのヘッドの構造。
【請求項8】 振動吸収材料(3)に穴を設け、この穴に重りを入れるように構成されている請求項1あるいは請求項2記載のゴルフクラブのヘッドの構造。」

段落【0003】「本考案は、従来の技術の有するこのような問題点に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、次のようなことのできるものを提供しようとするものである。
本考案の主要な目的は、ヘッドの重心の分配を調整することができ、また、ボールを打った振動を吸収することができ、嵌め板の美観効果を得ることができるものである。」

段落【0006】「【考案の実施の形態】
考案の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1が示す本考案の実施例において、ヘッド1はチタン,チタン合金,アルミニウム合金,亜鉛合金等の強度の高い合成材質をもって鋳造,ダイカスト,鍛造等の方法により製造されている。
ヘッド1の背部には水平面と平行または水平面より低い凹槽11が設けられ、凹槽11は各種の形状や幾何図形または各種の規則、不規則な図形や形状に設計することができる。
この凹槽11は、背部に位置し、また、凹槽11の槽底は槽口の位置より低く構成されている。
凹槽のヘッドのマージンの線に近い槽底は槽口より大きく形成され、凹槽には重り、振動吸収材料、嵌め板が嵌め込まれている。
この場合、凹槽には、重り、振動吸収材料、嵌め板のうち所望するものを嵌め込むことができる。
そして、凹槽11のヘッド1のマージンの線に近い槽底は槽口より大きく形成されているため、重り2,振動吸収材料3,嵌め板4などを嵌め込んだ際、脱落する問題はなくなる。」

前記段落【0003】に記載されているように、当該引用文献1に記載のゴルフクラブのヘッドは、ヘッドの重心分配を調整可能とすることを目的としている。
ここで扱うゴルフクラブについて、本願明細書中でアイアンタイプであるとの明記はないものの、第1図?第6図を参照するに、いわゆるアイアンタイプの形状が把握でき、また、段落【0006】に記載されているように、ヘッド1の背部には水平面と平行または水平面より低い凹槽11が設けられること、凹槽11は各種の形状や幾何図形または各種の規則、不規則な図形や形状に設計することが掲げられており、ウッドタイプでないことが窺えることからして、当該引用文献1に記載のゴルフクラブは主にアイアンタイプを想定したものといえる。
してみるに、当該引用文献1においては、アイアンヘッドの各部名称について、「フロントフェース」、「バックフェース」、「ヒール」、「トウ」、「ボディ」等の呼称が示されていないが、これらのアイアンヘッドの各部名称は、きわめて一般に用いられるものであることからして、当該引用文献1に記載の発明においても、この一般的名称からなる各部構造を特定し得るものと解される。
そして、アイアンヘッドを形成する周囲の縁取りともみえる輪郭構成は、アイアンヘッド体重量を有するものであるから、周囲重し部と呼称することに差し支えない。
また、前記周囲重し部により画成された凹槽部は凹み或いは収容部といえることから、キャビティとも称し得る。
さらに、凹槽内に収容される重りは、重量調整部材と称し得る。

よって、当該引用文献1には、以下の発明が記載されているといえる。
「アイアンタイプのゴルフクラブヘッドであり、
ゴルフボールが衝突するフロントフェースと、その背後のバックフェースと、ヒール部と、トウ部を有するボディと、
フロントフェースから後方に伸びてバックフェースにキャビティを形成する周囲重し部であり、ボディの上部に沿ってヒール部とトウ部間に伸びている周囲重し部と、ボディの下部に沿ってヒール部とトウ部間に伸びているソールを有する周囲重し部と、
ボディのヒール部付近の周囲重し部に連続する一方の端部からトップレールとソールの間のキャビティ内を通ってボディのトウ部付近の周囲重し部に連続する他方の端部に伸びて、前記キャビティ内に更に画成されたキャビティを形成する内壁と、
当該後者キャビティ内に配置される重量調整部材を備えている、
アイアンタイプのゴルフクラブヘッド。」
(以下、「引用文献1記載発明」という。)

3-1-2 特開平10-277186号公報(以下、「引用文献2」という。)
段落【0001】「【発明の属する技術分野】この発明はゴルフ用アイアンクラブの改良に関するもので、より具体的にはアイアンクラブのヘッド本体をチタンまたはチタン合金等の軽金属から形成するとともにヘッド本体の背面キャビティ部下方にこの軽金属よりも比重が重いウエイト材を埋設してなるゴルフ用アイアンクラブの改良に関するものである。」

段落【0002】「【従来の技術】従来ヘッド本体をチタン合金、純チタンまたはアルミニウムから形成しヘッド本体の後部キャビティの下方部にヘッド本体の材料より比重の大きいウエイト材、例えばベリリウム銅合金、銅合金、ステンレス鋼等のブロック片を埋設してなるゴルフ用アイアンクラブは公知となっている。」

段落【0003】「そしてこのクラブではヘッド全体の重心を下部後側に移してクラブを振り抜き易くし、高弾道にしてゴルフボールの飛距離を延ばすことができるといった低重心アイアンの効果を達成せんとするものである。」

段落【0004】「【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記アイアンクラブではウエイト材はヘッド本体の後部キャビティの下方部にヒール側からトー側にかけて広い範囲全体に亘って一個のブロック片として埋設されているため、ウエイト材の重心はその中央にあり、アイアンヘッドの重心はヘッド本体の下部中央となる。」

段落【0005】「ゴルフ用アイアンクラブはドライバーやフェアウェーウッドと異なり、クラブヘッドを地面に打ち込むようにスウィングするとボールが高く上がりバックスピンのきいた止まるボールを打つことができるので好ましいとされている。そして、このヘッドの打込の際にはヘッドのソールはその中心或いは中心よりも若干ヒール側から接地して振り抜かれるのが一般的で、この接地後にクラブヘッドはヒール側のシャフトを回転の中心としていわゆるヘッドが返って振り抜かれていくことになる。」

段落【0006】「従来のアイアン用ゴルフクラブは低重心を中心として開発されているが、低重心に加えてヘッドの返りの点を重視したアイアンクラブの開発がなされていなかったのが実状である。」

段落【0007】「本発明は上記のような問題点に鑑みてなされたもので、その目的はヘッド本体の重心は従来同様にヘッド本体の下方中心に設定する一方、ヘッド本体に埋設するウエイト材の位置をヒール側とトー側に分けることによってヘッドの打込み時におけるヘッドの返りをよくして振り抜き易さと、ボール打撃のための慣性モーメントを大きくすることのできるゴルフ用アイアンクラブを提供するにある。」

上記記載、特に段落【0003】、【0006】、【0007】からみて、当該引用文献2には、低重心化したアイアンクラブの改良に際して、低重心に加えて、高弾道にしてゴルフボールの飛距離を伸ばすために、重心位置をヘッド本体の下方中心に設定することが検討されていることが、記載されている。

3-1-3 特開平10-258143号公報(以下、「引用文献3」という。)
段落【0001】「【発明の属する技術分野】この発明は、ウェイトを有するチタンまたはチタン合金製のゴルフクラブヘッドに関する。」

段落【0002】「【従来の技術】チタンまたはチタン合金製のゴルフクラブヘッドは、軽量であることが特徴である。しかし、特にアイアンクラブ等においては、ヘッド本体だけでは重心の位置が適切でない。そこで、ヘッドの低重心化、重心位置のヘッド後方化(目的はスイートスポットの拡大等)を図るため、ヘッド本体にウェイト(バックウェイトまたは重り)を装備させている。これらのウェイトとその製造方法については、次のような種々の提案がなされている。」

段落【0003】「特開昭63-153076号公報には、チタンまたはチタン合金製のヘッド本体の背面部に、それより比重の大きいバックウェイトを設けたゴルフクラブヘッドが提案されている。バックウェイトとしては、銅、黄銅、ステンレス鋼等が用いられ、これらの金属は、ヘッド本体の背面部に凹所(凹み)を設けそこに溶融状態で鋳込むようになっている。また、ヘッド本体を中空状とし、この中空部に鉛を鋳込む方法も提案されている。」

段落【0004】「特開平5-285239号公報には、チタンまたはチタン合金製のヘッド本体の下部に、ソールを形成するような形状のウェイトを設けたゴルフクラブヘッドが提案されている。ウェイトには、ベリリウム銅合金またはステンレス鋼等が用いられ、ウェイトとヘッド本体は蟻溝で嵌合させ、さらにネジにより固定している。」

段落【0005】「特開平6-205859号公報には、チタン合金、カーボン繊維強化プラスチック等の外殻構造からなるアイアンまたはウッド用のヘッド本体の中空部に、ホーゼル部のシャフト挿入孔から溶融金属や樹脂を注入して固化した質量体(ウェイト)を、配置するゴルフ用クラブヘッドが提案されている。溶融金属には、鉛、真鍮、銅、Be-CuあるいはZn等の「高比重の低融点金属」が用いられている。また、液状合成樹脂を複数の鉛などの金属粒と共にヘッド本体の中空部に注入し、硬化させることにより質量体を配置している。」

段落【0006】「また、「素形材」1997、1号、51頁には、チタンアイアン用バックメタルとして、タングステンの焼結素材の製造方法が報告されている。この技術では、タングステンの焼結による形状変化を予め想定することにより、切削加工の切削量を減らし、コスト低減を図るものである。」

段落【0012】「【課題を解決するための手段】この発明は、ヘッド本体の底部あるいは後方に形成された凹部に、MoあるいはMoより比重の大きい重金属粉末が混入された熱硬化性樹脂が充填され硬化しているゴルフクラブヘッドである。」

段落【0013】「この発明では、MoあるいはMoより比重の大きい重金属粉末を用いているので、重金属粉末の比重はMoと同等の10.2あるいはそれ以上となる。従って、この重金属粉末を混入した樹脂についても、全体の比重が大幅に増加できる。この重金属粉末を混入した樹脂の充填作業は、室温で行うことが可能なので、充填量、充填部の仕上等の品質を高めることが可能であり、作業性自体も向上する。」

段落【0014】「充填した樹脂は熱硬化性樹脂なので、加熱により容易にヘッドの凹部に固着する。この場合の加熱温度は百数十℃と低いので、チタン等の金属製ヘッドの変形は全く起こらない。従って、ゴルフクラブヘッドの精度が向上する。また、この程度の温度では、高温作業等の問題とは無縁であることは言うまでもない。」

段落【0015】「なお、ヘッド本体に凹部を形成する位置は、ヘッド全体を低重心化する場合はヘッド本体の底部とするのがよい。また、スイートスポットの拡大等のため重心位置を後方へ移動する場合はヘッド本体の後方とすればよい。このように、凹部を形成する位置は、目的に応じて適宜選択することができる。」

上記記載からみて、当該引用文献3には、低重心化したアイアンクラブを製造するに際して、低重心に加えてスイートスポットの拡大等のため重心位置を後方へ移動する場合は、ヘッド本体に凹部を形成する位置をヘッド本体の後方とすればよいこと、また、このように凹部を形成する場合に、目的に応じて適宜の位置が選択されることが、記載されている。

3-1-4 実願昭58-84814号(実開昭59-190268号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献4」という。)
1頁19?20行「この考案はゴルフクラブのアイアンヘッドの改良に関する。」

3頁13行?4頁9行「この考案のゴルフクラブのアイアンヘッドは、ヘッド本体の背面側略下半部にそのヒール側寄りからトウ側寄りに列配してそれぞれ縦リブにより区分された3つの凹部を形成し、その中間凹部は空洞として残し、その両側の凹部には前記ヘッド本体より比重の大きい重金属を埋設し、且つそれら各凹所外面を閉塞する蓋体を固着した構成で、重金属がヘッド本体の略下半部内に埋設されていることからソウル幅を広くしなくても低重心となり、且つその重金属が中間空洞を挟んでヒール側寄りとトウ側寄りとに相離間して埋設されていることで、重心を中心とする回転の慣性モーメントが大となってスウィートスポットエリアが広くなり、しかも各背面凹部が蓋体で覆われて、外観的には昔のコンベンショナルな形態のものと略同様となせるものである。」

また、4頁10行以降の一実施例に係る説明を参照しつつ、添付された第1図?第3図を検討するに、凹部3A、3B、3Cは、第2図における断面A、B、Cのいずれにおいても、その上側の凹段部5が存在する壁が、ソウル1e側の壁よりも低い高さを呈していることが把握できる。
また、前記断面AからCに向かい、前記凹段部5が存在する壁は、その高さを順次増加するものとされていることも把握できる。

3-2 本願補正発明と引用文献1記載発明との対比
引用文献1記載発明の「周囲重し部」のうち、上部側の「ボディの上部に沿ってヒール部とトウ部間に伸びている」部位は、アイアンヘッド上部側に存在する部位である点において、本願補正発明の「トップレール」に相当する。
引用文献1記載発明の「キャビティ」のうち、フロントフェースから後方に伸びてバックフェースに形成される「キャビティ」は、本願補正発明の「第1キャビティ」に相当する。
引用文献1記載発明の「前記キャビティ内に更に画成されたキャビティ」は、前記「キャビティ」の中に画成されるものであるから、本願補正発明の「第2キャビティ」に相当する。
また、引用文献1記載発明の「ボディのヒール部付近の周囲重し部に連続する一方の端部からトップレールとソールの間のキャビティ内を通ってボディのトウ部付近の周囲重し部に連続する他方の端部に伸びて、前記キャビティ内に更に画成されたキャビティを形成する内壁」は、前記対応関係を前提として、本願補正発明の「ボディのヒール部付近の周囲重し部に連続する第1端部からトップレールとソールの間の第1キャビティ内を通ってボディのトウ部付近の周囲重し部に連続する第2端部に伸びて、第1キャビティ内に第2キャビティを形成する内壁」に相当する。

してみると、本願補正発明と引用文献1記載発明とは、以下の点で一致する一方、以下の2点で相違している。

《一致点》
「アイアンタイプのゴルフクラブヘッドであり、
ゴルフボールが衝突するフロントフェースと、その背後のバックフェースと、ヒール部と、トウ部を有するボディと、
フロントフェースから後方に伸びてバックフェースにキャビティを形成する周囲重し部であり、ボディの上部に沿ってヒール部とトウ部間に伸びている周囲重し部と、ボディの下部に沿ってヒール部とトウ部間に伸びているソールを有する周囲重し部と、
ボディのヒール部付近の周囲重し部に連続する一方の端部からトップレールとソールの間のキャビティ内を通ってボディのトウ部付近の周囲重し部に連続する他方の端部に伸びて、前記キャビティ内に更に画成されたキャビティを形成する内壁と、
当該後者キャビティ内に配置される重量調整部材を備えている、
アイアンタイプのゴルフクラブヘッド。」

《相違点1》
「ボディのヒール部付近の周囲重し部に連続する一方の端部からトップレールとソールの間のキャビティ内を通ってボディのトウ部付近の周囲重し部に連続する他方の端部に伸びて、前記キャビティ内に更に画成されたキャビティを形成する内壁」に関して、
本願補正発明においては、「ボディのヒール部付近の周囲重し部に連続する第1端部からトップレールとソールの間の第1キャビティ内を通ってボディのトウ部付近の周囲重し部に連続する第2端部に至るまで伸びて、第1キャビティ内に第2キャビティを形成する内壁」と特定されており、当該「内壁」が、「ボディのヒール部付近の周囲重し部に連続する第1端部からトップレールとソールの間の第1キャビティ内を通ってボディのトウ部付近の周囲重し部に連続する第2端部に至るまで伸び」と特定されると共に、「第1端部及び第2端部は、周囲重し部のソールに接続している」とも特定されているのに対して、
引用文献1記載発明では、このような特定を有しない点。

《相違点2》
前記「内壁」に関して、
本願補正発明においては、「前記内壁は、第1端部と第2端部の間で高さが変化しており、第2端部における高さが第1端部における高さよりも大きく形成されており、 第1端部と第2端部の略中間における内壁の高さが、第1端部と第2端部の略中間におけるソールの高さよりも小さく形成されており、」と特定されているのに対して、
引用文献1記載発明では、このような特定を有しない点。

3-3 相違点に係る判断
3-3-1 相違点1について
前記引用文献2には、低重心化したアイアンクラブの改良に際して、低重心に加えて、高弾道にしてゴルフボールの飛距離を伸ばすために、重心位置をヘッド本体の下方中心に設定することが検討されていることが、記載されている。
また、前記引用文献3には、低重心化したアイアンクラブを製造するに際して、低重心に加えてスイートスポットの拡大等のため重心位置を後方へ移動する場合は、ヘッド本体に凹部を形成する位置をヘッド本体の後方とすればよいこと、また、このように凹部を形成する場合に、目的に応じて適宜の位置が選択されることが、記載されている。
してみるに、引用文献1記載発明に係る内壁を形成するに際して、アイアンヘッドに求められる機能を達成する上で、その機能に対応する重心調整部材の位置に応じた各種の形態が考えられるのであり、この際に、重量調整部材たる重りをいかなる位置に置くかは、設計に応じて適宜な位置が選択されること、そして、その際に、重りを収容する凹槽を形成する内壁を、周囲重し部の適宜の場所に接続するものとすることは、適宜になし得る事項である。
よって、これらアイアンヘッドに求められる機能に照らして、
「ボディのヒール部付近の周囲重し部に連続する第1端部からトップレールとソールの間の第1キャビティ内を通ってボディのトウ部付近の周囲重し部に連続する第2端部に至るまで伸びて、第1キャビティ内に第2キャビティを形成する内壁」とし、当該「内壁」が、「ボディのヒール部付近の周囲重し部に連続する第1端部からトップレールとソールの間の第1キャビティ内を通ってボディのトウ部付近の周囲重し部に連続する第2端部に至るまで伸び」、かつ、「第1端部及び第2端部は、周囲重し部のソールに接続している」ものとすることは、当業者にとり、むしろ設定事項に属するものといえる。

3-3-2 相違点2について
前記引用文献4には、その第2図におけるアイアンヘッドの断面A、B、Cのいずれにおいても、その上側の凹段部5が存在する壁が、ソウル1e側の壁よりも低い高さを呈している構成が把握できる。
なるほど、アイアンヘッドとしての断面形状には各種のものが存在しており、当該引用文献4に記載のものが唯一のものではない。
しかしながら、当該引用文献4のようにアイアンヘッドのトップ-ソール断面がいわば台形様のものは多々見受けられるものである。
そして、このような台形様の断面形状を有するアイアンヘッドに重りを収容する場合には、その断面形状に合わせて収容されることを考慮すれば、相違点2に係るごとくに、内壁の高さを「第1端部と第2端部の略中間における内壁の高さが、第1端部と第2端部の略中間におけるソールの高さよりも小さく形成」するように構成することになるのは道理である。
また、前記引用文献3に明記はないものの、第3図を参照すれば、第2図における断面AからCに向かい、前記凹段部5が存在する壁は、その高さを順次増加するものとされていることが把握でき、前記と同様、トウ側を大きく、ヒール側を小さくした形状のアイアンヘッドに重りを収容する場合を想定すれば、相違点2に係るごとくに、「前記内壁は、第1端部と第2端部の間で高さが変化しており、第2端部における高さが第1端部における高さよりも大きく形成され」た構成をなすことは必然といえる。

3-4 まとめ
以上のとおりであるから、相違点1、2に係る特定事項は、アイアンヘッドに求められる機能を得るべく当業者が適宜に採用可能なものであって、それらを寄せ集めたことにより得られる作用効果も当業者であれば容易に推察可能なものであって、格別なものとはいえない。

3-5 独立特許要件についてのむすび
よって、本件補正発明は、引用文献1?4の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることが出来ないものである。

4.補正却下の決定のむすび
以上のとおり、本件補正は平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項の規定において準用する同法第126条第5項の規定に違反しているから、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により、本件補正は却下されなければならない。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本件審判請求についての当審の判断
1.本願発明の認定
本件補正が却下されたから、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成17年 8月11日付け手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載されたとおりの次のものと認める。
「【請求項1】
アイアンタイプのゴルフクラブヘッドであり、
ゴルフボールが衝突するフロントフェースと、その背後のバックフェースと、ヒール部と、トウ部を有するボディと、
フロントフェースから後方に伸びてバックフェースに第1キャビティを形成する周囲重し部であり、ボディの上部に沿ってヒール部とトウ部間に伸びているトップレールと、ボディの下部に沿ってヒール部とトウ部間に伸びているソールを有する周囲重し部と、
ボディのヒール部付近の周囲重し部に連続する第1端部からトップレールとソールの間の第1キャビティ内を通ってボディのトウ部付近の周囲重し部に連続する第2端部に至るまで伸びて、第1キャビティ内に第2キャビティを形成する内壁と、
その第2キャビティに内に配置される重量調整部材を備えており、
前記内壁は、第1端部と第2端部の間で高さが変化しており、第2端部における高さが第1端部における高さよりも大きいアイアンタイプのゴルフクラブヘッド。」

2.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された各引用文献には、前記「 第2 補正の却下の決定」の「3.独立特許要件の判断」の「3-1 引用刊行物」に摘示した記載が図示とともにある。

3.対比・判断
本願発明は、上記「第2 補正の却下の決定」で検討した本件補正発明の第2キャビティを形成する「内壁」について、
「第1端部と第2端部の略中間における内壁の高さが、第1端部と第2端部の略中間におけるソールの高さよりも小さく形成されており、 第1端部及び第2端部は、周囲重し部のソールに接続している」との特定事項を省いたものである。
そうすると、実質的に本願発明の発明を特定する事項を全て含み、さらに他の発明を特定する事項を付加したものに相当する本件補正発明が、上記「第2 4.」に記載したとおり、引用文献1?4の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである以上、本願発明も、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1?4の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-03-18 
結審通知日 2009-03-24 
審決日 2009-03-27 
出願番号 特願2000-201165(P2000-201165)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63B)
P 1 8・ 575- Z (A63B)
P 1 8・ 121- Z (A63B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西村 仁志  
特許庁審判長 酒井 進
特許庁審判官 菅野 芳男
上田 正樹
発明の名称 ウエイト調整部材付きのアイアンタイプのゴルフクラブヘッド  
代理人 特許業務法人快友国際特許事務所  
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