ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A01G |
---|---|
管理番号 | 1202668 |
審判番号 | 不服2007-26055 |
総通号数 | 118 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-10-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-09-21 |
確定日 | 2009-08-17 |
事件の表示 | 特願2002-231070「緑化工法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 3月 4日出願公開,特開2004- 65148〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は,平成14年8月8日の出願であって,平成19年8月22日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年9月21日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,同年10月19日受付けで手続補正がなされ,その後,当審において平成20年12月22日付けで前置報告の内容に基づいた審尋がなされ,これに対し,平成21年2月20日受付けで回答書が提出され,さらに,当審において同年3月27日付けで平成19年10月19日受付けの手続補正についての補正の却下の決定がなされるとともに,同日付けで拒絶理由の通知がなされ,これに対し,同年5月29日受付けで手続補正がなされたものである。 2.本願発明 本願の請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成21年5月29日受付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定される,次のとおりのものと認められる。 (本願発明) 「施工地の採取表土9?15容量%を用い、これにコンポストまたはバーク堆肥を殺菌処理した殺菌堆肥21?35容量%、現地発生土50?70容量%を混合して100容量%とし、この混合物に殺菌堆肥1g当り10^(8)?10^(9)個の枯草菌と緑化補助材を加えてなる組成物を用い、これを施工面に客土した生育基盤において微生物を増殖させて緑化基盤を形成する緑化工法。」 3.引用刊行物 (1)当審の拒絶理由で引用され,本願の出願日前に頒布された刊行物である特開平8-85954号公報(以下「刊行物1」という。)には,図面とともに,次の事項が記載されている。 (1a)「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、災害や開発行為などにより裸地化した山腹斜面や道路法面などに対し単に植物を生育させるだけでなく、従来そこにあった表土を復元し現地周辺と一体となった緑化復元及び生態系の早期回復を目的とした自然復元のための表土復元緑化基盤材および表土復元緑化工法に関するものである。」 (1b)「【0010】 【課題を解決するための手段】本発明においては上記の問題点を解決するために、粘土を含む土壌と、バーク堆肥などの有機質資材とを、容積比でほゞ1:1の割合いで配合した緑化基盤材をつくり、これを肥料、侵食防止剤及び種子と共に、施工時に一旦泥状化し、吹付用ノズル内で団粒形成剤と空気とを混合し空気を媒介として泥状化した基盤材を高次団粒反応させながら吹付ける工法(特公平2-26932号公報)に於いて、施工地及びその周辺の表層土を容積比で5%以下の割合で前記泥状化した基盤材に対し配合して混合した緑化基盤材をつくり、これを施工面へ吹付けることを提案した。」 (1c)「【0017】 【実施例】本願発明の第1実施例について説明する。本実施例は、先願(特公平2-26932号公報)の実施例で用いた下記の組成の緑化基盤材に、泥状化した緑化基盤材の容積に対し5%の割合いで、本発明による工法の施工地周辺の表土を混合し前記先願特公平2-26932号公報に示された方法に基いて、図4に示す型式の吹き付けノズル10を用いて吹き付け施工を実施した。 (1d)「【0022】このようにして施工面へ付着した緑化基盤材は、大小様々な空隙を無数に形成した状態で安定し大きな空隙には空気を、又小さな空隙には水分を保つことの出来る植物の生育基盤としてだけでなく、微生物や小動物の棲み家として理想的な形、即ち団粒構造を形成している。」 (1e)「【0033】試験の結果現地表土を緑化基盤に混入することにより現地周辺より飛来する周辺植物の侵入が加速されることが判明し、更に第2実施例の如く現地表土に含まれた特定の菌を活性材を加えて旺盛にすることにより一層その効果が促進される結果となった。」 (1f)「【0034】このことは以下の様な作用が本発明にあるものと考える。今回試験に供した現地表土はヤシャブシやヤマハンノキなどのカバノキ科が自生する林地の表土を用いたがこの種の植物が生育する表土には根粒菌を含む放線菌が多いことが知られている。緑化基盤材にこの表土を一部混入することでこの放線菌が繁殖し飛来し発芽したカバノキ類の生育を促進し成立する確率をあげたものと考える。 (1g)「【0036】今回の試験では仮りにカバノキ類などの自生する林地の表土を用いその効果を確認したがその他の樹木の自生する林地にはその樹木を生育させるために好ましい種々の菌が生息しているものと考える。その林地に適した土壌菌を新たに造成する緑化基盤に繁殖させることにより、より現地周辺と一体となった緑化の復元更に生態系の復元がより確実となり得るものと確信する。」 (1h)「【0037】 【発明の効果】・・・ (1)・・・施工面の保水、保肥、通気性が良好となり、且つ、新たに造成する施工地及びその周辺の表層土内に、現地の土質に適合して生息している土壌菌を有効に繁殖させることが出来、現地周辺と一体化した緑化の復元及び生態系の復元並びに保全がより確実となる。 (2)現地の土壌を最小限に利用することにより、自然の破壊を防止し、その再生を容易にし、且つ、労力、コストの面の負担も軽減される。」 上記記載事項(1a)ないし(1h)及び図面の記載,並びに当業者の技術常識によれば,上記刊行物1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 (引用発明) 「粘土を含む土壌と,バーク堆肥などの有機質資材とを,容積比でほゞ1:1の割合いで配合し,これに肥料,侵食防止剤及び種子を加えて泥状化し,泥状化した基盤材に,施工地及びその周辺の表層土を容積比で5%以下の割合で配合して混合した緑化基盤材をつくり,これを施工面へ吹付け,その施工地に適した土壌菌を新たに造成する緑化基盤に繁殖させる,自然復元のための表土復元緑化工法。」 4.対比 本願発明と引用発明を対比すると,引用発明の「肥料,侵食防止剤及び種子」は本願発明の「緑化補助材」に,以下同様に,「施工地及びその周辺の表層土」は「施工地の採取表土」に,「緑化基盤材」は「組成物」に,それぞれ相当する。 また,引用発明の「これ(組成物)を施工面へ吹付け,その施工地に適した土壌菌を新たに造成する緑化基盤に繁殖させる,自然復元のための表土復元緑化工法」は,組成物を施工面に吹付けて客土し,この客土された組成物中で土壌菌等の微生物を増殖させて緑化基盤を形成する方法であるから,本願発明の「これ(組成物)を施工面に客土した生育基盤において微生物を増殖させて緑化基盤を形成する緑化工法」に相当する。 また,引用発明の「バーク堆肥などの有機質資材」と本願発明の「コンポストまたはバーク堆肥を殺菌処理した殺菌堆肥」とは,「堆肥成分」である点で共通している。 また,引用発明の「粘土を含む土壌」と本願発明の「現地発生土」とは,「基材成分」である点で共通している。 そうすると,本願発明と引用発明とは, 「施工地の採取表土を用い,これに堆肥成分,基材成分,緑化補助材を加えてなる組成物を用い,これを施工面に客土した生育基盤において微生物を増殖させて緑化基盤を形成する緑化工法。」である点で一致し,次の点で相違する。 <相違点1> 堆肥成分が,本願発明は「コンポストまたはバーク堆肥を殺菌処理した殺菌堆肥」であるのに対し,引用発明は「バーク堆肥などの有機質資材」であって,殺菌したものかどうか不明である点。 <相違点2> 基材成分が,本願発明は「現地発生土」であるのに対し,引用発明は「粘土を含む土壌」であり,現地発生土かどうか不明である点。 <相違点3> 組成物が,本願発明は「殺菌堆肥1g当り10^(8)?10^(9)個の枯草菌」を加えたものであるのに対し,引用発明は,枯草菌を加えたものかどうか不明である点。 <相違点4> 本願発明は「施工地の採取表土9?15容量%」,「堆肥成分21?35容量%」及び「基材成分50?70容量%」であり,「混合して100容量%」としたものであるのに対し,引用発明は,「堆肥成分,基材成分」とを容積比で1:1の割合とし,「施工地の採取表土が容積比で5%以下」としたものである点。 5.判断 まず,相違点1について検討する。堆肥を施用するにあたり,有害微生物や有害種子の影響を排除するために,殺菌した堆肥を用いる技術は,当審の拒絶理由で提示した特開平11-240784号公報(特に【0012】の「・・・このような加熱・発酵,乾燥滅菌により・・・病原菌等を発芽不能化・死滅させ、有用な堆肥を短時間で取得することができる・・・」という記載等参照。),及び,特開平10-262460号公報(特に【0013】の「・・・なお、堆肥、動物性糞尿等の多くの微生物を含有するものの場合は、苗木に共生させた菌への障害が懸念されるために、蒸気殺菌等により殺菌したものを使用するのが好ましい。・・・」という記載等参照。)に見られるように,周知技術である。そうすると,有害微生物や有害種子の影響を排除するために,引用発明の緑化工法に用いる堆肥成分として,上記周知技術のように殺菌したものを用いることは,当業者が容易になし得たことである。 次に,相違点2について検討する。緑化工法において,施工面に客土する基材として,現地発生土を用いることは,当審の拒絶理由で提示した特開平6-237606号公報(特に【0012】の「・・・用土としては現地発生土を使用し・・・」という記載等参照。)に見られるように,周知技術である。引用発明の緑化工法に用いる基材成分として,上記周知な現地発生土を採用することは,当業者が容易になし得たことである。 次に,相違点3について検討する。土壌の活性化のために,培地1gあたり10^(8)?10^(9)個程度に増殖させた枯草菌を,土壌に添加することは,例えば,特開平6-32708号公報(特に【0010】の「ここで、種菌として使用する微生物としては、枯草菌,放線菌・・・」及び【0012】の「・・・かかる資材の菌数は、1グラム当たり10^(8)?10^(10)個に達する。このようにして得られた微生物資材は、・・・緑農地の土壌改良剤,作物連作障害防止剤,土壌病原菌抑止剤等への利用も可能である。」という記載等参照。),及び特開昭63-260888号公報(特に4頁左下欄下8?13行の「多孔質珪酸カルシウム粉砕体・・・に,バチルス菌を含む微生物集合体(生菌70億個/グラムのうち枯草菌が50億個/グラム,その他4種の分解酵素を含む)を含むコンボザイム(登録商標)5kgを添加し,充分に混合したものを肥料として用いる。」という記載等参照。)に見られるように周知技術である。そうすると,引用発明において,土壌の活性化のために,培地となる殺菌堆肥1gあたり10^(8)?10^(9)個程度の枯草菌を配合することは,当業者が容易になし得たことである。 最後に,相違点4について検討する。施工地の採取表土,堆肥成分,基材成分の配合割合は,施工地の気象条件,施工地の植生の種類,表土や堆肥や基材の種類,表土や基材の肥沃の程度等に応じて調整されるべきものであって,表土の微生物を増殖させて現地植生に近い植生を回復するという目的を損なわない範囲において,当業者が適宜調整し得た事項である。 施工地の採取表土の配合割合について,引用発明は,施工地及びその周辺の表層土の土壌菌を利用して,その施工地に適した土壌菌を新たに造成する緑化基盤に繁殖させ,自然復元のための表土復元緑化を行うことを目的としているものの,施工能率や多年生植物への配慮から,できるだけ施工地の採取表土を少量とした結果,「施工地の採取表土が容積比で5%以下」となるようにしている。しかしながら,施工地の採取表土の配合割合が多いほど,その施工地に適した土壌菌が多く含まれるようになることは自明なことである。そうすると,施工能率や多年生植物への配慮よりも,施工地に適した土壌菌の増殖を優先しようと思えば,施工地の採取表土の配合割合を増やすことを妨げる事情は存在しないから,引用発明において,施工地の採取表土の配合割合を9?15容量%程度に増やすことは,当業者が容易になし得たことである。 また,堆肥成分及び基材成分の配合割合についてみても,引用発明は容積比で1:1の割合としているが,これらの配合割合は,まさに,表土や基材の肥沃の程度等に応じて調整されるべきものであるから,堆肥成分を多少減らして,「堆肥成分21?35容量%」及び「基材成分50?70容量%」とすることも,当業者が容易になし得たことである。 そして,本願発明における,施工地の採取表土,堆肥成分,基材成分の配合割合の数値の臨界的意義についてみても,明細書の表2,表5,及び図1ないし4において,例えば施工地の採取表土の容量%が9%未満や15%より大きい場合であっても十分な発芽生育状況を示す試験結果を多数見いだすことができることから,本願発明における施工地の採取表土,堆肥成分,基材成分の配合割合の数値が,臨界的意義を有するものとはいえない。 そうすると,引用発明において,施工地の採取表土,堆肥成分,基材成分の配合割合を,「施工地の採取表土9?15容量%」,「堆肥成分21?35容量%」及び「基材成分50?70容量%」を「混合して100容量%」とすることは,当業者が適宜なし得たことであるといわざるを得ない。 また,本願発明の奏する効果についても,引用発明及び周知技術から当業者が容易に予測できるものであり,格別なものではない。 よって,本願発明は,引用発明及び周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 6.むすび 以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-06-25 |
結審通知日 | 2009-06-26 |
審決日 | 2009-07-07 |
出願番号 | 特願2002-231070(P2002-231070) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(A01G)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 南澤 弘明 |
特許庁審判長 |
山口 由木 |
特許庁審判官 |
伊波 猛 関根 裕 |
発明の名称 | 緑化工法 |
代理人 | 奥山 尚一 |
代理人 | 有原 幸一 |
代理人 | 有原 幸一 |
代理人 | 奥山 尚一 |
代理人 | 有原 幸一 |
代理人 | 松島 鉄男 |
代理人 | 松島 鉄男 |
代理人 | 奥山 尚男 |
代理人 | 有原 幸一 |
代理人 | 奥山 尚一 |
代理人 | 奥山 尚一 |
代理人 | 松島 鉄男 |
代理人 | 松島 鉄男 |
代理人 | 奥山 尚男 |
代理人 | 奥山 尚男 |
代理人 | 奥山 尚男 |