ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
---|---|
管理番号 | 1202722 |
審判番号 | 不服2007-20602 |
総通号数 | 118 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-10-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-07-25 |
確定日 | 2009-08-20 |
事件の表示 | 平成 8年特許願第290318号「ICカード」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 9月 5日出願公開、特開平 9-231113〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成8年10月31日の出願(優先権主張平成7年12月22日)の出願であって、平成19年6月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月25日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年8月24日付けで手続補正がなされたものである。 第2 本願発明について 1.本願発明 本願の請求項1乃至3に係る発明は、平成19年8月24日付けの手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 「 【請求項1】 アプリケーションで使用されるデータを識別情報とともに格納する作業用基礎ファイルとしての透過構造ファイルを有する記憶手段と、 外部からの1つの命令により指定されたデータを、上書きすべきか書き込むべきか判断して前記透過構造ファイルに書き込む書込手段と を備えたICカードにおいて、 前記命令により指定された識別情報と同一内容の識別情報を前記記憶手段内において検索する検索手段を有し、 前記検索手段が該当する前記識別情報を発見した場合には、前記書込手段は、前記発見された識別情報に関連づけられているデータに前記指定されたデータを上書きし、 前記検索手段が該当する前記識別情報を発見しなかった場合には、前記書込手段は、前記透過構造ファイルの空き領域に前記指定されたデータを書き込むこと を特徴とするICカード。」 2.引用例1 原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された、寄本 義一,ICカードの標準化の軌跡と今後の方向性を探る,CardWave,日本,株式会社シーメディア,1995年8月10日,第8巻,第9号,第49頁?第51頁(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載又は図示されている。 (ア) 「はじめに ICカード(ここではクレジットカード形状にマイクロプロセッサとメモリICチップ等を組み込んだものを言う・PCメモリカードとは原理が異なる)の10年越しの標準化は、既にカードの物理特性、接点の位置と機能、電気特性、通信プロトコルが規格化されていたが、本年になってコマンド機能が合意され、これでICカードの全ての基本部分である国際標準規格化(図-1参照)が終わった。」 (第49頁左欄第1行乃至11行) (イ) 「本解説では、本標準の中で特に分かりにくいと言われている通信プロトコルとコマンド機能に絞って以下のように5回に分けて紹介しようと思う。 第1回 電気特性とATR、通信プロトコル 第2回 ICカード内のファイルの種類と機能 第3回 端末とICカード間の伝送文の基本 第4回 コマンド機能1 ・ICカードのファイルの選択方法 ・パスワードチェック ・読取り/書込み機能コマンド 第5回 コマンド機能2 ・認証機能コマンド ・その他のコマンドと纏め」 (第49頁左欄第16乃至31行) (ウ) 「2 端末とICカード間の通信 2.1 アンサートゥリセット(ATR) 端末とICカードは、どちらが主・従であるかの区別は規格書に書かれていない(将来ICカードからコマンド発する事ができる様にとドイツが提案したのでこの様になった。)が、一般的には端末からのコマンド(命令)によってICカードからレスポンス(応答)すると考えた方が分かりやすい。」 (第49頁中欄第29行から同頁右欄第2行) 〔なお、「コマンド発する事ができる」は、「コマンドを発する事ができる」の誤記であると認められる。〕 (エ) 「図-1 国際標準規格 ISO/IEC 7816シリーズ ISO/IEC10373」には、 「ホストコンピュータ等」枠内にある「アプリケーション」枠から伸びる点線、当該点線から更に延びる「APDU」が付された矢印と、「端末」枠内にある「インターフェース」枠内に描かれた点線とが結ばれていること、 「ICカード」枠から伸びる「C7 入力/出力データ TPDU」が付された矢印と、「端末」枠内にある「インターフェース」枠内に描かれた点線とが結ばれていること、 が図示されている。 (第50頁 図-1) (オ) 「図-1 国際標準規格 ISO/IEC 7816シリーズ ISO/IEC10373」には、 「ICカード内部ファイルの構成例」枠内に、 「マスターファイル」(MF)枠が複数の「デェディケーティドファイル」(DF1、DF2)枠と実線で結ばれていること、 「デェディケーティドファイル」(DF1)枠が複数の「デェディケーティドファイル」(DF3,DF4)枠と実線で結ばれていること、 「デェディケーティドファイル」(DF2、DF3,DF4)枠が一又は複数の「エレメンタリファイル」(EF01,EF02)を意味する枠と実線で結ばれていること、 「エレメンタリファイル」(EF01)を意味する枠が「トランスペアレントファイル」が付された「名前/住所/電話/・・・」枠、「レコードファイル」が付された枠、又は「サイクリックレコードファイル」が付された枠と点線で結ばれていること、 が図示されている。 (第50頁 図-1) (カ) 「2.2 通信プロトコル さて前述のように現在2種類の通信プロトコルがある。1つは、キャラクタ伝送プロトコル(T=0)でもう一つはブロック伝送プロトコル(T=1)である。・・・(中略)・・・ 例えば32バイト(32文字)のデータをICカード内の既に選択ずみのファイルに書き込む場合の伝送時間を計算する。ICカードへコマンドを伝送する場合一般に以下の伝送構成となる。 NAD(自アドレス/相手アドレス)+PCB(プロトコル・コントロールバト)+LEN(CLA以下、ECB直前までのデータ長)+CLA(コマンドクラス)+INS(コマンド機能指定)+P1(コマンド機能指定1)+P2(コマンド機能規定2)+P3(インフォメーション長)+データ32バイト+EDC=41バイト」 (第50頁中欄第1行から同頁右欄第7行) 〔なお、「PCB(プロトコル・コントロールバト)」は、「PCB(プロトコル・コントロールバイト)」の誤記であると認められる。〕 以上の引用例1の記載によれば、引用例1には以下の事項が開示されていると認められる。 (a) 引用例1の上記(ア)の「ICカード(ここではクレジットカード形状にマイクロプロセッサとメモリICチップ等を組み込んだものを言う・PCメモリカードとは原理が異なる)」という記載から、 引用例1には、 「ICチップと、 マイクロプロセッサと を備えたICカード」 が開示されていると認められる。 (b) 上記(a)の 「ICチップと、 マイクロプロセッサと を備えたICカード」 という開示、 引用例1の上記(オ)から、「ICカード」には「名前/住所/電話/・・・」に関するデータが格納された「トランスペアレントファイル」が「エレメンタリファイル」として格納されていることは明らかであること、 引用例1の上記(エ)から、「ホストコンピュータ等」に備えられた「アプリケーション」が「端末」に備えられた「インターフェース」を介して「ICカード」と通信可能となっていることは明らかであることから、 (なお、「アプリケーション」と「ICカード」が所定の処理を行うために通信を行うのであるから、「ICカード」が「アプリケーション」で使用されるデータを有していることも明らかである。このことは、後述する「3.引用例2」の(ウ)及び(エ)にあるような、ISO/IEC7816シリーズという周知の国際標準規格からも明らかである。) 引用例1には、「アプリケーションで使用されるデータを格納するエレメンタリファイルとしてのトランスペアレントファイルを有するメモリICチップ」が開示されていると認められる。 (c) 上記(a)の 「ICチップと、 マイクロプロセッサと を備えたICカード」 という開示、 上記(b)の「アプリケーションで使用されるデータを格納するエレメンタリファイルとしてのトランスペアレントファイルを有するメモリICチップ」という開示、 引用例1の上記(ウ)の「端末とICカードは、どちらが主・従であるかの区別は規格書に書かれていない(将来ICカードからコマンド発する事ができる様にとドイツが提案したのでこの様になった。)が、一般的には端末からのコマンド(命令)によってICカードからレスポンス(応答)すると考えた方が分かりやすい。」という記載、 (ICカードがマイクロプロセッサを備えていることを併せて鑑みれば、端末から送られるコマンドをICカードが処理していることは明らかである。このことは、後述する「3.引用例2」の(ウ)及び(エ)にあるような、ISO/IEC7816シリーズという周知の国際標準規格からも明らかである。) 引用例1の上記(イ)の 「本解説では、本標準の中で特に分かりにくいと言われている通信プロトコルとコマンド機能に絞って以下のように5回に分けて紹介しようと思う。 ・・・(中略)・・・ 第4回 コマンド機能1 ・ICカードのファイルの選択方法 ・パスワードチェック ・読取り/書込み機能コマンド」 という記載、 (なお、「読取り/書込み機能コマンド」によって、コマンドによって指定されたデータが書き込まれることは明らかである。また、書き込み先として「トランスペアレントファイル」が含まれることも明らかである。) 引用例1の上記(カ)の 「さて前述のように現在2種類の通信プロトコルがある。1つは、キャラクタ伝送プロトコル(T=0)でもう一つはブロック伝送プロトコル(T=1)である。・・・(中略)・・・例えば32バイト(32文字)のデータをICカード内の既に選択ずみのファイルに書き込む場合の伝送時間を計算する。ICカードへコマンドを伝送する場合一般に以下の伝送構成となる。 NAD(自アドレス/相手アドレス)+PCB(プロトコル・コントロールバト)+LEN(CLA以下、ECB直前までのデータ長)+CLA(コマンドクラス)+INS(コマンド機能指定)+P1(コマンド機能指定1)+P2(コマンド機能規定2)+P3(インフォメーション長)+データ32バイト+EDC=41バイト」 という記載から、 (なお、データの書き込みが、「NAD+PCB+LEN+CLA+INS+P1+P2+P3+データ+EDC」という1つのコマンドによって行われていることは明らかである。このことは、後述する「3.引用例2」の(ア)及び(イ)にあるような、ISO/IEC7816シリーズという周知の国際標準規格からも明らかである。) 引用例1には、 「外部からの1つのコマンドにより指定されたデータを前記トランスペアレントファイルに書き込む機能を備えたマイクロプロセッサ」 が開示されていると認められる。 以上の引用例1の記載によれば、引用例1には下記の発明(以下、「引用例1発明」という。)が開示されていると認められる。 「アプリケーションで使用されるデータを格納するエレメンタリファイルとしてのトランスペアレントファイルを有するメモリICチップと、 外部からの1つのコマンドにより指定されたデータを前記トランスペアレントファイルに書き込む機能を備えたマイクロプロセッサと を備えたICカード。」 3.引用例2 原査定の拒絶の理由に引用文献2(引用例1の「第1回 電気特性とATR、通信プロトコル」に続く「第2回 ICカード内のファイルの種類と機能」に対応する。)として引用された、寄本 義一,ICカードの標準化の軌跡と今後の方向性を探る(第二回),CardWave,日本,株式会社シーメディア,1995年 9月10日,第8巻,第10号,第32頁?第34頁(以下、「引用例2」という。)には、次の事項が記載又は図示されている。 (ア) 「図-5 コマンドAPDU(プロトコルには依存しない)」には、 「NAD:1バイト」枠、 「PCB:1バイト」枠、 「LEN:1バイト」枠、 「INF(INFORMATION):0?254バイト」枠、 「EDC」枠、 が連結されていることが図示されている。 また、 「CLS」枠、 「INS」枠、 「P1」枠、 「P2」枠、 「(Lcフィールド)(データフィールド)(Leフィールド)」枠、 が連結され、当該連結された枠と「INF(INFORMATION):0?254バイト」枠とが、2本の実線によって結び付けられていることが図示されている。 (第32頁 図-5) (イ) 「図-5 コマンドAPDU(プロトコルには依存しない)」には、 「NAD:1バイト」枠が、「ノードアドレス指定(自身のアドレス/相手のアドレスの順に送信)」枠と矢印によって結び付けられていること、 「PCB:1バイト」枠が、「プロトコル制御バイト(転送ブロックタイプの指定)Iブロック:データ転送用・・・(後略)・・・」枠と矢印によって結び付けられていること、 「LEN:1バイト」枠が、「情報フィールド(INFORMATION)の長さ:0?254バイト」枠と矢印によって結び付けられていること、 「INF(INFORMATION):0?254バイト」枠が、「情報フィールド(INFORMATION)存在しないこともある。Iブロックのデータ・Sブロック以外の制御・状態信号を伝送する」枠と矢印によって結び付けられていること、 「EDC」枠が、「誤り検出符号(ERROR DETECTION CODE):NADからINFの最後のデータ迄の水平パリティチェックを行う」枠と矢印によって結び付けられていること、 が図示されている。 更に、 「CLS」枠が、「クラスバイト:1バイト、ISO/IEC7816-4に準拠したコマンド体系がどうかの区別、・・・(後略)・・・」枠と矢印によって結び付けられていること、 「INS」枠が、「インストラクションバイト:1バイト、コマンド機能の指定」枠と矢印によって結び付けられていること、 「P1」枠及び「P2」枠が、「コマンド機能の詳細規定に使用する」枠と矢印によって結び付けられていること、 「(Lcフィールド)」文字列が、「データフィールドにデータがある場合にその長さを示す。」枠と矢印によって結び付けられていること、 「(データフィールド)」文字列が、「データ:最大長254-5=249(Leが無い場合)」枠と矢印によって結び付けられていること、 「(Leフィールド)」文字列が、「コマンドに対する応答がある場合の期待データバイト数」枠と矢印によって結び付けられていること、 が図示されている。 (第32頁 図-5) (ウ) 「3.2.1 T=0によるデータ読みだし手順例 T=0の場合、少なくとも2組みの命令/応答が必要となる。 1)ホストコンピュータ等にあるアプリケーションプログラムで32バイトのデータを読み出す命令をインターフェースデバイスに伝送する(コマンドAPDU)。 2)インターフェースデバイスのデータ数カウンタに読み出すデータ数32バイトをセットし、同コマンドをインターフェースデバイスからICカードに伝送する(コマンドTPDU)。 3)READ命令を正しく受けとったとの応答(プロシジャーバイト:ACKの様なもの)がICカードから応答される。 ICカードは、カード内でREAD命令の実行準備をする。 4)適当なタイミング(ICカード内のデータ読み出し準備処理時間が経過した後)をとってインターフェースデバイスからICカードに読取データを取り出す命令(GET RESPONSEコマンド)を出す(コマンドTPDU)。 5)ICカードからインターフェースデバイスへ伝送されてくる読み出しデータ(レスポンスTPDU)を1バイト受け取る毎にデータ数カウンタの値から1を減じ、0となるまでICカードからのデータを受け取り続ける。カウンタが0になると読取終了。 6)読み出したデータをホストに伝送する(レスポンスAPDU)。」 (第32頁左欄最終行から同頁右欄第13行) (エ) 「3.2.2 T=1によるデータの読みだし手順例 1組みの命令/応答で処理が可能。 1) ホストコンピュータ等にあるアプリケーションプログラムで32バイトのデータを読み出す命令をインターフェースデバイスに伝送する(コマンドADPU)。 2)インターフェースデバイスからICカードに32バイト読み出す命令(READ BINARY)を伝送する(コマンドTPDU:コマンドADPUと同じフォーマット)。 3)ICカードからの32バイトのデータが読み出される(レスポンスTPDU)。読取終了。 4)読み出したデータをホストに伝送する(レスポンスADPU:TPDUと同じフォーマット)。」 (第32頁右欄第14行から第33頁左欄第13行) 4.引用例3 原査定の拒絶の理由に引用文献3として引用された、佐原 道子,都市小屋ゆうのICカード研究会85 掟破りのICカード,CardWave,日本,株式会社シーメディア,1995年10月15日,第8巻,第8号,第42頁?第45頁(以下、「引用例3」という。)には、次の事項が記載又は図示されている。 (ア) 「掟破りのICカードとは、「掟」すなわち「標準規格」ということになり、そのままの意味では「標準規格破りのICカード」ということになるが、ICカード(ISO/IEC7816シリーズに準拠したマイクロプロセッサとメモリをクレジットカード(厚さ0.76mm)にも埋め込んだもの)のさまざまな制限された要件により、多くの人が抱いていたICカードに対する夢がだんだん萎んでしまったように思えるこの頃である。 今回は将来のICカード像をもう一度探ってみようと思い、標準化作業に従事されている凸版印刷(株)金融・証券企画センターICカード担当の寄本義一課長に講師をお願いした。国際会議の標準化にあたっては、さまざまな人のさまざまな考え方を聞き、時にはその考えに驚き感心することもあったが、「標準化」ということでは受け入れ難いものもあったという。今回はそれらの話題もふまえて、お話をお願いした。」 (第42頁左欄第1乃至22行) 〔なお、「クレジットカード(厚さ0.76mm)にも埋め込んだもの」は、「クレジットカード(厚さ0.76mm)に埋め込んだもの」の誤記であると認められる。〕 (イ) 「表2 従来型のICカードのデータファイル MF:マスターファイル DF:デレリケーティッドファイル EF:エレメンタリーファイル W:データを書き込む人 R:データを読む人」 (第43頁 表2) (ウ) 「従来のICカードと異なる点 ファイル管理セキュリティは、従来のICカードと同じで、異なるのは1つのファイルにさまざまなDFが入り、そのDFが下記のようになっていることである。 ┏━━━━━━━━┯━━━━━━━━━━━┯━━━━━━━━━━┓ ┃ T(Tag) │ L(Length) │ V(Value) ┃ ┗━━━━━━━━┻━━━━━━━━━━━┷━━━━━━━━━━┛ T:データエレメント識別コード L:V(データ)の長さ V:データ 各アプリケーションにおいて、住所、氏名などの同じようなデータが使用されることがある。これらのデータはMFの配下のEFに記憶され、通常誰でも参照できるようにセキュリティフリーの共通ファイルである。」 (第43頁右欄第8乃至23行) (エ) 「しかし、その共通データの中でも特定の部分については、定められた者以外は参照できないという場合には、ファイル分けをして同様なデータ群を複数持つ必要があり、従来のファイル記憶方式では困難になる。 それを解決する方式のカードがバーチャルメモリICカードである。」 (第43頁右欄第24乃至31行) (オ) 「データ全てを一つの大部屋DFのEF内に記憶させる。また個々のファイルには、実データではなく、IDのリストのみが入っている。必要なデータのIDを外部(端末)から指定すると、そのIDの実データが入っている大部屋から該当するデータを持ってきて応答する。この操作はICカード内のオペレーション・システムにより、自動的に操作されるために、見かけ上は個々のファイルにそれらのデータが実際に記憶されているように見える。」 (第43頁右欄第32乃至43行) (カ) 「バーチャルメモリICカードの長所 ・・・(中略)・・・ ・ISO/IEC7816-6(共通データ要素)のアクセスに最適」 (第44頁左欄第6乃至17行) (キ) 「バーチャルメモリICカードの短所 ・データを追加する時に、すでに同じデータがあるかどうかをチェックする必要がある。 ・・・(後略)・・・」 (第44頁左欄第18行から同頁中欄第2行) 以上の引用例3の記載によれば、引用例3には下記の発明(以下、「引用例3発明」という。)が開示されていると認められる。 「データVを識別コードTとともに格納するファイルを有するメモリと、 マイクロプロセッサと を備えた、ISO/IEC7816に最適なバーチャルメモリICカードであって、 データを追加する時に、すでに同じデータがあるかどうかをチェックする必要があること を特徴とするバーチャルメモリICカード。」 5.対比 本願発明と引用例1発明とを対比する。 (1) 本願明細書の 「 【0006】 また、基礎ファイルは、データの書き込み形式から透過構造(トランスペアレント)のファイルとレコード構造のファイルとの2種類に分類される。 透過構造のファイルは、1又は2以上のデータ単位が連続的に書き込まれたファイルである。透過構造のファイルにデータ単位の書き込み又は読み出しを行う場合には、書き込むべきオフセットアドレスと当該データ単位の長さとを指定して行う。 ・・・(後略)・・・」 という記載(すなわち、「透過構造(トランスペアレント)のファイル」という記載がある。)から、 引用例1発明の「トランスペアレントファイル」は、 本願発明の「透過構造ファイル」に相当する。 (2) 本願明細書の 「 【0005】 図9は、図8に示すEEPROM15内の階層構造を示すブロック図である。本実施形態のEEPROMは、3つの階層から構成される。3つの階層とは、第1層のMF(Master File) 、第2層のDF(Dedicated File)及び第3層のEF(Elementary File)である。 MFは、データメモリ全体のファイルである。MFは、各アプリケーション(サービス)に共通したデータを格納するためのファイルであり、例えば、このICカード10の所有者の氏名、住所、電話番号などの情報が記録される。DFは、専用ファイルであり、アプリケーションごとにDFの設定がなされている。EFは、基礎ファイルであり、CPUがICカードを管理・制御する際に解釈実行するデータを格納するIEFと、アプリケーションで使用するデータを格納するWEF(作業用基礎ファイル)の2種類がある。」 という記載、 及び、 引用例1の上記(オ)から、「ICカード」には「名前/住所/電話/・・・」に関するデータが格納された「トランスペアレントファイル」が「エレメンタリファイル」として格納されていることは明らかであることから、 (すなわち、「エレメンタリファイル」として格納されている「トランスペアレントファイル」が有する「名前/住所/電話/・・・」が、本願明細書段落【0005】でいうところの「ICカードを管理・制御する際に解釈実行するデータを格納するIEF」ではなく「アプリケーションで使用するデータを格納するWEF(作業用基礎ファイル)」を開示していることは明らかである。) 引用例1発明の「エレメンタリファイル」は、 本願発明の「作業用基礎ファイル」に相当する。 (3) 引用例1発明の「メモリICチップ」及び「コマンド」は、それぞれ、 本願発明の「記憶手段」及び「命令」に相当する。 (4) 引用例1発明の「アプリケーションで使用されるデータを格納するエレメンタリファイルとしてのトランスペアレントファイルを有するメモリICチップ」と、 本願発明の「アプリケーションで使用されるデータを識別情報とともに格納する作業用基礎ファイルとしての透過構造ファイルを有する記憶手段」とは、 「アプリケーションで使用されるデータを格納する作業用基礎ファイルとしての透過構造ファイルを有する記憶手段」という点で一致し、 本願発明では、アプリケーションで使用されるデータを「識別情報とともに」格納するのに対し、引用例1発明では、アプリケーションで使用されるデータを「識別情報とともに」格納していない点、 で相違する。 (5) 引用例1発明の「外部からの1つのコマンドにより指定されたデータを前記トランスペアレントファイルに書き込む機能を備えたマイクロプロセッサ」と、 本願発明の「外部からの1つの命令により指定されたデータを、上書きすべきか書き込むべきか判断して前記透過構造ファイルに書き込む書込手段」とは、 「外部からの1つの命令により指定されたデータを前記透過構造ファイルに書き込む書込手段」という点で一致し、 本願発明では、書込手段が「上書きすべきか書き込むべきか判断」するのに対し、引用例1発明では、書込手段が「上書きすべきか書き込むべきか判断」するのか不明である点、 で相違する。 (6) 以上のことから、本願発明と引用例1発明とは、 「アプリケーションで使用されるデータを識別情報とともに格納する作業用基礎ファイルとしての透過構造ファイルを有する記憶手段と、 外部からの1つの命令により指定されたデータを前記透過構造ファイルに書き込む書込手段と を備えたICカード。」 という点で一致し、 (相違点1) 本願発明では、アプリケーションで使用されるデータを「識別情報とともに」格納するのに対し、引用例1発明では、アプリケーションで使用されるデータを「識別情報とともに」格納していない点、 (相違点2) 本願発明では、書込手段が「上書きすべきか書き込むべきか判断」するのに対し、引用例1発明では、書込手段が「上書きすべきか書き込むべきか判断」するのか不明である点、 そのため、 本願発明では、 「前記命令により指定された識別情報と同一内容の識別情報を前記記憶手段内において検索する検索手段を有し、 前記検索手段が該当する前記識別情報を発見した場合には、前記書込手段は、前記発見された識別情報に関連づけられているデータに前記指定されたデータを上書きし、 前記検索手段が該当する前記識別情報を発見しなかった場合には、前記書込手段は、前記透過構造ファイルの空き領域に前記指定されたデータを書き込む」のに対し、 引用例1発明では、当該検索手段を備えているのかも不明である点、 で相違する。 6.判断 (1)相違点1について データが格納されているファイルに対して読み出しや書き込みを円滑に行えるように、識別コードやファイル名などの識別情報をファイルに対して付すことは、情報処理分野における周知技術である。 一方、国際規格ISO/IEC7816が適用可能なICカードという点で、引用例1発明と共通している引用例3発明、すなわち、 「データVを識別コードTとともに格納するファイルを有するメモリと、 マイクロプロセッサと を備えた、ISO/IEC7816に最適なバーチャルメモリICカードであって、 データを追加する時に、すでに同じデータがあるかどうかをチェックする必要があること を特徴とするバーチャルメモリICカード。」 には、「データVを識別コードTとともに格納するファイル」を用いることが開示されている。 すなわち、前記した、 データが格納されているファイルに対して読み出しや書き込みを円滑に行えるように、識別コードやファイル名などの識別情報をファイルに対して付す、 という情報処理分野における周知技術は、情報処理分野における技術のひとつである、ICカード技術に対しても適用できることを開示している。 したがって、引用例1発明に対して、引用例3発明及び周知技術を適用することによって、 本願発明の如く、アプリケーションで使用されるデータを「識別情報とともに」格納するように構成することは、当業者が容易に想到し得ることである。 (2)相違点2について 書き込み手段が、命令により指定されたデータを書き込む際に、当該データに付されたファイル名などの識別情報に基づいて「上書きすべきか書き込むべきか判断」することによって、 「・・・前記識別情報を発見した場合には、前記書込手段は、前記発見された識別情報に関連づけられているデータに前記指定されたデータを上書きし、 ・・・前記識別情報を発見しなかった場合には、前記書込手段は、・・・空き領域に前記指定されたデータを書き込む」ことは、 情報処理分野における周知技術(例えば、原査定の備考の欄に記載された特開平5-108436号公報(特に、段落【0009】を参照)である。 一方、国際規格ISO/IEC7816が適用可能なICカードという点で、引用例1発明と共通している引用例3発明、すなわち、 「データVを識別コードTとともに格納するファイルを有するメモリと、 マイクロプロセッサと を備えた、ISO/IEC7816に最適なバーチャルメモリICカードであって、 データを追加する時に、すでに同じデータがあるかどうかをチェックする必要があること を特徴とするバーチャルメモリICカード。」 には、「データを追加する時に、すでに同じデータがあるかどうかをチェックする必要があること」と記載されていることから、 データを書き込む際に「上書きすべきか書き込むべきか判断」の行うことによって、同じデータがある場合には上書きを行い、同じデータがない場合には書き込みを行うことを示唆(又は暗示)している。 すなわち、前記した、 書き込み手段が、命令により指定されたデータを書き込む際に、当該データに付されたファイル名などの識別情報に基づいて「上書きすべきか書き込むべきか判断」することによって、 「・・・前記識別情報を発見した場合には、前記書込手段は、前記発見された識別情報に関連づけられているデータに前記指定されたデータを上書きし、 ・・・前記識別情報を発見しなかった場合には、前記書込手段は、・・・空き領域に前記指定されたデータを書き込む」 という情報処理分野における周知技術は、情報処理分野における技術のひとつである、ICカード技術に対しても適用できることを示唆(又は暗示)している。 しかも、情報処理分野における当該周知技術では、識別情報を発見したか否かで「上書きすべきか書き込むべきか判断」するのであるから、 識別情報を提供するための手段、及び識別情報を発見するための手段を必要とすること、 すなわち、 上書き又は書き込みを行うデータや、当該データに対応する識別情報を、(直接的又は間接的に)指定する命令を必要とすること(すなわち、本願発明の「命令により指定されたデータ」及び「命令により指定された識別情報」とすること)、 及び、 「前記命令により指定された識別情報と同一内容の識別情報を前記記憶手段内において検索する検索手段」を必要とすることは、 明らかである。 以上のことから、引用例1発明の「透過構造ファイルを有する記憶手段」に対して上書きや書き込みを可能とするべく、引用例3発明及び周知技術を適用することによって、 本願発明の如く、 書込手段が「上書きすべきか書き込むべきか判断」したり、 「前記命令により指定された識別情報と同一内容の識別情報を前記記憶手段内において検索する検索手段を有し、 前記検索手段が該当する前記識別情報を発見した場合には、前記書込手段は、前記発見された識別情報に関連づけられているデータに前記指定されたデータを上書きし、 前記検索手段が該当する前記識別情報を発見しなかった場合には、前記書込手段は、前記透過構造ファイルの空き領域に前記指定されたデータを書き込む」ように構成したりすることは、 当業者が容易に想到し得ることである。 7.むすび したがって、本願発明は、引用例1乃至3および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-06-19 |
結審通知日 | 2009-06-23 |
審決日 | 2009-07-06 |
出願番号 | 特願平8-290318 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 高瀬 勤、工藤 嘉晃 |
特許庁審判長 |
田口 英雄 |
特許庁審判官 |
小曳 満昭 和田 財太 |
発明の名称 | ICカード |
代理人 | 正林 真之 |