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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) E02F
管理番号 1202728
審判番号 不服2007-23805  
総通号数 118 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-08-30 
確定日 2009-08-20 
事件の表示 特願2003- 69774「後端小旋回型ショベル」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 1月 8日出願公開,特開2004- 3298〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,特許法第41条に基づく優先権主張を伴う平成15年3月14日の出願(優先日:平成14年3月26日,出願番号:特願2002-85314号)であって,平成19年7月20日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年8月30日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに,同年10月1日付けで手続補正がなされ,その後,当審において平成20年11月7日付けで前置報告の内容に基づいた審尋がなされ,これに対し,平成21年1月5日付けで回答書が提出され,さらに,当審において同年3月3日付けで平成19年10月1日付けの手続補正についての補正の却下の決定がなされるとともに,同日付けで拒絶理由の通知がなされ,これに対し,同年5月11日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成21年5月11日付けの手続補正により補正された明細書の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,次のとおりのものと認められる。
(本願発明)
「下部走行体上に上部旋回体が縦軸まわりに旋回自在に搭載され、前記上部旋回体の前端に作業装置が揺動自在に枢着され、前記上部旋回体の後端旋回半径が前記下部走行体の幅寸法のほぼ1/2に設定され、かつ、この上部旋回体の旋回フレームに機器類が設置される後端小旋回型ショベルにおいて、
前記旋回フレームの幅寸法が前記下部走行体の幅寸法とほぼ等しく設定され、前記作業装置が枢着される作業装置支持部が前記旋回フレームの前端部より突出するように設けられ、
前記旋回フレームの後部に、後列側機器として、油圧ポンプ、動力源、冷却装置が左右に並設され、
この後列側機器の前方において、前列側機器として、スイベルジョイントを中心とする右側又は左側の一方の側にコントロールバルブと作動油タンクが左右方向に並設されているとともに、他方の側に燃料タンクとバッテリが左右方向に並設され、
前記後列側機器は、左右方向に油圧ポンプ、動力源、冷却装置の順に配設され、前記前列側機器は、左右方向にバッテリ、燃料タンク、スイベルジョイント、作動油タンク、コントロールバルブの順に配設され、
前記燃料タンクの後方側に前記油圧ポンプが位置するとともに、前記燃料タンクの給油口は、前記燃料タンクの後方でかつ前記油圧ポンプより上方に配設され、
前記燃料タンクは、前記上部旋回体に設定された運転室フロア下方に配設されるとともに、左右方向の外側部分を窪ませた形状を有し、
前記バッテリは、燃料タンクを挟んで前記スイベルジョイントと反対の外側位置に配設されているとともに、前記燃料タンクを窪ませたスペースに設置されていることを特徴とする後端小旋回型ショベル。」

3.引用刊行物
(1)当審の拒絶理由で引用され,本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2001-271378号公報(以下「刊行物1」という。)には,図面とともに,次の事項が記載されている。
(1a)「【請求項1】走行装置(2)上に旋回台(7)が上下方向の軸心回りに回動自在に設けられ、油圧ポンプ(23)が連結されたエンジン(21)が前記旋回台(7)の後部に横向きに配置され、前記油圧ポンプ(23)に作動油を供給する作動油タンク(24)と、同油圧ポンプ(23)からの作動油を各種油圧作業機器に分配する多数のコントロールバルブを並列に接続してなるバルブユニット(25)とが当該旋回台(7)に搭載されている旋回作業機において、
前記バルブユニット(25)が前記作動油タンク(24)の下方に設けた収納空間(32)内に横向きに収納されていることを特徴とする旋回作業機。」
(1b)「【0002】
【従来の技術】・・・一方、旋回台の後側面が走行装置の車幅からはみ出ない小旋回の旋回作業機では、旋回台の後側面を車幅を直径とする円内に収める必要があり、従って、旋回台の後部にはエンジン及びこれに直列に配置すべきラジエータや油圧ポンプを配置するのが精一杯であるため、燃料タンク及び作動油タンク等のタンク類やバルブユニットといったエンジン以外の比較的大型の機材を限られた旋回台の平面範囲内にできるだけ効率的に配置する必要がある。」
(1c)「【0009】
【発明の実施の形態】以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。図面は旋回作業機として例示する小旋回バックホー1を示しており、図3において、このバックホー1は走行装置2と旋回体3と掘削装置4とから主構成されている。なお、以下、バックホー1の走行方向(図3の左右方向)を前後方向といい、この前後方向に直交する横方向(図3の紙面貫通方向)を左右方向という。」
(1d)「【0010】・・・旋回体3は、走行装置2の左右クローラ走行体5間の中央部に設けた軸受体8に上下方向の旋回軸心回りに回動自在に支持された旋回台7と、この旋回台7に搭載された各種機器を覆うボンネット20と、このボンネット20上に設けた座席41やその前の操縦部を上から覆うキャノピ42とを備えている。」
(1e)「【0011】・・・このバックホー1はいわゆる後方小旋回タイプのもので、旋回体3の後側面が走行装置2の車幅からはみ出ないように円弧状に形成されている。すなわち、旋回体3が旋回したとき、この旋回体3の後面が描く旋回軌跡が左右クローラ走行体5の左右幅内に収まるようになっている。」
(1f)「【0012】図2に示すように、旋回体3の左右側面は、旋回体3が前方を向いた状態で前後方向に沿う平面に形成されていて、この左右側面間同士の間隔は旋回体3後面が描く旋回軌跡円の直径より幅狭に形成されている。更に、同状態において、旋回体3の前面は、左右方向に沿う平面に形成されている。図1及び図3に示すように、旋回台7の前面右側には、掘削装置4を支持する上下一対の支持部材11が突出されている。この支持部材11には支軸を介してスイングブラケット12が上下軸回りに左右揺動自在に枢着され、このスイングブラケット12は旋回台7の内部に設けたスイングシリンダ13(図1及び図2参照)によって揺動される。」
(1g)「【0014】旋回台7の後部上面および右側上面は開放状とされ、これらの開放部分は旋回台7の上面から上方に突出した丸みを帯びたボンネット20で覆われている。図1及び図2に示すように、このボンネット20の内部には、エンジン21と、各種油圧機器を駆動するための油圧ポンプ23、作動油タンク24及び多数のコントロールバルブを並設してなるバルブユニット25よりなる油圧関係機材とラジエータ26等が収納され、これらは旋回台7に搭載されている。また、旋回台7の左側上面はフロアシートで覆われており、このフロアシートの下方部分にエンジン21用の燃料タンク22と、バッテリー27が収納されている。」
(1h)「【0015】図2に示すように、エンジン21はその駆動軸心が左右方向を向くように旋回台7の後部に横向きに配置されている。このエンジン21の左端側に油圧ポンプ23が直結され、同エンジン21の右側上部にラジエータファン28が連結されている。油圧ポンプ23を駆動する下部軸とラジエータファン28を駆動する上部軸は、ファンベルト及びプーリよりなるベルト伝動機構により連動連結されている。なお、旋回台7の旋回中心部にはスイベルジョイント29が設けられ、同ジョイント32の右寄りに前記旋回モータ10が配置され、これらの部材は、バルブユニット25を構成するコントロールバルブにそれぞれ図示しない油圧配管で接続されている。」
(1i)「【0016】ラジエータファン28の右側には、前記ラジエータ26とオイルクーラ30が配置されている。このうち、オイルクーラ30はバルブユニット25からの戻り油を冷却して作動油タンク24に戻すものである。これらの熱交換器に対応するボンネット20の右側面には外気取り入れ口が形成され、かつ、同ボンネット20の右側面には排気口が形成されている。しかして、本実施形態のバックホー1では、外気取り入れ口のすぐ内側にラジエータ26とラジエータファン28を配置した吸い込みタイプを採用している。」
(1j)図2には,旋回台7の後部に,後列側機器として,油圧ポンプ23,エンジン21,ラジエータ26が左右に併設され,この後列側機器の前方において,前列側機器として,スイベルジョイント29を中心とする右側又は左側の一方の側にコントロールバルブを併設してなるバルブユニット25と作動油タンク24が配設されているとともに,他方の側に燃料タンク22とバッテリー27が配設されていること,が示されている。
(1k)図1及び図2には,後列側機器は,左右方向に,油圧ポンプ23,エンジン21,ラジエータ26の順に配設され,前列側機器は,左右方向に,燃料タンク22,スイベルジョイント29,作動油タンク24の順に配設されること,バッテリー27は燃料タンク22の前方に配設されること,コントロールバルブを並設してなるバルブユニット25は作動油タンク24の下方に配設されること,及び,燃料タンク22の後方側に油圧ポンプ23が位置すること,が示されている。
上記記載事項(1a)ないし(1k),図面の記載,並びに当業者の技術常識によれば,上記刊行物1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
(引用発明)
「走行装置2上に旋回体3の旋回台7が上下方向の軸心まわりに回動自在に搭載され,旋回体3の旋回台7の前面に突出された支持部材11には掘削装置4のスイングブラケット12が上下軸回りに左右揺動自在に枢着され,旋回体3の後側面が走行装置2の車幅からはみ出ないように円弧状に形成され,かつ,この旋回体3の旋回台7に各種機器が搭載される後方小旋回タイプのバックホーにおいて,
旋回体3の左右側面間同士の間隔は旋回体3後面が描く旋回軌跡円の直径より幅狭に形成され,掘削装置4のスイングブラケット12が枢着される支持部材11が旋回台7の前面に突出され,
旋回台7の後部に,後列側機器として,油圧ポンプ23,エンジン21,ラジエータ26が左右に併設され,
この後列側機器の前方において,前列側機器として,スイベルジョイント29を中心とする右側又は左側の一方の側にコントロールバルブを併設してなるバルブユニット25と作動油タンク24が配設されているとともに,他方の側に燃料タンク22とバッテリー27が配設され,
後列側機器は,左右方向に,油圧ポンプ23,エンジン21,ラジエータ26の順に配設され,前列側機器は,左右方向に,燃料タンク22,スイベルジョイント29,作動油タンク24の順に配設され,バッテリー27は燃料タンク22の前方に配設され,コントロールバルブを並設してなるバルブユニット25は作動油タンク24の下方に配設され,
燃料タンク22の後方側に油圧ポンプ23が位置し,
燃料タンク22及びバッテリー27は,旋回台7の上面を覆うフロアシートの下方部分に収納された,
後方小旋回タイプのバックホー。」

(2)同じく特開平10-204908号公報(以下「刊行物2」という。)には,図面とともに,次の事項が記載されている。
(2a)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、クローラ式走行装置が走行可能な幅内において、旋回フレームを360度回転することは出来ないまでも、収納時において、クローラ式走行装置14が配置されている上に、旋回フレームの後部は円形となるように構成して、後部だけはクローラ式走行装置の幅無いで旋回できる後方小旋回可能で、かつ、バケットが収納されて、クローラ式走行装置が走行可能な空間である狭い空間に収納可能とする旋回式掘削作業車を提供するものである。・・・」
(2b)「【0004】
【課題を解決するための手段】本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次に該課題を解決するための手段を説明する。請求項1においては、旋回式掘削作業車において、クローラ式走行装置14の上に、円形の旋回フレーム19を旋回可能に支持し、該旋回フレーム19の外周は、クローラ式走行装置14の左右端の幅と同径・・・とし、円形の旋回フレーム19の前部を切欠いて前端面5を構成し、該前端面5よりスイングフレーム支持部35を前方へ突設し、前記前端面5より後部の旋回フレーム19の上にタンクを配置し、該タンクと前端面5との間を補助乗降口aに構成したものである。」

(3)同じく特開平11-269923号公報(以下「刊行物3」という。)には,図面とともに,次の事項が記載されている。
(3a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えばバックホー等の旋回作業機に関するものである。」
(3b)「【0030】次に、図4?図6を参照しつつ、旋回体3の内部構造を説明する。・・・ボンネット10の内部には、エンジン28とその補機のラジエータ29やオイルクーラ30等よりなるエンジン装置31と、各種油圧機器を駆動するための油圧ポンプ32、作動油タンク33及びコントロールバルブ34よりなる油圧関係機材が収納され、これらは旋回台9に搭載されている。また、旋回台9の左側上面はフロアシートで覆われており、この部分にエンジン28用の燃料タンク35と、バッテリー36が収納されている。」
(3c)「【0041】なお、図例では、コントロールバルブ34を作動油タンク24の前側面や支持壁26の右側面に取り付けているが、同バルブ34は、作動油タンク33と油圧ポンプ32との間や、作動油タンク33の更に右側、或いは作動油タンク33の上方に設けることもできる。これらの位置であれば、コントロールバルブ34の保守点検に作動油タンク33が邪魔になることがないので好適である。」

(4)同じく特開2001-288778号公報(以下「刊行物4」という。)には,図面とともに,次の事項が記載されている。
(4a)「【0015】続いて、図2を参照しつつ説明する。図2中の下部には、燃料タンク19が示されている。燃料タンク19は2本の固定バンド41で旋回フレーム17に固定されている。燃料タンク19の前側(図2の左側)には、油圧バルブ等の入っている電磁ブロック23が設けられている。また、燃料タンク19の後方面(図2の右側面)にはフィラー25が取り付けられている。また、カバー29の後方(図2の右側方)には、フード31がある。フード31には、吸気用のエアベント33が設けられている。」
(4b)「【0017】燃料タンク19には、筒状のフィラー等の取付口19bが設けられている。取付口19bには、成形ホース26が嵌合されており、バンド27で固定されている。成形ホース26の上方の端部には、フィラー25が嵌合されており、バンド28で固定されている。」
(4c)図2及び図3には,燃料タンク19のフィラー25を,旋回フレーム17の後方側の上方に設けたことが示されている。

4.対比
本願発明と引用発明を対比すると,引用発明の「走行装置2」は本願発明の「下部走行体」に,以下同様に,「旋回体3」は「上部旋回体」に,「掘削装置4」は「作業装置」に,「旋回台7」は「旋回フレーム」に,「後方小旋回タイプのバックホー」は「後方小旋回型ショベル」に,「エンジン21」は「動力源」に,「ラジエータ26」は「冷却装置」に,「フロアシート」は「運転室フロア」に,それぞれ相当する。
また,引用発明の「旋回体3の後側面が走行装置2の車幅からはみ出ないように円弧状に形成され」は,旋回体3の後端旋回半径が走行装置2の幅寸法の1/2以下であることを意味しているから,本願発明の「上部旋回体の後端旋回半径が下部走行体の幅寸法のほぼ1/2に設定され」に相当する。
また,バッテリ及びコントロールバルブの位置について,引用発明の「一方の側にコントロールバルブを併設してなるバルブユニット25と作動油タンク24が配設されているとともに,他方の側に燃料タンク22とバッテリー27が配設され」と本願発明の「一方の側にコントロールバルブと作動油タンクが左右方向に並設されているとともに、他方の側に燃料タンクとバッテリが左右方向に並設され」とは,「一方の側にコントロールバルブと作動油タンクが配設されているとともに、他方の側に燃料タンクとバッテリが配設され」である点で共通している。
そうすると,本願発明と引用発明とは,
「下部走行体上に上部旋回体が縦軸まわりに旋回自在に搭載され,前記上部旋回体の前端に作業装置が揺動自在に枢着され,前記上部旋回体の後端旋回半径が前記下部走行体の幅寸法のほぼ1/2に設定され,かつ,この上部旋回体の旋回フレームに機器類が設置される後端小旋回型ショベルにおいて,
前記作業装置が枢着される作業装置支持部が前記旋回フレームの前端部より突出するように設けられ,
前記旋回フレームの後部に,後列側機器として,油圧ポンプ,動力源,冷却装置が左右に並設され,
この後列側機器の前方において,前列側機器として,スイベルジョイントを中心とする右側又は左側の一方の側にコントロールバルブと作動油タンクが配設されているとともに、他方の側に燃料タンクとバッテリが配設され,
前記後列側機器は,左右方向に油圧ポンプ,動力源,冷却装置の順に配設され,前記前列側機器は,左右方向に,燃料タンク,スイベルジョイント,作動油タンク,の順に配設され,
前記燃料タンクの後方側に前記油圧ポンプが位置するとともに,
前記燃料タンクは,前記上部旋回体に設定された運転室フロア下方に配設される,
後端小旋回型ショベル。」である点で一致し,次の点で相違する。

<相違点1>
上部旋回体と下部走行体の幅寸法が,本願発明は「旋回フレームの幅寸法が下部走行体の幅寸法とほぼ等しく設定され」ているのに対し,引用発明は,旋回フレームの幅寸法が下部走行体の幅寸法より幅狭に形成されている点。

<相違点2>
コントロールバルブと作動油タンクの位置関係について,本願発明は「左右方向に並設」かつ「左右方向に・・・スイベルジョイント、作動油タンク、コントロールバルブの順に配設」した構成であるのに対し,引用発明は,コントロールバルブが作動油タンクの下方に配置されている点。

<相違点3>
燃料タンクとバッテリの位置関係について,本願発明は「左右方向に並設」,「左右方向にバッテリ、燃料タンク、スイベルジョイント・・・の順に配設」かつ「バッテリは、燃料タンクを挟んで前記スイベルジョイントと反対の外側位置に配設されているとともに、前記燃料タンクを窪ませたスペースに設置されている」のに対し,引用発明は,バッテリが燃料タンクの前方に配置されている点。

<相違点4>
燃料タンクの給油口の位置について,本願発明は「(給油口を)燃料タンクの後方でかつ前記油圧ポンプより上方に配設」した構成であるのに対し,引用発明は上記構成を有するか不明な点。

5.判断
まず,相違点1について検討する。上記記載事項(2a)(2b)によると,刊行物2には,後方小旋回可能な旋回式掘削作業車において,円形の旋回フレーム19の外周を,クローラ式走行装置14の左右端の幅と同径とすること,すなわち,旋回フレームの幅寸法を下部走行体の幅寸法とほぼ等しく設定して,上部旋回体の後端旋回半径を下部走行体の幅寸法のほぼ1/2に設定すること(以下「刊行物2記載の発明」という。)が記載されており,上部旋回体の幅寸法を,上部旋回体の旋回時に下部走行体からはみ出ない範囲で最大化した寸法とすることは当該分野の一般技術ともいえる。
そうすると,引用発明の上部旋回体と下部走行体の幅寸法に,刊行物2記載の発明を採用し,本願発明の上記相違点1に係る構成とすることは,当業者が容易になし得たことである。

次に,相違点2について検討する。部材のレイアウトは,当業者が必要に応じて適宜変更し得た事項であるが,特に,上記記載事項(3c)によると,刊行物3には,コントロールバルブを作動油タンクの前側面に設ける以外に,作動油タンクの上方,又は,作動油タンクの右側に設けることにより,コントロールバルブの保守点検時に作動油タンクが邪魔にならないこと(以下「刊行物3記載の発明」という。)が記載されている。
そうすると,引用発明において,刊行物3記載の発明を適用して,コントロールバルブを作動油タンクの右側に並設して,左右方向に,スイベルジョイント,作動油タンク,コントロールバルブの順となるように配設することは当業者が容易になし得たことである。

次に,相違点3について検討する。レイアウトの効率化のため,燃料タンクを窪ませたスペースに適宜の部材を配置する技術は,例えば特開平9-268597号公報(特に「【0017】・・・両タンク17,18に跨って載置されるバッテリー19等が配置され・・・」,【図5】及び【図8】等参照。)及び特開昭63-154820号公報(特に第2頁左下欄16行?同右下欄6行の「ソレノイド(13)や整流器(15)等の電装部品は、エンジン本体(1)上部の燃料タンク(6)下面に形成した凹所(7)内に形成される・・・これらの電装部品がエンジン全体より大きく突出することなく、エンジン全体をコンパクトに構成することができる。」,第1図及び第2図等参照。)に見られるように周知技術である。そして,部材のレイアウトは,当業者が必要に応じて適宜変更し得た事項であるが,メンテナンス性を向上させるためにバッテリを旋回台の外側に面する位置に設けることも,例えば,実公平3-49163号公報(特に第3欄16?17行の「・・・バツテリーは、運転キヤビンの横側から開閉蓋付出入口を通じて簡単に外方に取り出せる。・・・」及び第1図参照。)に見られるように周知技術である。
そうすると,引用発明のバッテリを,レイアウトの効率性及びメンテナンス性を考慮して,燃料タンクを挟んでスイベルジョイントと反対の外側位置に,かつ,燃料タンクを窪ませ,そこに設置して,左右方向にバッテリ,燃料タンク,スイベルジョイントの順に並設することは,当業者が容易になし得たことである。

最後に,相違点4について検討する。部材のレイアウトは,当業者が必要に応じて適宜変更し得た事項であるが,特に,上記記載事項(4a)ないし(4c)によれば,刊行物4には,給油口(燃料タンク19のフィラー25)を,旋回フレーム(旋回フレーム17)の後方側の上方に設けること(以下「刊行物4記載の発明」という。)が記載されている。
そして,引用発明において,燃料タンクの後方側に油圧ポンプが位置しているのであるから,上記刊行物4記載の発明のように給油口を旋回フレームの後方側の上方に設けることにより,給油口の位置を,燃料タンクの後方でかつ油圧ポンプより上方とすることは,当業者が容易になし得たことである。

また,本願発明の奏する効果についても,引用発明,刊行物2ないし4記載の各発明並びに周知技術から当業者が容易に予測できるものであり,格別なものとはいえない。

よって,本願発明は,引用発明,刊行物2ないし4記載の各発明並びに周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-06-16 
結審通知日 2009-06-23 
審決日 2009-07-06 
出願番号 特願2003-69774(P2003-69774)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (E02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 須永 聡  
特許庁審判長 伊波 猛
特許庁審判官 神 悦彦
関根 裕
発明の名称 後端小旋回型ショベル  
代理人 村松 敏郎  
代理人 小谷 悦司  

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