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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03G
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G03G
管理番号 1202736
審判番号 不服2007-31802  
総通号数 118 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-11-26 
確定日 2009-08-20 
事件の表示 特願2001- 45080「現像装置、画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 8月30日出願公開、特開2002-244432〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成13年2月21日の出願であって、平成19年6月15日付で通知した拒絶理由通知に対して、同年8月17日付で手続補正書が提出され、拒絶査定がなされ、同年11月26日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年12月25日付で手続補正がなされ、その後、審判において平成20年12月8日付で通知した審尋に対して平成21年2月9日付で回答書が提出されたものである。


2 平成19年12月25日付の手続補正についての補正の却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成19年12月25日付の手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正内容
平成19年12月25日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲の請求項1(平成19年8月17日付手続補正書参照)について、
「現像後に該現像ユニット内に回収された現像剤のうち、上記現像スリーブが生じさせる反発磁界により上記現像スリーブ上から離脱した現像剤が、上記現像ケースの壁面に沿って下降し、上記壁面に沿って回転する攪拌搬送部に合流する前で上記現像ケースの壁面に開口を設けるとともに、上記開口に、現像剤を遮断し、空気を通す性質を持ち、上記現像ケース内から外部へ現像剤が流れ出ることを遮断するフィルタ部材を設け」との記載を、
「現像後に上記現像ユニット内に回収された現像剤のうち、上記現像スリーブが生じさせる反発磁界により上記現像スリーブ上から離脱した現像剤が上記現像スリーブと現像剤汲み上げ極の間の領域に流入する部位に、現像剤を遮断し、空気を通す性質を持ち、上記現像ケース内から外部へ現像剤が流れ出ることを遮断するフィルタ部材を設け」
と補正する事項を含むものである(下線は当審で付した)。

(2)補正の適否について
上記補正事項は、要するに、「フィルタ部材」を設ける場所について、補正前の「反発磁界により上記現像スリーブ上から離脱した現像剤が、上記現像ケースの壁面に沿って下降し、上記壁面に沿って回転する攪拌搬送部に合流する前で上記現像ケースの壁面に開口を設けるとともに、上記開口に」との記載を、「上記現像スリーブが生じさせる反発磁界により上記現像スリーブ上から離脱した現像剤が上記現像スリーブと現像剤汲み上げ極の間の領域に流入する部位に」との記載に変更するものである。
そこで、補正後の「上記現像スリーブと現像剤汲み上げ極の間の領域」の意味について検討する。
一般に、現像スリーブは回転するものであり、現像スリーブ内には、ケーシングに固定されたマグネットローラが設けられており、そのマグネットローラには、現像剤汲み上げ極である磁石など複数の磁石が周面に沿って並んでいるものである。
そうすると、補正後の「上記現像スリーブと現像剤汲み上げ極の間の領域」は、単純に解釈すると、現像スリーブと、その内側に固定されたマグネットローラにおける現像剤汲み上げ極(磁石)との間の領域ということになるが、現像スリーブとマグネットローラの間には現像剤が入り込むことはないので、そのような解釈はあり得ない。また、「現像スリーブと現像剤汲み上げ極の間の領域」が、現像剤汲み上げ極(磁石)がある箇所に対応する現像スリーブの部分であるとしても、「領域」という表現が何を示すのか不明である。それとも、「上記現像スリーブと現像剤汲み上げ極の間の領域」の「上記現像スリーブ」が、現像剤が現像スリーブから離脱する「反発磁界」(本願明細書【0012】の現像剤離れ磁極)の位置を意味する可能性もあるが、補正後の上記記載から、そうであると断定する根拠がない。
したがって、いずれにしても、補正後の「上記現像スリーブと現像剤汲み上げ極の間の領域」の意味は不明確であるから、
上記補正事項は、明りょうでない記載の釈明を目的とするものとは認められず、また、誤記の訂正や特許請求の範囲の減縮でもなく、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項各号に掲げる事項のいずれの目的にも該当しない。

(3) むすび
よって、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。


3 本願発明について
平成19年12月25日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?4に係る発明は、平成19年8月17日付の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明1」という。)は以下のとおりである。

「現像ケース内に、磁界を生じさせる現像スリーブを備えた現像ユニットであって、現像後に該現像ユニット内に回収された現像剤のうち、上記現像スリーブが生じさせる反発磁界により上記現像スリーブ上から離脱した現像剤が、上記現像ケースの壁面に沿って下降し、上記壁面に沿って回転する攪拌搬送部に合流する前で上記現像ケースの壁面に開口を設けるとともに、上記開口に、現像剤を遮断し、空気を通す性質を持ち、上記現像ケース内から外部へ現像剤が流れ出ることを遮断するフィルタ部材を設けてなることを特徴とする現像装置。」

(1) 引用刊行物の記載
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された特開平10-48948号公報(原査定の引用文献3。以下「引用例1」という。)には、図面と共に下記の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。

(a)「【0001】本発明は、光プリンタ装置、複写機又はファクシミリ等の電子写真方式の画像形成装置に備えられる現像装置に関するものである。」

(b)「【0026】上記の課題を解決するために、本発明の請求項1記載の画像形成装置の現像装置は、感光体に対向して形成された開口部を有するケーシング内に、感光体に現像剤を供給する現像剤担持体が回転自在に備えられると共に、該現像剤担持体の回転に伴って、圧力の高くなる現像剤担持体が配設されている側の第1の空間部と、該第1の空間部より圧力の低くなる第2の空間部とが区画される画像形成装置の現像装置において、上記第1の空間部と第2の空間部とを連通させる連通手段が設けられたことを特徴としている。」

(c)「【0028】本発明の請求項2記載の画像形成装置の現像装置は、請求項1の構成において、上記ケーシングにおける第2の空間部を区画する部分に、フィルタを備えた圧力抜き孔が形成されていることを特徴としている。
【0029】これによれば、上記圧力抜き孔により、ケーシング内の圧力がさらに低くなるので、上記請求項1の構成よりも、さらにケーシング内の開口部からの現像剤トナー飛散を減少させることができる。」

(d)「【0065】ところで、本実施の形態における上記現像装置16は、現像装置16の中央部断面図である図1、又は現像装置16の端部断面図である図2に示すように、感光体ドラム14と対向して形成された長方形状の開口部43を有するケーシング41を備えており、ケーシング41の上部には、トナーを補給するためのトナー補給口42が形成されている。」

(e)「【0066】上記ケーシング41内には、開口部43を通して感光体ドラム14と対向するように現像ローラ44が配設される一方、この現像ローラ44からトナー補給口42に向かって、第1,第2攪拌ローラ45・46が順次配設され、また、上記現像ローラ44の上部にはドクタ47が、さらにケーシング41内のほぼ中央部には、流し板48がそれぞれ配設されている。
【0067】上記現像ローラ(現像剤担持体)44は、感光体ドラム14へとトナーとキャリアとからなる二成分現像剤を供給するもので、ケーシング41に回転自在に支持された支持軸44aに外嵌され、ケーシング41に固定されたマグネットローラ44bと、このマグネットローラ44bに回転自在に外嵌されたスリーブ44cとからなる。
【0068】第1攪拌ローラ(攪拌部材)45は、図4の如く、ケーシング41に回転自在に支持されたローラ軸45aと、このローラ軸45aに対して垂直に多数のフィン45bが突設されたものである。 」

(f)「【0073】現像ローラ44へ供給された現像剤は、現像ローラ44におけるスリーブ44cの回転により汲み上げられ、このとき、現像剤は、スリーブ44cの表面にマグネットローラ44bの磁気力により穂立ち状態となる。そして、ドクタ47にて穂立ちの高さが規定された後、感光体ドラム14へと供給され、感光体ドラム14上の静電潜像を顕像化する。一方、ドクタ7にて規制された現像剤は、流し板48の上面を流れて、トナー補給口42から補給された補給トナーと共に、第2攪拌ローラ46にて再び攪拌されることとなる。
【0074】次に、上記現像装置16に施されている、開口部43からのトナー飛散を抑制するための手法について詳細に説明する。上記現像装置16では、トナー飛散を抑制するために、以下に示す(1)?(4)の4つの手法が施されている。
【0075】(1) 流し板48に通気孔60を形成し、空間部Aの圧力を抜く。・・・(中略)・・・
【0076】まず、(1)の手法について説明する。上記現像装置16のように、流し板48を備えた構成では、流し板48の上端側がドクタ47によって規制された現像剤にて詰まる一方、その下端側は現像剤に埋没しているので、流し板48を隔てて二つの空間部A・Bが形成されることとなる。そして、現像ローラ44、及び第1,第2攪拌ローラ45・46の回転に伴う機内風、及び現像剤の流れにより、開口部43のある空間部A(第1の空間部)の内圧が空間部B(第2の空間部)よりも特に高くなる。その結果、開口部43から空気が吹き出し、これに浮遊トナーが巻き込まれ、トナー飛散が起こる。
【0077】そこで、上記現像装置16に備えられた流し板48には、図6に示すように、通気孔(連通手段)60が形成されている。図6(b)は流し板48の正面図であり、同図(a)は同図(b)のA-A’線矢視断面図である。
【0078】これによれば、空間部Aの高圧空気が通気孔60を通って空間部Bへ流れ、空間部Aの圧力が低下する。したがって、開口部43からの空気の吹き出しが抑制され、トナー飛散が減少することとなる。そして、この場合、流し板48に通気孔60を開けるだけなので部品点数も増加せず、コストアップも伴わない。
【0079】さらに、上記現像装置16では、ケーシング41における空間部Bを区画する部分に、図示しないフィルタを備えた圧力抜き孔39が形成されている。これにより、空間部Bの空気はこの圧力抜き孔39からフィルタを通してケーシング41外へ排出されることとなる。したがって、空間部Aの圧力がさらに低下し、トナー飛散がより一層抑制されることとなる。
【0080】尚、このような圧力抜き孔をケーシングに設ける構成は、従来からもあったが、空間部Aの圧力を圧力抜き孔にて直接抜くと、トナー飛散を抑制することはできるが、その場合、圧力抜き孔に設けられたフィルタの交換頻度が高くなってメンテナンス性に劣り、また、高圧空気の吹き出しに伴ってトナーがフィルタをすり抜けるといったことも起こり得た。しかしながら、上記のように、流し板48に通気孔60を設けて空間部Aの高圧空気を空間部Bに導き、ここで一旦高圧を緩和させてから圧力抜き孔39を通すことで、フィルタの交換回数も少なくてすみ、また、トナーのフィルタすり抜けも防止できる。」

(g)図1,図14は以下のとおり。





図1,図14等の記載から、次の点が理解される。
・N3、N4等の磁極を有するマグネットローラ44bに外嵌されたスリーブ44cは反時計方向に回転し、感光体ドラム14は時計方向に回転すること。
・二成分現像剤が、現像ローラ44のスリーブ44cによって汲み上げられ、感光体ドラム14に供給されて現像した後、回収された現像剤は、磁極S3の作用を受けながら搬送され、隣合う同極の磁極N3,N4によって形成される「反発磁界」(反発磁界が形成されることは技術常識である。)の作用を受けてスリーブ44cから離脱し、ケーシング(下部ケーシング52)の壁面付近に沿って下降し、第1攪拌ローラ(攪拌部材)45の撹拌領域に合流すること。

以上の事項によれば、引用例1には次の発明(以下、「引用例1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。

「感光体ドラム(14)と対向して形成された開口部を有するケーシング(41)内に、マグネットローラ(44b)に回転自在に外嵌されたスリーブ(44c)を備えた現像ローラ(44)を設けた、現像装置であって、
N3、N4等の磁極を有するマグネットローラ(44b)に外嵌されたスリーブ(44c)は反時計方向に回転し、感光体ドラム(14)は時計方向に回転し、
二成分現像剤が、現像ローラ(44)のスリーブ(44c)によって汲み上げられ、感光体ドラム(14)に供給されて現像した後、回収された現像剤は、磁極S3の作用を受けながら搬送され、隣合う同極の磁極N3,N4によって形成される「反発磁界」の作用を受けてスリーブ(44c)から離脱し、下部ケーシング(52)の壁面付近に沿って下降し、第1攪拌ローラ(攪拌部材)(45)の撹拌領域に合流するものであり、
ケーシング(41)は、流し板(48)を隔てて、スリーブ(44c)の回転に伴って、圧力の高くなる現像剤ローラ(44)が配設されている側の第1の空間部(空間部A)と、第1の空間部より圧力の低くなる第2の空間部(空間部B)とに区画されており、ケーシング(41)における空間部Bを区画する部分に、フィルタを備えた圧力抜き孔(39)が形成されている、
現像装置。」

(2)対比、判断
そこで、本願発明1と引用例1記載の発明を対比する。

引用例1記載の発明の「ケーシング(41)」及び「下部ケーシング(52)」は、本願発明1の「現像ケース」に相当する。
引用例1記載の発明の「マグネットローラ(44b)に回転自在に外嵌されたスリーブ(44c)」は、本願発明1の「磁界を生じさせる現像スリーブ」に相当する。
引用例1記載の発明の「現像装置」は、実質的に、本願発明1の「現像ユニット」や「現像装置」に相当する。
引用例1記載の発明の「二成分現像剤が、現像ローラ(44)のスリーブ(44c)によって汲み上げられ、感光体ドラム(14)に供給されて現像した後、回収された現像剤は、磁極S3の作用を受けながら搬送され、隣合う同極の磁極N3,N4によって形成される「反発磁界」の作用を受けてスリーブ(44c)から離脱し、下部ケーシング(52)の壁面付近に沿って下降し、第1攪拌ローラ(攪拌部材)(45)の撹拌領域に合流する」は、 本願発明1の「現像後に該現像ユニット内に回収された現像剤のうち、上記現像スリーブが生じさせる反発磁界により上記現像スリーブ上から離脱した現像剤が、上記現像ケースの壁面に沿って下降し、上記壁面に沿って回転する攪拌搬送部に合流する」に実質的に相当する。
引用例1記載の発明の「フィルタを備えた圧力抜き孔(39)」は、本願発明1の「現像剤を遮断し、空気を通す性質を持ち、上記現像ケース内から外部へ現像剤が流れ出ることを遮断するフィルタ部材」を備えた「開口」、に相当するということができる。
また、「開口」の位置について、両者は、「現像ケースにおいて所定の壁面に開口を設ける」点で共通する。

そうすると、両者の一致点、相違点は次のとおりと認められる。

[一致点]
「現像ケース内に、磁界を生じさせる現像スリーブを備えた現像ユニットであって、
現像後に該現像ユニット内に回収された現像剤のうち、上記現像スリーブが生じさせる反発磁界により上記現像スリーブ上から離脱した現像剤が、上記現像ケースの壁面に沿って下降し、上記壁面に沿って回転する攪拌搬送部に合流するものであって、
上記現像ケースにおいて所定の壁面に開口を設けるとともに、上記開口に、現像剤を遮断し、空気を通す性質を持ち、上記現像ケース内から外部へ現像剤が流れ出ることを遮断するフィルタ部材を設けてなる、
現像装置。」

[相違点]
フィルタ部材を備えた開口を設ける位置に関して、
本願発明1は、現像後に現像ユニット内に回収された現像剤のうち、現像スリーブが生じさせる反発磁界により現像スリーブ上から離脱した現像剤が、現像ケースの壁面に沿って下降し、壁面に沿って回転する攪拌搬送部に合流する前で現像ケースの壁面に開口を設け、その開口にフィルタ部材を設ける、
すなわち、反発磁界により離脱した現像剤が攪拌搬送部との合流する前の現像ケース下部における圧力が高い領域(以下、「現像ケース下部における圧力が高い領域」と略していう。)に「開口」を設けるのに対し、
引用例1記載の発明は、ケーシング(41)は、流し板(48)を隔てて、スリーブ(44c)の回転に伴って、圧力の高くなる現像剤ローラ(44)が配設されている側の第1の空間部(空間部A)と、第1の空間部より圧力の低くなる第2の空間部(空間部B)とに区画されており、ケーシング(41)における空間部Bを区画する部分に(つまり、ケーシングの上部に)、フィルタを備えた圧力抜き孔(39)が形成されている、
すなわち、「現像ケース下部における圧力が高い領域」にではなく、現像ケース上部(圧力が低くなった空間部B)に「開口」を設ける点。

そこで、相違点について検討する。

まず、原審の拒絶査定で示されたように、トナー飛散を抑制するために、現像ケース内の圧力が高い部分を外気と連通することは、本願出願前に周知の技術である。例えば、実願昭63-37090号(実開平1-142962号)のマイクロフィルム(拒絶査定の例示文献)、実願昭60-80438号(実開昭61-196262号)のマイクロフィルム(同上)、特開平10-149023号公報(原審の拒絶理由通知の引用文献2)、特開昭60-8868号公報を参照。
そして、上記例示文献のうち、実願昭60-80438号(実開昭61-196262号)のマイクロフィルム、特開平10-149023号公報、特開昭60-8868号公報では、「現像ケース下部」における圧力が高い領域において、フィルタ部材を備えた開口を設けている。

また、引用例1記載の発明で、ケーシングにおける空間部Bを区画する部分(つまり、ケーシングの上部)に開口を設けた理由をみると、上記(d)の【0080】には、「このような圧力抜き孔をケーシングに設ける構成は、従来からもあったが、空間部Aの圧力を圧力抜き孔にて直接抜くと、トナー飛散を抑制することはできるが、その場合、圧力抜き孔に設けられたフィルタの交換頻度が高くなってメンテナンス性に劣り、また、高圧空気の吹き出しに伴ってトナーがフィルタをすり抜けるといったことも起こり得た。」という記載がある。この記載からすると、圧力が高い領域から圧力を直接抜くことでトナー飛散の抑制できること自体は否定しておらず、フィルタの交換頻度等の観点から、圧力が高い領域から離れた位置にあり、圧力が緩和された領域から圧力を抜くことを選んだということである。

そうすると、上記周知技術を知っており、また、引用例1の上記記載に接した当業者であれば、高い圧力の領域から直接圧力を抜くことのメリット(トナー飛散の要因を速やかに除去できる)とデメリット(フィルタの交換頻度が高くなる等)を勘案しながら、引用例1記載の発明(後者のデメリットの回避を優先して、高い圧力の領域から直接圧力を抜くことを避けたもの)とは異なり、前者のメリットを優先することを選択することに、困難はないというべきである。何故なら、ここでの選択は、技術的な必然というよりも、何を優先するかという選択を任意に行うものだからである。
したがって、引用例1記載の発明における、フィルタ部材を備えた開口を設ける位置を、ケーシングにおける空間部Bを区画する部分(つまり、ケーシングの上部)から、「現像ケース下部における圧力が高い領域」に移動させて、本願発明1のごとくなすことは、当業者が容易に想到し得ることである。

なお、引用例1記載の発明では、流し板(48)により、圧力の高くなる現像剤ローラ(44)が配設されている側の第1の空間部(空間部A)と、第1の空間部より圧力の低くなる第2の空間部(空間部B)とに区画されており、しかも、引用例1には、空間部Aの高圧空気を空間部Bに導き高圧を緩和させるために、流し板48に通気孔60を設けることも記載されている。そして、フィルタ部材を備えた開口を設ける位置を上記のように「現像ケース下部における圧力が高い領域」に移動させたときに、流し板48に通気孔60を設けたことが、上記「開口」により第1の空間部(空間部A)の高圧を下げることに対する支障にはならないと考えられる。したがって、流し板48に通気孔60を設けていることと、フィルタ部材を備えた開口を設ける位置を「現像ケース下部における圧力が高い領域」に移動させることとは、矛盾しない。

(効果について)
全体として、本願発明1によってもらされる効果も、引用例1に記載された事項及び上記周知技術から当業者であれば当然に予測できる程度のものであって、格別のものではない。

(まとめ)
したがって、本願発明1は、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、請求人は、回答書において、補正案を示しているが、上記の判断のとおりであって、再度、拒絶理由を通知して補正の機会を付与する法的根拠がないので、補正案は考慮しない。

4 むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-06-25 
結審通知日 2009-06-26 
審決日 2009-07-08 
出願番号 特願2001-45080(P2001-45080)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03G)
P 1 8・ 575- Z (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 菅藤 政明村上 勝見宮崎 恭  
特許庁審判長 木村 史郎
特許庁審判官 紀本 孝
大森 伸一
発明の名称 現像装置、画像形成装置  
代理人 吉村 直樹  

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