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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1202739
審判番号 不服2008-875  
総通号数 118 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-01-10 
確定日 2009-08-20 
事件の表示 特願2002-128471「塗布容器」拒絶査定不服審判事件〔平成15年11月11日出願公開、特開2003-321078〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成14年4月30日の出願であって、平成19年12月7日付けで拒絶査定がされ、これに対して、平成20年1月10日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。


2.本願発明について
本願の請求項1ないし2に係る発明は、平成19年8月2日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項1は以下のとおり記載されている。
「内容物を充填した充填容器を収納するケースと、このケースの口部に固定保持され充填容器のステム及び開孔を通して排出された内容物を塗り付ける塗布ヘッドを備えた塗布容器であって、
外壁の対向位置に凸部を有し前記ステムを貫通させて充填容器の肩部に固定保持されるアダプターと、このアダプターの凸部の下端に接触する傾斜付きのアームを有しステムの軸心と交差する向きへのスライドにて該アダプターを充填容器とともに塗布ヘッドに向けて押し上げる押しボタンとを備え、 前記塗布ヘッドは、排出孔を通して排出された内容物を保持し、広範囲にわたる均一な塗布を可能とする外表面を有することを特徴とする塗布容器。」(以下請求項1に係る発明を「本願発明」という。)


3.引用発明
(1)これに対して、原査定の拒絶理由に引用された実願平2-98869号(実開平4-57264号)のマイクロフィルム(以下「引用例」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。

(a)「1.容器本体に対してステムを押入ないしは押入-解放することにより、噴霧容器内の充填液を噴霧する噴霧具であつて、
前記押入方向に対して移動可能に容器本体を保持するケース本体と、
ケース本体の側壁部に回動軸を介して取り付けられ、回動軸を中心としてケース本体の内部に向けて回動する駆動レバーと、
駆動レバーに連結され、駆動レバーの回動により容器本体を前記押入方向に押圧して、容器本体にステムを押入せしめるリンク部材であつて、該押圧時に前記押入方向に対して略直交する方向であつて、かつ、駆動レバーの回動方向と略逆方向に変位可能なリンク部材とを具備したことを特徴とする噴霧具。
・・・・・中略 ・・・・・
8.前記噴霧容器が蓄圧式ポンプ容器またはエアゾール容器である請求項1?7のいずれか一項に記載の噴霧具。」 (明細書 第1頁第5行目-第3頁第8行目)

(b)「一方使用時には、ノズルキャップ15を外し、駆動レバー21を、第6図に矢印Bで示すようにハウジング11の内部に向けて押し込むことにより、駆動レバー21が回動軸17を中心に回動し、ヒンジ部材23により連結されたリンク部材25もこれに追従して回動しようとする。このとき、リンク部材25の押圧部25aにより、ポンプ容器本体31のフランジ33には第6図に矢印Fで示した方向の力が加わる。この力Fは、駆動レバー21の回動により生じることから、ステム35aを容器本体31内(ポンプ部材35内)に押し下げる方向(力F_(1)の方向)と完全に一致しない。そこで、力Fのポンプ容器本体31の作動方向の成分F_(1)により、ポンプ容器本体31が図中上方に移送されることになる。ポンプ容器のステム35aは、ノズル部材13のストッパ部13bに嵌装され固定されているので、ポンプ容器本体31の上方への移送に伴ないステム35aが容器本体31内に押入され、さらに駆動レバー21を元の状態に戻すことにより、噴射口13aよりポンプ容器の内容物が噴射される。」 (明細書 第11頁第6行目-第12頁第6行目)

(c)「なお、以上の説明では点鼻用としての利用を中心にして説明したが、本考案はこれに限定されず、小型・手動の噴霧具として、特に人体の腔部等の凹所やデリケートな部分への確実な噴霧剤の適用に好適である。
また、薬剤等を収納する容器は、ポンプ容器に限定されず、エアゾール容器等の他の分配容器でもよい。」 (明細書 第15頁第20行目-第16頁第7行目)

したがって、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「容器本体31を収納するハウジング11と、このハウジング11の口部に固定保持され容器本体31のステム35a及び噴霧口13aを通して排出された内容物を噴霧するノズル部材13を備えた噴霧具であって、
容器本体31のフランジ33と、ケースの口部に揺動可能に保持されその押圧操作によってフランジ33を容器本体31とともに押し上げてステム35aをノズル部材13の背面に押し付けて内容物を塗布ヘッドの外表面に排出する駆動レバー21とを設け、
該駆動レバー21が、リンク側ガイド部25bを支点として上下動するリンク部材の押圧部25aを備えた噴霧具」


4.対比
本願発明と引用発明とを対比するに、引用発明の「容器本体31」「ハウジング11」「ノズル部材13」「ステム35a」「噴霧口13a」「駆動レバー21」及び「噴霧具」は、本願発明の「内容物を充填した充填容器」「ケース」「塗布ヘッド」「ステム」「開孔」「押しボタン」及び「塗布容器」にそれぞれ相当する。
さらに、引用発明のフランジ33は、引用例の第2図、第3図及び記載(b)を参酌すれば、ポンプ容器本体31の比較的上部に位置し、フランジ33を押し上げれば容器本体31も押し上げられることになることから、「フランジ33」は本願発明の「アダプター」に相当する。
また、引用例の第3図、第4図、及び記載(b)のリンク部材25の動きを考慮すれば、リンク部材は、リンク側ガイド部25bを支点として、押圧部25aが上下動するように揺動しており、フランジに接触しているので、引用発明の「リンク部材の押圧部25a」は、本願発明の「アーム」にそれぞれ相当する。
したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違する。
<一致点>
「内容物を充填した充填容器を収納するケースと、このケースの口部に固定保持され充填容器のステム及び開孔を通して排出された内容物を塗布する塗布ヘッドを備えた塗布容器であって、
充填容器に固定保持されるアダプターと、アダプターに接触するアームを有しステムの軸心と交差する向きへの押圧にてアダプターを充填容器とともに塗布ヘッドに向けて押し上げる押しボタンを備えた塗布容器。」

<相違点>
相違点1.本願発明の塗布のための作動機構は、「外壁の対向位置に凸部を有し前記ステムを貫通させて充填容器の肩部に固定保持されるアダプター」と、「このアダプターの凸部の下端に接触する傾斜付きのアームを有」する押しボタンからなり、該押しボタンを「ステムの軸心と交差する向きへのスライド」させる機構であるのに対して、引用発明の塗布のための作動機構は、駆動レバーを押圧することにより、リンク部材が揺動し、リンク部材の押圧部が上下動する機構である点。

相違点2.本願発明は内容物を塗り付ける塗布ヘッドを備え、「塗布ヘッドは、排出孔を通して排出された内容物を保持し、広範囲にわたる均一な塗布を可能とする外表面を有」しているのに対し、引用発明は、内容物を噴霧する塗布ヘッドである点。


5.検討
上記相違点について検討する。
・相違点1について
ステムを作動させる作動機構として、アダプターに設けた凸部と、押しボタンに設けた傾斜付きアームのスライドからなる作動機構は、ステムを有する塗布容器の技術分野において、従来周知の技術手段である(例えば、特開2001-180772号公報、実願昭61-71320号(実開昭62-183573号)のマイクロフィルム、実願昭59-121639号(実開昭61-35618号)のマイクロフィルム参照)。
また、引用発明のフランジ33は、「ステムを貫通させて充填容器の口部に固定保持され」てはいないものの、第5図を参酌すれば、ステムの中心線の周囲に形成されたものであり、第2図、第3図及び記載(b)を参酌すれば、フランジ33はポンプ容器本体31の比較的上部に位置し、フランジ33を押し上げれば容器本体31も押し上げられることにより、ステムが押入され、噴霧が行われるものであることから、引用発明のフランジ33は、本願発明のアダプターと実質的に相違するものではなく、アダプターの形状を「ステムを貫通させ」た形状とするか否かは、当業者が必要に応じて適宜選択する設計的事項に過ぎない。
よって、上記周知の技術手段であるスライドによる作動機構を、引用発明の塗布のための作動機構に適用して、本願発明の相違点1に係る構成のようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

・相違点2について
ステムを通して排出した内容物を塗りつける形式の塗布ヘッドとし、排出された内容物を保持し、広範囲にわたる均一な塗布を可能とする外表面を塗布ヘッドに設けることは、塗布容器の技術分野において、例えば実願昭61-191702号(実開昭63-98761号公報)のマイクロフィルム又は、実願平3-70905号(実開平6-25181号)のCD-ROMのように、従来周知の技術手段に過ぎない。
よって、上記周知技術のような塗布ヘッドを、引用発明のノズル部材に適用して、本願発明の相違点2に係る構成のようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
そして、本願発明が奏する効果も、引用例に記載された発明及び上記周知技術から当業者が予測できたものであり、格別顕著なものとはいえない。


6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-06-08 
結審通知日 2009-06-09 
審決日 2009-07-03 
出願番号 特願2002-128471(P2002-128471)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村山 達也山口 直  
特許庁審判長 千馬 隆之
特許庁審判官 村山 禎恒
佐野 健治
発明の名称 塗布容器  
代理人 杉村 興作  
代理人 来間 清志  
代理人 杉村 憲司  
代理人 澤田 達也  

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