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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
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不服20051624 審決 特許
不服200611061 審決 特許
不服200625545 審決 特許
不服200627219 審決 特許

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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1202760
審判番号 不服2005-23625  
総通号数 118 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-12-08 
確定日 2009-08-21 
事件の表示 特願2001-257639「脳血管変性障害予防・治療剤」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 5月22日出願公開、特開2002-145767〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は,特許法第41条に基づく優先権主張を伴う平成13年8月28日(優先日,平成12年8月30日)の出願であって,拒絶理由に応答して平成17年6月24日付けで手続補正がなされたが,平成17年11月1日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成17年12月8日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

本願の請求項1?3に係る発明は,平成17年6月24日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?3に記載されたとおりのものであり,そのうち請求項1に係る発明は,次のとおりである。

「フェルラ酸および/または該フェルラ酸の生理学的に許容される塩を少なくとも1種以上を含有することを特徴とする脳血管変性障害予防・治療剤。」(以下,「本願発明」という。)

2.引用例
これに対して,原査定の拒絶の理由に引用された本願の優先権主張の日前に頒布された次の刊行物には,以下の事項が記載されている(なお,中国語であるため翻訳文で示す。)

・Clin. J. Integr. Med., 1988, Vol.8, No.5, pp.259, 263-265(以下,「引用例A」という。)
(a-1)「本論文は,冠性心疾患患者の血小板機能に対するフェルラ酸ナトリウムの影響について,フェルラ酸ナトリウムが体外において血小板の凝集及び血小板のTXA_(2)形成を顕著に抑制するが,その作用が濃度依存型であることについて報告したものである。」(第263頁の「内容要旨」)

・中国薬理学報,1981,Vol.2,No.1,pp.35-37(以下,「引用例B」という。)
(b-1)「当帰は,閉塞性血栓性血管炎,急性脳血栓などの塞栓性疾患に対して比較的良好な治療効果を有している。当帰及びその成分であるフェルラ酸ナトリウムは血小板の凝集に対して抑制作用を有するとともに,血小板の5-ヒドロキシトリプタミンの放出を抑制する。本論文は,実験性血栓の形成に対するフェルラ酸ナトリウムの阻止・抑制作用を掘り下げて観察した。」(第35頁左欄下から第17行?13行)

3.当審の判断
(1)対比
引用例Aには,フェルラ酸ナトリウムが血小板の凝集及び血小板のTXA_(2)形成を抑制する作用を有することが記載されていることから(摘記事項(a-1)),次の発明が記載されているといえる。

「フェルラ酸ナトリウムを含有する抗血小板剤。」(以下,「引用発明」という。)

そこで,本願発明と引用発明とを対比すると,前者の「フェルラ酸の生理学的に許容される塩」は,塩を形成する成分としてナトリウム等が挙げられていることから(本願明細書段落【0008】参照),後者の「フェルラ酸ナトリウム」を包含するものである。

よって,両者は「フェルラ酸ナトリウムを含有する剤。」で一致し,該剤に関し,前者は「脳血管変性障害予防・治療剤」であるのに対し,後者は「抗血小板剤」である点(以下,「相違点」という。)で相違する。

(2)判断
本願発明の「脳血管変性障害予防・治療剤」とは,本願明細書の段落【0037】の「…本発明はフェルラ酸とその塩の新規な用途に関する。より詳しくは、…とりわけ脳血管の変性障害を伴う脳卒中や脳梗塞、…疾患などの予防と治療に関する。より具体的には、…一過性脳虚血発作、酸化的ストレス状態の改善、脳血栓、脳梗塞、クモ膜下出血および脳卒中などにおける脳血管性神経障害の治療、…の改善に対して有用であり、…」なる記載からすれば,一過性脳虚血発作,脳血栓,脳梗塞,クモ膜下出血,脳卒中といった脳血管性疾患の予防及び/又は治療剤を意味するものである。
一方,本願の優先権主張日前において,一過性脳虚血発作,脳卒中,脳梗塞といった脳血管性疾患のリスク軽減や治療に,抗血小板薬を使用すること
は当業界において広く知られているものである(例えば,"Stroke, 1999, September, pp.1991-1994"のp.1992のTABLE 2,"Circulation, 1994, Vol.89, No,6, pp.2950-2965" のp.2956,"TODAY'S THERAPY 1999 今日の治療方針[ポケット判], 1999年1月15日発行,株式会社 医学書院"のpp.214-215参照)。
また,引用例Bには,フェルラ酸ナトリウムを成分として含む当帰が脳血管性疾患の1つである急性脳血栓に対して良好な治療効果を有することが記載されていることから(摘記事項(b-1)),本願の優先権主張日前において,フェルラ酸ナトリウムを脳血管性疾患の治療に用いることは示唆されていたといえる。
してみると,引用発明において,当業界の周知技術及び引用例Bに記載された知見を勘案し,フェルラ酸ナトリウムを含有する抗血小板薬を脳血管性疾患(脳血管変性障害)の予防及び/又は治療薬として使用することは,当業者が容易に想到し得たことである。
そして,本願発明の効果についても,従来技術から当業者にとって予測困難な格別顕著なものであるとは認められない。
よって,本願発明は,引用例Bの記載又は周知技術を勘案し,引用例Aに記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお,請求人は,審判請求理由(平成18年3月3日付け手続補正書参照)において,本願発明を「【請求項1】フェルラ酸アルギニン塩を含有することを特徴とする脳卒中予防剤。」と補正することを希望している。
しかし,特許法では審判請求に際して補正できる期間を定めているところ,それにもかかわらずその期間内に手続補正書を提出しなかったのであるから,それ以上の補正の機会を与えることは,法律の想定するところではない。しかも,仮に,その補正案を検討したところで,アルギニン塩はカルボン酸類の生理学的に許容される塩として汎用のものであり,引用発明においてフェルラ酸のナトリウム塩をアルギニン塩に代えてみることに当業者にとって格別な技術的創意を要するとはいえないし,また,本願明細書には「…FA投与群,FA-Arg塩投与群の順で脳内微細血管が保護されたが示唆された。」(段落【0036】参照)と記載されているように,フェルラ酸の生理学的に許容される塩としてアルギニン塩を選択したことによる効果の顕著性を認めることもできないから,その補正案でフェルラ酸アルギニン塩と特定しても,上記容易性の判断の結果を左右できるものではない。
よって,請求人の前記要請は受け入れられない。

4.むすび
以上のとおりであるから,本願請求項1に係る発明は,特許法第29条
2項の規定により特許を受けることができない。
それ故,他の請求項について論及するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-06-18 
結審通知日 2009-06-24 
審決日 2009-07-07 
出願番号 特願2001-257639(P2001-257639)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安居 拓哉  
特許庁審判長 川上 美秀
特許庁審判官 伊藤 幸司
内田 淳子

発明の名称 脳血管変性障害予防・治療剤  
代理人 韮澤 弘  
代理人 菅井 英雄  
代理人 青木 健二  
代理人 阿部 龍吉  
代理人 蛭川 昌信  
代理人 内田 亘彦  
代理人 米澤 明  

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