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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A01K
管理番号 1202764
審判番号 不服2007-14436  
総通号数 118 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-05-18 
確定日 2009-08-21 
事件の表示 特願2002-222632「コンクリ-ト製藻礁」拒絶査定不服審判事件〔平成16年2月26日出願公開,特開2004-57130〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,平成14年7月31日の出願であって,平成19年4月11日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成19年5月18日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものであり,その後,当審において,平成20年12月26日付けで拒絶理由を通知したところ,平成21年3月6日受付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。


第2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は,平成21年3月6日受付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,次のとおりのものである。
「角柱部および4つの階段部で構成され、それらの上面に凹凸を有し、かつ、全体が一体成形されたものであり、前記階段部に直径が50?250mmの貫通孔を有し、貫通孔全面積が階段部側面面積の1/20?1/3であることを特徴とするコンクリ-ト製藻礁。」(以下,「本願発明」という。)


第3.刊行物及びその記載内容
刊行物1:特開昭56-88730号公報
刊行物2:特開2001-299128号公報
刊行物3:特開昭52-98185号公報

〔1〕当審の拒絶理由に引用された,上記刊行物1には,「魚礁ブロツク」に関して,次のことが記載されている。
(1a)「本発明は、海藻礁ブロツク、浮魚礁浮体ブロツク、ウニ、アワビ等水産生物育成棲息用ブロツクを総称する魚礁ブロツクに関する。
上述ブロツクは、海中に浮礁、暗礁、乱礁を人工的に作り、該礁に海藻が着生することにより生物の蝟集、棲息を促進させて魚、貝、海藻等の養殖に適用するものとしては周知である。」(1頁左欄16行?右欄3行)
(1b)「・・・海中における海藻の繁殖は、胞子が海水中に浮遊し当該胞子が固体(ブロツク)に着生することにより行われるが、固体の表面が平滑な平面であると、その平面に沿つて流動する海水により胞子は押し流されて付着が阻止されることに起因するものと考えられる。」(1頁右欄15行?2頁左上欄1行)
(1c)「そこで本発明は上述のことに着目して検討の結果得られたもので、任意所望形状及び大きさに形成されるブロツク本体の表面に、多数個の凹部を形成して渦流発生用角部を散在させたことを要旨とし、もつて、海藻の着生、繁茂性を向上せしめて生物のブロツクへの蝟集、安定的棲息を促進し、魚、貝、海藻の増殖をはかることを目的とするものである。」(2頁左上欄6?13行)
(1d)「第4図、第5図はコンブ着生用十字ブロツクを示したもので、ブロツク本体(1)は平面略十字形状に形成されていて、その表面(2)に多数の凹所(3)・・・・・を、第4図においては縦横方向へ相互に交差させて凹条溝を設け、上述実施例と同様な渦流発生用角部(3)b、(3)b′、(3)b″を散在させてあり、又第5図においては凹所(3)を凹穴状に点在させて設け、渦流発生用角部(3)bを平面円形に散在させて構成したものである。
こゝで、第5図に示す凹所(3)は、平面円形の凹穴に設けてあるが、この他、任意の多角形凹穴に設けてもよく、このように凹所(3)を設けると、ブロツク本体(1)の表面(2)と、多角形凹所(3)の1つの側面とから形成される渦流発生用角部(3)b、(3)b′と、これとは異形の上記表面(2)と多角形凹所(3)の2つの側面から形成される渦流発生用角部が形成される。
又、上記凹所(3)・・・・・は、目的とする海藻の大きさや、生物の種類及び海水の流動速度に合わせて適当な形状、大きさ、間隔、深さ等を任意所望に選択して決定される。
更にブロツク本体(1)はコンクリート等で型打ちして成形されるから、上記渦流発生用角部(3)b、(3)b′、(3)b″を形成する為の凹所(3)・・・は、図示しない形枠の内面に凹所成形用凸部を散在させておくことにより、従来例と同様にして成形することができる。」(2頁左下欄20行?3頁左上欄6行)

上記(1a)?(1d)の記載を含む刊行物1全体の記載及び第4,5図の記載並びに当業者の技術常識からみて,刊行物1には,次のような発明が記載されているものと認められる。
「平面略十字形状に形成されたブロツク本体(1)で構成され,その表面(2)に凹条溝或いは凹穴による多数の凹所(3)を有し,かつ,コンクリートで型打ちして成形されたものであり,海藻の着生,繁茂性を向上せしめて生物のブロツクへの蝟集,安定的棲息を促進し,魚,貝,海藻の増殖を図るようにした魚礁ブロツク。」(以下,「刊行物1記載の発明」という。)

〔2〕同じく,上記刊行物2には,「人工藻礁」に関して,次のことが記載されている。
(2a)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】人工藻礁では、ウニ、アワビやサザエなどの巻貝等が藻を食い尽くす食害等により、藻場が消滅する問題がある。本発明は、ウニ、アワビやサザエなどの巻貝等の食害がある場合には、当該食害を抑制しつつ、主として藻類が生息できる人工藻礁を提供する。
【0004】
【課題を解決するための手段】コンクリートを素材とする人工藻礁において、藻の着生のための段差を有する面と、藻礁手段及び/又は魚礁手段を載置できる面とを有することを特徴とする人工藻礁を提供する。また、この人工藻礁を組み合せて人工藻礁のシステムとしたものであって、内部に向けた藻礁手段及び/又は魚礁手段を載置できる面と、外部に向けた藻の着生のための段差を有する面とを含む人工藻礁を提供する。」
(2b)「【0006】本発明の人工藻礁は、段差を有する藻の着生面と、藻礁手段及び/又は魚礁手段を載置できる面とを有することを特徴とする。その具体例の一つとして、図1に人工藻礁1を示す。段差を有する藻の着生面は、略水平面と略垂直面を有する。・・・本発明は、藻類が略水平面に着生し、食害であるウニ、貝類等の進入が、略水平面に隣接する垂直面の存在により困難となる生態を利用するものであり、・・・
【0007】略水平面は、実際に藻が着生する面である。・・・また、複数の段差を設けることにより、高さ方向に複数の略水平面を設けることができるが、・・・
【0008】藻の着生は着生面の表面積に依存するため、略水平面に突部を設けることや、略水平面の表面を凸凹にする(粗面化する)ことにより着生の効率を高めることができる。図2は、人工藻礁2における本体2aの略水平面に突部2bを設けた一例を示す。図2には、突部2bの断面が半円であるものが示されているが、突部の断面の形状は特に限定されるものではない。・・・略水平面上の突部の設定位置は、生育する藻の種類等の諸条件により任意に定めることができる。
・・・
【0010】藻の着生面のうち、略垂直面はウニ等の侵入を困難なものとし食害を抑制する効果を有する。特に、略垂直面を粗面化することなくなめらかな面とすることにより、食害抑制の効果を高めることができる。・・・」
(2c)「【0012】本発明の人工藻礁の一例を図1及び図2に示すが、これに限定されるものではない。・・・段差は、一つでも複数であってもよいが、藻の着生効率を向上、取り扱いの容易さを考慮すれば、3?8段が好ましい。・・・
【0013】本発明の人工藻礁の製造方法としては、・・・公知のコンクリートの成形方法を用いることができる。すなわち、セメント、骨材、水、減水剤等を混練し、該混練物を所定の型枠を用いて成形し、養生後、脱型すればよい。・・・図2の2bに例示される突部を設ける方法としては、所定の突部が得られるような型枠を製造し、該型枠を用いて成形することが好適である。・・・
【0014】本発明の人工藻礁を組み合わせることにより、システム化することも可能である。具体例としては、内部に向けて藻礁手段及び/又は魚礁手段を載置できる面を配置し、段差を有する藻の着生面を外部に向けて配置する組合せが考えられる。・・・人工藻礁の組合せは、図3に示す放射状の配置に限らず、その地理的条件、生育対象となる藻の種類等に依存として種々の態様が考えられる。・・・」

〔3〕同じく,上記刊行物3には,「幼稚仔保育礁」に関して,次のことが記載されている。
(3a)「本発明は、たこ、あわび、かに等の産卵、育成場となる幼稚仔保育礁に関する。
外敵や環境変化に対し幼稚仔を保護し、それらの育成を促進するためテトラポツトの様な星型魚礁塊の全表面に多数の小孔を設けた魚礁は既に提案されている・・・。」(2頁左上欄9?14行)
(3b)「本発明は魚礁ブロツクを組立式にすると共に、魚礁ブロツクを構成する複数個のコンクリートパネルの合せ面を利用して、幼稚仔の育成に適した任意形状の凹部や孔を簡単に形成できるようにしたもので、・・・ある。」(2頁右上欄6?11行)
(3c)「第1図の中間継手ブロツク1はコンクリート製正四角柱の前後左右各側面の中央部にそれぞれ1個の突片2を一体に備え、各突片2は2個のボルト孔3を有する。・・・
突片2の上下面にパネル4の一端の下面とパネル5の一端の上面を当て、上下両パネル4、5の間に中間パネル6を挟み、2本のボルト7により上下パネル4、5を突片2に締め付け、2本のボルト8によりパネル4?6を締め付け、このようにして3個のパネル4?6から成る積層ブロツク9を中間継手ブロツク1と一体化する。・・・各積層ブロツク9は中間継手ブロツク1から前後左右方向に放射状に突出した正四角柱を形成している。」(2頁右上欄12行?左下欄14行)
(3d)「中間パネル6の上下にパネル4、5を合わせることにより隣接パネル間に孔10を形成するため、中間パネル6の上下面6a、6bに半円形断面の溝11、12が予め設けてあり、パネル4の下面4bと、パネル5の上面5aにも上記溝11、12に対向する位置に溝13、14が設けてあり、相対する溝11、13と12、14は積層ブロック9の前後面に開口した孔10を形成している。・・・これらの孔10は保護しようとする幼稚仔の種類に応じその大きさ、形状等が設定され、例えば孔10の直径を100?300mm、長さを500?1000mm程度に選ぶことができる。・・・」(2頁左下欄15行?右下欄8行)
(3e)「第1図・・・のように、中間継手ブロツク1の周囲の突片2から放射状に積層ブロツク9を突出させると、一定空間内に多数の孔10や凹部24、25を・・・適当数分散配置することが容易になり、保育礁の安定性が向上する・・・」(3頁左下欄1?6行)


第4.対比・判断
〔1〕本願発明と刊行物1記載の発明との対比
刊行物1記載の発明の「海藻の着生,繁茂性を向上せしめて生物のブロツクへの蝟集,安定的棲息を促進し,魚,貝,海藻の増殖を図るようにした(コンクリートで型打ちして成形された)魚礁ブロツク」は,本願発明の「コンクリ-ト製藻礁」に相当し,刊行物1記載の発明の「凹条溝或いは凹穴による多数の凹所(3)」は,本願発明の「凹凸」に相当する。
また,刊行物1記載の発明の「平面略十字形状に形成されたブロツク本体(1)」と,本願発明の「角柱部および4つの階段部」とは,「角柱部および4つの突出部」で共通するものであり,さらに,当該「ブロツク本体(1)」は,「平面略十字形状に形成された」ものであり,かつ,「コンクリートで型打ちして成形された」ものであることから,「全体が一体成形された」ものとするのが相当である。
そして,刊行物1記載の発明の「(ブロツク本体(1)の)表面(2)」に,「ブロツク本体(1)」の「上面」が含まれることは明らかである。

そうすると,両者は,
「角柱部および4つの突出部で構成され,それらの上面に凹凸を有し,かつ,全体が一体成形されたものであるコンクリ-ト製藻礁。」である点で一致し,次の点で相違する。
(相違点1)
4つの突出部について,本願発明では,「階段部」で構成されているのに対し,刊行物1記載の発明では,階段部で構成されていない点。
(相違点2)
上記相違点1に関連して,本願発明では,「階段部に直径が50?250mmの貫通孔を有し、貫通孔全面積が階段部側面面積の1/20?1/3である」のに対し,刊行物1記載の発明では,突出部に貫通孔を有していない点。

〔2〕相違点についての検討
(相違点1について)
相違点1を検討する。
刊行物2には,複数の段差を設けることにより高さ方向に複数の略垂直面と略水平面とを設け,略垂直面がウニ等の侵入を困難にする面となり,略水平面が実際に藻が着生する面となるものであって,略水平面の表面に,藻の着生の効率を高めるための凸凹(粗面化)を設けてなり,ウニ,アワビやサザエなどの巻貝等の食害を抑制しつつ主として藻類が生息できるようにしたコンクリート成形の人工藻礁2の技術,及び,複数の段差を設けることにより高さ方向に複数の略垂直面と略水平面とを設けた人工藻礁1を,段差を有する藻の着生面を外部に向けて複数放射状に配置し,それらの内側に藻礁手段や魚礁手段を載置する人工藻礁1の組合せ技術,が記載されている。
してみると,刊行物1記載の発明のコンクリ-ト製藻礁(魚礁ブロツク)の4つの突出部を,刊行物2に記載の上記人工藻礁の技術を採用して,階段部として構成することは,当業者が格別の技術的困難性を要することなしに容易に想到できたものと認められる。
したがって,本願発明の上記相違点1に係る構成は,刊行物1記載の発明及び刊行物2に記載の技術から,当業者が容易になしえたものである。

(相違点2について)
次に,相違点2を検討する。
刊行物3には,コンクリート製正四角柱の中間継手ブロツク1および該中間継手ブロツク1の前後左右方向に放射状に突出し複数のコンクリートパネル4?6からなる正四角柱の積層ブロック9(4つの突出部)で構成され,前記積層ブロック9にはその前後面に開口させて孔10(貫通孔)が形成されており,前記孔10の大きさ,形状等は,保護しようとする幼稚仔の種類に応じて設定されるが,例えば,その直径を100?300mmにした幼稚仔保育礁の技術が記載されている。
そして,上記したとおり,「孔10」の大きさ,形状等は,保護しようとする幼稚仔の種類に応じて設定されるものであるところ,その直径(100?300mm)は,本願発明の貫通孔の直径(50?250mm)と大凡重複しているものである。
してみると,刊行物1記載の発明のコンクリ-ト製藻礁の4つの突出部を,刊行物3に記載の上記幼稚仔保育礁の技術を採用して,貫通孔を有するものとして構成するとともに,当該貫通孔の直径を,「50?250mm」にすることは,当業者が格別の技術的困難性を要することなしに容易に想到できたものと認められる。
一方,「貫通孔全面積」の「階段部側面面積」に対する割合については,階段部(階段部側面面積)の大きさ,及び,階段部への貫通孔の形成個数に依存するものであるところ,既に説示したとおり,刊行物1記載の発明のコンクリ-ト製藻礁の4つの突出部を,刊行物2に記載の上記人工藻礁の技術を採用して,階段部として構成し,かつ,刊行物3に記載の上記幼稚仔保育礁の技術を採用して,貫通孔を有するものとして構成する際において,階段部の大きさ,及び,階段部への貫通孔の形成個数を,「貫通孔全面積が階段部側面面積の1/20?1/3」となるように設定することは,当業者が必要に応じて随時なし得る設計事項と認められる。
したがって,本願発明の上記相違点2に係る構成は,刊行物1記載の発明及び刊行物2,3に記載の技術から,当業者が容易になしえたものである。

ところで,審判請求人は,平成21年3月6日受付けの意見書において,「7)刊行物3に記載の幼稚仔保育礁の孔は、幼稚仔の育成のみを目的としたものであり、本願発明の貫通孔・・・のように、潮流への抵抗の低減及び設置場所での安定性の向上を目的とすることについては、刊行物3に何ら記載されていないし、該目的を示唆する記載も皆無であります。」(3頁11?14行を参照。)と主張しているが,同刊行物3には,「中間継手ブロツク1の周囲の突片2から放射状に積層ブロツク9を突出させると、一定空間内に多数の孔10や凹部24、25を・・・適当数分散配置することが容易になり、保育礁の安定性が向上する」((3e)の記載を参照。)との記載もあり,また,貫通孔を設けて潮流抵抗を低減させる(設置場所での安定性の向上にも寄与する)ことは,例えば,実願昭62-47938号(実開昭63-155367号)のマイクロフィルム,実願平3-59736号(実開平5-9263号)のCD-ROM等に記載されているように,当該技術分野において従来から周知の技術事項であることからすると,上記「潮流への抵抗の低減及び設置場所での安定性の向上」に格別のものは見いだせないから,審判請求人の上記主張は採用できない。

〔3〕作用効果・判断
本願発明の構成は,刊行物1記載の発明及び刊行物2,3に記載の技術から,当業者が容易になしえたものであり,また,このようにしたことによる格別の作用効果も認められない。


第5.むすび
以上のとおり,本願発明は,刊行物1記載の発明及び刊行物2,3に記載の技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないものである。
 
審理終結日 2009-06-16 
結審通知日 2009-06-23 
審決日 2009-07-07 
出願番号 特願2002-222632(P2002-222632)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A01K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大塚 裕一  
特許庁審判長 伊波 猛
特許庁審判官 関根 裕
宮崎 恭
発明の名称 コンクリ-ト製藻礁  
代理人 内藤 照雄  

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