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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1202765
審判番号 不服2007-15085  
総通号数 118 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-05-25 
確定日 2009-08-21 
事件の表示 特願2001-189527「弾球遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 1月 7日出願公開、特開2003- 843〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1.手続の経緯

本件の経緯概要は以下のとおりである。

特許出願 平成13年6月22日
審査請求 平成13年7月13日
拒絶理由 平成18年5月11日
手続補正 平成18年7月13日
拒絶理由 平成18年11月16日
手続補正 平成19年1月18日
拒絶査定 平成19年4月19日
審判請求 平成19年5月25日
拒絶理由 平成21年3月27日
手続補正 平成21年5月29日

第2.平成21年5月29日付の手続補正についての補正却下の決定

[結論]

平成21年5月29日付の手続補正を却下する。

[理由]

1.本件補正の内容

本件補正前後の特許請求の範囲の記載は次のとおりである。

[本件補正前の請求項1]
「閉状態と開状態とに亙って可変で且つ内部に通常領域部(33,81) と特定領域部(34,82) とを有する可変入賞手段(25)と、所定の入球手段(23,24) に入球する遊技球(2) を検知する球検知手段(23a,24a) と、この球検知手段(23a,24a) により遊技球(2) が検知されたことを条件に可変入賞手段(25)を開閉させる開閉手段(32,61) とを備えた弾球遊技機において、
前記可変入賞手段(25)に入賞した遊技球(2) を転動させて通常領域部(33,81) と特定領域部(34,82) に誘導する球転動部(35)を備え、
前記球転動部(35)と特定領域部(34,82) とを一体的に設け、この球転動部(35)と特定領域部(34,82) とを揺動させる共通の揺動手段(36,62) を備え、
前記球転動部(35)に遊技球(2) を停留させると共に前記特定領域部(34,82) の入口を塞ぐ球停留手段(37,38,83,84) であって、所定の条件の成立により、遊技球(2) の停留を解除すると共に特定領域部(34,82) の入口を開放して前記遊技球(2) を特定領域部(34)に入賞させ易くする球停留手段(37,38,83,84) を備え、
前記揺動手段(36,62) は、前後方向に向く軸部材(36d) と、軸部材(36d) を回動駆動する駆動手段(36)とを有し、軸部材(36d) の延長線上に特定領域部(34,82) が位置するように、軸部材(36d) が球転動部(35)の下面側部分に固定的に連結され、
前記揺動手段(36,62) が球転動部(35)と特定領域部(34,82) とを揺動させる揺動パターンについて、予め設定された複数の揺動パターンの中の1つを、遊技球(2) が可変入賞手段(25)に入賞した個数に基づいて決定するように構成したことを特徴とする弾球遊技機。」

[本件補正後の請求項1]
「閉状態と開状態とに亙って可変で且つ内部に通常領域部(33)と特定領域部(34)とを有する可変入賞手段(25)と、所定の入球手段(23,24)に入球する遊技球(2)を検知する球検知手段(23a,24a)と、この球検知手段(23a,24a)により遊技球(2)が検知されたことを条件に可変入賞手段(25)を開閉させる開閉手段(32,61)とを備えた弾球遊技機において、
前記可変入賞手段(25)に入賞した遊技球(2)を転動させて通常領域部(33)と特定領域部(34)に誘導する球転動部(35)を備え、
前記球転動部(35)と、球転動部(35)の上面よりも上側へ突出する左右1対の爪部(34a)
を有し球転動部(35)の前部に一体的に設けた特定領域部(34)とを揺動させる共通の揺動手段(36,62)を備え、
前記球転動部(35)に遊技球(2)を停留させると共に前記特定領域(34)の入口に遊技球(2)を停留させる停留位置と、停留解除位置とに亙って開閉可能な1対の停留部材(37)を備えた球停留手段(37,38)であって、所定の条件の成立により、遊技球(2)の停留を解除すると共に特定領域部(34)の入口を開放して前記遊技球(2)を特定領域部(34)に入賞させ易くする球停留手段(37,38)を備え、
前記揺動手段(36,62)は、前後方向に向く軸部材(36d)と、軸部材(36d)を回動駆動する駆動手段(36)とを有し、軸部材(36d)の延長線上に特定領域部(34)が位置するように、軸部材(36d)が球転動部(35)の下面側部分に固定的に連結され、
前記揺動手段(36,62)が球転動部(35)と特定領域部(34)とを揺動させる揺動パターンについて、予め設定された複数の揺動パターンの中の1つを、遊技球(2)が可変入賞手段(25)に入賞した個数に基づいて決定するように構成したことを特徴とする弾球遊技機。」

2.本件補正についての検討

本件補正によって、以下の点が変更されたので、それぞれ検討する。

a)「前記球転動部(35)と特定領域部(34,82) とを一体的に設け」という事項を、「球転動部(35)の上面よりも上側へ突出する左右1対の爪部(34a)を有し球転動部(35)の前部に一体的に設けた特定領域部(34)」と変更
b)「前記特定領域部(34,82) の入口を塞ぐ球停留手段(37,38,83,84)」を、「前記特定領域(34)の入口に遊技球(2)を停留させる停留位置と、停留解除位置とに亙って開閉可能な1対の停留部材(37)を備えた球停留手段(37,38)」と変更
c)「通常領域部(33,81)」を「通常領域部(33)」に変更
d)「特定領域部(34,82)」を「特定領域部(34)」に変更
e)「球停留手段(37,38,83,84)」を「球停留手段(37,38)」に変更

a)について
補正前の「一体的に設け」という事項は補正後も含まれているので、a)は限定的減縮に該当する。
b)について
補正前の「入口を塞ぐ」という事項を、補正後は「入口に遊技球(2)を停留させる停留位置と、停留解除位置とに亙って開閉可能な1対の停留部材(37)を備えた」としているが、補正後における入口に遊技球を停留させる停留部材の閉状態は、前記「入口を塞ぐ」という状態に相当すると判断できるから、b)も限定的減縮に該当すると判断できる。
c)d)e)について
いずれも限定的減縮に該当する。

よって、請求項1にかかる本件補正は、特許請求の範囲を限定的に減縮するものと判断することができるから、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討することとする。

3.引用例

引用文献1:特開昭63-216587号公報
引用文献2:特開平6-154398号公報
引用文献3:特開2000-14887号公報
引用文献4:特開平11-299982号公報
引用文献5:特開2001-104562号公報
引用文献6:特開平6-254225号公報
引用文献7:特開平11-253615号公報
引用文献8:特開平7-289699号公報
引用文献9:特開平5-317496号公報
引用文献10:特開平5-177037号公報
引用文献11:特開平7-148314号公報
引用文献12:特開平10-5407号公報
引用文献13:特開2001-87485号公報

なお、引用文献1?6は平成21年3月27日付の当審拒絶理由で引用された文献である。

4.引用発明

引用文献1には、図面と共に以下の技術事項が記載されている。

「この発明は、パチンコ機、コイン遊技機等の弾球遊技機の入賞球装置に関し、詳しくは、特定入賞口を含む複数の入賞口を有する弾球遊技機の入賞球装置に関する。」(公報1ページ[産業上の利用分野]欄)
「まず、第1図に基づいて、可変入賞球装置10の概要について説明する。可変入賞球装置10は、遊技盤に取付けられている取付基板12を中心に、その取付基板12の前後に各種の部材が結合された構成になっている。そして、遊技盤上に設けられている始動入賞口(図示せず)内へのパチンコ玉の落下進入により、左右1対の可動翼片14a,14bが開閉し、可変入賞球装置10内へパチンコ玉16が進入可能となる。可動翼片14a,14bは、取付基板12上に回動自在に取付けられており、その可動翼片14a,14bの開成時に進入してきたパチンコ玉16は、まず玉転動部材の一例である玉転動板18上に落下し、次いでその玉転動板18上を転動して特定入賞口20,通常入賞口22a,22bのうちいずれかの入賞口内へ転落していく。」(公報2ページ左下欄)
「第2の実施例
次に、本発明の第2の実施例を第5図および第6図(a)(b)に基づいて説明する。
玉転動板18は、取付基板12後面から突出された支軸84に軸受部86が回動自在に外嵌されることにより取付けられている。また、前記玉転動板18側縁には伝動軸88が突出形成されるとともに、取付基板12側壁に形成された長孔90から外方に突出された伝動軸88先端には、係合長溝94が形成された係合部材96が固定されている。そして、その係合長溝94には、カム98から突設された係合ピン100が係合され、モータ36の出力軸101に外嵌固定されたカム98の駆動回転により係合部材96が上下に往復運動し、もって、前記玉転動板18が前記支軸84を中心に左右に揺動するように構成してある(第6図(a)(b))。すなわち前記モータ36、カム98および係合部材96をもって、玉転動板18を変化させる作動部材を構成してある。
前記構造のため、前記玉転動板18が左右どちらかに傾いているときにはパチンコ玉16が中央の特定入賞口20に入りにくくなり、また前記玉転動板18の左右の傾きが水平のときは、パチンコ玉の特定入賞口20へ落下進入の確率が高くなる。」(公報3ページ右下欄?4ページ左上欄)
また、第2の実施例にかかる第5図及び第6図(a)(b)を参照すれば、玉転動板18の下面側部分に支軸84及び軸受部86が位置することも明らかである。

よって、引用文献1における記載事項及び図面を総合的に勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「遊技盤上に設けられている始動入賞口内へのパチンコ玉の落下進入により、左右1対の可動翼片14a,14bが開閉し、可変入賞球装置10内へパチンコ玉16が進入可能となり、
可動翼片14a,14bの開成時に進入してきたパチンコ玉16は玉転動板18上に落下し、次いでその玉転動板18上を転動して特定入賞口20,通常入賞口22a,22bのうちいずれかの入賞口内へ転落していき、
前記玉転動板18側縁には伝動軸88が突出形成されるとともに、伝動軸88先端には係合部材96が固定され、モータ36の出力軸101に外嵌固定されたカム98の駆動回転により係合部材96が上下に往復運動し、もって、前記玉転動板18が前記支軸84を中心に左右に揺動するように構成してあり、すなわち前記モータ36、カム98および係合部材96をもって、玉転動板18を変化させる作動部材を構成してあり、
玉転動板18の下面側部分に支軸84及び軸受部86が位置し、支軸84に軸受部86が回動自在に外嵌され、玉転動板18を変化させる作動部材によって前記玉転動板18が前記支軸84を中心に左右に揺動するように構成され、
前記玉転動板18が左右どちらかに傾いているときにはパチンコ玉16が中央の特定入賞口20に入りにくくなり、また前記玉転動板18の左右の傾きが水平のときは、パチンコ玉の特定入賞口20へ落下進入の確率が高くなる
弾球遊技機。」

5.対比

ここで、引用発明における「特定入賞口20」は本願補正発明における「特定領域部(34)」に相当し、以下同様に、「通常入賞口22a,22b」は「通常領域部(33)」に、「可変入賞球装置10」は「可変入賞手段(25)」に、「始動入賞口」は「所定の入球手段(23,24)」に、「パチンコ玉」は「遊技球(2)」に、「玉転動板18」は「球転動部(35)」にそれぞれ相当する。
また、引用発明について以下の点も云える。
引用発明は「左右1対の可動翼片14a,14bが開閉」するものであるから、本願補正発明における「閉状態と開状態とに亙って可変で」という構成を備え、また「可変入賞手段(25)を開閉させる開閉手段(32,61)」も当然備えている。
引用発明においては「可動翼片14a,14bの開成時に進入してきたパチンコ玉16は…特定入賞口20,通常入賞口22a,22bのうちいずれかの入賞口内へ転落してい」くのであるから、引用発明が本願補正発明の「内部に通常領域部(33)と特定領域部(34)とを有する」という構成も備えていることは明らかである。
引用発明は「遊技盤上に設けられている始動入賞口内へのパチンコ玉の落下進入」によって「可動翼片14a,14bが開閉」するのであるから、該「パチンコ玉の落下進入」を検知する手段は当然備えており、引用発明は本願補正発明における「所定の入球手段(23,24)に入球する遊技球(2)を検知する球検知手段(23a,24a)」を当然有し、また「この球検知手段(23a,24a)により遊技球(2)が検知されたことを条件」という点も満たしている。
引用発明は「可動翼片14a,14bの開成時に進入してきたパチンコ玉16は玉転動板18上に落下し、次いでその玉転動板18上を転動して特定入賞口20,通常入賞口22a,22bのうちいずれかの入賞口内へ転落」するものであるから、引用発明の玉転動板18は「前記可変入賞手段(25)に入賞した遊技球(2)を転動させて通常領域部(33)と特定領域部(34)に誘導する」ものであるといえる。
また引用発明は「玉転動板18を変化させる作動部材によって前記玉転動板18が前記支軸84を中心に左右に揺動する」ものであるから、引用発明の「作動部材」は本願補正発明の「揺動手段(36,62)」に相当する。

したがって、本願補正発明と引用発明とは、
「閉状態と開状態とに亙って可変で且つ内部に通常領域部(33)と特定領域部(34)とを有する可変入賞手段(25)と、所定の入球手段(23,24)に入球する遊技球(2)を検知する球検知手段(23a,24a)と、この球検知手段(23a,24a)により遊技球(2)が検知されたことを条件に可変入賞手段(25)を開閉させる開閉手段(32,61)とを備えた弾球遊技機において、
前記可変入賞手段(25)に入賞した遊技球(2)を転動させて通常領域部(33)と特定領域部(34)に誘導する球転動部(35)を備え、
前記球転動部(35)を揺動させる揺動手段(36,62)を備える
弾球遊技機。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本願補正発明においては、「特定領域部(34)」を「球転動部(35)の前部に一体的に設け」、かつ「軸部材(36d)の延長線上に位置」させているのに対して、引用発明にはかかる構成がない点。

[相違点2]
本願補正発明は「球転動部(35)と特定領域部(34)とを揺動させる共通の揺動手段(36,62)」を備えているのに対して、引用発明の作動部材は玉転動板18を揺動させているものの、その余の構成はない点。

[相違点3]
本願補正発明においては、「特定領域部(34)」が「球転動部(35)の上面よりも上側へ突出する左右1対の爪部(34a)を有し」ているのに対して、引用発明にはかかる構成がない点。

[相違点4]
本願補正発明は「前記球転動部(35)に遊技球(2)を停留させると共に前記特定領域(34)の入口に遊技球(2)を停留させる停留位置と、停留解除位置とに亙って開閉可能な1対の停留部材(37)を備えた球停留手段(37,38)であって、所定の条件の成立により、遊技球(2)の停留を解除すると共に特定領域部(34)の入口を開放して前記遊技球(2)を特定領域部(34)に入賞させ易くする球停留手段(37,38)」を備えているのに対して、引用発明にはかかる構成がない点。

[相違点5]
本願補正発明の揺動手段は「前後方向に向く軸部材(36d)と、軸部材(36d)を回動駆動する駆動手段(36)」とを有し、「軸部材(36d)が球転動部(35)の下面側部分に固定的に連結され」ているのに対して、引用発明にはかかる構成がない点。

[相違点6]
本願補正発明は「揺動手段(36,62)が球転動部(35)と特定領域部(34)とを揺動させる揺動パターンについて、予め設定された複数の揺動パターンの中の1つを、遊技球(2)が可変入賞手段(25)に入賞した個数に基づいて決定」しているのに対して、引用発明にはかかる構成がない点。

6.相違点の判断

上記相違点について検討する。

[相違点1について]
引用発明においては、特定入賞口20が玉転動板18の前部であって、平面視において支軸84の延長線上に位置しているが、玉転動板18と一体に設けられているものではない。なお、引用発明における支軸84は、揺動軸という観点で、本願補正発明の軸部材(36d)に相当するものである。
引用文献2には、底板15上に特定入賞口17を設ける点の記載がある(例えば第2,3図参照)。
引用発明における特定入賞口20と引用文献2の特定入賞口17の機能は同じものであって、また引用発明における球転動板18も引用文献2の底板15も、中央入賞装置における遊技球の転動面である点で共通している。さらに、特定入賞口自体が移動する例も、例えば引用文献7(Vゾーン74、段落【0022】参照)、引用文献8(特別入賞口49、段落【0062】-【0063】参照)、マジックカーペットI(原査定時の引用文献2参照)にあるように周知慣用のものであるから、引用発明へ引用文献2記載の技術の適用にあたり、特定入賞口が可動となることが阻害要因となるものでもない。
したがって、引用発明に引用文献2の技術を適用して、特定入賞口を球転動板18上に一体的に設けることは、弾球遊技機の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)にとって容易である。
そして、引用発明においては、特定入賞口20を球転動板18の前部に設けており、また平面視で支軸84の延長線上に位置するから、上記適用にあたって、玉転動板18の前部かつ支軸18の延長線上に位置するように特定入賞口を設けることも容易である。

[相違点2について]
上記[相違点1について]において検討したように、引用発明において、玉転動板18と特定入賞口20とを一体として揺動させることは容易である。
そして、一体的に揺動させる以上、駆動させる機構を共通化させることは、当業者にとって何ら格別の困難なく想到できる当然の発想に過ぎない。

[相違点3について]
例えば、引用文献9には「前記第3種始動口6の上には鉛直方向、即ち前記ダブリ防止部材140から落下する遊技球を流入させ、それ以外の遊技球の入賞を規制する規制釘162が植設されている。」(段落【0071】、第13図も参照)と記載されているように、入賞口へ遊技球が入球する方向を規制すべく入賞口の左右に流入規制部材を設けることは遊技機において慣用されている技術である。
上記[相違点1について]における検討に加えて、転動板18に設けた特定入賞口について、遊技球の流入方向の規制部材を設けるか否かは、当業者が遊技性を検討するにあたって特定入賞口への入球確率の設計に基づき適宜決定できることに過ぎないから、転動板18に設けた特定入賞口について上記慣用技術を適用し、遊技球の流入方向を規制すべくその左右に流入規制部材を設けることは容易である。そして、遊技球は転動板18上を転動してくるのであるから、その流入方向を規制するにあたっては「球転動部の上面よりも上側へ突出する」必要があることも当然であって、その具体的な形状も当業者にとって通常の創作能力の発揮の範囲内で適宜設計できたものである。

[相違点4について]
引用文献5,6には遊技球の停留部材を設ける点が記載されている(引用文献5の球貯留板45、引用文献6のストッパ部材55)。そして、これらも「遊技球を停留させる停留位置と、停留解除位置とに亙って開閉可能」であるものであって、また停留が解除されることによって、遊技球が特定入賞口へ「入賞し易く」しているものであって、さらに、その配置位置も特定入賞口への流路上であるから特定入賞口への「入口」であると云える。
また、これらの停留部材は「一対」からなるものではないが、機械技術一般において開閉手段としては一つの部材からなるものも複数の部材からなるものも例を挙げるまでもなく慣用されているから、一対の部材から構成することも適宜設計できることである。なお、一対の部材からなる遊技球の停留部材も、例えば引用文献10の球受部材32や引用文献11の停留片47にあるように周知である。
よって、本願補正発明の相違点4にかかる構成も、当業者にとって容易に想到できたことである。

[相違点5について]
本願補正発明においては、前後方向の軸部材(36d)が玉転動部(35)の下面側部分に固定され、軸部材(36d)を回転駆動させて、玉転動部(35)を左右に揺動しているのに対して、引用発明においては、玉転動板18が支軸84に対して回動自在であって、玉転動板18から突出成形された伝導軸88を上下に駆動させることより、支軸84を中心に玉転動板18を左右に揺動させている。なお、引用発明は「支軸84を中心に左右に揺動する」のであるから、支軸84が「前後方向に向く」ことは明らかである。
板部材を揺動させる駆動構造(駆動方法)において本願補正発明と引用発明に相違はあるが、板部材を軸を中心として回転運動させる場合、当業者はその設計にあたり回転運動させるための公知の手法を必要に応じて選択できるものであって、本願補正発明のような、板部材に固定された軸を直接回転駆動させる方法も例を挙げるまでもなく機械技術一般において周知慣用の手法に過ぎず、これを採用することに格別の阻害要因もない。
よって、本願補正発明の相違点5にかかる構成とすることは、当業者にとって容易に想到できたことである。

[相違点6について]
引用文献3には、下ステージ844を昇降させて、遊技者に有利な位置と不利な位置とで変化させる点の記載があり(段落【0141】参照)、さらにステージの移動方向として揺動移動の例、また、設定された条件が成立したときに遊技者に有利になる位置にとどまる時間を長くする例も記載されており(段落【0142】参照)、所定の条件に基づき複数の揺動パターンから決定する技術(以下「引用文献3記載の技術」という。)が開示されているものである。なお、引用文献3には羽根物等にも適用が可能な旨の記載もある(段落【0159】参照)。
また、引用文献4には、条件変動口5,5への遊技球の落入個数によって遊技状態が変動(例として変動時間の短縮や高確率状態への移行)する点が記載され(段落【0048】-【0058】参照)、また引用文献12には可変入賞口30への入賞個数に応じて抽選の当選確率や継続回数を変動させる点が記載され(特に段落【0085】参照)、また引用文献13には大入賞口に入る入賞球の総個数により確率変更を決定する点が記載されている(【請求項6】参照)ことからみて、所定の領域に入球した遊技球の個数によって遊技者にとって有利な状態とするか否かを決定することは、弾球遊技機において従来周知の技術である。
そして、引用文献3記載の技術における「所定の条件」は当業者が適宜設定できるから、上記従来周知の技術を採用して「所定の領域に入球した遊技球の個数」をその条件とし、さらに、該「所定の領域」として引用文献3記載の中央装置5を選択することは当業者にとって何ら困難なことではない。
また、引用文献3のステージは遊技球が転動する面であって引用発明の玉転動板18と共通し、また引用文献3の中央装置5は遊技盤中央に位置する入賞装置である点で本願補正発明の可変入賞球装置10と共通するものであるから、引用発明に引用文献3記載の技術及び上記従来周知の技術を適用して、可変入賞球装置10に入賞した個数に基づいて予め設定された複数の揺動パターンから決定するようにすることは、当業者にとって容易に想到できたことである。

[相違点の判断のむすび]

そうすると、相違点1?6にかかる本願補正発明の構成は、引用発明、引用文献2?6記載の技術及び周知慣用技術等から当業者が容易に想到できた範囲のものというべきである。
そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明、引用文献2?6記載の技術及び周知慣用技術等から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は、引用発明、引用文献2?6記載の技術及び周知慣用技術等に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

7.補正却下の決定におけるむすび

したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

第3.本願発明について

1.本願発明

本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1にかかる発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2[理由]1.」に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2.当審拒絶理由について

平成21年3月27日付の当審拒絶理由は、本願発明は、引用文献1乃至引用文献6(上記第2.[理由]3.を参照)に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

3.引用例

引用文献1及びその記載事項は、上記第2.[理由]4.に記載したとおりのものである。

4.対比・判断

本願補正発明は、上記第2.[理由]2.に記載したように、本願発明に限定的減縮を加えたものであるとして独立特許要件(進歩性)の有無を検討したものであって、上記第2[理由]6.の通り、本願補正発明は、当審拒絶理由において引用された引用文献1?6に記載された発明・技術並びに周知慣用技術等に基づき当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本願補正発明から限定を解除した本願発明も、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

第4.むすび

以上のとおり、平成21年5月29日付の補正は却下され、そして、本願発明は平成21年3月27日付の当審拒絶理由に記載された理由に基づいて特許を受けることができないものであるから、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-06-24 
結審通知日 2009-06-25 
審決日 2009-07-08 
出願番号 特願2001-189527(P2001-189527)
審決分類 P 1 8・ 575- WZ (A63F)
P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小河 俊弥西村 仁志  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 池谷 香次郎
川島 陵司
発明の名称 弾球遊技機  
代理人 岡村 俊雄  

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