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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F04D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F04D
管理番号 1202766
審判番号 不服2007-32415  
総通号数 118 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-11-30 
確定日 2009-08-21 
事件の表示 特願2004-170741「電気比抵抗センサーを使用する安定液のスライム管理方法。」拒絶査定不服審判事件〔平成17年12月22日出願公開、特開2005-351121〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成16年6月9日の出願であって、平成19年10月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月30日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年12月27日付けで手続補正がなされたものである。
その後、平成21年3月18日付けで、審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ、平成21年4月27日に回答書が提出された。

第2 平成19年12月27日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成19年12月27日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正の内容、補正後の本願発明
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を次のとおりに補正しようとする補正事項を含むものである。
「【請求項1】安定液を取り扱う作業機器に電気比抵抗センサーを取り付けることによって、作業中にスライムの処理状況を連続して確認することを特徴とする電気比抵抗センサーを使用する安定液のスライム管理方法。」

上記補正は、補正前の請求項1に係る発明の「スライムの処理状況を確認する」について、「連続して」確認するものに限定するものであって、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下検討する。

2.補正の適否の判断
(1)刊行物及びその記載内容
刊行物1:特開昭58-50224号公報
刊行物2:特開2003-193469号公報

本願出願前に頒布された上記刊行物1には、図面とともに次のことが記載されている。
(1a)「(1)機械掘削工法において、トレミー管の少なくとも先端部に1種以上のスライム検知センサーを一体的に設置し、地上に前記センサーからの信号を処理する信号処理回略を設け、沈積スライムの有害性の判断と掘削部先端形状を確認することを特徴とするスライム検知装置。」(特許請求の範囲)、
(1b)「従来、スライムを除去する方法としては、トレミー管先端部より圧縮空気を噴出してスライムを安定液と共に排出するエアリフト底ざらい方式、又はトレミー管先端周囲に配置した噴射孔から清水を噴射してスライムを舞上らせ、再び沈降してくる前にコンクリートを打設するジエツト底ざらい方式などが知られている。
しかし、従来これらの方法は殆ど現場作業員の経験や勘のみに依存して操作され、しかもスライム除去作業後の残留スライムの有無を検出していないので、削孔工法の種類や孔壁土質、安定液成分、更には地下水位などによりその生成量が大きく変化するスライム、特に有害スライムを完全に除去するにはこれらの除去方法のみでは不十分である。」(2頁左上欄5?19行)、
(1c)「また、従来スライムの存在を検知する方法として一対の電極を埋込んだ重錘を先端に設けた目盛つきケーブルをコンクリート打設前に掘削孔底に下しつつ、電極間の電気伝導度あるいば電気抵抗値を地上で観測して、泥水部とスライムとの界面を検知する方法が試みられている。この方法は、スライム部と泥水部とにおいて電気伝導度が異なる現象を基にしている。そしてケーブルを引上げた後、スライム除去パイプを掘削孔に挿入してスライム除去作業を行なう。
この場合、スライムが完全に除去されたかどうかを確認するため、スライム除去用パイプを掘削孔から引上げた後、再び上記ケーブルを下して電気伝導度を測定するという面倒な作業が必要であつた。」(2頁左上欄20行?右上欄14行)、
(1d)「本発明は上記問題点を解決することを目的としてなされたものであつて、トレミー管の少なくとも先端にスライム検知センサーを一体的に設け、該センサーの信号により有害スライムが検知されたときにはスライム除去手段によりスライムを除去しつつ、あるいはその後で残留スライムの有無を確認し残留スライムが無くなつた後直ちに上記トレミー管よりコンクリート打設を行なうことができるように構成することにより上記目的を達成せんとするものである。」(2頁左下欄2?11行)
(1e)「第1図は本発明の一実施例が適用される状態を示す掘削孔の地下断面図である。1は掘削機により掘削された孔で、孔内には孔壁を安定化するための安定液2が充満され、孔底にはスライム3が沈積している。4は鉄筋かご、5はトレミ一管である。・・・トレミー管5は、図示はしないがその内側又は外側に公知のスライム除去装置を備え、また下端が開口していて上端からコンクリートを注入しつつ引上げることによりコンクリートを打設する。トレミー管5の先端部にはスライム検知センサー6が設けられ、その信号線と電源線はトレミー管5の最下部の部分の管壁中に埋込まれて適当な高さまで上昇し、そこで防水型コネクタ7によりケーブル8と接続され、ケーブル8は地表に導かれて信号処理回路9へ接続される。またトレミー管5の上部にも先端部に設けられたセンサー6と同じ特性を有するセンサー10が設けられている。
センサー6,10としては前述の電気伝導度あるいは電気抵抗値測定用の一対の電極その他のセンサーを複数種類用い、沈積スライムの有害性判定の信頼性を高める。」(2頁左下欄13行?右下欄16行)、
(1f)「まず、電気抵抗値測定用センサーの場合について述べる。いま、スライムが沈積していないか、沈積していても有害なものではないとすると、センサー6(A,B)とセンサー10(C,D)とは同じ条件下に置かれることになるので、第4図のブリツジ回路19は平衡し、端子24には出力は発生しない。したがつて・・・、比較器21-1での比較結果の信号によりマイクロプロセツサ14はメモリ15の格納情報に従つて有害スライムが存在しないと判別し、その結果を出力部13から表示する。
次に有害スライムが存在し、第1図あるいは第3図のように下側のセンサー6(A,B)がスライム3中にあり、上側のセンサー10(C,D)がスライム3外にあるものとする。このとき各センサーの電極間の抵抗値は、電極A,B間の方が電極C,D間より大きくなり、第4図に示すブリツジ回路の平衡がくずれて端子24間に電位が発生する。この出力電位は増幅回路20-1で増幅されると、・・・、マイクロプロセツサ14はスライムが存在すると判別し、その結果を出力部13から表示する。」(3頁左下欄17行?4頁左上欄1行)、
(1g)「スライムの存在が検知されたときは、出力部13を見ながら、図示はしていないが付設されている公知のスライム除去手段、例えばエアリフト法やサンクシヨンポンプなどにより、有害スライムの除去作業を開始する。出力部13の表示が有害スライムの有から無に変つたところでスライム除去作業を停止し、直ちにトレミー管5から生コンクリートを注入してコンクリート打設を行なう。」(4頁左上欄2?9行)。

上記記載によれば、刊行物1には、従来、トレミー管に備えたスライム除去手段を用いる場合、経験や勘のみに依存しており有害スライムを完全に除去できず、また、目盛つきケーブルを掘削孔底に下してスライムを検知するものにおいては、ケーブルを引上げた後、スライム除去作業を行ない、スライムが除去されたかどうかを確認するため、スライム除去用パイプを引上げた後、再びケーブルを下してスライムを検知する面倒な作業が必要であった(記載事項(1b)(1c))との課題を解決するために、トレミー管に備えたスライム除去装置によってスライムの処理作業を実施しつつ、トレミー管に備えたスライム検知センサーを用いて、スライムの残存状況を確認し(記載事項(1d))、有害スライムが無いとの信号が得られたら作業を停止する(記載事項(1g))ことが示されており、スライム除去作業中にスライムの処理状況を連続して確認していることは明らかである。

したがって、上記記載事項及び図面の記載によれば、刊行物1には次の発明が記載されていると認められる。
「スライム除去装置を備えたトレミー管の少なくとも先端部に、スライム検知センサーとして、電気伝導度あるいは電気抵抗値測定用センサーを一体的に設置し、スライム除去作業中にスライムの処理状況を連続して確認する、スライム検知センサーを使用するスライム管理方法。」(以下、「刊行物1記載の発明」という。)

同じく上記刊行物2には、図面とともに、次のことが記載されている。
(2a)「【請求項1】多段拡径場所打ちコンクリート杭における拡径部のスライムの有無を測定する方法であって、
鉛直なスライム測定軸の先端に設けた孔壁測定用プローブで杭孔の形状と深度を測定する段階と、
前記スライム測定軸の中間部に設けた開閉自在なアーム機構を開いて前記拡径部に沈降したスライムの有無を測定するのに適切な部位に該アーム機構のアーム先端を配置し、同アーム先端に設けたセンサ又は重錘等のスライム測定部材によりスライムの有無を測定した後にアーム機構を閉じる操作を、杭孔の拡径部毎に行う段階と、から成ることを特徴とする、多段拡径場所打ちコンクリート杭における拡径部のスライム測定方法。」、
(2b)「【0007】・・・本発明の目的は、多段拡径杭の軸部に設けた拡径部のスライム処理前後で、スライムが確実に除去されていることをリアルタイムで確認できるスライム測定方法とその装置を提供することである。」、
(2c)「【0016】前記スライム測定装置1は、ワイヤ等の吊り部材2で水平部材3を介して吊り下げられたスライム測定軸4の先端に孔壁測定用プローブ5が設けられ、同スライム測定軸4の中間部に開閉自在なアーム機構6が設けられて成る。
【0017】前記アーム機構6は、アーム7の先端にセンサ8及び検尺用テープ9aのついた重錘9等のスライム測定部材が設けられ、図2に示したように、該アーム機構6が開いた状態で前記スライム測定部材が前記多段拡径杭における拡径部Kに沈降したスライムを測定するのに適切な部位に到達する構成とされている・・・。
【0018】具体的に、前記スライム測定装置1は、前記水平部材3の略中央部位に前記スライム測定軸4の頭部を溶接等の固定手段により固定し、前記水平部材3の左右両端部に設けられた孔にそれぞれワイヤ2を通してバランス良く吊り下げられて、杭孔Aの軸心位置に保持される構成で実施されている。前記孔壁測定用プローブ5は杭孔Aの形状及び深度を測定する超音波孔壁測定器であり、前記スライム測定軸4の先端部に、後述するベース部材10を介して一体的に取り付けて実施されている。前記センサ8は、電気比抵抗値の大小によりスライムを測定する電気比抵抗測定器が実施されている・・・。」、
(2d)「【0032】・・・
<実験方法>図5Bに、スライム処理前のスライム測定装置1のアウトプットを示し、図6Aには、図5Bのアウトプットから得られたセンサ8による電気比抵抗値を縦軸に、測定時間を横軸にとったグラフを示した。拡径部Kのスライム処理を行う前は、センサ8が拡径部Kに触れた時に電気比抵抗値が大きくなっていることにより、スライムが沈降していると判断できる。スライム処理を行った後は、センサ8が拡径部Kに触れても電気比抵抗値が一定であり、スライムが除去されていると判断できた。・・・」
(2e)「【0033】図5B及び図6Aの結果から、スライム測定装置1が軸部の安定液中を降下して図5Aの拡径部Kに到達するまでは電気比抵抗値で2.8?2.9(Ω・m)の値を示し、図5Aの拡径部Kに到達すると27.8?35.8(Ω・m)の電気比抵抗値を示した場合は砂及び粘土を主成分としたスライムと考えられ(図6B参照)、その後測定装置を図5Aの拡径部Kから離すと2.9?3.6(Ω・m)の安定液中の電気比抵抗値に落ち着いていることにより、図5Aの拡径部Kにおけるスライム測定が確実に行われていること判断できる。」。

(2)対比
補正発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の発明のトレミー管に設けられた「スライム除去装置」は、安定液中のスライムを除去する作業を行うものであるから、「スライム除去装置を備えたトレミー管」及び「スライム管理方法」は、補正発明の「安定液を取り扱う作業機器」及び「安定液のスライム管理方法」に相当し、また、補正発明の「電気比抵抗センサー」は、「スライム検知センサー」の一種であるから、両者は、
「安定液を取り扱う作業機器にスライム検知センサーを取り付けることによって、作業中にスライムの処理状況を連続して確認するスライム検知センサーを使用する安定液のスライム管理方法。」である点で一致し、次の点で相違する。
相違点:「スライム検知センサー」が、補正発明では、「電気比抵抗センサー」であるのに対し、刊行物1記載の発明では、「電気伝導度あるいは電気抵抗値測定用センサー」である点。

(3)判断
上記相違点について検討すると、刊行物2には「電気比抵抗センサー」の電気比抵抗値の大小によりスライムを測定することができることが記載されており、刊行物1記載の発明において、「スライム検知センサー」として「電気比抵抗センサー」を用いることは、刊行物2記載の発明に基づいて当業者が容易になし得ることである。
そして、補正発明の作用効果は、刊行物1、2記載の発明から予測することができるものであって、格別顕著な効果を奏するとは認められない。
したがって、補正発明は、刊行物1及び2記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成19年12月27日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成19年7月6日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち請求項1に係る発明は次のとおりである。
「安定液を取り扱う作業機器に電気比抵抗センサーを取り付けることによって、作業中にスライムの処理状況を確認することを特徴とする電気比抵抗センサーを使用する安定液のスライム管理方法。」(以下、「本願発明」という。)

2.刊行物の記載内容
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物1、2及びその記載内容は、前記「第2 2.(1)」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記「第2」で検討した補正発明から、「連続して」との特定事項を省略したものである。
そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに限定事項を付加したものに相当する補正発明が、前記「第2 2.(3)」に記載したとおり、刊行物1及び2記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1及び2記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-06-18 
結審通知日 2009-06-24 
審決日 2009-07-07 
出願番号 特願2004-170741(P2004-170741)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F04D)
P 1 8・ 575- Z (F04D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石村 恵美子  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 伊波 猛
関根 裕
発明の名称 電気比抵抗センサーを使用する安定液のスライム管理方法。  
代理人 池田 憲保  
代理人 福田 修一  
代理人 福田 修一  
代理人 福田 修一  
代理人 池田 憲保  
代理人 池田 憲保  

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