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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09F |
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管理番号 | 1202927 |
審判番号 | 不服2008-10043 |
総通号数 | 118 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-10-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-04-21 |
確定日 | 2008-06-24 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第 9889号「表示装置及び時計」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 8月 5日出願公開、特開平 9-204147〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成9年1月23日(パリ条約による優先権主張、平成8年1月23日、フランス)の出願(特願平9-9889号)であって、平成20年1月11日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成20年4月21日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1?11に係る発明は、平成19年5月22日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載から見て、その特許請求の範囲の請求項1?11に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。 「カラー装飾デザイン(11)と、 該カラー装飾デザイン(11)が観察される前面(5a)と、拡散リフレクタ(12)が対面して配置され且つ該カラー装飾デザイン(11)が配置される後面(5b)とを有し、電圧の印加によって不透明状態から透明状態へ変化することのできる光学シャッタ(5)と、 該光学シャッタ(5)の状態の変化のために必要な電圧を印加するために配置された制御装置(9)を含む電源(8)とを備え、 前記拡散リフレクタ(12)は非ランバートタイプのものであり、前記カラー装飾デザイン(11)は前記拡散リフレクタ(12)の表面の光学的性質を変更することなく該拡散リフレクタ(12)に直接に印刷されたインクによって形成されることを特徴とする表示装置。」 第3 引用例 1 引用例1 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開昭50-116298号公報(以下、「引用例1」という)には、次の事項が記載されている。(下記「2 引用例1に記載された発明の認定」において直接引用した箇所に下線を付した。) 「本発明は、偏光を利用した反射型液晶表示装置に関し、特にその表示を色彩豊かにした表示装置に関するものである。液晶表示装置には、動的散乱方式電界効果方式とが知られ、表示のコントラスト、動作電圧および消費電流の点で優位にある電界効果方式が多く応用使用されている。電界効果型液晶表示装置の基本的構造は、第1図に示すように、液晶物質1が所定の表示用パターン電極2を有する2枚のガラス2,3の間に挟まれ、ガラス2,3の外側には互いに直交する直線偏光板4,5が配置される構造になっている。そして、反射型表示装置として利用する場合は、反射板6が表示装置の後面におかれる。一枚に用いられる反射板は光の高反射率と、良い散乱性とを兼ね備える必要から、透明な物質の場合、一方の面に銀、アルミニウム、ニッケル等の蒸着による鏡面6aを形成し、他面に粗面を形成し散乱面6bを形成している。」(第1ページ右下欄第2?19行) 「即ち、本発明は前記反射板6の一方の面(例えば光入射面または液晶セルに対応する面)に透明または不透明な着色を施すかまたは反射板6の材質に着色透明材を使用することにより、第2図に示すような、電極2部分をなす表示部Aまたは、前記表示部A以外の部分Bを自由に色別可能にし、また、A部以外の部分B部に様々な模様・文字等を画くことができるようにしたものである。 実施例1 第3図(イ)に示すように、薄い緑色に着色した厚さ1mmのアクリルガラス片面を液体ホーニングをして粗面6bとし、他の面に鏡面6aとするアルミニウムを蒸着して液晶表示器用の反射板6を作り、第1図に示すように反射板をセットした。この際、電圧印加部が濃紺を呈するような偏光板を使用した結果、第2図に示す表示部A以外の部分Bが淡い緑色である表示が得られた。 実施例2 第3図(ロ)に示すように、薄い赤色の厚さ1mmの無機ガラスの片面をサンドブラストして乱反射用粗面6bとし、他の平滑面に銀を蒸着して反射鏡6aを形成した後、前記粗面6bの表面に各種の模様7を印刷し、液晶表示器用の反射板6を作り、表示装置にセットした。この際、電圧印加部が濃紺を呈するような偏光板を使用した結果、第2図に示す表示部A以外の部分Bが淡赤色で、かつ各種の模様のある表示が得られた。」(第2ページ左上欄第11行?同ページ右上欄第17行) 2 引用例1に記載された発明の認定 上記記載から、引用例1には、 「液晶物質1が所定の表示用パターン電極2を有する2枚のガラス2,3の間に挟まれ、ガラス2,3の外側には互いに直交する直線偏光板4,5が配置される効果型液晶表示装置の基本的構造を有し、 反射板6が表示装置の上記基本的構造の後面におかれている反射型表示装置であり、 反射板は光の高反射率と、良い散乱性とを兼ね備えるように形成されたものであり、 反射板6は、薄い赤色の厚さ1mmの無機ガラスの片面をサンドブラストして乱反射用粗面6bとし、他の平滑面に銀を蒸着して反射鏡6aを形成した後、前記粗面6bの表面に各種の模様7を印刷して作り、表示装置にセットしたものであり、 電圧印加部が濃紺を呈するような偏光板を使用した結果、表示部A以外の部分Bが淡赤色で、かつ各種の模様のある表示が得られる表示装置。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 3 引用例2 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平5-289052号公報(以下、「引用例2」という)には、次の事項が記載されている。(下記「第5 当審の判断」において参照する記載に下線を付した。) 「【0007】 【実施例】図1は、本発明の一実施例である液晶表示装置1の構成を示す断面図である。液晶表示装置1は、第1偏光板2、第1位相差板3、第2位相差板4、液晶表示素子5、第2偏光板6、および反射板7をこの順序で積層して構成される。第1および第2偏光板2,6は、単体透過率44.5%、偏光度97.8%のニュートラルグレイタイプの偏光板を用いる。たとえば、日東電工株式会社製のF-1205DuN(商品名)を用いる。第1および第2位相差板3,4は、それぞれポリカーボネートなどの1層の一軸延伸高分子フイルムから成り、厚みは50μm程度であり、リタデーション値は400nm?470nmのものを用いる。各位相差板の遅相軸の交差角度は、35度?55度に設定する。 【0008】液晶表示素子5は、ガラス、プラスティックなどから成る一対の透光性基板8,9の対向する表面に、それぞれITO(インジウム錫酸化物)などから成る電極10,11およびポリイミドなどからなる配向膜12,13を形成し、これらの透光性基板8,9間に左旋性カイラル物質を添加した液晶14を封入して構成される。液晶分子の捩れ角は、240度であり、d・Δn(dは液晶層14の厚みであり、Δnは液晶14の屈折率異方性である)=0.80?0.94に設定する。電極の形成パターンは、セグメント型、単純マトリクス型、アクティブマトリクス型のいずれであってもよい。 【0009】反射板7は、無指向性反射板であり、合成樹脂製の基板15の前記液晶表示素子5側表面にアルミニウムなどから成る反射膜16を形成して構成される。」 4 引用例3 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開昭60-117281号公報(以下、「引用例3」という)には、次の事項が記載されている。(下記「第5 当審の判断」において参照する記載に下線を付した。) 「この発明は、要約すれば、表面に凹凸を形成した合成樹脂基材と、該凹凸面にコーティングされた合成樹脂コーティング層と、該コーティング層上に形成された金属薄膜層とを備える液晶表示装置用無指向性反射板、ならびに合成樹脂基材の一方面に凹凸を形成し、該凹凸面を消失させない程度に、該凹凸面に合成樹脂でコーティングを施し、然るのちコーティング層を覆う金属薄膜層を形成する、液晶表示用無指向性反射板の製造方法である。」(第2ページ右上欄第6?14行) 第4 対比 1 引用発明と本願発明とを対比する。 引用発明の「各種の模様」は、表示部に表示されるものであるから、本願発明の「カラー装飾デザイン」に相当する。 引用発明の「反射板」は、高反射率と、良い散乱性とを兼ね備えるように形成されたものであるから、本願発明の「拡散リフレクタ」に相当する。 また、引用発明の「液晶物質1が所定の表示用パターン電極2を有する2枚のガラス2,3の間に挟まれ、ガラス2,3の外側には互いに直交する直線偏光板4,5が配置される効果型液晶表示装置」は、本願発明の「電圧の印加によって不透明状態から透明状態へ変化することのできる光学シャッタ(5)」及び「該光学シャッタ(5)の状態の変化のために必要な電圧を印加するために配置された制御装置(9)」に相当する。 そして、引用発明における上記の「液晶物質1が所定の表示用パターン電極2を有する2枚のガラス2,3の間に挟まれ、ガラス2,3の外側には互いに直交する直線偏光板4,5が配置される効果型液晶表示装置」の基本的構造は、前面側から観察されるものであることは当然のことであり、また、制御装置や電源の構造を含むものであることは技術常識から当然であるといえることをも勘案すれば、引用発明の「液晶物質1が所定の表示用パターン電極2を有する2枚のガラス2,3の間に挟まれ、ガラス2,3の外側には互いに直交する直線偏光板4,5が配置される効果型液晶表示装置の基本的構造を有し、反射板6が表示装置の上記基本的構造の後面におかれている反射型表示装置であり、反射板は光の高反射率と、良い散乱性とを兼ね備えるように形成されたものであり、反射板6は、・・・前記粗面6bの表面に各種の模様7を印刷して作り、表示装置にセットしたものであ」ることは、本願発明の「該カラー装飾デザイン(11)が観察される前面(5a)と、拡散リフレクタ(12)が対面して配置され且つ該カラー装飾デザイン(11)が配置される後面(5b)とを有し、電圧の印加によって不透明状態から透明状態へ変化することのできる光学シャッタ(5)と該光学シャッタ(5)の状態の変化のために必要な電圧を印加するために配置された制御装置(9)を含む電源(8)とを備え」ることに相当する。 引用発明の「反射板6は、薄い赤色の厚さ1mmの無機ガラスの片面をサンドブラストして乱反射用粗面6bとし、・・・前記粗面6bの表面に各種の模様7を印刷して作」ったことと、本願発明の「カラー装飾デザイン(11)は前記拡散リフレクタ(12)の表面の光学的性質を変更することなく該拡散リフレクタ(12)に直接に印刷されたインクによって形成される」こととは、「カラー装飾デザインは拡散リフレクタに直接に印刷されたインクによって形成される」ことで一致する。 2 一致点 よって、本願発明と引用発明は、 「カラー装飾デザインと、 該カラー装飾デザインが観察される前面と、拡散リフレクタが対面して配置され且つ該カラー装飾デザインが配置される後面とを有し、電圧の印加によって不透明状態から透明状態へ変化することのできる光学シャッタと、 該光学シャッタの状態の変化のために必要な電圧を印加するために配置された制御装置を含む電源とを備え、 前記カラー装飾デザインは前記拡散リフレクタに直接に印刷されたインクによって形成される表示装置。」である点で一致し、次の各点で相違する。 3 相違点 (1)相違点1; 拡散リフレクタに関して、本願発明においては「非ランバートタイプ」のものであるのに対し、引用発明においては「非ランバートタイプ」のものであるか否かが明確でない点。 (2)相違点2; カラー装飾デザインを拡散リフレクタに直接印刷するにあたり、本願発明においては「拡散リフレクタの表面の光学的性質を変更することなく」印刷するものであるのに対して、引用発明においては、「拡散リフレクタの表面の光学的性質を変更することなく」印刷するものであるか否かが明確でない点。 第5 当審の判断 1 上記各相違点について検討する。 (1)相違点1について 引用例2、3の記載(下線部参照)から、引用例2,3には、合成樹脂製基板の表面に金属の薄膜を形成した無指向性反射板を具備する液晶装置が記載されている。そして、本願明細書の【0014】段落の「使用される拡散リフレクタは好ましくは最適化された光学的性質、すなわち全入射光を全ての方向に拡散するランバートの拡散リフレクタとは反対の性質をもった金属メッキされたプラスチックシートによって形成される。」の記載にかんがみれば、上記引用例2,3に記載の「合成樹脂製基板の表面に金属の薄膜を形成した無指向性反射板」は、「非ランバートタイプの拡散リフレクタ」であるということができる。 したがって、液晶装置に非ランバートタイプの拡散リフレクタを用いることは、例えば、引用例2,3にも記載されているように周知の技術であるといえるから、引用発明においても、反射板として上記周知の非ランバートタイプの拡散リフレクタを用いて上記相違点1に係る発明特定事項を得ることは当業者が容易に想到し得ることである。 (2)相違点2について 引用発明の反射板においては、「光の高反射率と、良い散乱性」という光学的性質を兼ね備える必要があることは、引用例1にも記載されているところである。そして、その光学的性質は、模様が印刷された後においても確保されなければならないことは、技術常識から考えて当然の事項である。 したがって、模様を印刷する際のインクの選択において、反射板の表面の光学的性質をできるだけ変更することがないインクを選択することは、当業者が当然に考慮すべき事項であるといえるから、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得たことである。 2 本願発明が奏する作用効果 そして、本願発明によってもたらされる効果は、引用発明及び上記周知技術事項から、当業者が予測し得る程度のものである。 3 まとめ したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6 むすび 以上より、本願発明は、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-01-20 |
結審通知日 | 2009-01-27 |
審決日 | 2009-02-10 |
出願番号 | 特願平9-9889 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G09F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 藤田 憲二 |
特許庁審判長 |
末政 清滋 |
特許庁審判官 |
安田 明央 森林 克郎 |
発明の名称 | 表示装置及び時計 |
代理人 | 廣瀬 繁樹 |
代理人 | 島田 哲郎 |
代理人 | 水本 義光 |
代理人 | 丹羽 匡孝 |
代理人 | 鶴田 準一 |
代理人 | 青木 篤 |