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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1202939
審判番号 不服2006-9476  
総通号数 118 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-05-11 
確定日 2009-08-27 
事件の表示 特願2003-373837「弾球遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 5月26日出願公開、特開2005-131329〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第一、手続きの経緯
本願は、平成15年10月31日の出願であって、平成17年12月19日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、平成18年3月3日付けで手続補正がなされ、同年4月3日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月11日に拒絶査定不服の審判請求がなされるとともに、同年5月26日付け手続補正書によって明細書の一部が補正されたものである。

第二、平成18年5月26日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年5月26日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)補正前・後の本願発明
本件補正は、補正前(平成18年3月3日付け手続補正により補正された特許請求の範囲)の請求項1乃至3のうち、請求項1に記載された、
「 遊技球の流下方向に変化を与える遊技部材を備える遊技盤と、
前記遊技盤を取り付ける本体部と、
遊技動作を制御する主制御基板と、
所定の表示領域を有する表示装置と、
前記遊技動作に応じて、前記表示領域における所定の演出を表示制御する副制御基板とを備え、
前記遊技盤の少なくとも一部は透光性部材で形成され、
前記表示装置は、前記表示領域が前記透光性部材を介して視認可能になるよう前記本体部に備えられ、
前記副制御基板は、前記演出に関する情報を記憶した着脱可能な記憶手段を有し、前記本体部に備えられることを特徴とする弾球遊技機。」を、
「 遊技球の流下方向に変化を与える遊技部材を備える遊技盤と、
前記遊技盤を取り付ける本体部と、
所定の表示領域を有し、裏面の略全域に導電体が配備されている表示装置と、
前記導電体の裏側に設けられ、遊技動作を制御する主制御基板と、
前記表示装置の裏面と平行な方向で前記主制御基板と並び前記導電体の裏側に設けられ、前記遊技動作に応じて、前記表示領域における所定の演出を表示制御する副制御基板とを備え、
前記遊技盤の少なくとも一部は透光性部材で形成され、
前記表示装置は、前記表示領域が前記透光性部材を介して視認可能になるよう前記本体部に備えられ、
前記副制御基板は、前記演出に関する情報を記憶した着脱可能な記憶手段を有し、前記本体部に備えられることを特徴とする弾球遊技機。」と補正するものである。

上記補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「表示装置」について「裏面の略全域に導電体が配備されている」と限定し、同「主制御基板」について「導電体の裏側に設けられ」と限定し、同「副制御基板」について「表示装置の裏面と平行な方向で前記主制御基板と並び前記導電体の裏側に設けられ」と限定するものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(2)そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのか(上記改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(あ)刊行物に記載された発明
刊行物1;特開2002-200231号公報
刊行物2;特開平6-121871号公報

原査定の拒絶理由通知に引用された、特開2002-200231号公報(以下、「引用刊行物1」という。)には、以下の記載がある。
(1-1)「【0007】詳述すると、従来遊戯板に描かれていた画像に替えて、遊戯板の背面に設置したモニター部に電気的に画像を表示し、それを透明な遊戯板を透視して遊戯者が目視可能なパチンコ遊戯機とすることにより、パチンコ遊戯機の本体を交換しなくとも、パチンコ遊戯の種類を変更することが可能なパチンコ遊戯機を提供することを課題とする。」、
(1-2)「【0009】このように構成することで、従来、パチンコ遊戯機を交換することでしか行うことができなかったパチンコ遊戯機の遊戯の種類の変更を、前記記憶手段に記憶させたパチンコ遊戯機制御プログラムを交換するだけで変更することが可能となる。ここで、「パチンコ遊戯機制御プログラム」とは、パチンコ遊戯機の動作を制御するために前記制御手段上で実行されるプログラムであり、パチンコ遊戯機の機種毎に異なるものである。
【0010】また、このように構成することで、従来は、遊戯板上に直接絵が描かれており、パチンコ遊戯機を交換することでしか変更することができなかった絵に替わって、モニター部に電気的に画像を表示することとしたので、パチンコ遊戯機を交換しなくとも画像を変更することが可能となる。
【0011】さらに、このように構成することで、前記パチンコ遊戯機制御プログラムに従い、制御手段がモニター部に表示する画像と出玉とを連繋して制御することが可能となる。」、
(1-3)「【0030】本発明の第9の構成は前記記憶手段は、着脱可能な記憶媒体を有し、この記憶媒体を交換することで前記パチンコ遊戯機制御プログラムが変更可能に構成されることを特徴とする前記第1?第8のいずれかの構成に記載のパチンコ遊戯機である。
【0031】このような構成にすることによって、記憶媒体を交換することで記憶手段に記憶させるパチンコ遊戯機制御プログラムを変更することが可能となり、パチンコ遊戯機の交換作業をしなくともパチンコ遊戯機の遊戯の種類の変更を行うことが可能となる。」、
(1-4)【0036】図1は本発明の第1の実施形態を示す分解斜視図である。本実施の形態のパチンコ遊戯機は、遊戯機本体1と、遊戯機本体1の前面に画像11を表示するためのモニター部2が嵌め込まれ固定されている。このモニター部2は後述の遊戯板3とほぼ同じ形状である。さらに、このモニター部2の全面には、モニター部2を透視可能なように透明な材料からなる遊戯板3が設けられている。
【0037】・・・また、図示はしないが、遊戯機本体内部には、コントロール基盤が設置されており、コントロール基盤中の記憶手段に記憶されたパチンコ遊戯機制御プログラムに従い制御手段が、前記モニター部2に表示する画像11および出玉を制御している。」、
(1-5)「【0039】また、透明な遊戯板3上には、従来の遊戯板と同様に多数の釘7とともに遊戯球の進路を規制する規制板8が存在している。・・・
【0040】・・・遊戯板3は、モニター部2の前面にモニター部2を透視できるように配置され、その結果、遊戯中に遊戯者は透明な遊戯板3上を転動する遊戯球と背面のモニター部2の画像11とを同時に重ね合わせて目視することとなる。遊戯板3は、例えばアクリル樹脂(PMMA)等の透明な樹脂から製造されている。
【0041】また、図示しないコントロール基盤は、複数のパチンコ遊戯機制御プログラムを記憶した記憶媒体を有した記憶手段と、このパチンコ遊戯機制御プログラムが実行される制御手段とを有している。制御手段上で実行されるパチンコ遊戯機制御プログラムに従い、後述する遊戯球測定手段、モニター部2に表示される画像11及び出玉等が制御される。
【0042】また、異なるパチンコ遊戯機制御プログラムを記憶した記憶媒体を交換することで、異なる種類の遊戯をそのパチンコ遊戯機で実行することが可能となる。つまり、そのパチンコ遊戯機で実行できるパチンコ遊戯機制御プログラムを変更することが可能となる。記憶媒体としては、パチンコ遊戯機制御プログラムが保存可能なROM等公知のものを使用することが可能である。
【0043】モニター部2に表示されている画像11も、パチンコ遊戯機制御プログラムを別のものとすることで変更される。このように、本発明では、パチンコ遊戯機を交換しなくとも、パチンコ遊戯機制御プログラムを変更することで、容易にパチンコ遊戯の種類を変更することが可能となる。」。

したがって、これらの記載をまとめると、引用刊行物1には、
「 遊戯機本体1と、遊戯機本体1の前面に画像11を表示するためのモニター部2が嵌め込まれ固定され、このモニター部2の前面には、モニター部2を透視可能なように透明な材料からなる遊戯板3が設けられ、
遊戯板3の背面に設置したモニター部2に電気的に表示された画像11を、透明な遊戯板3を透視して遊戯者が目視可能とし、
異なるパチンコ遊戯機制御プログラムを記憶した記憶媒体を着脱可能に交換することで、異なる種類の遊戯を実行することが可能となるパチンコ遊戯機において、
透明な遊戯板3上には、多数の釘7とともに遊戯球の進路を規制する規制板8が存在し、
モニター部2に表示される画像11は、パチンコ遊戯機制御プログラムを別のものとすることで変更され、
遊戯機本体内部には、コントロール基盤が設置され、当該コントロール基盤は、パチンコ遊戯機の動作を制御するために実行されるパチンコ遊戯機制御プログラムを記憶した記憶媒体を有した記憶手段と、このパチンコ遊戯機制御プログラムが実行される制御手段とを有し、
コントロール基盤中の記憶手段に記憶されたパチンコ遊戯機制御プログラムに従い制御手段が、前記モニター部2に表示する画像11と出玉とを連繋して制御する、パチンコ遊戯機。」の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

原査定時に通知された、特開平6-121871号公報(以下、「引用刊行物2」という。)には、以下の記載がある。
(2-1)「【0017】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0018】図1はパチンコ遊技機1の前面斜視図で、・・・」、
(2-2)「【0020】図2のように遊技盤3の表面には、ガイドレ-ル16で囲われた遊技部17のほぼ中央に遊技映像、情報を表示可能な映像表示装置20が、その下方に変動入賞装置21が配設される。」、
(2-3)「【0024】映像表示装置20は、図3?図8のように遊技盤3の表面から遊技盤3に設けられた開口部(図示されない)に装着される前面ユニット30、および遊技盤3の裏面側に配設される映像表示ユニット31からなる。」、
(2-4)「【0029】映像表示ユニット31は、液晶表示器(映像表示器)44のフレーム45に支持された液晶表示パネル(映像表示パネル)46の背面にバックライト47が配設されると共に、フレーム45の裏面にバックライトカバー48が嵌め合わされ、このカバー48を間にバックフレーム49を介して制御基板(映像制御装置)50が組付けられ、これがユニットケース51の前ケース52に収装される。」、
(2-5)「【0032】映像制御装置50には、遊技用の表示データが格納されたカセット式のメモリ111(後述する)のコネクタ60が設けられる。」、
(2-6)「【0051】バックライト47から発生するノイズは、映像制御装置50との間に設けたノイズ遮断部材のバックライトカバー48によって遮断され、映像制御装置50に影響を及ぼすことはない。
【0052】遊技盤を入替えるとき等、映像表示ユニット31を再利用することが可能であり、その映像表示ユニット31を新しく入れる遊技盤に取付ければ、入替え費用を大幅に削減することができる。映像制御装置50にはコネクタ60にカセット式のメモリ111を交換できるようになっており、そのメモリ111を新機種の遊技用の表示データを格納したものに変えることで、最新の遊技を実現でき、種々対応できる。」、
(2-7)「【0066】99は打球発射装置の制御装置、100は遊技盤3の各入賞装置、表示装置等を制御する遊技制御装置である。
【0067】図11は遊技制御装置100、映像制御装置50の制御系のブロック構成を示す。
【0068】遊技制御装置100は、役物用CPU101、ROM102、RAM103、バッファゲート104、出力ポート105等からなり、ROM102に定めたプログラムデータおよび始動口22の始動スイッチ23、普図始動口84a,84bの普図始動スイッチ85、変動入賞装置21の大入賞口76内の継続スイッチ79、カウントスイッチ80等からの信号に基づいて、映像制御装置50に表示制御信号を出力すると共に、記憶表示器38、変動入賞装置21の開閉扉77の駆動ソレノイド78、普通図柄表示器87、記憶表示器88、始動口22の開閉翼82a,82bの駆動ソレノイド83、各ランプ、LED等を制御する。
【0069】映像制御装置50は、ROM、RAMを内蔵した表示器用CPU108、VDP(ビデオディスプレイプロセッサ)109、V-RAM110a,110b、フォントROM111,112等からなり、遊技制御装置100からの表示制御信号および球貸機10からの表示要求信号等に基づいて、映像表示器44の映像を制御する。
【0070】VDP109は、フォントROM111,112のデータをV-RAM110a,110bにセットすると共に、映像表示器44に出力する。
【0071】フォントROM111は、遊技図柄表示データ(確率変動遊技用の図柄表示データを含む)、ディスプレイ表示データ、遊技情報表示データ等の遊技用表示データを格納しており、図3?図8のように交換自由に設けることで、データを変更できるようになっている。」。

(2-8)また、映像表示ユニットの部分分解斜視図である【図7】及び映像表示部分の分解斜視図である【図8】には「フレーム45の矩形状裏側面の略全域を覆うバックライトカバー48」及び「液晶表示器(映像表示器)44裏面のバックライトカバー48の裏側に設けられている映像制御装置50」の技術事項が示されている。

したがって、これらの事項をまとめると、引用刊行物2には、
「 遊技映像、情報を表示可能な映像表示装置20は、遊技盤3に設けられた開口部に装着される前面ユニット30、および遊技盤3の裏面側に配設される映像表示ユニット31からなり、
当該映像表示ユニット31は、液晶表示器(映像表示器)44のフレーム45に支持された液晶表示パネル(映像表示パネル)46の背面にバックライト47が配設されると共に、フレーム45の矩形状裏側面の略全域を覆うバックライトカバー48が該フレーム45の裏面に嵌め合わされ、このカバー48を間にバックフレーム49を介して該バックライトカバー48の裏側に制御基板(映像制御装置)50が組付けられ、
当該映像制御装置50には、遊技用の表示データが格納されたカセット式のメモリ111を交換できるようにコネクタ60が設けられ、
バックライト47から発生するノイズは、映像制御装置50との間に設けたノイズ遮断部材のバックライトカバー48によって遮断され、映像制御装置50に影響を及ぼすことはない、パチンコ遊技機1であって、
役物用CPU101、ROM102、RAM103等からなる遊技制御装置100は、遊技盤3の各入賞装置、表示装置等を制御するものであり、映像制御装置50に表示制御信号を出力し、
表示器用CPU108等からなる映像制御装置50は、遊技制御装置100からの表示制御信号に基づいて、映像表示器44の映像を制御する、パチンコ遊技機1。」の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

(い)本願補正発明と引用発明1との比較・検討
(い-1)引用発明1の「遊戯球」は、本願補正発明の「遊技球」に相当し、以下同様に、「多数の釘7」及び「遊戯球の進路を規制する規制板8」は「遊技球の流下方向に変化を与える遊技部材」に、「遊戯板3」は「遊技盤」に、「遊戯機本体1」は「本体部」に、「モニター部2」は「表示装置」に、「着脱可能」は「着脱可能」に、「記憶媒体」は「記憶手段」に、「パチンコ遊戯機」は「弾球遊技機」に、それぞれ相当する。
(い-2)引用発明1の「遊戯板3」は、「遊戯板3の背面に設置したモニター部2に電気的に表示された画像11を、透明な遊戯板3を透視して遊戯者が目視可能」とするものであるから、引用発明1は、本願補正発明の「遊技盤の少なくとも一部は透光性部材で形成され」に相当する構成を有していると認められる。
(い-3)引用発明1の「モニター部2」は、「画像11を電気的に表示」するためのもので、「遊戯機本体1の前面に嵌め込まれ固定され」るものであり、また引用発明1は「遊戯板3の背面に設置したモニター部2に電気的に表示された画像11を、透明な遊戯板3を透視して遊戯者が目視可能」とするものであるから、引用発明1が、本願補正発明の「所定の表示領域を有する表示装置」に相当する構成、及び「表示装置は、表示領域が透光性部材を介して視認可能になるように本体部に備えられ」に相当する構成を有していることは技術常識から明らかである。
(い-4)引用発明1の「パチンコ遊戯機制御プログラムを記憶した記憶媒体を有した記憶手段と、このパチンコ遊戯機制御プログラムが実行される制御手段とを有するコントロール基盤」と、本願補正発明の「遊技動作を制御する主制御基板」及び「遊技動作に応じて、表示領域における所定の演出を表示制御する副制御基板」を組み合わせた技術事項とを比較すると、引用発明1の「コントロール基盤の制御手段」は、パチンコ遊戯機の動作を制御するために実行されるパチンコ遊戯機制御プログラムに従い、モニター部2に表示する画像11と出玉とを連繋して制御する、即ち「遊技動作を制御する」及び「遊技動作に連繋して、モニター部2に表示する画像11を表示制御する」のであるから、引用発明1の「コントロール基盤」と、本願補正発明の「主制御基板」及び「副制御基板」とは、「遊技動作を制御、及び遊技動作に応じて、表示領域における所定の演出を表示制御する制御機構」において共通する。
(い-5)引用発明1の「遊戯機本体内部に設置されるコントロール基盤」と、本願補正発明の「副制御基板は、演出に関する情報を記憶した着脱可能な記憶手段を有し、本体部に備えられる」の技術事項とを比較すると、引用発明1の「モニター部2に表示される画像11」は、「パチンコ遊戯機制御プログラムを別のものとすることで変更され」る、即ち「パチンコ遊戯機制御プログラムを記憶した記憶媒体を着脱可能に交換する」ことで変更されるものであるから、引用発明1は、本願補正発明と比較して、「制御機構は、演出に関する情報を記憶した着脱可能な記憶手段を有し、本体部に備えられる」の技術事項において共通する。

そうすると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。
一致点
遊技球の流下方向に変化を与える遊技部材を備える遊技盤と、
本体部と、
所定の表示領域を有している表示装置と、
遊技動作を制御、及び前記遊技動作に応じて、前記表示領域における所定の演出を表示制御する制御機構とを備え、
前記遊技盤の少なくとも一部は透光性部材で形成され、
前記表示装置は、前記表示領域が前記透光性部材を介して視認可能になるよう前記本体部に備えられ、
前記制御機構は、前記演出に関する情報を記憶した着脱可能な記憶手段を有し、前記本体部に備えられる、弾球遊技機。

相違点
(A)遊技盤が、本願補正発明では本体部に取り付けられるのに対し、引用発明1では遊技盤(遊戯板3)の背面に設置した表示装置(モニター部2)が本体部(遊戯機本体1)に取り付けられ、遊技盤と本体部との取付手段は明らかでない点。
(B)表示装置が、本願補正発明では裏面の略全域に導電体が配備されているのに対し、引用発明1では導電体が配備されているかどうか明らかでない点。
(C)本願補正発明では、遊技動作を制御する主制御基板と、前記遊技動作に応じて、表示領域における所定の演出を表示制御する副制御基板とが、表示装置の裏面と平行な方向で並び導電体の裏側に設けられているのに対し、引用発明1では制御機構(コントロール基盤)が本体部(遊戯機本体内部)に設置されている点。
(D)演出に関する情報を記憶した着脱可能な記憶手段を、本願補正発明では副制御基板が有するのに対し、引用発明1では制御機構(コントロール基盤)が有する点。

そこで、上記相違点について検討する。
相違点(A)について
遊技盤の弾球遊技機に対する取付手段をどのようなものとするかは、組立時の作業性や点検時の容易性などを考慮して、当業者が適宜なし得る設計上の事項であり、また「本体部に取り付けられる遊技盤」が、例えば特開平11-276677号公報に示された「ミドルプレート122を介して前面枠4に設けられた画像表示手段53の表示画面を視認可能とする、前面枠4(本願補正発明の「本体部」に相当)に交換可能に取り付けられる遊技盤3(本願補正発明の「遊技盤」に相当)」(【0021】乃至【0023】、及び【図5】参照)、特開平7-8607号公報に示された「枠体4に取り付けられた可変表示装置15の表示部27を視認可能とする、枠体4に着脱可能に取り付けられる遊技盤6」(【要約】に記載された【構成】、及び【0029】、並びに【図5】参照)のように周知・慣用の技術(以下、「周知・慣用の技術1」という。)であることを併せて考慮すれば、遊技盤の近傍に設置された表示装置が本体部に取り付けられた引用発明1に、上記「周知・慣用の技術1」を適用し、相違点(A)に係る本願補正発明を特定する事項とすることは当業者が容易になし得ることである。
相違点(B)について
裏面の略全域に導電体が配備されている表示装置は、例えば引用発明2に示された「裏面の略全域にノイズ遮断部材のバックライトカバー48が配備されている液晶表示器(映像表示器)44」(ここで、ノイズを遮断するための部材が導電体で構成されることは、当該技術分野においては技術常識である。)、特開平6-304314号公報に示された「裏面の略全域にノイズ遮断部材のバックライトカバー51が配備されている液晶表示器(映像表示器)47」(【0027】、及び【0075】、並びに【図8】参照)のように周知・慣用の技術(以下、「周知・慣用の技術2」という。)であるから、当該「周知・慣用の技術2」を引用発明1の表示装置に適用して、相違点(B)に係る本願補正発明を特定する事項とすることは、当業者が容易になし得たものである。
相違点(C)について
「遊技動作を制御する主制御基板と、前記遊技動作に応じて、表示領域における所定の演出を表示制御する副制御基板とを備えた弾球遊技機において、表示装置の裏面の導電体の裏側に設けられている、副制御基板」は、例えば引用発明2に示された「遊技盤3の各入賞装置、表示装置等を制御する遊技制御装置100(本願補正発明の「主制御基板」に相当)と、映像表示器44の映像を制御する映像制御装置50(本願補正発明の「副制御基板」に相当)とを備えたパチンコ遊技機1(本願補正発明の「弾球遊技機」に相当)において、液晶表示器(映像表示器)44(本願補正発明の「表示装置」に相当)の裏面のノイズ遮断部材であるバックライトカバー48(本願補正発明の「導電体」に相当)の裏側に設けられている、映像制御装置50(本願補正発明の「副制御基板」に相当)」、及び前記特開平6-304314号公報に示された「遊技盤3の各入賞装置、表示装置等を制御する遊技制御装置105と、映像表示器47(映像表示パネル49)の映像を制御する映像表示装置20の制御ユニット45とを備えたパチンコ遊技機1において、液晶表示器(映像表示器)47の裏面のノイズ遮断部材であるバックライトカバー51の裏側に設けられている、映像表示装置20の制御ユニット45」(【0027】、【0053】、【0055】、【0056】及び【0075】、並びに【図6】乃至【図8】参照)のように周知・慣用の技術(以下、「周知・慣用の技術3」という。)である。そして、主制御基板と副制御基板とを弾球遊技機に対し、どのように取り付けるかは当業者が適宜なし得る設計上の事項であり、また主制御基板と副制御基板とを取付部分の平面に対し並べて配置することが、例えば特開2000-116915号公報に示された「遊技盤2裏面に取り付けられた遊技制御装置51及び表示制御装置52」(【0037】及び【図3】並びに【図6】参照)、特開2000-140355号公報に示された「遊技盤2裏面に取り付けられた主制御部3及び図柄制御部4」(【0007】及び【図1】参照)のように周知・慣用の技術(以下、「周知・慣用の技術4」という。)であることを併せて考慮すれば、当該「周知・慣用の技術3及び4」を引用発明1の制御機構に適用して、相違点(C)に係る本願補正発明を特定する事項とすることは、当業者が容易になし得たものである。
相違点(D)について
「主制御基板と副制御基板とを備えた弾球遊技機において、演出に関する情報を記憶した記憶手段を着脱可能とする副制御基板」は、例えば引用発明2に示された「遊技制御装置100(本願補正発明の「主制御基板」に相当)と映像制御装置50(本願補正発明の「副制御基板」に相当)とを備えたパチンコ遊技機1(本願補正発明の「弾球遊技機」に相当)において、遊技用の表示データ(本願補正発明の「演出に関する情報」に相当)が格納されたカセット式のメモリ111(本願補正発明の「記憶手段」に相当)を交換できる(本願補正発明の「着脱可能」に相当)映像制御装置50」、及び前記特開平7-8607号公報に示された「役物回路24と可変表示装置15の制御部28とを備えたパチンコ遊技機1において、遊技内容の絵柄に応じた制御データーが格納されたデーター格納手段29を着脱可能に装着する可変表示装置15の制御部28」(【0025】、【0030】、【0045】及び【図2】並びに【図4】参照)、並びに前記特開平6-304314号公報に示された「遊技制御装置105と映像表示装置20の制御ユニット45とを備えたパチンコ遊技機1において、遊技用の表示データを格納したカセット式のフォントROM124を交換できる、映像表示装置20の制御ユニット45」(【0055】、【0056】、【0059】及び【0076】、並びに【図6】【図7】及び【図9】参照)のように周知・慣用の技術(以下、「周知・慣用の技術5」という。)である。したがって、当該「周知・慣用の技術5」を引用発明1の制御機構に適用して、相違点(D)に係る本願補正発明を特定する事項とすることは、当業者が容易になし得たものである。

また、引用発明1は、遊技の種類を容易に変更することが可能なものであるから、本願補正発明が格別の効果を奏するものとは認められない。

したがって、本願補正発明は、引用発明1及び「周知・慣用の技術1乃至5」に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(う)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第三、本願発明について
平成18年5月26日付けの手続補正は上記のとおり却下されることとなったので、本願の請求項1乃至3に係る発明は、上記平成18年3月3日付けで補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に記載された発明を再掲すると次のとおりのものである。
「遊技球の流下方向に変化を与える遊技部材を備える遊技盤と、
前記遊技盤を取り付ける本体部と、
遊技動作を制御する主制御基板と、
所定の表示領域を有する表示装置と、
前記遊技動作に応じて、前記表示領域における所定の演出を表示制御する副制御基板とを備え、
前記遊技盤の少なくとも一部は透光性部材で形成され、
前記表示装置は、前記表示領域が前記透光性部材を介して視認可能になるよう前記本体部に備えられ、
前記副制御基板は、前記演出に関する情報を記憶した着脱可能な記憶手段を有し、前記本体部に備えられることを特徴とする弾球遊技機。」(以下、「本願発明」という。)

(ア)刊行物に記載された発明
原査定の拒絶理由通知に引用された引用刊行物1(特開2002-200231号公報)及び原査定時に通知された引用刊行物2(特開平6-121871号公報)に記載された事項は前記「第二、(2)(あ)刊行物に記載された発明」に記載された事項と同様であるから、援用する。

(イ)本願発明と引用発明1との比較・検討
両者を比較・検討すると、その内容は、前記「第二、(2)(い)本願補正発明と引用発明1との比較・検討」の欄の「(い-1)乃至(い-5)」に記載された事項と同様であるから、援用する(但し、「本願補正発明」は「本願発明」と読み替える)。

そうすると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。
一致点
遊技球の流下方向に変化を与える遊技部材を備える遊技盤と、
本体部と、
所定の表示領域を有する表示装置と、
遊技動作を制御、及び前記遊技動作に応じて、前記表示領域における所定の演出を表示制御する制御機構とを備え、
前記遊技盤の少なくとも一部は透光性部材で形成され、
前記表示装置は、前記表示領域が前記透光性部材を介して視認可能になるよう前記本体部に備えられ、
前記制御機構は、前記演出に関する情報を記憶した着脱可能な記憶手段を有し、前記本体部に備えられる、弾球遊技機。

相違点
(1)遊技盤が、本願発明では本体部に取り付けられるのに対し、引用発明1では遊技盤(遊戯板3)の背面に設置した表示装置(モニター部2)が本体部(遊戯機本体1)に取り付けられ、遊技盤と本体部との取付手段は明らかでない点。
(2)制御機構が、本願発明では、遊技動作を制御する主制御基板と、前記遊技動作に応じて、表示領域における所定の演出を表示制御する副制御基板とを備えるのに対し、引用発明1では主制御基板と副制御基板とを備えるのかどうか記載されていない点。
(3)演出に関する情報を記憶した着脱可能な記憶手段を、本願発明では副制御基板が有するのに対し、引用発明1では制御機構(コントロール基盤)が有する点。

そこで、上記相違点(1)及び(3)について検討する。
相違点(1)及び(3)の技術的な記載内容は、それぞれ上記相違点(A)及び(D)の記載内容と同一であるから、相違点(1)及び(3)についてのそれぞれの検討内容は、上記相違点(A)及び(D)についての検討内容の記載を援用する(但し、「相違点(A)」及び「相違点(D)」は、それぞれ「相違点(1)」及び「相違点(3)」と読み替え、さらに「本願補正発明」は「本願発明」と読み替える。)。
したがって、「周知・慣用の技術1及び5」を引用発明1に適用して、相違点(1)及び(3)に係る本願発明を特定する事項とすることは、当業者が容易になし得たものである。
次に、上記相違点(2)について検討する。
制御機構が、遊技動作を制御する主制御基板と、前記遊技動作に応じて、表示領域における所定の演出を表示制御する副制御基板とを備えることは、例えば特開2000-116915号公報に示された「遊技の統括的な制御を行う遊技制御装置51と特図表示装置18の画像表示を制御する表示制御装置52とを備えた制御装置」(【要約】に記載された【解決手段】、【0036】、【0047】、【0050】及び【図3】、【図6】並びに【図7】参照)、特開2000-140355号公報に示された「遊技処理を実行する主制御部3と表示制御処理を実行する図柄制御部4とを備えた遊技制御部」(【0007】、【0009】、【0011】、【0017】、【0018】及び【図1】参照)のように当該技術分野において周知・慣用の技術(以下、「周知・慣用の技術6」という。)であるから、引用発明1の制御機構に当該「周知・慣用の技術6」を適用して、相違点(2)に係る本願発明を特定する事項とすることは、当業者が容易になし得たものである。

また、引用発明1は、遊技の種類を容易に変更することが可能なものであるから、本願発明が格別の効果を奏するものとは認められない。

第四、むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び「周知・慣用の技術1、5及び6」に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-06-16 
結審通知日 2009-06-23 
審決日 2009-07-14 
出願番号 特願2003-373837(P2003-373837)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 澤田 真治  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 河本 明彦
川島 陵司
発明の名称 弾球遊技機  
代理人 野口 武男  
代理人 塩澤 克利  
代理人 三好 秀和  

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