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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B41F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41F
管理番号 1202944
審判番号 不服2006-19982  
総通号数 118 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-09-07 
確定日 2009-08-27 
事件の表示 特願2000-369583「スクリーン印刷方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 6月18日出願公開、特開2002-172757〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成12年12月5日の出願であって、平成17年1月14日付け拒絶理由通知に対して、同年3月14日付けで手続補正がなされ、さらに、同年4月26日付け最後の拒絶理由通知に対して、同年6月24日付けで手続補正がされたが、平成18年8月4日付けで平成17年6月24日付け手続補正が補正却下されるとともに、同日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月7日に拒絶査定不服の審判が請求されるとともに、同年10月4日付けで明細書の手続補正がなされたものである。
その後、平成20年4月22日付けで審尋がなされ、同年6月23日付けで回答書が提出されたものである。

第2 平成18年10月4日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年10月4日付け手続補正を却下する。

[理由]
1 平成18年10月4日付け手続補正について
平成18年10月4日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明についてするものであり、その補正前後の特許請求の範囲の記載は次のとおりのものである。

(本件補正前の特許請求の範囲:平成17年3月14日付け手続補正書)
「【請求項1】内部にペーストを貯溜したスキージヘッドをペースト加圧手段によって前記ペーストを加圧した状態でマスクプレート上で摺動させることにより、マスクプレートのパターン孔を介して基板にペーストを印刷するスクリーン印刷方法であって、
前記スキージヘッドがマスクプレート上で摺動する印刷動作を反復継続する過程において、基板への印刷動作終了後、
前記ペースト加圧手段の加圧を停止した状態で前記ペースト加圧手段のペーストと接触する接触部とペーストとの接触状態を保持することを特徴とするスクリーン印刷方法。」

(本件補正後の特許請求の範囲)
「【請求項1】内部にペーストを貯溜したスキージヘッドをシリンダのロッドに加圧板を結合して成るペースト加圧手段によって前記ペーストを加圧した状態でマスクプレート上で摺動させることにより、マスクプレートのパターン孔を介して基板にペーストを印刷するスクリーン印刷方法であって、
前記スキージヘッドがマスクプレート上で摺動する印刷動作を反復継続する過程において、基板への印刷動作終了後、
前記シリンダは上昇動作を行わず且つ前記シリンダへのエア圧の送給を停止して前記ペースト加圧手段によるペーストへの加圧を停止した状態で前記ペースト加圧手段のペーストと接触する接触部である前記加圧板の下面とペーストとの接触状態を保持し、この接触状態はマスクプレートからの基板の版離れ工程及びその後に行われる基板の搬出工程においても継続し、次いで新たに供給された基板をクランプしたクランパが上昇して再び印刷動作が開始される前に、前記シリンダによる加圧を開始し、この後スキージヘッドがこの基板の範囲内に移動してペーストの印刷を再び行うことを特徴とするスクリーン印刷方法。」(下線は補正箇所を示し、本件補正において付されたとおりである。)

2 補正目的について
本件補正のうち、特許請求の範囲に対する補正は、補正前の特許請求の範囲を、以下に示すとおり補正するものである。

[補正1]
補正前の請求項1における「ペースト加圧手段」を「シリンダのロッドに加圧板を結合して成るペースト加圧手段」とする補正。

[補正2]
補正前の請求項1における「ペースト加圧手段の加圧を停止した状態」を「シリンダは上昇動作を行わず且つ前記シリンダへのエア圧の送給を停止して前記ペースト加圧手段によるペーストへの加圧を停止した状態」とする補正。

[補正3]
補正前の請求項1における「ペースト加圧手段のペーストと接触する接触部」を「ペースト加圧手段のペーストと接触する接触部である前記加圧板の下面」とする補正。

[補正4]
補正前の請求項1における「ペーストとの接触状態を保持する」を「ペーストとの接触状態を保持し、この接触状態はマスクプレートからの基板の版離れ工程及びその後に行われる基板の搬出工程においても継続し、次いで新たに供給された基板をクランプしたクランパが上昇して再び印刷動作が開始される前に、前記シリンダによる加圧を開始し、この後スキージヘッドがこの基板の範囲内に移動してペーストの印刷を再び行うことを」とする補正。


上記各補正事項について検討する。
[補正1]について
補正前の請求項1における「ペースト加圧手段」が、シリンダのロッドに加圧板を結合してたものであることを限定するものであるので、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」に相当する。

[補正2]について
補正前の請求項1における「加圧を停止した状態」が、シリンダは上昇動作を行わず、シリンダへのエア圧の送給を停止してなされるものであることを限定するものであるので、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」に相当する。

[補正3]について
補正前の請求項1における「接触部」が、加圧板の下面であることを限定するものであるので、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」に相当する。

[補正4]について
補正前の請求項1における印作動作終了後から印刷動作を再び開始するまでの動作を限定するものであるので、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」に相当する。

次に、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)否かを、以下に検討する。

3 独立特許要件について
(1)本件補正発明
本件補正発明は、次のとおりのものである。
「【請求項1】内部にペーストを貯溜したスキージヘッドをシリンダのロッドに加圧板を結合して成るペースト加圧手段によって前記ペーストを加圧した状態でマスクプレート上で摺動させることにより、マスクプレートのパターン孔を介して基板にペーストを印刷するスクリーン印刷方法であって、
前記スキージヘッドがマスクプレート上で摺動する印刷動作を反復継続する過程において、基板への印刷動作終了後、
前記シリンダは上昇動作を行わず且つ前記シリンダへのエア圧の送給を停止して前記ペースト加圧手段によるペーストへの加圧を停止した状態で前記ペースト加圧手段のペーストと接触する接触部である前記加圧板の下面とペーストとの接触状態を保持し、この接触状態はマスクプレートからの基板の版離れ工程及びその後に行われる基板の搬出工程においても継続し、次いで新たに供給された基板をクランプしたクランパが上昇して再び印刷動作が開始される前に、前記シリンダによる加圧を開始し、
この後スキージヘッドがこの基板の範囲内に移動してペーストの印刷を再び行うことを特徴とするスクリーン印刷方法。」

(2)引用文献
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開平06-234204号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図示とともに以下(ア)乃至(キ)に示す記載がある。

(ア)「【請求項1】パターン孔が開孔されたスクリーンマスクのマスクプ レートの上方に配置される移動台と、この移動台をX方向に水平移動させ るX方向移動手段と、この移動台を前記X方向と直交するY方向に水平移 動させるY方向移動手段と、この移動台に一体的に設けられた回転手段と 、内部にクリーム半田が貯溜されてこの回転手段に駆動されて前記マスク プレート上を水平方向に回転する筒状のスキージとを備えたことを特徴と するクリーム半田のスクリーン印刷装置。」
(イ)「【課題を解決するための手段】このために本発明は、パターン孔が 開孔されたスクリーンマスクのマスクプレートの上方に配置される移動台 と、この移動台をX方向に水平移動させるX方向移動手段と、この移動台 をX方向と直交するY方向に水平移動させるY方向移動手段と、この移動 台に一体的に設けられた回転手段と、内部にクリーム半田が貯溜されてこ の回転手段に駆動されてマスクプレート上を水平方向に回転する筒状のス キージとからクリーム半田のスクリーン印刷装置を構成したものである。 」
(ウ)「【0012】図1は本発明の一実施例におけるクリーム半田のスク リーン印刷装置の斜視図である。11はスクリーンマスクであり、枠型の ホルダ12の下面にマスクプレート13を保持させて形成されており、マ スクプレート13にはパターン孔14が開孔されている。図2は本発明の 一実施例におけるクリーム半田のスクリーン印刷装置の部分断面図であっ て、マスクプレート13の下方にはプリント基板15が配置されている。 16はプリント基板15を載置するテーブルである。」
(エ)「【0016】移動台35上には回転方向モータ41が設置されてい る。図2に示すように、回転方向モータ41の回転軸42には回転板43 の後端部が装着されており、この回転板43の先端部にはスキージ44が 装着されている。スキージ44は有蓋無底の円筒状体であって、その下部 にはマスクプレート13に接地する硬質ゴムや硬質樹脂などから成る接地 子45が一体的に固着されている。スキージは円筒状体に限らず、多角筒 状体などの筒状体であればよく、また無蓋無底の筒状体でもよいが、本実 施例のように有蓋無底の筒状体にしてマスクプレート13に接地した状態 で気密性を確保すれば、スキージ44の内部の温度や湿度などを厳密に管 理することが可能となり、クリーム半田10の材質劣化を防止できる。」
(オ)「【0017】図2に示すように、回転方向モータ41の回転軸42 とスキージ44の中心軸は偏心しており、回転方向モータ41が駆動する と、スキージ44は回転軸42を中心に水平方向に回転する。また上述し たようにX方向モータ23やY方向モータ32が駆動すると、スキージ4 4は移動台35と一体的にX方向やY方向に水平移動する。46はスキー ジ44の上部に着脱自在に挿着されたキャップであり、このキャップ46 を着脱することにより、スキージ44の内部にクリーム半田10を補給す る。」
(カ)「【0020】図2に示すように、Z方向モータ53を駆動してプリ ント基板15を上昇させ、その上面をマスクプレート13の下面に近接さ せる。そこでX方向モータ23を駆動して長板26や移動台35をX方向 に移動させながら、回転方向モータ41を駆動してスキージ44を回転軸 42を中心に水平回転させれば、スキージ44の内部に貯溜されたクリー ム半田10は図4の矢印で示すようにローリングしながら練り合わされ、 パターン孔14に密に充填される。」
(キ)「【0022】次に図2においてZ方向モータ53を先程と逆方向に 駆動すると、テーブル16は下降し、プリント基板15はマスクプレート 13から分離してパターン14内のクリーム半田10はプリント基板15 の回路パターンの電極に転写され、クリーム半田10の塗布工程は終了す る。」

また、引用文献1には、クリーム半田の充填が終了した後の基板を搬出する工程については明示されていないが、複数のプリント基板にクリーム半田を充填する印刷動作を反復継続して行っていることは明らかであり、新しい基板に交換するための、何らかの「基板の搬出工程」を備えているものと認められる。

引用文献1の明細書及び図面全体を参酌しつつ、上記記載(ア)乃至記載(キ)を検討すると、引用文献1には次の発明が記載されている(以下、「引用発明」という。)と認められる。

「内部にクリーム半田が貯溜された筒状のスキージを、マスクプレート上を水平方向に移動さることにより、マスクプレートのパターン孔にクリーム半田を充填することで基板にクリーム半田を印刷するスクリーン印刷方法であって、
スキージをマスクプレート上で水平方向に移動させる印刷動作を反復継続する過程において、
マスクプレートのパターン孔にクリーム半田を充填した後、
基板をマスクプレートから分離する工程、
基板の搬出工程、
新たに基板を上昇させてマスクプレートのパターン孔にクリーム半田を充填する工程を再び行うスクリーン印刷方法。」

(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア) 引用発明の「内部にクリーム半田が貯溜された筒状のスキージ」と 本件補正発明の「内部にペーストを貯溜したスキージヘッド」とは、「内 部にペーストを貯溜したスキージ」という点で共通する。
(イ)引用発明の「クリーム半田」は、本件補正発明の「ペースト」に相当 する。
(ウ) 引用発明の「マスクプレート上を水平方向に移動さることにより、 マスクプレートのパターン孔にクリーム半田を充填することで基板にクリ ーム半田を印刷する」は、本件補正発明の「マスクプレート上で摺動させ ることにより、マスクプレートのパターン孔を介して基板にペーストを印 刷する」に相当する。
(エ)引用発明の「スキージをマスクプレート上で水平方向に移動させる印 刷動作を反復継続する過程」と本件補正発明の「スキージヘッドがマスク プレート上で摺動する印刷動作を反復継続する過程」とは、「スキージが マスクプレート上で摺動する印刷動作を反復継続する過程」という点で共 通する。
(オ)引用発明の「マスクプレートのパターン孔にクリーム半田を充填した 後」は、本件補正発明の「基板への印刷動作終了後」に相当する。
(カ)引用発明の「基板をマスクプレートから分離する工程」は、本件補正 発明の「マスクプレートからの基板の版離れ工程」に相当する。
(キ)引用発明の「基板の搬出工程」は、本件補正発明の「その後に行われ る基板の搬出工程」に相当する。
(ク)引用発明の「新たに基板を上昇させてマスクプレートの下面に接近さ せ、マスクプレートのパターン孔にクリーム半田を充填する工程を再び行 う」と本件補正発明の「新たに供給された基板をクランプしたクランパが 上昇して再び印刷動作が開始され」とは、「新たに供給された基板が上昇 して再び印刷動作が開始され」という点で共通する。
してみると、本件補正発明と引用発明とは、以下の点で一致している。
<一致点>
「内部にペーストを貯溜したスキージをマスクプレート上で摺動させることにより、マスクプレートのパターン孔を介して基板にペーストを印刷するスクリーン印刷方法であって、
スキージがマスクプレート上で摺動する印刷動作を反復継続する過程において、
基板への印刷動作終了後、
マスクプレートからの基板の版離れ工程
及びその後に行われる基板の搬出工程、
次いで新たに供給された基板が上昇して再び印刷動作が開始されるスクリーン印刷方法。」

一方で、引用発明と本願発明とは、以下の点で相違している。
<相違点1>
ペーストの供給に関し
本件補正発明が「内部にペーストを貯溜したスキージヘッドをシリンダのロッドに加圧板を結合して成るペースト加圧手段によって前記ペーストを加圧した状態で」と特定されるものであるのに対し、引用発明は上記特定を有していない点。

<相違点2>
基板の版離れ工程及び基板の搬出工程に関し
本件補正発明が「スキージヘッドがマスクプレート上で摺動する印刷動作を反復継続する過程において、基板への印刷動作終了後、前記シリンダは上昇動作を行わず且つ前記シリンダへのエア圧の送給を停止して前記ペースト加圧手段によるペーストへの加圧を停止した状態で前記ペースト加圧手段のペーストと接触する接触部である前記加圧板の下面とペーストとの接触状態を保持し、この接触状態はマスクプレートからの基板の版離れ工程及びその後に行われる基板の搬出工程においても継続し、次いで新たに供給された基板をクランプしたクランパが上昇して再び印刷動作が開始される前に、前記シリンダによる加圧を開始し」と特定されているのに対して、引用発明は上記特定を有していない点。

<相違点3>
基板の搬出工程後に関し
本件補正発明が「スキージヘッドがこの基板の範囲内に移動してペーストの印刷を再び行う」と特定されているのに対して、引用発明は上記特定を有していない点。

(4)判断
上記各相違点について検討する。
<相違点1>について
内部に貯溜したペーストをエア圧を利用して加圧するペースト加圧手段を備えたスキージヘッドは、本願出願前に周知である(例えば、特表平10-512507号公報、特開昭63-249343号公報、特開昭62-081092号公報等を参照。)。
引用発明の「筒状のスキージ」と上記周知技術のスキージヘッドは、スクリーン印刷におけるスキージという点で共通しているのであるから、引用発明における「筒状のスキージ」に代えて、上記周知技術のスキージヘッドを採用することは、容易に着想し得ることである。
以上のことから、引用発明の「筒状のスキージ」に代えて、上記周知技術のスキージヘッドを採用し、上記<相違点1>のように構成することは、容易になし得ることである。

<相違点2>について
引用文献1には、スキージをマスクプレートに接地した状態にして気密性を確保することで、クリーム半田の材質劣化を防止できることが記載されているのであるから(摘記(エ)を参照。)、基板への印刷動作中だけではなく、基板の版離れ工程及び基板の搬出工程の期間中も、スキージをマスクプレートに接地した状態に保持するこは、容易に着想し得ることである。

ところで、上記<相違点1>で指摘した、ペースト加圧手段を備えたスキージヘッドを採用してペーストを印刷した場合、印刷終了後には、スキージヘッドはマスクプレートのパターン孔の領域を通過しているのであるから、ペーストをさらに押し出す必要はなく、また、マスクプレートを支持する基板も存在しないのであるから、ペースト加圧手段を停止させることは当然のことである。
エア圧を利用した加圧手段の加圧を停止するために、エアの送給を停止するとは、適宜なし得ることである(例えば、特開2000-225375号公報、特開平10-157066号公報、特開平10-057867号公報、特開平08-125320号公報、特開平04-367760号公報、実願昭60-178229号(実開昭62-086965号)のマイクロフィルム等を参照。)。
また、スクリーン印刷において、基板をクランパで保持しながら昇降させることは、本願出願前に周知である(例えば、特開2000-168044号公報、特開平06-320708号公報、特開平05-092544号公報等を参照。)。
そして、基板への印刷動作を開始するためには、ペーストを再び加圧しなければならないのであるから、次いで新たに供給された基板をクランプしたクランパが上昇して再び印刷動作が開始される前に、前記シリンダによる加圧を開始することは、当然のことである。
以上のことから、引用発明において、クリーム半田の材質劣化を防止するために、上記<相違点2>のように構成することは容易になし得ることである。

<相違点3>
スキージを基板の範囲外に待機させ、印刷開始時に基板範囲内に移動させることは、本願出願前に周知である(例えば、特開2000-255029号公報、特開平11-042762号公報、特開平09-193343号公報等を参照。)。
してみれば、引用発明において、上記周知技術を採用し、上記<相違点3>のように構成することは、適宜なし得ることである。

また、本件補正発明が奏する効果も、当業者が予想し得る範囲内のものである。

(5)独立特許要件についてのまとめ
以上のとおり、本件補正発明は、引用刊行物に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4 補正却下の決定のむすび
本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本件審判請求についての判断
1 本願発明
平成18年10月4日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、上記「1.平成18年10月4日付け手続補正について(本件補正前の特許請求の範囲:平成17年3月14日付け手続補正書)」に記載された事項により特定されるものであり、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「【請求項1】内部にペーストを貯溜したスキージヘッドをペースト加圧手段によって前記ペーストを加圧した状態でマスクプレート上で摺動させることにより、マスクプレートのパターン孔を介して基板にペーストを印刷するスクリーン印刷方法であって、
前記スキージヘッドがマスクプレート上で摺動する印刷動作を反復継続する過程において、基板への印刷動作終了後、
前記ペースト加圧手段の加圧を停止した状態で前記ペースト加圧手段のペーストと接触する接触部とペーストとの接触状態を保持することを特徴とするスクリーン印刷方法。」

2 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物の記載事項は、上記「3 独立特許要件について(2)引用文献」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、本件補正発明から、上記「2 補正目的について」で述べた、[補正1]乃至[補正4]の限定を含まないものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに[補正1]乃至[補正4]の限定を含む本願補正発明が、上記「3 独立特許要件について」に記載したとおり、引用刊行物に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用刊行物に記載された発明及び周知技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 結論
以上のとおり、本願発明は、引用刊行物に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-06-25 
結審通知日 2009-06-30 
審決日 2009-07-13 
出願番号 特願2000-369583(P2000-369583)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B41F)
P 1 8・ 575- Z (B41F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 東 裕子  
特許庁審判長 長島 和子
特許庁審判官 湯本 照基
星野 浩一
発明の名称 スクリーン印刷方法  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 永野 大介  
代理人 岩橋 文雄  

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