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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1202983
審判番号 不服2008-4185  
総通号数 118 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-02-21 
確定日 2009-08-27 
事件の表示 特願2002- 32503「画像形成方法、画像形成装置、コンピュータプログラムおよび記憶媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 8月22日出願公開、特開2003-234887〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成14年2月8日の出願であって、平成19年5月25日付けで手続補正がなされ、平成19年12月17日付けで手続補正(なお、この手続補正は平成20年1月10日付けで決定をもって却下された)がなされ、平成20年1月10日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成20年2月21日に審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

第2.平成20年2月21日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年2月21日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1.補正の内容
この手続補正(以下、本件補正という)による、補正前後の特許請求の範囲の請求項の記載は次のとおりである(なお、補正後の請求項については請求項1のみ記載した)。

(1)補正前の請求項
「【請求項1】用紙に画像を形成する画像形成手段と、
原稿の画像を読み取る画像読取手段と、
前記画像読取手段が読み取った読取画像を解析することにより、画像形成手段が画像を形成した用紙の所定の位置に形成されたガイド情報の有無を判断するガイド有無判断手段と、
前記ガイド有無判断手段が前記ガイド情報が有ると判断した場合に、前記画像読取手段が読み取った読取画像に含まれる前記ガイド情報の位置情報に基づいて前記読取画像の天地方向を認識する方向認識手段と、を具備し、
前記画像形成手段は、前記方向認識手段により認識される読取画像の天地方向に基づいて方向を調整した画像を用紙に形成する画像形成装置。
【請求項2】前記画像形成手段は、前記ガイド有無判断手段が前記ガイド情報が有ると判断した場合に、前記画像読取手段が読み取った読取画像から前記ガイド情報を除く有効画像を用紙に形成する請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】前記画像読取手段は、原稿の両面の画像を読み取る請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】前記画像読取手段は、原稿の一面側の画像を読み取る画像読取機構と、前記画像読取機構によって画像が読み取られた原稿を反転させて再度前記画像読取機構に搬送する原稿反転機構とを具備する請求項3記載の画像形成装置。
【請求項5】前記画像読取手段は、原稿の一面側の画像を読み取る第一の読取機構と、原稿の他面側の画像を読み取る第二の読取機構とを具備する請求項3記載の画像形成装置。
【請求項6】前記画像形成手段が画像を形成した用紙をステープル綴じするステープル綴じ手段と、
前記ステープル綴じ手段によるステープル綴じ位置を画像の天地方向が調整された用紙を基準として設定するステープル綴じ位置設定手段と、を具備し、
前記画像形成手段は、前記ステープル綴じ位置設定手段により設定されたステープル綴じ位置でステープル綴じされるように前記方向認識手段により認識される読取画像の天地方向に基づいて方向を調整した有効画像を用紙に形成する請求項2ないし5のいずれか一に記載の画像形成装置。
【請求項7】複数の画像を単一の用紙面内に一つずつ形成する非集約モードか単位数ずつに集約して形成する集約モードかのいずれか一方を選択的に設定する集約モード設定手段を具備し、
前記画像形成手段は、前記集約モード設定手段により集約モードが設定されている場合に、前記ステープル綴じ位置設定手段により設定されるステープル綴じ位置と集約の単位数とに基づいて方向を調整した有効画像を用紙に形成する請求項6記載の画像形成装置。
【請求項8】前記画像形成手段は、前記ステープル綴じ位置設定手段により設定されるステープル綴じ位置とは異なる位置に前記ガイド情報を形成する請求項6または7記載の画像形成装置。
【請求項9】前記画像形成手段が画像を形成した用紙の前記所定の位置に、前記ガイド情報を形成するガイド情報形成手段を具備し、
前記ガイド情報形成手段は、前記画像形成手段が画像を形成した用紙の左下端部に前記ガイド情報を形成する請求項1ないし8のいずれか一に記載の画像形成装置。
【請求項10】前記画像形成手段が画像を形成した用紙の前記所定の位置に、前記ガイド情報を形成するガイド情報形成手段を具備し、
前記画像形成手段は、用紙の両面に対して有効画像の形成が可能であり、前記ガイド情報形成手段は、用紙の一面に前記ガイド情報を形成する請求項1ないし9のいずれか一に記載の画像形成装置。
【請求項11】前記画像形成手段は、用紙の一面側に画像を形成する画像形成機構と、前記画像形成機構によって画像が形成された用紙を反転させて再度前記画像形成機構に搬送する用紙反転機構とを具備する請求項10記載の画像形成装置。
【請求項12】前記画像形成手段は、用紙の一面側に画像を形成する第一の画像形成機構と、用紙の他面側に画像を形成する第二の画像形成機構とを具備する請求項10記載の画像形成装置。
【請求項13】前記画像形成手段による画像形成を用紙の片面に行う片面画像形成モードと用紙の両面に行う両面画像形成モードとのいずれか一方を選択的に設定する画像形成モード設定手段を具備し、
前記ガイド情報形成手段は、前記画像形成モード設定手段により前記片面画像形成モードが設定されている場合には用紙の片面に有効画像が形成されていることを示す第一のガイド情報を有効画像と同一面に形成し、前記画像形成モード設定手段により前記両面画像形成モードが設定されている場合には用紙の両面に有効画像が形成されていることを示す第二のガイド情報を用紙の一面側に形成する請求項10、11または12記載の画像形成装置。
【請求項14】前記画像形成モード設定手段により前記片面画像形成モードが設定されている場合に、両面白紙の用紙の一面に有効画像を形成する通常片面画像形成モードと一面側に無効画像が形成されている用紙の裏面に有効画像を形成する裏紙モードとのいずれか一方を選択的に設定する用紙モード設定手段を具備し、
前記ガイド情報形成手段は、前記用紙モード設定手段により前記裏紙モードが設定されている場合に、無効画像が形成されていることを示す第三のガイド情報を有効画像と同一面に形成する請求項13記載の画像形成装置。
【請求項15】前記ガイド有無判断手段が前記ガイド情報が有ると判断した場合に、前記ガイド情報を解析して、前記第一、第二または第三のガイド情報のいずれの前記ガイド情報であるかを判別するガイド種判別手段を具備し、
前記画像形成手段は、前記ガイド種判別手段が前記第一のガイド情報であると判別した場合には前記ガイド有無判断手段が前記ガイド情報が有ると判断した読取画像から有効画像を取得し、前記ガイド種判別手段が前記第二のガイド情報であると判別した場合には原稿の両面の読取画像から有効画像を取得し、ガイド種判別手段が前記第三のガイド情報であると判別した場合には原稿の両面の読取画像のうち前記第三のガイド情報を含む読取画像から有効画像を取得して用紙に形成する請求項14記載の画像形成装置。
【請求項16】前記画像形成手段は、前記用紙モード設定手段により前記裏紙モードが設定されている場合に、無効画像であることを示す無効情報を用紙の無効となる画像に重ねて形成する請求項14または15記載の画像形成装置。
【請求項17】前記ガイド有無判断手段が前記ガイド情報がないと判断した場合に、前記画像読取手段が読み取った読取画像を表示部に表示させる不明画像表示手段と、
前記不明画像表示手段が前記表示部に表示させた読取画像の要否を指定する要否指定手段と、を具備し、
前記画像形成手段は、前記要否指定手段により要と指定された読取画像を用紙に形成する請求項2ないし16のいずれか一に記載の画像形成装置。
【請求項18】読取画像の天地方向に基づいて方向を調整した画像を用紙に形成する画像形成手段を有する該画像形成装置が備えるコンピュータにインストールされるコンピュータプログラムであって、
前記コンピュータを、
原稿の画像を読み取る画像読取手段が読み取った読取画像を解析することにより、画像形成手段が画像を形成した用紙の所定の位置に形成されたガイド情報の有無を判断するガイド有無判断手段と、
前記ガイド有無判断手段が前記ガイド情報が有ると判断した場合に、前記画像読取手段が読み取った読取画像に含まれる前記ガイド情報の位置情報に基づいて前記読取画像の天地方向を認識する方向認識手段として機能させるコンピュータプログラム。
【請求項19】前記画像読取手段により読み取られた読取画像に前記ガイド情報が有る場合に、前記読取画像に含まれる前記ガイド情報を除く有効画像を用紙に形成させる有効画像形成手段として、前記コンピュータを機能させる請求項18記載のコンピュータプログラム。
【請求項20】用紙をステープル綴じするステープル綴じ手段によるステープル綴じ位置を設定するステープル綴じ位置設定手段と、
前記ステープル綴じ位置設定手段により設定されたステープル綴じ位置でステープル綴じされるように前記方向認識手段により認識される読取画像の天地方向に基づいて方向を調整した画像を用紙に形成させる方向調整手段として、前記コンピュータを機能させる請求項18記載のコンピュータプログラム。
【請求項21】複数の画像を単一の用紙面内に一つずつ形成する非集約モードか単位数ずつに集約して形成する集約モードかのいずれか一方を選択的に設定する集約モード設定手段と、
集約モードの設定下で、前記ステープル綴じ手段によるステープル綴じ位置と集約の単位数とに基づいて方向を調整した画像を用紙に形成させる集約時方向調整手段として、前記コンピュータを機能させる請求項20記載のコンピュータプログラム。
【請求項22】用紙の片面に対して画像形成動作を行う片面画像形成モードと用紙の両面に対して画像形成動作を行う両面画像形成モードとのいずれか一方を選択的に設定する画像形成モード設定手段と、
前記片面画像形成モードの設定下で用紙の片面に有効画像が形成されていることを示す第一のガイド情報を前記有効画像と同一面に形成させ、前記両面画像形成モードの設定下で用紙の両面に有効画像が形成されていることを示す第二のガイド情報を用紙の一面側に形成させるモード別ガイド情報形成手段として、前記コンピュータを機能させる請求項18ないし21のいずれか一に記載のコンピュータプログラム。
【請求項23】前記片面画像形成モードの設定下で、両面白紙の用紙の一面に有効画像を形成する通常片面画像形成モードと一面側に無効画像が形成されている用紙の裏面に有効画像を形成する裏紙モードとのいずれか一方を選択的に設定する用紙モード設定手段と、
前記裏紙モードの設定下で無効画像が形成されていることを示す第三のガイド情報を有効画像と同一面に形成させる用紙種案内手段として、前記コンピュータを機能させる請求項22記載のコンピュータプログラム。
【請求項24】読取画像に前記第一、第二または第三のガイド情報が含まれているか否かを判断するガイド種判別手段と、
前記第一のガイド情報が含まれている場合に、前記第一のガイド情報を含む前記読取画像を用紙に形成させ、前記第二のガイド情報が含まれている場合に、原稿の両面の前記読取画像を用紙に形成させ、前記第三のガイド情報が含まれている場合に、原稿の両面の読取画像のうち前記第三のガイド情報を含む読取画像を用紙に形成させる有効画像選択手段として、前記コンピュータを機能させる請求項23記載のコンピュータプログラム。
【請求項25】前記画像読取手段により読み取られて前記ガイド情報が含まれない読取画像表示部に表示させる不明画像表示手段と、
前記表示部に表示された読取画像の要否を指定する要否指定手段と、
要と指定された読取画像を用紙に形成させる指定画像形成手段として、前記コンピュータを機能させる請求項18ないし24のいずれか一に記載のコンピュータプログラム。
【請求項26】請求項18ないし25のいずれか一に記載のコンピュータプログラムを記憶するコンピュータによる読取が可能な記憶媒体。」

(2)補正後の請求項
「【請求項1】
用紙に画像を形成する画像形成手段と、
原稿の両面の画像を読み取る画像読取手段と、
前記画像読取手段が読み取った両面の読取画像を解析することにより、画像形成手段が画像を形成した用紙の所定の位置に形成されたガイド情報の有無を判断するガイド有無判断手段と、
前記ガイド有無判断手段により前記ガイド情報が有ると判断された場合に、前記画像読取手段が読み取った前記読取画像に含まれる前記ガイド情報の位置情報に基づいて前記読取画像の天地方向を認識する方向認識手段と、を具備し、
前記画像形成手段は、
前記ガイド有無判断手段により前記ガイド情報が有ると判断された場合において、両面の前記読取画像のうち前記ガイド情報が裏面に含まれていると判断されると、前記読取画像の順序を並び替え、並び替えた前記読取画像のうち、前記ガイド情報を基に不要な読取画像を削除し、前記方向認識手段により認識される前記読取画像の天地方向に基づいて、残った読取画像である有効画像の方向を調整し、用紙に形成する画像形成装置。」

2.補正の適否
補正前の請求項1を補正して補正後の請求項1とする補正は、「画像形成手段」が、「前記方向認識手段により認識される読取画像の天地方向に基づいて方向を調整した画像を用紙に形成する」手段であったのを「前記ガイド有無判断手段により前記ガイド情報が有ると判断された場合において、両面の前記読取画像のうち前記ガイド情報が裏面に含まれていると判断されると、前記読取画像の順序を並び替え、並び替えた前記読取画像のうち、前記ガイド情報を基に不要な読取画像を削除し、前記方向認識手段により認識される前記読取画像の天地方向に基づいて、残った読取画像である有効画像の方向を調整し、用紙に形成する」手段に限定する補正を含むものである。
当該補正により、発明の解決しようとする課題が、補正前の「原稿のセット方向の調整や画像形成後の用紙の天地方向の調整を行う負担を軽減すること」のみであったものから、「用紙の無駄な消費を防止すること」が付加されたものへと変更されている。補正後の課題は、補正前の課題を概念的に下位にしたものでも、同種のものでもなく、技術的に密接に関連するとはいえないから、この補正は発明の解決しようとする課題を変更するものである。
また、補正前の請求項2ないし26の何れかを補正して補正後の請求項1としたとしても、これらの補正は、何れも、同様に発明の解決しようとする課題を変更するものであり、さらに、補正前の各請求項に係る発明を特定するために必要な事項を限定することにより減縮したものでもない。
したがって、請求項1の補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、平成18年改正前特許法という)第17条の2第4項第2号の規定による特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しない。また、同条同項第1号、第3号、第4項の規定による請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明の何れを目的とするものにも該当しないことは明らかである。

3.まとめ
したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成20年2月21日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成19年5月25日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし26に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、上記「第2 1.(1)」に【請求項1】として記載したとおりのものである。

2.刊行物
これに対して、原査定で引用された本願の出願前に頒布された刊行物である特開平6-78085号公報(以下、「刊行物1」という)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(1)「【産業上の利用分野】本発明は、ファクシミリ装置に係り、特に、送信側オペレータが原稿の都合上故意に上下逆にした時等において、受信側での画像を統一して方向を合わせる等の手間をなくすことができるファクシミリ装置に関する。」

(2)「(実施例1)図2は本発明の実施例1に則したファクシミリ装置の構成を示すブロック図である。図2において、1?3は各々スキャナ(読み取り部)、プロッタ(書き込み部)、SAF(画情報蓄積メモリ)であり、4?6は各々DCR(画情報圧縮再生部)、CCU(通信制御部)、モデムである。そして、7?9は各々ファクシミリ制御部、操作・表示部(オペポート)、読み取り画情報回転部(読み取った画情報を180度回転する)であり、10,11は各々原稿上方向指定部(スキャナにセットした原稿の上方向がどこであるかを指定する)、原稿上方向マーク認識部(原稿の上方向が判るようなマークを認識し、どの方向が上方向であるかを認識する)であり、この1?11の各部からファクシミリ装置が構成されている。」

(3)「【0037】ところで、本実施例では、読み取り画情報回転部9を有さないファクシミリ装置であっても、受信側に受信画データ回転部を有しているため、図6に示すプロトコル中のNSFで言ってきた場合には、NSSにてどの方向かを告げることもできる。
次に、図1に示すようなマークを付けた時の原稿上方向マーク認識部11の認識動作を図7を用いて説明する。まず、T1 の如く原稿の4隅にデータを蓄積してT2 進み、原稿右上にマークが有るか否かを判定し、マークが有る場合はT3 へ進み(a)方向と決定して動作を終了する。一方、右上にマークがない場合は、原稿左上にマークが有るか否かを判定し、マークが有る場合はT5 へ進み、(b)方向と決定して動作を終了する。一方、左上にマークがない場合はT6 へ進み、原稿左下にマークが有るか否かを判定し、マークが有る場合はT7 へ進み(c)方向と決定して動作を終了する。一方、左下にマークがない場合はT8 へ進み原稿右下にマークが有るか否かを判定し、マークが有る場合はT9 へ進み、(d)方向と決定して動作を終了する。一方、右下にマークがない場合はT10へ進みマークなしと決定して動作を終了する。」

(4)「【0044】次に、請求項13?18に係る発明では、送信側オペレータの指定により受信画像の上方向を指定した時や、送信側オペレータが上方向を意味するマークを原稿に付加してある画情報を受信した時に、受信側で上方向を認識し、必要に応じて画像を180度回転して出力することにより、出力画像の上下方向を統一することを特徴としている。また、受信側では上方向を認識しているため、両面記録可能な場合には表と裏の上下が逆になることなく両面記録することができることを特徴としている。以下、請求項13?18に係る発明に則した実施例3を図面を用いて具体的に説明する。
(実施例3)図15は本発明の実施例3に則したファクシミリ装置の構成を示すブロック図である。図15において、41?43は各々スキャナ(読み取り部)、プロッタ(書き込み部)、SAF(画情報蓄積メモリ)であり、44?46は各々DCR(画情報圧縮再生部)、CCU(通信制御部)、モデムである。そして、47?49は各々ファクシミリ制御部、操作表示部(オペポート)、受信画情報回転部(受信した画情報を180度回転する)であり、50,51は各々受信画像上方向マーク認識部(受信画情報の中の上方向マークを認識し、どの方向が上方向かを認識する)、両面記録部(用紙裏表反転機能等)であり、この41?51の各部からファクシミリ装置が構成されている。
【0045】動作としては、まず、図16に示す如く画情報を受信したとし、方向としては(a)?(d)の4方向とする。そして、黒いマークが送信側で付けた上方向マークであるとすると、図17に示すフローチャートで各々のマークから、受信画像上方向マーク認識部50にて上方向を認識する。これにより図18に示すフローチャートで受信画情報回転部49にて方向を(a)又は(b)に統一して出力することができる。なお、図17のフローチャートは前述した実施例1の図7と同じであるので、その動作の説明については省略する。ここで、回転記録動作を図18のフローチャートを用いて説明する。まず、P21の如く、(a)又は(b)の方向で出力すると決定してP22に進み、(a)又は(b)の方向であるか否かを判定し、(a)又は(b)方向である場合はP24へ進み記録排紙して動作を終了する。一方、(a)又は(b)方向でない場合は受信画像を180度回転してP24へ進み、記録排紙して動作を終了する。」

以上の記載及び図面の記載から、刊行物1には以下の発明(以下、「刊行物1発明」という)が記載されている。

『送信側オペレータが上方向を意味するマークを原稿の右上隅に付加して送信した画情報を受信した時に、受信側で前記マークが有るか否かを判定し、前記マークが有る場合には、右上、左上、左下、右下のどこに有るかに基づいて画情報の上方向を認識する受信画像上方向マーク認識部と、認識した上方向により必要に応じて画情報を180度回転して出力する記録部とを備えたファクシミリ装置。』

3.対比
本願発明と刊行物1発明とを対比する。
刊行物1発明の「ファクシミリ装置」は、用紙に画像を形成する画像形成手段と、原稿の画像を読み取る画像読取手段とを具備する画像形成装置といえるものであることは明らかである。
刊行物1発明の 、原稿の右上隅に付加した「上方向を意味するマーク」は、本願発明の「用紙の所定の位置に形成されたガイド情報」に相当するものであるから、刊行物1発明の「受信側で前記マークが有るか否かを判定し、前記マークが有る場合には、右上、左上、左下、右下のどこに有るかに基づいて画情報の上方向を認識する受信画像上方向マーク認識部」は、本願発明の、画像を解析することにより画像を形成した用紙の所定の位置に形成されたガイド情報の有無を判断する「ガイド有無判断手段」、および、ガイド有無判断手段がガイド情報が有ると判断した場合に、画像に含まれる前記ガイド情報の位置情報に基づいて画像の天地方向を認識する「方向認識手段」に相当するものである。
刊行物1発明の「記録部」が、認識した上方向により必要に応じて画情報を180度回転して出力する機能は、本願発明の「画像形成手段」が、前記方向認識手段により認識される画像の天地方向に基づいて方向を調整した画像を用紙に形成する機能に相当する。

したがって、本願発明と刊行物1発明の一致点及び相違点は次のとおりである。

(一致点)
「用紙に画像を形成する画像形成手段と、
原稿の画像を読み取る画像読取手段と、
画像を解析することにより、画像を形成した用紙の所定の位置に形成されたガイド情報の有無を判断するガイド有無判断手段と、
前記ガイド有無判断手段が前記ガイド情報が有ると判断した場合に、前記画像に含まれる前記ガイド情報の位置情報に基づいて前記画像の天地方向を認識する方向認識手段と、を具備し、
前記画像形成手段は、前記方向認識手段により認識される画像の天地方向に基づいて方向を調整した画像を用紙に形成する画像形成装置。」

(相違点1)
本願発明においては、「ガイド有無判断手段」、「方向認識手段」、「画像形成手段」は、何れも、「画像読取手段が読み取った読取画像」を解析、認識の対象としているのに対し、刊行物1発明では、送信側から受信した画情報を対象としている点。

(相違点2)
用紙の所定の位置に形成されたガイド情報の有無を判断する用紙が、本願発明においては、画像形成手段が画像を形成した用紙であるのに対し、刊行物1発明においては、原稿(本願発明の「画像を形成した用紙」に相当)は、画像形成手段が画像を形成したものであるかどうかは特定されていない点。

4.当審の判断
(相違点1について)
ファクシミリ装置において、画像読取手段が読み取った読取画像を送受信するファクシミリ機能に加えて、画像読取手段が読み取った読取画像を用紙に形成するコピー機能を有するものは周知であり、また、ファクシミリ機能とコピー機能は、原稿から読み取った画像を用紙に形成するという点では技術的に共通する機能であるから、刊行物1発明のファクシミリ装置においても、コピー機能を備えて、画像読取手段が読み取った読取画像をも解析、認識の対象とし、画像の天地方向に基づいて方向を調整した画像を用紙に形成することは当業者が容易に想到できたことである。

(相違点2について)
原稿としてどのようなものを用いるかは、ユーザが任意に選択できることであるから、刊行物1発明において、原稿を、画像形成手段が画像を形成した用紙とすることに格別の困難はなく当業者が適宜なし得たことにすぎない。

したがって、本願発明は、刊行物1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4.まとめ
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-06-24 
結審通知日 2009-06-30 
審決日 2009-07-13 
出願番号 特願2002-32503(P2002-32503)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
P 1 8・ 572- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松永 稔飯田 清司手島 聖治  
特許庁審判長 加藤 恵一
特許庁審判官 千葉 輝久
畑中 高行
発明の名称 画像形成方法、画像形成装置、コンピュータプログラムおよび記憶媒体  
代理人 伊東 忠彦  

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