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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41M
管理番号 1203022
審判番号 不服2007-13138  
総通号数 118 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-05-07 
確定日 2009-08-11 
事件の表示 平成10年特許願第537742号「ゲームボールやゴルフボール用などの紫外線照射硬化性インク」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 9月 3日国際公開、WO98/37982、平成13年 9月18日国内公表、特表2001-515417〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、1998年2月23日(パリ条約による優先権主張1997年2月27日、米国)を国際出願日とする特許出願であって、拒絶理由通知に応答して平成18年12月6日付けで手続補正がされたが、平成19年1月26日付けで拒絶査定がされ、これを不服として平成19年5月7日付けで審判請求がされるとともに平成19年6月6日付けで明細書についての手続補正がされたものである。
当審においてこれを審理した結果、平成19年10月22日付けで審尋を発したところ、請求人は平成20年4月30日付けで回答書を提出した。
当審においてさらにこれを審理した結果、平成20年5月23日付けで平成19年6月6日付け明細書についての手続補正を却下するとともに、同日付けで拒絶の理由を通知したところ、請求人は平成20年11月26日付けで意見書及び明細書についての手続補正書を提出した。

第2 本願の請求項1乃至請求項19の記載事項
平成20年11月26日付けで手続補正された特許請求の範囲の【請求項1】?【請求項19】には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】
ボール表面の少なくとも一部にインク表面を形成するための紫外線硬化性水不溶性製造インクであって、前記インク表面がその後トップコートで被覆され、前記インクが
(a) 第1アクリレート、エステル又はその混合物からなる群より選ばれる、少なくとも2種のプレポリマー官能性部分を有するプレポリマー;
(b) 重合性モノマー;
(c) 光開始剤;
(d) 芳香族酸アクリレートエステル、芳香族酸メタクリレートエステル及びその混合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の付着促進官能性部分を有する付着促進成分;及び
(e) 脂肪族アクリレート、芳香族アクリレート及びその混合物からなる群から選ばれる第二のアクリレートを含有する柔軟性促進成分を含有し、
テープ付着試験に供したときにインク表面が分解しない前記製造インク。
【請求項2】
前記付着促進成分が、前記付着促進成分1モルあたり少なくとも2モルのカルボニル官能性を含み、前記カルボニル官能性がカルボン酸官能性部分、エステル官能性部分、無水物官能性部分及びその混合物からなる群より選ばれ、前記光開始剤が、オリゴ(2-ヒドロキシ-2-メチルー1-(4-(1-メチルビニル)フェニル)プロパノン)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタノン、2-ブトキシ-1,2-ジフェニルエタノン、2-(2-メチルプロポキシ)-1,2-ジフェニルエタノン、ベンゾフェノン、2-αヒドロキシケトン及びその混合物からなる群より選ばれるフリーラジカル光開始剤である、請求項1記載の製造インク。
【請求項3】
前記光開始剤が前記インクの全量を基準にして0.05?15重量%の量で存在する、請求項1記載の製造インク。
【請求項4】
前記光開始剤が前記製造インクの全重量に対して0.05?15重量%の量で存在し、前記付着促進官能性部分が前記付着促進成分1モルあたり3?12モルのカルボニル官能性を含む、請求項1記載の製造インク。
【請求項5】
前記光開始剤がオリゴ(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-(1-メチルビニル)フェニル)プロパノン)と2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノンの混合物であり、前記光開始剤が前記インクの全重量に対して0.05?5重量%の量で存在する、請求項1記載の製造インク。
【請求項6】
前記インクが100?1000g/モルの分子量を有し、アクリレートモノマー、アクリレートオリゴマー及びその混合物からなる群より選ばれる粘度低下剤を更に含み、前記粘度低下剤が前記付着促進成分の全重量の10?50重量%の量で存在する、請求項1記載の製造インク。
【請求項7】
前記インクをゴルフボールに適用し、前記ゴルフボールがアイオノマー、バラタ、ポリウレタン、ポリオレフィン及びその混合物からなる群より選ばれるポリマーから製造されるカバーを含む、請求項1記載の製造インク。
【請求項8】
前記付着促進官能性部分がカルボン酸であり、前記付着促進成分のカルボン酸数が少なくとも100である、請求項1記載の製造インク。
【請求項9】
前記カルボン酸数が100?300であり、前記付着促進成分が前記全重量の5?25重量%の量で存在する、請求項8記載の製造インク。
【請求項10】
前記インクが、ポストキュア引張強さが3.5?175kg/cm^(2)である柔軟性促進成分を更に含む、請求項1記載の製造インク。
【請求項11】
前記第2アクリレートが脂肪族アクリレートである、請求項1記載の製造インク。
【請求項12】
ボールのトップコート表面の少なくとも一部にインク表面を形成するための紫外線硬化性水不溶性ロゴインクであって、
(a) 第1アクリレート、エステル又はその混合物からなる群より選ばれる、少なくとも2種のプレポリマー官能性部分を有するプレポリマー;
(b) 重合性モノマー;
(c) 光開始剤;及び
(d) エポキシアクリレート、イソボルニルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ジシクロペンテニルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート及びその混合物からなる群より選ばれる強靭剤;
を含み、
前記ボールを、少なくとも約145km(約90マイル)/時間における少なくとも200回の非弾性表面とのランダム衝突に供した後、インク表面の10%以下が失われている、前記ロゴインク。
【請求項13】
前記光開始剤がフリーラジカル光開始剤でありかつ紫外線に暴露する際に前記インクを硬化するのに十分な量で存在する、請求項12記載のロゴインク。
【請求項14】
前記強靭剤が前記インクの5?75重量%の量で存在し、前記光開始剤がオリゴ(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-(1-メチルビニル)フェニル)プロパノン)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタノン、2-ブトキシ-1,2-ジフェニルエタノン、2-(2-メチルプロポキシ)-1,2-ジフェニルエタノン、ベンゾフェノン、2-αヒドロキシケトン及びその混合物からなる群より選ばれる、請求項12記載のロゴインク。
【請求項15】
摩擦軽減剤を更に含み、前記光開始剤が前記ロゴインクの全重量に対して0.05?15重量%の量で存在する、請求項12記載のロゴインク。
【請求項16】
前記摩擦軽減剤がジメチルポリシロキサン、シリコンアクリレート及びその混合物からなる群より選ばれ、前記光開始剤が前記全重量に対して0.1?0.5重量%の量で存在する、請求項15記載のロゴインク。
【請求項17】
前記摩擦軽減剤が前記全重量の0.1?10重量%の量で存在し、前記光開始剤がオリゴ(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-(1-メチルビニル)フェニル)プロパノン)と2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノンの混合物でありかつ前記全重量に対して0.1重量%の量で存在する、請求項15記載のロゴインク。
【請求項18】
溶剤及び着色剤を更に含む、請求項12記載のロゴインク。
【請求項19】
前記着色剤が顔料又は染料である、請求項18記載のロゴインク。

第3 当審が発した拒絶理由通知の概略
平成20年5月23日付けで当審が発した拒絶理由通知の概略は、以下のとおりである。
「本件出願は、明細書及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項、第6項第1号、及び第6項第2号に規定する要件を満たしていない。」

第4 当審の判断
1.特許法第36条第6項第2号について
(1-1)本願の請求項1には、
「ボール表面の少なくとも一部にインク表面を形成するための紫外線硬化性水不溶性製造インクであって、前記インク表面がその後トップコートで被覆され、前記インクが……を含有し、
テープ付着試験に供したときにインク表面が分解しない前記製造インク。」
と記載されている。このうち、「テープ付着試験に供したときにインク表面が分解しない」との点は、「製造インク」をその特性によって特定しようとするものである。
ここで、当該「テープ付着試験」について発明の詳細な説明の記載を参酌すると、平成20年11月26日付けで手続補正された明細書(以下、「本願明細書」という。)には、以下の記載がある。
「本発明の十分な接着力を有する製造インク又はロゴインクについては(例えば、製造インクについてはUV放射硬化後のゴルフボールカバー又はプライマーコートに対するインターコート付着及びトップコート又はオーバーコートに対する付着; ロゴインクについてはUV放射硬化後のトップコートに対する付着)、製造インク又はロゴインクは少なくとも約75%のインクのついた表面に対して付着しなければならない。
製造インク及びロゴインクの付着は、いくつかの方法で測定される。」(本願明細書段落【0049】)
「第3の実験は、例えば、ゴルフボール上のUV硬化製造インク及びUV硬化ロゴインク画像に適用したASTM試験D-3359-87(方法B)のようなテープ付着試験を行うことを含む。」(本願明細書段落【0051】)
これらの記載、並びに本願の請求項1における「ボール表面の少なくとも一部にインク表面を形成するための紫外線硬化性水不溶性製造インクであって、前記インク表面がその後トップコートで被覆され」との記載をみるに、本願の請求項1における「テープ付着試験に供したときにインク表面が分解しない」との点は、ボール表面及びトップコートに対する「製造インク」の接着力に関する指標であると解される。
しかしながら、ボール表面及びトップコートに対する「製造インク」の接着力が、当該「製造インク」のみによって直ちに定まるものではなく、ボール表面及びトップコートの材質や表面状態等の影響を受けることは明白であるところ、本願の請求項1においては「製造インク」が適用されるべきボール表面及びトップコートの材質や表面状態等に関して、何ら規定されていない。
してみれば、ボール表面及びトップコートの材質や表面状態等が特定されていない以上、「テープ付着試験に供したときにインク表面が分解しない」との試験結果によって「製造インク」が明確に特定されるとは認めることができず、請求項1に係る発明は不明確である。

(1-2)本願の請求項12には、
「ボールのトップコート表面の少なくとも一部にインク表面を形成するための紫外線硬化性水不溶性ロゴインクであって、……を含み、
前記ボールを、少なくとも約145km(約90マイル)/時間における少なくとも200回の非弾性表面とのランダム衝突に供した後、インク表面の10%以下が失われている、前記ロゴインク。」
と記載されている。このうち、「ボールを、少なくとも約145km(約90マイル)/時間における少なくとも200回の非弾性表面とのランダム衝突に供した後、インク表面の10%以下が失われている」との点は、「ロゴインク」をその特性によって特定しようとするものである。
しかしながら、「少なくとも約145km(約90マイル)/時間」及び「少なくとも200回の非弾性表面とのランダム衝突」との記載では、「非弾性表面とのランダム衝突」の速度及び回数に関して下限のみが特定されているにすぎない。してみれば、当該下限値を上回る速度及び回数の「非弾性表面とのランダム衝突」に供した後「インク表面の10%以下が失われている」との結果について「ロゴインク」が明確に特定されるとは認めることができず、請求項12に係る発明は不明確である。

なお、請求人は本願の請求項12に関して意見書中で、
「ボールを少なくとも約145km(約90マイル)/時間における少なくとも200回の非弾性表面とのランダム衝突に供した後、インク表面の10%以下が失われているものにロゴインクを限定した。当初明細書の第29頁表IIIの記載に基づく。」(平成20年11月26日付け意見書「2.補正の内容及び根拠」)
と主張しており、本願の願書に最初に添付された明細書における表III(本願明細書段落【0054】【表3】)には「製造インクボールをゴルフクラブで約145km(約90マイル)/時間でランダムに打った-200回。」と記載された上で、実施例に相当する「改良されたロゴインクE」及び「改良されたロゴインクF」について「200ヒット試験によるインク表面画像完全性消失%」がそれぞれ「5%」及び「10%」との試験結果が記載されているので、本願の請求項12における「ボールを、少なくとも約145km(約90マイル)/時間における少なくとも200回の非弾性表面とのランダム衝突に供した後、インク表面の10%以下が失われている」との記載を、「ボールを、約145km(約90マイル)/時間における200回の非弾性表面とのランダム衝突に供した後、インク表面の10%以下が失われている」の誤記と仮に認め、さらに検討する。

当該「ボールを、約145km(約90マイル)/時間における200回の非弾性表面とのランダム衝突に供し」との点について発明の詳細な説明の記載を参酌すると、本願明細書には、以下の記載がある。
「本発明の十分な接着力を有する製造インク又はロゴインクについては(例えば、製造インクについてはUV放射硬化後のゴルフボールカバー又はプライマーコートに対するインターコート付着及びトップコート又はオーバーコートに対する付着; ロゴインクについてはUV放射硬化後のトップコートに対する付着)、製造インク又はロゴインクは少なくとも約75%のインクのついた表面に対して付着しなければならない。
製造インク及びロゴインクの付着は、いくつかの方法で測定される。」(本願明細書段落【0049】)
「第2の試験は、UV硬化製造インク及びロゴインクのついたゴルフボールを高速(例えば、約145km(約90マイル)/時間)で非弾性表面(例えば、グルーブのついたスチールプレート)と多くのランダム衝突に供することを含む。ボールとの衝撃時の非弾性表面の速度は、好ましくは少なくとも約145km(約90マイル)/時間である。」(本願明細書段落【0051】)
「製造インクボールをゴルフクラブで約145km(約90マイル)/時間でランダムに打った-200回。」(本願明細書段落【0054】【表3】)
これらの記載、並びに本願の請求項12における「ボールのトップコート表面の少なくとも一部にインク表面を形成するための紫外線硬化性水不溶性ロゴインクであって」との記載をみるに、「ボールを、約145km(約90マイル)/時間における200回の非弾性表面とのランダム衝突に供した後、インク表面の10%以下が失われている」との点は、トップコート表面に対する「ロゴインク」の接着力に関する指標であると解される。
しかるに、トップコート表面に対する「ロゴインク」の接着力が、当該「ロゴインク」のみによって直ちに定まるものではなく、トップコート表面の材質や表面状態等の影響を受けることは明白であるところ、本願の請求項12においては「ロゴインク」が適用されるべきトップコート表面の材質や表面状態等に関して、何ら規定されていない。
してみれば、トップコート表面の材質や表面状態等が特定されていない以上、「ボールを、約145km(約90マイル)/時間における200回の非弾性表面とのランダム衝突に供した後、インク表面の10%以下が失われている」との試験結果によって「ロゴインク」が明確に特定されるとは認めることができず、請求項12に係る発明は不明確である。

(1-3)上記「(1-1)」及び「(1-2)」に記載のとおり、本願の請求項1及び12に係る発明は不明確であるから、本願明細書の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

2.特許法第36条第6項第1号について
本願の請求項1には、
「ボール表面の少なくとも一部にインク表面を形成するための紫外線硬化性水不溶性製造インクであって、前記インク表面がその後トップコートで被覆され、前記インクが
(a) 第1アクリレート、エステル又はその混合物からなる群より選ばれる、少なくとも2種のプレポリマー官能性部分を有するプレポリマー;
(b) 重合性モノマー;
(c) 光開始剤;
(d) 芳香族酸アクリレートエステル、芳香族酸メタクリレートエステル及びその混合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の付着促進官能性部分を有する付着促進成分;及び
(e) 脂肪族アクリレート、芳香族アクリレート及びその混合物からなる群から選ばれる第二のアクリレートを含有する柔軟性促進成分を含有し、
テープ付着試験に供したときにインク表面が分解しない前記製造インク。」
と記載されている。かかる記載から、請求項1に係る発明は、「(a)」?「(e)」の各成分を含有し、「テープ付着試験に供したときにインク表面が分解しない」との特性を有する「製造インク」であることが把握できる。
ここで、上記「1.(1-1)」において検討したとおり、「テープ付着試験に供したときにインク表面が分解しない」との点は、ボール表面及びトップコートに対する「製造インク」の接着力に関する指標であると解される。そして、かかるボール表面及びトップコートに対する「製造インク」の接着力に関して、発明の詳細な説明には
「更に、付着促進成分を上記のようにインクベースに添加して製造インクを得る。付着促進成分は、例えば、ゴルフボールカバー又はプライマーコートに被覆し紫外線照射によって硬化された後の製造インクの付着性を改善する。付着促進成分は、また、トップコート(例えば、ウレタントップコート)又はカバーコート(例えば、水性ウレタンコート又は溶剤性コート)を硬化した製造インク上に被覆した場合にインクの付着を改善する。」(本願明細書段落【0022】)
と記載されていることから、当該接着力は主に「付着促進成分」によって改善されるものと解される。
この「付着促進成分」に関して、請求項1には「(d) 芳香族酸アクリレートエステル、芳香族酸メタクリレートエステル及びその混合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の付着促進官能性部分を有する付着促進成分」と記載されており、これは「少なくとも1種の付着促進官能性部分を有する」成分であって、「芳香族酸アクリレートエステル、芳香族酸メタクリレートエステル及びその混合物からなる群より選ばれる」ものを意味すると解される。そして、発明の詳細な説明における、
「付着促進成分は、カルボン酸官能性モノマー、カルボン酸官能性オリゴマー、エステル官能性モノマー、エステル官能性オリゴマー及びその混合物より選ばれる。付着促進成分は、付着促進成分1モルあたり少なくとも約2モルのカルボニル官能性を含む少なくとも1種の付着促進官能性部分を有する。」(本願明細書段落【0022】)
「付着促進成分は、アクリレートオリゴマー、芳香族酸アクリレートエステル、芳香族酸アクリレート半エステル、芳香族酸メタクリレートエステル、芳香族酸メアクリレート半エステル及びその混合物より選ばれることが好ましい。」(本願明細書段落【0023】)
「適切な付着促進成分の例としては、SARBOX^(TM) SB-501、SARBOX^(TM) SB-401、SARBOX^(TM) SB-510E35及びSARBOX^(TM) SB-520E35と称するSARTOMER社(ペンシルバニア州エクストン)の製品が挙げられる。SB-501は、40重量%(SB-501の全重量の)のエトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート(SR-454と称する)にブレンドした高度官能性カルボン酸末端オリゴマーである。」(本願明細書段落【0024】)
「SB-401は、30重量%(SB-401の全重量の)の溶媒に溶解した高度官能性カルボン酸末端固体オリゴマーである。」(本願明細書段落【0026】)
「SB-510E35は、65重量%(SB-510E35の全重量の)のエトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレートモノマー(SR-454と称する、その化学構造は本願明細書に含まれるものとする)にブレンドした35重量%(SB-510E35の全重量の)の中程度官能性カルボン酸含有メタクリレートオリゴマー(即ち、芳香族酸メタクリレート半エステル樹脂)である。」(本願明細書段落【0027】)
「SB-520E35は、65重量%(SB-520E35の全重量の)のエトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレートモノマー(SR-454と称する)にブレンドした35重量%(SB-520E35の全重量の)の中程度官能性カルボン酸含有メタクリレートオリゴマー(即ち、芳香族酸メタクリレート半エステル樹脂)である。」(本願明細書段落【0028】)
との記載をみるに、「芳香族酸アクリレートエステル、芳香族酸メタクリレートエステル及びその混合物からなる群より選ばれる」成分が有する「カルボニル官能性」等の「付着促進官能性部分」が、ボール表面及びトップコートに対する「製造インク」の接着力の改善に寄与するという程度までは把握することができる。

「製造インク」に係る実施例として、発明の詳細な説明には「改良された製造インクC」のみが記載されている。この「改良された製造インクC」は、本願明細書段落【0052】の【表1】によれば、「インクベース組成物」、「付着促進成分」、「柔軟性促進成分」、「光開始剤」、「着色剤」、「溶剤」を含有するものであり、具体的な「付着促進成分」としては「SB0520E35 ? 10重量%」(当審注:「SB-520E35」の誤記と解されるので、以下「SB-520E35」と表記を統一する。)が、また「柔軟性促進成分」としては「CN-966H90 ? 20重量%」がそれぞれ採用されていることが把握できる。
ここで、当該「改良された製造インクC」についてさらに検討する。
A.「インクベース組成物」について、発明の詳細な説明に、
「本発明の紫外線硬化性水不溶性製造インクは、ベース組成物を改良し、少なくとも一つの付着促進成分を混和することによって形成される。そのインクベース組成物は、少なくとも2つのプレポリマー機能性部分及びフォトイニシエーターを有するプレポリマーを含んでいる。そのプレポリマーは、第一のアクリレート、エステル及びそれらの化合物及び少なくとも一つの重合性モノマーからなる群から選ばれる。」(本願明細書段落【0014】)
と記載されていることから、「改良された製造インクC」が含有する「インクベース組成物」は、請求項1における成分「(a)」及び成分「(b)」とみなすことができる。
B.「改良された製造インクC」が含有する「光開始剤」は、請求項1における成分「(c)」に相当する。
C.「改良された製造インクC」が「付着促進成分」として含有する「SB-520E35」については、発明の詳細な説明に、
「SB-520E35は、65重量%(SB-520E35の全重量の)のエトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレートモノマー(SR-454と称する)にブレンドした35重量%(SB-520E35の全重量の)の中程度官能性カルボン酸含有メタクリレートオリゴマー(即ち、芳香族酸メタクリレート半エステル樹脂)である。」(本願明細書段落【0028】)
と記載されていることから、当該「SB-520E35」は請求項1における「芳香族酸アクリレートエステル、芳香族酸メタクリレートエステル及びその混合物からなる群より選ばれる」付着促進成分のうち「芳香族酸メタクリレートエステル」に属するものであり、請求項1における成分「(d)」の一種であると解される。
D.「改良された製造インクC」が「柔軟性促進成分」として含有する「CN-966H90」については、発明の詳細な説明に、
「本発明と適合する柔軟性促進成分の例は、更に、SARTOMER COMPANY PRODUCT MANUAL AND APPLICATION GUIDEに記載されたCN-962、CN-965、CN-966、CN-972、CN-973及びCN-981と称するSARTOMER社のウレタンアクリレートベース樹脂及びCN-965A80、CN-966A80、CN-966A90、CN-966H90、CN-966J75、CN-973A80、CN-973H85、CN-973J75及びCN-981B88と称するウレタンアクリレート樹脂/モノマーブレンドが挙げられるがこれらに限定されない。これらのうちCN-962、CN-965及びCN-966はポリエステル骨格を有する脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマーである。CN-973は、ポリエステル骨格を有する芳香族ウレタンアクリレートである。CN-972は、ポリエステル骨格を有する芳香族ウレタンアクリレートである。CN-981は、ポリエステル骨格を有する脂肪族ウレタンアクリレートである。CN-965A80、CN-966A80、CN-966H90、CN-966J75、CN-973A80、CN-973H85、CN-973J75及びCN-981B88において、CN-966、CN-973及びCN-981は各々ベース樹脂である。SARTOMER製品名に用いられるA、B、H及びJの文字は、ベース樹脂とブレンドしたモノマーを意味する。モノマー文字名に続く数字は、ベース樹脂の重量%を意味し、残りはブレンドを調製するモノマーの量である(即ち、合計100重量%になる)。モノマーA、B、H及びJは、各々SARTOMER名トリプロピレングリコールジアクリレート(SR-306)、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(SR-238)、2(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート(SR-256)及びイソボルニルアクリレート(SR-506)に対応する。」(本願明細書段落【0031】)
と記載されていることから、当該「CN-966H90」は請求項1における「脂肪族アクリレート、芳香族アクリレート及びその混合物からなる群から選ばれる第二のアクリレートを含有する柔軟性促進成分」のうち「脂肪族アクリレート」を含有する柔軟性促進成分に属するものであり、成分「(e)」の一種であると解される。
E.「改良された製造インクC」による製造印刷が施されたボールを用いた「テープ付着試験」の結果について、本願明細書段落【0054】の【表3】には「5B」、すなわち「0%分解」であると記載されており、かかる試験結果は請求項1における「テープ付着試験に供したときにインク表面が分解しない」に該当するといえる。
以上のことから、発明の詳細な説明に記載された「改良された製造インクC」に係る実施例は、請求項1に係る発明の実施例といい得る。

しかしながら、請求項1においては、「製造インク」が含有する成分のうち少なくとも「付着促進成分」に関して、「(d) 芳香族酸アクリレートエステル、芳香族酸メタクリレートエステル及びその混合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の付着促進官能性部分を有する付着促進成分」と特定されるにとどまり、上記「c.」において指摘のとおり「改良された製造インクC」が含有する「SB-520E35」はあくまでも請求項1における成分「(d)」の一種にすぎないのであるから、請求項1に係る発明が「SB-520E35」以外の「付着促進成分」を含有する「製造インク」を含んでいることは明らかである。
そして、実施例に係る「改良された製造インクC」が含有する「SB-520E35」に関しては、発明の詳細な説明に
「SB-520E35は、65重量%(SB-520E35の全重量の)のエトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレートモノマー(SR-454と称する)にブレンドした35重量%(SB-520E35の全重量の)の中程度官能性カルボン酸含有メタクリレートオリゴマー(即ち、芳香族酸メタクリレート半エステル樹脂)である。」(本願明細書段落【0028】)
と記載されているものの、当該記載では、
a.「中程度官能性カルボン酸」が具体的にいかなるカルボン酸であるのか不明である。
b.「芳香族酸」が具体的にいかなる化学構造を有する芳香族酸であるのか不明である。
c.「芳香族酸」と「メタクリレート半エステル」との関係が不明である。
d.「芳香族酸メタクリレート半エステル樹脂」の幹及び側鎖の化学構造並びに両末端の化学構造が不明である。
e.「中程度官能性カルボン酸含有メタクリレートオリゴマー」と「芳香族酸メタクリレート半エステル樹脂」との関係が不明であり、何を指して「(即ち、芳香族酸メタクリレート半エステル樹脂)」と称しているのか不明である。
ことから、具体的にどのような構造のものか不明である。すると、前記のとおり、発明の詳細な説明の記載から「カルボニル官能性」等の「付着促進官能性部分」がボール表面及びトップコートに対する「製造インク」の接着力の改善に寄与するという程度までは把握できるとしても、化学構造が相違すれば物質の特性も異なるという技術常識を考慮すれば、「付着促進成分」として「SB-520E35」を含有した「改良された製造インクC」に係る実施例における「テープ付着試験に供したときにインク表面が分解しない」との試験結果は、「SB-520E35」以外の「付着促進成分」を含有する「製造インク」が少なくとも同等の接着力を有することを直ちに裏付ける根拠とはなり得ない。
してみれば、「付着促進成分」として「SB-520E35」を含有した「改良された製造インクC」に係る実施例のみによって教示される内容を、当該「SB-520E35」以外の「付着促進成分」を含有する「製造インク」を含む請求項1に係る発明の範囲全体にまで一般化できるとは認めることができず、本願の請求項1に係る発明は発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。

上記のとおり、本願の請求項1に係る発明は発明の詳細な説明に記載したものとはいえないのであるから、本願明細書の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

3.特許法第36条第4項について
本願明細書段落【0024】?【0028】において、「付着促進成分」の例として記載されている「SB-501」、「SB-401」、「SB-510E35」、及び「SB-520E35」について、
(3-1)「SB-501は、40重量%(SB-501の全重量の)のエトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート(SR-454と称する)にブレンドした高度官能性カルボン酸末端オリゴマーである。」(本願明細書段落【0024】)と記載されているが、この「高度官能性カルボン酸」が具体的にいかなるカルボン酸であるのか不明であり、「高度官能性カルボン酸末端オリゴマー」の具体的化学構造が不明である。
(3-2)「SB-401は、30重量%(SB-401の全重量の)の溶媒に溶解した高度官能性カルボン酸末端固体オリゴマーである。」(本願明細書段落【0026】)と記載されているが、この「高度官能性カルボン酸」が具体的にいかなるカルボン酸であるのか不明であり、「高度官能性カルボン酸末端固体オリゴマー」の具体的化学構造が不明である。
(3-3)「SB-510E35」及び「SB-520E35」について「中程度官能性カルボン酸含有メタクリレートオリゴマー(即ち、芳香族酸メタクリレート半エステル樹脂)」(本願明細書段落【0027】及び【0028】)と記載されているが、
a.「中程度官能性カルボン酸」が具体的にいかなるカルボン酸であるのか不明である。
b.「芳香族酸」が具体的にいかなる化学構造を有する芳香族酸であるのか不明である。
c.「芳香族酸」と「メタクリレート半エステル」との関係が不明である。
d.「芳香族酸メタクリレート半エステル樹脂」の幹及び側鎖の化学構造並びに両末端の化学構造が不明である。
e.「中程度官能性カルボン酸含有メタクリレートオリゴマー」と「芳香族酸メタクリレート半エステル樹脂」との関係が不明であり、何を指して「(即ち、芳香族酸メタクリレート半エステル樹脂)」と称しているのか不明である。
(3-4)上記「(3-1)」?「(3-3)」に記載のとおり、「付着促進成分」の例として記載されている「SB-501」、「SB-401」、「SB-510E35」、及び「SB-520E35」がどのようなものか不明であるため、どのような「付着促進成分」をどのように用いれば請求項1に記載された「テープ付着試験に供したときにインク表面が分解しない」との点が達成されるのかが不明である。
したがって、発明の詳細な説明の記載は、請求項1に係る発明を当業者が容易に実施できる程度に明確かつ十分とはいえないので、本願明細書の記載は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。

第5 むすび
以上のとおり、本願の明細書の記載は、特許法第36条第4項、第6項第1号、及び第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-03-13 
結審通知日 2009-03-16 
審決日 2009-03-27 
出願番号 特願平10-537742
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (B41M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石井 裕美子亀田 宏之  
特許庁審判長 酒井 進
特許庁審判官 菅野 芳男
坂田 誠
発明の名称 ゲームボールやゴルフボール用などの紫外線照射硬化性インク  
代理人 大塚 文昭  
代理人 西島 孝喜  
代理人 中村 稔  
代理人 小川 信夫  
代理人 宍戸 嘉一  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 箱田 篤  
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