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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63B
管理番号 1203025
審判番号 不服2008-561  
総通号数 118 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-01-09 
確定日 2009-08-05 
事件の表示 平成10年特許願第500570号「大形のグリップ部を有するゴルフクラブシャフト」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年12月11日国際公開、WO97/46288、平成12年 9月 5日国内公表、特表2000-511448〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成9年4月25日(パリ条約による優先権主張外国庁受理:1996年6月3日:米国)を国際出願日とする出願であって、平成18年8月10日付けの拒絶理由通知に対して、平成18年11月16日付けで意見書と共に手続補正書が提出されたところ、平成19年10月5日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成20年1月9日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。

第2 平成20年1月9日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[結論]
平成20年1月9日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正による発明
平成20年1月9日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1乃至9についての補正を含むものであり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された(以下、「本件補正発明」という。)。
「ゴルファーがゴルフクラブの制御をより向上させることを可能にするゴルフクラブシャフトであって、前記シャフトは、下方のクラブヘッド側の端部、上方のグリップ側の端部、下方のパワー部及び上方のグリップ部を含み、前記パワー部及びグリップ部は遷移部によって接合され、前記上方のグリップ部は前記下方のパワー部の最大直径よりも少なくとも35%大きい最小直径を有し、前記遷移部は、前記シャフトの全長の4%より大きく15%以下の長さを有し、前記下方のパワー部の長さがすくなくとも前記グリップ部の長さの2.5倍以上長く、前記グリップ部の最小直径から前記パワー部の最大直径の変化が前記遷移部において起こることを特徴とするゴルフクラブシャフト。」
(下線は補正箇所を示し、本件補正において付されたとおりである。)

本件補正の内、1番目の補正事項は、「遷移部の長さ」に関するものであり、補正前においては「シャフトの全長の15%以下の長さ」として、上限値のみを特定していたものが、補正後においては「シャフトの全長の4%より大きく15%以下の長さ」として、上限値に加え下限値も限定するようになったから、当該補正事項は特許請求の範囲の減縮と言える。
2番目の補正事項は、「遷移部」に関するものであり、補正前においては「パワー部及びグリップ部は遷移部によって接合され」と特定されていたものが、補正後においては更に、「グリップ部の最小直径からパワー部の最大直径の変化が遷移部において起こる」と特定しているものであるから、当該補正事項は特許請求の範囲の減縮と言える。
以上のとおりであるから、本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、本件補正発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、即ち、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか否かについて、以下、検討する。

2.引用刊行物
(1)原査定の拒絶の理由に引用された登録実用新案第3016553号公報(以下、「引用文献」という。)には、次の事項が図面と共に記載されている。
ア.実用新案登録請求の範囲【請求項1】
「シャフト1のグリップ側の部位にヘッド側の部位に比べて外径が一段大きい太径部2を設けたゴルフクラブ。」
イ.段落【0002】
「【従来の技術】
ゴルフクラブは、スイング時に、シャフトの一点がしなるように設計されていて、この点をキックポイントと呼んでいる。そのキックポイントがシャフトのヘッドの近くにあるものを先調子といい、逆にグリップの近くにあるものを手元調子といい、その中間にあるものを中調子といっている。そして、ボールを上げやすいのは中調子?先調子のものである。従来、キックポイントをシャフトのヘッド側に移したいときは、シャフトの肉厚を変えたり、シャフトに他の素材を巻き付ける等の手段が採られている。」
ウ.段落【0004】
「【考案が解決しようとする課題】
本考案は、シャフトのキックポイントをヘッド側に移すこと、及びシャフトを硬くすることが容易なゴルフクラブの提供を目的とする。」
エ.段落【0007】
「【作用】
シャフト1のグリップ側の部位にヘッド側の部位に比べて外径が一段大きい太径部2を設けたことによって、キックポイントがヘッド側に移り、かつシャフトが硬くなる。」
オ.段落【0008】
「【実施例】
図1は本考案の実施例を、又、図2は従来例を示したものである。従来のゴルフクラブのシャフト3は、ヘッド側の細い箇所で外径が8?9mm程度であり、グリップ側の太い箇所で外径は14?16mm程度であった。これに対し、本考案実施例におけるゴルフクラブのカーボン製シャフト1は、グリップ側の部位にヘッド側の部位に比べて外径が一段大きい太径部2を設けて、その太径部2の外径を19?30mm程度とし、ヘッド側の細い箇所では従来例と同様に外径を8?9mmとしている。尚、図中、二点鎖線はシャフトのグリップ箇所の外周部に巻くグリップカバーの外郭線を示したものであるが、本考案のゴルフクラブのシャフトは、そのグリップカバーとは関係なく、シャフト自体に太径部2を設けるものである。」
カ.段落【0009】
「【考案の効果】
本考案は上記のように、シャフト1のグリップ側の部位にヘッド側の部位に比べて外径が一段大きい太径部2を設けたことによって、キックポイントをヘッド側に容易に移すことができ、かつシャフトを容易に硬くすることができて、ボールを上げやすく、かつジャストミートがやさしいゴルフクラブを容易に得ることができる。そして、その太径部2の外径を19?30mm程度に設定すれば、これらの効果が顕著になる。」

上記ア、エ等の「シャフト1のグリップ側の部位」なる記載、及び、図1からみて、引用文献記載発明のゴルフクラブには、シャフトが存在しており、かつ、「ボールを上げやすく、かつジャストミートがやさしいゴルフクラブ」を得るための構成として、カ記載にあるように、シャフトの構成を特定するものと認められるから、ゴルフクラブシャフトとして認定することができる。
してみれば、上記記載事項からみて、引用文献には、次の発明が記載されている(以下、「引用文献記載発明」という。)。
「ボールを上げやすく、かつジャストミートがやさしいゴルフクラブを得ることを可能にするゴルフクラブであって、シャフトのグリップ側の部位に、ヘッド側の部位に比べて外径が一段大きい太径部を設けたゴルフクラブシャフト。」

3.対比
引用文献記載発明は、ボールを上げやすく、かつジャストミートがやさしいゴルフクラブを得ることを可能にするものであるところ、「ボールを上げやすく、かつジャストミートがやさしいゴルフクラブ」は、ゴルファーにとって、制御し易いゴルフクラブと言えるから、引用文献記載発明は、本件補正発明と同様に、ゴルファーがゴルフクラブの制御を向上させることを可能にするものであることは明らかである。
又、本件補正発明における「前記上方のグリップ部は前記下方のパワー部の最大直径よりも少なくとも35%大きい最小直径を有し、」との特定事項は、具体的数値の限定を別にすれば(なお、具体的数値については、後に相違点として検討する。)、グリップ部がパワー部(シャフトの下方部)より太いことを特定しており、この特定事項は、引用文献記載発明の「グリップ側の部位に、ヘッド側の部位(シャフトの下方部)に比べて外径が一段大きい太径部を設ける」ことと共通の技術事項である。

以上の対比から、本件補正発明と引用文献記載発明とは、以下の点で一致する一方、以下の点で相違している。

《一致点》
「ゴルファーがゴルフクラブの制御をより向上させることを可能にするゴルフクラブシャフトであって、シャフトのグリップ側の部位に、ヘッド側の部位に比べて外径が大きい太径部を設けたゴルフクラブシャフト。」
《相違点1》
「本件補正発明では、シャフトは、下方のクラブヘッド側の端部、上方のグリップ側の端部、下方のパワー部及び上方のグリップ部を含み、パワー部及びグリップ部は遷移部によって接合されると特定されるのに対して、引用文献記載発明では、当該特定事項を有するか定かでない点。」
《相違点2》
「グリップ側の部位とヘッド側の部位との外径について、本件補正発明では、上方のグリップ部は下方のパワー部の最大直径よりも少なくとも35%大きい最小直径を有すると特定されるのに対して、引用文献記載発明では、当該特定事項を有するか定かでない点。」
《相違点3》
「本件補正発明では、遷移部はシャフトの全長の4%より大きく15%以下の長さを有すると特定されるのに対して、引用文献記載発明では、当該特定事項を有するか定かでない点。」
《相違点4》
「本件補正発明では、下方のパワー部の長さがすくなくともグリップ部の長さの2.5倍以上長いと特定されるのに対して、引用文献記載発明では、当該特定事項を有するか定かでない点。」
《相違点5》
「本件補正発明では、グリップ部の最小直径からパワー部の最大直径の変化が遷移部において起こると特定されるのに対して、引用文献記載発明では、当該特定事項を有するか定かでない点。」

4.判断
上記相違点について検討する。
(1)相違点1について
本件補正後の請求項1の記載によれば、本件補正発明の「グリップ部」はシャフトの上方の部分、「パワー部」はシャフトの下方の部分であり、「遷移部」は両者を接合する部分である。更に、請求項3も参酌すると、「パワー部」は、「遷移部」に最も近い部分の最大直径から、下方のクラブヘッド側の端部での最小直径までテーパー形状になっているものである。
他方、引用文献における「シャフト1のグリップ側の部位に…(略)…太径部を設けた」(上記ア、エ等参照)なる記載、及び、図1からみて、図1の番号2で示される太径部がグリップ部であることは明らかであるから、引用文献記載発明のゴルフクラブシャフトは、グリップ部とそれ以外の部分とから構成されているものである。
そこで、該「グリップ部以外の部分」について検討する。
引用文献の段落【0008】2?8行の記載事項(上記オ参照)を、引用発明の一実施例として示される図1、従来例として示される図2及び当該技術分野の技術常識を参酌して検討すると、引用文献記載発明の「グリップ部以外の部分」の下方部には、テーパー形状になっている「細径の部分」が形成されており、上方部には、グリップ部のヘッド側の端部(図1における太径部2の下端部)から「細径の部分」の上端部まで、その直径が漸減していく部分が形成されていることが把握できる。
ところで、引用文献において【従来の技術】と記載されるように(上記イ参照)、一般に、ゴルフクラブは、スイング時にシャフトの一点がしなるように設計され、この点をキックポイントと呼ぶことは技術常識である。
すると、本件補正発明においては、パワー部の直径よりもグリップ部の直径の方が大きいこと、及び、パワー部とグリップ部の長さの関係からみて、キックポイントがパワー部にあることは明らかである。
他方、引用文献記載発明のゴルフクラブシャフトにおいては、上記「細径の部分」にキックポイントがある(上記イ?エ参照)。
してみると、引用文献記載発明のゴルフクラブシャフトの「細径の部分」は、グリップ部の下方に設けられたグリップ部より細径のキックポイントを有する部分である点で、本件補正発明の「パワー部」に対応するものである。
又、引用文献記載発明のゴルフクラブシャフトにおける直径が漸減していく部分は、グリップ部と細径の部分とを接合する部分であり、且つ、直径が漸減、即ち、遷移しているものであるから、本件補正発明の「遷移部」と対応するものである。
よって、この「細径の部分」は「パワー部」と、同じく「直径が漸減する部分」は「遷移部」と言い換えることができ、又、それらの部分をそのように称しても特に矛盾はなく、且つ、他の記載と照らしても矛盾しない。
してみると、引用文献記載発明のゴルフクラブシャフトも、上方のグリップ部及び下方のパワー部を含み、グリップ部及びパワー部は遷移部により接合されるものであり、又、下方のヘッド側の端部、上方のグリップ側の端部を含んでいることは言うまでもない。
即ち、引用文献記載発明は、上記相違点1に係る特定事項を有しているものであるから、相違点1は実質的な相違点ではない。

なお、請求人は、引用文献に関して「グリップ部、遷移部及びヘッド側の細い個所(パワー部)の長さについては記載がありません」(審判請求書3頁「(c)引用発明の説明 引例1の記載事項」8?9行)と主張しており、この主張からみて、請求人も、引用文献記載発明のゴルフクラブシャフトが、「グリップ部」、「遷移部」及び「ヘッド側の細い個所(パワー部)」からなることを認めている。

(2)相違点2について
相違点2に係る特定事項は、グリップ部の最小直径とパワー部の最大直径とにより特定される事項である。
引用文献には、太径部(グリップ部)の外径を19?30mmとし、ヘッド側の細い箇所(パワー部の下端)の外径を8?9mmとすることが記載されている(上記オ参照)。
引用文献において、図1の番号2で示される部分は「太径部」と記載され、他に何の条件も付されていないから、太径部は全長に亘って同径に形成されていると解され、又、そのように解しても特に矛盾はない。
即ち、「19?30mm」はグリップ部の最小直径と言える。
他方、「8?9mm」なる数値は、ヘッド側の細い箇所の数値であるところ、上記のとおり、パワー部は、ヘッド側に向かい細くなる、テーバー形状であるから、当該「8?9mm」はパワー部の最小直径である。
したがって、パワー部の最大直径は、該「8?9mm」より若干大きな数値となるから、「8?9mm」という数値を以て、直ちに、上記グリップ部の最小直径である「19?30mm」と比較することはできない。
しかしながら、引用文献記載発明における、太径部をヘッド側の部位に比べて「一段と」大きい外径とした意義、更に、図1から、パワー部の最大直径からグリップ部への直径変化が相当に大きいことが窺える点を参酌すれば、パワー部の最大直径が「8?9mm」より若干大きな数値であるとしても、グリップの最小直径は、パワー部の最大直径より35%以上大きな数値になると推察される。
なお参考のために、上記例示された数値に基づいて計算すると、グリップ部の太さは、ヘッド側の部位の太さの「211?375%」となり、本件補正発明の条件である「135%」を遙かに超える数値であるから、パワー部の最大直径が「8?9mm」より若干大きな数値であっても、「135%」を超える蓋然性が高く、この点からみても、上記認定は首肯できる。
以上のとおり、引用文献記載発明も、上記相違点2に係る条件を満たすものである。
そして、本願明細書を参酌しても、その具体的臨界値を「35%」と特定したことによる効果等は何ら記載されておらず、当該数値は、当業者が適宜設定し得るものである。

なお、請求人は、上記直径に関して「引例1に記載されたゴルフクラブは、ヘッド側の細い個所(パワー部)が8-9mm、グリップ部の大径部が19-30mmと記載されているので(段落0008)、細い個所の最大直径を9mm、グリップ部の最小直径が19mmと解釈されます。そうすると、19÷9=2.11すなわち、グリップ部の最小直径は、パワー部の最大直径の2.1倍ですので、本願請求項1の要件である「上方のグリップ部は前記下方のパワー部の最大直径よりも少なくとも35%大きい最小直径を有」するという要件を満たしているといえるようです。」(審判請求書3頁「(c)引用発明の説明 引例1の記載事項」1?7行)と記載し、引用文献に、グリップ部、パワー部の直径に係る特定事項が記載されていると認めている。

(3)相違点3について
上記「(1)相違点1について」において検討したとおり、引用文献記載発明においても、遷移部は、グリップ部とパワー部とを接合するものである。
ところで、太いグリップ部と細いパワー部とを接合するについて、遷移部が短かすぎれば、遷移部における太さの変化が極端なものとなり、該部分が脆弱部となるから、ゴルフクラブの機械的強度に問題が生じることは明らかであり、逆に、遷移部が長すぎれば、パワー部との区別が付きにくくなり、遷移部を設ける意義が曖昧になることは明らかである。
即ち、遷移部の機械的強度、遷移部の設置意義等の観点から、遷移部の長さの適正範囲は自ずと限定されるものであり、相違点に係るような範囲を選択することは、当業者が容易に想到し得ることである。
そして、本願明細書を参酌しても、その具体的臨界値が「4%」より大きく「15%」以下と特定したことによる効果等は何ら記載されておらず、当該数値は、当業者が適宜設定し得るものである。

(4)相違点4について
一般に、ゴルフクラブは、シャフトがしなる点である「キックポイント」を有し、キックポイントがグリップの近くにあるものを「手元調子(ハイキックポイント)」、ヘッドの近くにあるものを「先調子(ローキックポイント」、その中間にあるものを「中調子(ミドルキックポイント)」ということは周知の技術事項(例えば、引用文献の記載事項イ、米国特許第3016553号明細書1欄17?23行等参照)であるところ、シャフト(パワー部)の長さが変わればキックポイントの位置が変わること、或いは、ゴルフクラブがしなるためには、シャフト(パワー部)にそれなりの長さが必要であることは技術常識である。
即ち、ゴルフクラブの設計者は、ゴルフクラブに要求される性能に応じ、キックポイントをどこに設定するかを勘案しつつ、グリップ部の長さ、シャフトの長さ(パワー部の長さ)、シャフトの壁厚等を設計するものであるから、グリップ部とパワー部の各長さを、どのように設定するかは、上記事項に鑑みて、当業者が適宜決定する設計事項であると認められる。
そして、本願明細書を参酌しても、その具体的臨界値を「2.5倍」と特定したことによる効果等は何ら記載されておらず、当該数値は、当業者が適宜設定し得るものである。

(5)相違点5について
上記「(1)相違点1について」において検討したとおり、引用文献記載発明においても、遷移部は、グリップ部の最小直径の箇所とパワー部の最大直径の箇所とを、自身の直径を漸減させながら接合しているから、グリップ部の最小直径からパワー部の最大直径の変化は、遷移部において起こるものである。
即ち、引用文献記載発明も、相違点5に係る特定事項を有しているから、相違点5は実質的な相違点ではない。

(6)まとめ
以上のとおりであるから、相違点1?5に係るいずれの特定事項も、当業者が適宜に設定可能なものであって、それらを寄せ集めたことにより得られる作用効果も当業者であれば容易に推察可能なものであって、格別なものとは言えない。
したがって、本件補正発明は、引用文献記載発明、及び、周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成18年11月16日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下、「本願発明」という。)。
「ゴルファーがゴルフクラブの制御をより向上させることを可能にするゴルフクラブシャフトであって、前記シャフトは、下方のクラブヘッド側の端部、上方のグリップ側の端部、下方のパワー部及び上方のグリップ部を含み、前記パワー部及びグリップ部は遷移部によって接合され、前記上方のグリップ部は前記下方のパワー部の最大直径よりも少なくとも35%大きい最小直径を有し、前記遷移部は、前記シャフトの全長の15%以下の長さを有し、前記下方のパワー部の長さがすくなくとも前記グリップ部の長さの2.5倍以上長いことを特徴とするゴルフクラブシャフト。」
なお、第7行目の「すくなくとも」は、補正書においては「すくなことも」と記載されているが、本件補正をみれば、「すくなくとも」の誤記であることは明らかであるので、上記のように認定した。

2.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載事項は、上記「第22.」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、上記「第2」で検討した本件補正発明の、「遷移部の長さ」に関する「シャフトの全長の4%より大きい」という特定事項を、及び、「遷移部」に関する「前記グリップ部の最小直径から前記パワー部の最大直径の変化が前記遷移部において起こる」という特定事項を省いたものである。
そうすると、実質的に本願発明の発明を特定する事項を全て含み、更に、他の発明を特定する事項を付加したものに相当する本件補正発明が、上記「第2 4.」に記載したとおり、引用文献記載発明、及び、周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである以上、本願発明も、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献記載発明、及び、周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-03-04 
結審通知日 2009-03-10 
審決日 2009-03-24 
出願番号 特願平10-500570
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63B)
P 1 8・ 575- Z (A63B)
P 1 8・ 121- Z (A63B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 酒井 保  
特許庁審判長 酒井 進
特許庁審判官 上田 正樹
菅野 芳男
発明の名称 大形のグリップ部を有するゴルフクラブシャフト  
代理人 三好 秀和  

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