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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1203063
審判番号 不服2006-14980  
総通号数 118 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-06-15 
確定日 2009-09-01 
事件の表示 特願2001-257006「商取引支援システム」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 2月 7日出願公開、特開2003- 36384〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯

本願は,平成13年7月24日の出願であって,平成17年12月22日付けで拒絶理由が通知され,平成18年3月8日に手続補正書が提出され,同年5月1日付けで拒絶査定がされ,これに対し,同年6月15日に審判請求がされるとともに,同年7月13日に手続補正書が提出されたものである。

第2 平成18年7月13日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定

補正却下の決定の結論

本件補正を却下する。

理由

1 補正の内容

本件補正は,本件補正前の
「【請求項1】
端末装置からネットワークを通じて接続可能なコンピュータシステムを備え、商品の販売および賃貸の一方または双方にかかる商取引や当該商取引の支援を実現可能に構成した商取引支援システムであって、
商品を使用して知識を得た支援者が端末装置から前記コンピュータシステムにアクセスすると、支援可能な商品名,商品ごとの支援料金,地理情報等のうち一以上の項目にかかる蓄積情報を記録部に記録し、
前記コンピュータシステムを通じて販売または賃貸される商品についての支援を望む顧客が端末装置から前記コンピュータシステムにアクセスすると、前記記録部に記録された蓄積情報を探索して、支援料金,支援者と顧客との地理的距離,支援者の過去の支援回数,支援者のアクセス回数,前記顧客が指名する者等のうち一以上の項目を満たす者の中から最適の支援者を特定し、
特定した支援者が前記顧客に対して商品の機能や性能等についての説明や教授あるいは保守等についての支援を行うにあたって、日時,支援料金が安い者,知識量の豊富な者等にかかる支援条件について前記コンピュータシステムを通じて調整を図り、
前記支援条件が成立したとき、前記コンピュータシステムは前記顧客の端末装置と前記特定した支援者の端末装置とを接続する構成とした商取引支援システム。

【請求項2】
請求項1に記載した商取引支援システムであって、
コンピュータシステムは、支援条件が成立したとき、第2銀行サーバーにアクセスして支援料金を所定の口座から引き落とすとともに、第1銀行サーバーにアクセスして前記支援料金の全部または一部を支援者の口座に振り込む商取引支援システム。

【請求項3】
請求項1または2に記載した商取引支援システムであって、
コンピュータシステムは、記録部に記録された蓄積情報に基づいて、顧客が希望する支援料金に近い支援料金を提示した支援者を特定する商取引支援システム。

【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載した商取引支援システムであって、二種類以上の商品を組み合わせてグループ化した商品群を記録部に記録し、
コンピュータシステムは、前記グループ化した商品群ごとに顧客に賃貸を行う商取引支援システム。

【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載した商取引支援システムであって、
支援者が顧客を支援するのは、コンピュータシステムを通じて販売される商品を対象とする商取引支援システム。」

とある記載を,

「【請求項1】
端末装置からネットワークを通じて接続可能なコンピュータシステムを備え、商品の販売および賃貸の一方または双方にかかる商取引や当該商取引の支援を実現可能に構成した商取引支援システムであって、
単に販売しただけでは機能や性能等を十分に発揮できない商品を既に使用して知識を得た支援者であって前記コンピュータシステムによる商品の販売および賃貸を行わない者が第1端末装置からネットワークを通じて前記コンピュータシステムにアクセスすると、支援可能な商品名,商品ごとの支援料金,地理情報等のうち一以上の項目にかかる蓄積情報を記録部に記録し、
前記コンピュータシステムを通じて販売または賃貸される商品についての支援を望む顧客が前記第1端末装置とは異なる第2端末装置からネットワークを通じて前記コンピュータシステムにアクセスすると、前記記録部に記録された蓄積情報を探索して、支援料金,支援者と顧客との地理的距離,支援者の過去の支援回数,支援者のアクセス回数,前記顧客が指名する者等のうち一以上の項目を満たす者の中から最適の支援者を特定し、
特定した支援者が前記顧客に対して商品の機能や性能等についての説明や教授あるいは保守等についての支援を行うにあたって、日時,支援料金が安い者,知識量の豊富な者等にかかる支援条件について前記コンピュータシステムを通じて調整を図り、
前記支援条件が成立したとき、前記コンピュータシステムは第2銀行サーバーにアクセスして支援料金を所定の口座から引き落とすとともに、第1銀行サーバーにアクセスして前記支援料金の全部または一部を前記特定した支援者の口座に振り込む手続きと、前記顧客の第2端末装置と前記特定した支援者の第1端末装置との相互間を電子メールやインターネット電話等で接続する手続きとを自動的に実行する構成とした商取引支援システム。

【請求項2】
請求項1に記載した商取引支援システムであって、
コンピュータシステムは、記録部に記録された蓄積情報に基づいて、顧客が希望する支援料金に近い支援料金を提示した支援者を特定する商取引支援システム。

【請求項3】
請求項1または2に記載した商取引支援システムであって、
二種類以上の商品を組み合わせてグループ化した商品群を記録部に記録し、コンピュータシステムは、前記グループ化した商品群ごとに顧客に賃貸を行う商取引支援システム。

【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載した商取引支援システムであって、
支援者が顧客を支援するのは、コンピュータシステムを通じて販売される商品を対象とする商取引支援システム。」

と補正しようとするものである。(下線は,補正された部分を示すものとして,手続補正書に付されたものを援用したものである。)

2 本件補正の補正目的の適否

本件補正は,補正前の請求項1を削除し,補正前の請求項2において,「商品を使用して知識を得た支援者」との記載を「単に販売しただけでは機能や性能等を十分に発揮できない商品を既に使用して知識を得た支援者であって前記コンピュータシステムによる商品の販売および賃貸を行わない者」に,「顧客の端末装置と前記特定した支援者の端末装置とを接続する構成」との記載を「顧客の第2端末装置と前記特定した支援者の第1端末装置との相互間を電子メールやインターネット電話等で接続する手続きとを自動的に実行する構成」に,それぞれ限定的に補正し,さらに,支援者の端末装置及び顧客の端末装置を,それぞれ「第1端末装置」及び「第1端末装置とは異なる第2端末装置」に補正し,コンピュータシステムへのアクセスが「ネットワークを通じて」なされると限定したうえで,補正前の請求項2,3,4,5を,それぞれ繰り上げて,新たな請求項1,2,3,4とするものである。

したがって,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号及び第2号に規定する請求項の削除及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するといえる。

そこで,次に,本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(独立特許要件)について,検討する。

3 引用例の記載内容と引用発明

(1)引用例1の記載内容と引用発明

ア 原査定の拒絶理由に引用された,本願の出願日前に日本国内で頒布された刊行物である特開平9-179910号公報(平成9年7月11日出願公開。以下「引用例1」という。)には,図とともに,次の記載がある。

・「【0014】【発明の実施の形態】 以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を詳細に説明する。 実施形態の電子仲介システムは、電子メール機能を提供する情報処理システムにおいて、ユーザ同士の出会いのための場所を提供する。電子メールのユーザは、個人情報の他に各種項目を設定した情報をこの場所に送り込み、2人またはそれ以上のユーザの情報同士で、設定された項目に関する特定の条件が満足された場合に、お互いの個人情報を交換する。これにより、ユーザはお互いの個人情報を知ることができる。
【0015】 このようなシステムを用意すれば、中古品を売りたい/買いたい、同じ趣味を持った友人を作りたい等の特定の利用目的を持った者同士が、公の場に個人情報を公開することなく、お互いに知り合うことができる。
【0016】 また、情報を交換できる仕組みを以下のように制御することで、きめ細かな出会いの処理を実現できる。ここでは、情報同士の出会いの条件を次の組合せで設定する。
(1)同義語による出会い
例えば、「出会いたい」という同じ希望を持つユーザ同士を仲介する。
(2)対語による出会い
例えば、「買いたい」と「売りたい」、「知りたい」と「教えたい」のように対をなす希望を持つユーザ同士を仲介する。
(3)一致項目率または一致項目数による出会い
例えば、設定された項目がすべて一致したユーザ同士を仲介する。または、項目が半数以上一致すれば仲介する、あるいは、1個でも項目が一致すれば仲介するなど。
(4)特定条件の設定による出会い
例えば、特定の項目だけが一致したユーザ同士を仲介する。」

・「【0033】 図6は、上述のようなリモートプログラミングを用いた電子仲介システムの構成図である。図6において、サービスセンタ33は電子仲介サービスを行う計算機システムで、通信ネットワーク32を介してユーザAの端末31-1およびユーザBの端末31-2と結ばれている。尚、通信ネットワーク32には、そのほかにも図示されない多数のユーザ端末が接続されている。
【0034】 例えば、ユーザAが端末31-1上で必要な情報を設定すると、ユーザAの情報を持つ仲介エージェント34-1が自動的に生成され、通信ネットワーク32を介してサービスセンタ33へ移動する。ユーザBの情報を持つ仲介エージェント34-2もまた端末31-2上で同様にして生成され、サービスセンタ33へ移動する。
【0035】 サービスセンタ33内には、仲介サービス35、電子メールサービス36、およびその他の各種サービス37を提供するプロセスがあらかじめ用意されている。サービスセンタ33に到着した仲介エージェント34-1、34-2は、仲介サービス35を提供するプロセスの働きにより、仲介可能である場合に引き合されて、相互に情報を交換する。」

・「【0039】 次に、図8および図9を参照しながら、仲介サービス35の具体的な実現例を説明する。
図8は、仲介サービス35の構成を示している。仲介サービス35には、売買サービス51、グループ生成サービス52、および紹介サービス53が含まれる。売買サービス51は上述した1対nの仲介形式のサービスを提供し、グループ生成サービス52はn人のグループを生成するサービスを提供し、紹介サービス53は1対1の仲介形式のサービスを提供する。
【0040】 図9は、図8の各サービス51、52、53における仲介エージェントの流れを示している。図9において、各サービス毎に受付プレイス62と待合せプレイス63が生成され、端末から入ってきた仲介エージェントの受け入れを行う。受付プレイス62には1つの受付エージェント64が常駐し、それに対応して受付データベース61がデータベース45内に設けられる。受付データベース61には、各仲介エージェントの情報が仲介エージェント毎に格納される。
【0041】 図9における仲介エージェント34-1の動きは次の通りである。以下では、コマンドgoによりエージェントが移動することを単に「goする」と記述し、コマンドmeetにより他のエージェントと相互作用を行うことを単に「meetする」と記述する。
【0042】 ○1(審決注:実際の表記は丸数字の1であるが,都合によりこのように表記する。以下同様。)依頼主であるユーザAが仲介サービスの依頼を行った場合、仲介エージェント34-1が端末31-1から受付プレイス62へgoする。
○2仲介エージェント34-1は、受付プレイス62上で受付エージェント64とmeetする。このとき、受付エージェント64は、仲介エージェント34-1から仲介情報を受け取る。そして、受け取った仲介情報をもとに、受付データベース61に格納されている受付情報を検索して、仲介エージェント34-1に仲介可能な他の仲介エージェントが待合せプレイス63に存在するかどうかを判断する。仲介できる場合は、相手の仲介エージェントの識別情報を仲介エージェント34-1に通知し、まだ仲介できない場合は仲介できない旨を通知する。
【0043】 ○3仲介エージェント34-1は、受付プレイス62から待合せプレイス63へgoする。
○4仲介可能な他の仲介エージェントが存在する場合、仲介エージェント34-1はその仲介エージェントとmeetする。仲介可能な他の仲介エージェントが存在しない場合、仲介されるまで待ち合わせる処理を行う。ここでは、ユーザBの仲介エージェント34-2が既に待合せプレイス63で待っていて、これが仲介可能であるため、仲介エージェント34-1とmeetし、情報交換を行う。
【0044】 ○5仲介を受けた場合、または仲介期間を過ぎた場合、仲介エージェント34-1は依頼元の端末31-1へgoして、結果を報告する。仲介エージェント34-1が持ち帰った情報は、電子メールの形式で端末31-1のディスプレイに表示される。各仲介エージェントの仲介期間は受付データベース61に登録され、受付エージェント64により管理される。
【0045】 また、仲介エージェント34-2も依頼元の端末31-2へgoして、結果を報告する。こうして、受付エージェント64、受付プレイス62、および待合せプレイス63の働きにより、互いに知らないユーザの仲介エージェント同士がmeetする仕組みが提供される。
【0046】
仲介エージェント同士が情報交換をした場合は、交換相手の連絡先、交換相手の設定情報、情報交換を行った日時等を各依頼元に報告する。交換相手の連絡先としては、メールアドレス、電話番号、FAX番号などが通知される。
【0047】 以上の基本的な仲介エージェントの流れは、各サービス51、52、53に共通であるが、売買サービス51およびグループ生成サービス52の場合は仲介相手の数が仲介最大数nに達するまで待合せプレイス63にとどまり、紹介サービスの場合は1つの相手に仲介されると直ちに依頼元へgoする。
【0048】 次に、受付データベース61に格納される受付情報について説明する。受付情報は、各仲介エージェントが運んでくる設定情報に基づいて、受付エージェント64により登録される。
【0049】 図10は、売買サービス51における受付情報の例を示している。この場合、受付データベース61には、仲介エージェント単位で次のような情報が格納され
ている。
【0050】
・仲介エージェント識別情報(仲介エージェントの識別子など)
・利用目的(中古品購入、中古品売却、など)
・仲介最大数(仲介を希望する相手の最大数)
・現在の仲介数(現時点での仲介済みの相手数)
・仲介期限(仲介期間が切れる期限)
・仲介結果報告先(メールアドレスなど)
・希望価格(?円以下、?円以上、要相談、など)
・価格条件(当方送料負担、貴方送料負担、など)
・売買品目
・売買詳細情報
詳細情報識別名(メーカ名、機種名、などの識別情報)
詳細情報属性(文字、数値、数値の大小、列挙値、などの識別情報)
詳細情報値(文字列、数値、など)
仲介条件(取引に必須の条件、選択条件、など)
また、図11は、グループ生成サービス52における受付情報の例を示している。この場合、受付データベース61には、仲介エージェント単位で次のような情報が格納されている。」

・「【0052】 紹介サービス53における受付情報は、仲介最大数が1になる以外は、基本的に売買サービス51と同様である。
次に、図12から図21を参照しながら、ユーザ端末上での情報の設定方法を説明する。情報の入力にはキーボードやポインティング・デバイスなどの入力機器が用いられる。」

・「【0061】 図22は、受付エージェント64の処理のフローチャートである。図22の処理は、売買サービス51、グループ生成サービス52、紹介サービス53に共通している。
【0062】 図22において処理が開始されると、受付エージェント64は、まず受付プレイス62に入ってくる次の仲介エージェントを待ち合わせる(ステップS1)。次に、仲介エージェントとmeetしたかどうかを判定し(ステップS2)、meetした場合は、その仲介エージェントから仲介情報(設定情報)を入手する(ステップS3)。
【0063】 次に、受付データベース61から待合せプレイス63にいる仲介エージェントの受付情報を入手し(ステップS4)、仲介情報と受付情報を照らし合せる(ステップS5)。
【0064】 仲介情報に設定された条件に該当する受付情報があれば、仲介可能な他の仲介エージェントが待合せプレイス63上にいることを、meetした仲介エージェントに伝える(ステップS6)。このとき同時に、待合せプレイス63上にいる仲介エージェントとmeetすることにより、現在の仲介数が最大仲介数nに達するかどうかも伝えておく。最大仲介数に達する場合は待合せが完了することになる。
【0065】 また、該当する受付情報がなければ、仲介可能な仲介エージェントが待合せプレイス63上にいないことを伝える(ステップS7)。
次に、受付データベース61の受付情報を更新して(ステップS8)、ステップS1以降の処理を繰り返す。ステップS8においては、新たに入ってきた仲介エージェントの受付情報が作成され、それとmeetした仲介エージェントの現在の仲介数に1が加算される。
【0066】 そして、ステップS1において、何らかの理由でmeetが失敗したり、これ以上待ち合わせを行えなくなった場合には、meet失敗/サービス終了等の例外処理を行って(ステップS9)、処理を終了する。」

・「【0085】【発明の効果】 本発明によれば、知らないユーザ同士が、不特定多数の人に公開することなく、個人情報を交換することが可能になる。このような仲介サービスを利用して、物品等の売却を希望するユーザと購入を希望するユーザとの出会いの場を提供することができる。また、同一目的を持つ複数のユーザが知り合ってグループを構成する場を提供することもできる。」

イ 以上によれば,引用例1には

「ユーザの端末から通信ネットワークを介して接続可能なサービスセンタを備えた電子仲介システムであって,
『教えたい』という希望を持つユーザの端末から通信ネットワークを通じてサービスセンタに仲介エージェントが送られると,サービスセンタは,仲介エージェントから仲介情報を受け取り,受付情報として受付データベースに格納し,
『知りたい』という希望を持つユーザの端末から通信ネットワークを通じてサービスセンタに仲介エージェントが送られると,サービスセンタは,仲介エージェントから仲介情報を受け取り,受け取った仲介情報を,受付データベースに格納されている受付情報と照らし合わせることで,仲介情報に設定された条件に該当する受付情報が存在するかどうかを判断し,仲介できる場合には,交換相手の連絡先を通知する電子仲介システム」(以下「引用発明」という。)

が記載されている。

(2)引用例2の記載内容

原査定の拒絶理由に引用された,本願の出願日前に日本国内で頒布された刊行物である特開平11-15887号公報(平成11年1月12日出願公開。以下「引用例2」という。)には,図とともに,次の記載がある。

・「【0012】【発明の実施の形態】 本発明の一実施例に係る電子商品取引システムを図1を参照して説明する。
この電子商品取引システムは、商品情報データベース1と、ユーザ情報データベース2と、辞書データベース3と、購入者アクセスモジュール4と、要求明確化モジュール5と、仕様具現化モジュール6と、発注モジュール7と、販売者アクセスモジュール8と、を有している。
なお、この電子商取引システムは、使用契約を結んだ複数の購入者(ユーザ)及び販売者(商品取扱者)双方のアクセスモジュール4、8によってアクセス可能な広域ネットワーク(例えば、インターネット)を用いて構成されている。」

・「【0023】 仕様具現化モジュール6は、閲覧ソフトウエア上においてプログラムが起動されることによって構成され、購入者アクセスモジュール4から要求明確化モジュール5において決定された商品及び入力されたユーザの商品に関する要求とを受け取り、決定された商品を取り扱っている商品取扱者の販売者アクセスモジュール8との間のコミュニケーション路を接続する。なお、コミュニケーション路としては、電話、テレビ電話、テレビ会議、FAX、電子メール、チャット、電子掲示板、共有ファイル等のいずれでもかまわない。
【0024】 本実施例では、ユーザと商品取扱者とのコミュニケーション路の一つとして、電子メールを用いており、仕様具現化モジュール6は、送信元をユーザとし、送信先を商品取扱者とした電子メールを生成する。そして、ユーザから前記商品に対する質問要求等の入力を電子メールの内容として受け付け、ユーザに入力された内容を要求明確化モジュール5におけるユーザによる商品に関する要求や、ユーザ情報データベース2の情報に基づいて変換して販売者アクセスモジュール8に通知するとともに、販売者アクセスモジュール8からの商品取扱者による電子メールを受け付ける。
【0025】 また、本実施例では、商品取扱者とユーザとのコミュニケーション路として、ユーザと商品取扱者との両方からアクセスすることのできる共有ファイルを用いることもでき、この場合には、仕様具現化モジュール6は、商品取扱者からの返答をユーザ情報データベース2の情報や、辞書データベース3の情報に基づいて変換して共有ファイルを作り、当該共有ファイルに対してユーザと商品取扱者との間でのやりとりを受け付ける。
【0026】 発注モジュール7は、閲覧ソフトウエア上においてプログラムが起動されることによって構成され、購入者アクセスモジュール4から要求明確化モジュール5において決定された商品名を受け取り、当該商品を取り扱っている商品取扱者に当該商品の注文を送信する。なお、仕様具現化モジュール6において、商品に関する購買仕様書を作成した場合には、発注モジュール7は当該仕様書を商品取扱者に送信する。
【0027】 販売者アクセスモジュール8は、仕様具現化モジュール7によって接続されたコミュニケーション路によって送信されてくる商品に関する質問を受け取り、表示して商品取扱者に把握させる。また、販売者アクセスモジュール8は、商品取扱者から前記質問に対する回答を受け付け、コミュニケーション路によって回答を返信する。」

・「【0029】 次に、上記した電子商品取引システムの動作を説明する。この電子商品取引システムは、購入者アクセスモジュール4を構成するプログ
ラムが閲覧ソフトウエア上で起動されることによって図6に示す動作を開始する。まず、購入者アクセスモジュール4は、要求明確化ボタン11を押せるようにして(ステップS1)、図2に示す画面を表示する(ステップS2)。なお、この時点では、ユーザは要求明確化ボタン11のみを押すことができる。そして、ユーザによって要求明確化ボタン11が押された場合には、要求明確化モジュール5を呼び出し、ユーザが要求している商品を決定する要求明確化処
理を行い(ステップS3、S4)、仕様具現化ボタン12及び発注ボタン13を押せるようにして(ステップS5)、図2に示す画面を表示する(ステップS2)。なお、この時点では、ユーザは要求明確化ボタン11、仕様具現化ボタン12、発注ボタン13のいずれかを押すことができる。
【0030】 ここで、ユーザによって仕様具現化ボタン12が押された場合には、ユーザが要求明確化処理において決定した商品について当該商品の取扱者と質疑応答を行いたいことを意味しているので、仕様具現化モジュール6を呼び出し、ユーザと商品の取扱者との間のコミュニケーションを可能にする後述する仕様具現化処理を行い(ステップS3、S6、S7)、その後、図2に示す画面を表示する(ステップS2)。また、ユーザによって発注ボタン12が押された場合には、ユーザが商品について発注したいことを意味しているので、発注モジュール7を呼び出し、要求明確化処理によって決定した商品についての発注を行う発注処理を行い(ステップS3、S6、S8、S9)、電子商品取引システムの動作を終了する。」

・「【0038】 上記した仕様具現化処理(ステップS7)を詳細に説明する。まず、仕様具現化モジュール6は、購入者アクセスモジュール4から要求明確化モジュール5において決定された商品名及び入力した商品に関する要求を受け取り、受け取った商品名の商品を取り扱っている商品取扱者の販売者アクセスモジュール8宛の電子メールを生成し、当該電子メールの内容としてユーザから当該商品に対する質問要求を受け付ける。
【0039】 そして、ユーザから内容が入力された場合には、ユーザに入力された内容を購入者アクセスモジュール4から受け取った商品に関する要求や、ユーザ情報データベース2の情報に基づいて変換し、その後、販売者アクセスモジュール8に送信する。
【0040】 例えば、PHSを購入しようとしているユーザが図7(a)に示すように「パソコン通信が可能になるようにオプションを設定して、その仕様を提示してほしい。」といった内容を入力した場合には、仕様具現化モジュール4は、ユーザが商品に関する要求として「データ通信>電子メール」「データ通信>WWW(ワールドワイドウエブ)」を入力したという情報や、ユーザ情報データベース2に保持されているユーザは「パソコン通信」という言葉をインターネット・プロバイダへのダイヤルアップ接続によるWWWプラウジングや電子メールの送受信を含めて扱っているという情報に基づいて、図7(b)に示すように「パソコンを利用したデータ通信(パソコン通信、WWWプラウジング、電子メール送受信)が可能になるようにオプションを設定して、その仕様を提示してほしい。」と内容を補足して販売者アクセスモジュール8に送信する。したがって、ユーザの意思を適切に商品取扱者に伝えることができる。
【0041】 そして、この送信された電子メールを販売者アクセスモジュール8が受け取り、表示出力をする。次いで、販売者アクセスモジュール8は商品取扱者からの回答の入力を受け付け、受け付けた回答を仕様具現化モジュール6に通知する。例えば、販売者アクセスモジュール8は、回答として商品取扱者から商品本体と当該商品のオプションとを図8(a)に示すような購買仕様書で受け取った場合には、当該仕様書をユーザと商品取扱者との両者からアクセス可能な共有ファイルとして仕様具現化モジュール6に通知する。
【0042】 次いで、販売者アクセスモジュール8から回答としての仕様書を受け取った仕様具現化モジュール6は、ユーザ情報データベース2及び辞書データベース3に基づいて、受け取った仕様書を変換して表示出力する。
【0043】 例えば、図8(a)に示す商品とともに当該商品のオプションとして「(1) アナログ(14.4Kbps)のデータ通信用、モジュラー変換ケーブルXXX(4500円)、(2) デジタル(32Kbps)のデータ通信用、専用接続ケーブルYYY(9800円)。」という記述がが含まれた仕様書を受け取った場合において、例えば、ユーザ情報データベース2に略語等の説明を回答に含めて欲しいという情報が保持されていれば、仕様具現化モジュール6は、仕様書中の単位「bps」に対する説明「通信速度」を辞書データベース3から抽出し、仕様書の記述を図8(b)に示すように「(1) アナログ(通信速度14.4Kbps)のデータ通信用、モジュラー変換ケーブルXXX(4500円)、(2) デジタル(通信速度32Kbps)のデータ通信用、専用接続ケーブルYYY(9800円)」と変換して表示する。なお、商品取扱者の情報に基づいて仕様書の表現を変更するようにしてもよい。
【0044】 このように表示された仕様書に対してユーザは、オプションの選択をすることができる。例えば、「(1) アナログ(通信速度14.4Kbps)」が欲しい場合には、(2) デジタル(通信速度32Kbps)」の記述を仕様書から削除することができる。そして、このように削除された場合には、仕様具現化モジュール6は図8(c)に示すように仕様書の合計金額を再計算する。なお、このような表計算処理については、一般に知られており、ここでは説明を省略する。
【0045】 このようにして、ユーザと商品取扱者との間で商品に関する質疑応答ができ、更に、ユーザに対して商品取扱者からの回答をユーザの分かりやすい記述にして伝えることができる。」

4 対比

(1)発明が解決しようとする課題について

引用発明の課題も,『知りたい』という希望を持つユーザと『教えたい』という希望を持つユーザとを仲介することにより知識教授の場を提供することにあるから,顧客に対して支援者が商品知識を教授できる場を提供しようとする本願補正発明の課題と共通する。

(2)発明の構成について

ア 引用発明の「サービスセンタ」は,端末と通信ネットワークを通じて接続されたコンピュータであるから,本願補正発明にいう「端末装置からネットワークを通じて接続可能なコンピュータシステム」に相当する。
イ 引用発明における『教えたい』という希望を持つユーザの端末から通信ネットワークを通じてサービスセンタに仲介エージェントが送られる処理は,知識を得ているユーザが,その知識により他のユーザを支援することを目的としてサービスセンタと通信を行う処理であるから,本願補正発明にいう,「支援者」が「第1端末装置からネットワークを通じてコンピュータシステムにアクセス」する処理に相当する。
ウ 引用発明の「受付情報」は,仲介相手を特定するために検索対象となる情報であるから,本願補正発明の「蓄積情報」に相当する。
エ 引用発明における『知りたい』という希望を持つユーザの端末から通信ネットワークを通じてサービスセンタに仲介エージェントが送られる処理は,知識を要求するユーザが,他のユーザからの支援を受けることを目的としてサービスセンタと通信を行う処理であるから,本願補正発明にいう,「支援を望む顧客」が「第1端末装置とは異なる第2端末装置からネットワークを通じてコンピュータシステムにアクセス」する処理に相当する。
オ 引用発明において,受付データベースに格納されている受付情報と照らし合わせることで,仲介情報に設定された条件に該当する受付情報が存在するかどうかを判断する処理は,本願補正発明にいう,「記録部に記録された蓄積情報を検索して」,「最適の支援者を特定」する処理に相当する。

(3)一致点と相違点について

そうすると,本願補正発明と引用発明の一致点と相違点は,次のとおりと認められる。

ア 一致点

「端末装置からネットワークを通じて接続可能なコンピュータシステムを備えるシステムであって、
支援者が第1端末装置からネットワークを通じて前記コンピュータシステムにアクセスすると、蓄積情報を記録部に記録し、
支援を望む顧客が前記第1端末装置とは異なる第2端末装置からネットワークを通じて前記コンピュータシステムにアクセスすると、前記記録部に記録された蓄積情報を探索して、最適の支援者を特定するシステム。」

イ 相違点

[相違点1] 本願補正発明では,支援者による知識の教授は,「単に販売しただけでは機能や性能等を十分に発揮できない商品」であって,「コンピュータシステムを通じて販売または賃貸される商品」に関して行われるものであるのに対し,引用発明では,支援者による知識の教授が,そのような特定の商品について行われることは開示されていない点。

[相違点2] 本願補正発明では,支援者が「コンピュータシステムによる商品の販売および賃貸を行わない者」であるのに対し,引用発明では,支援者がどのような者であるのかが明らかでない点。

[相違点3] 本願補正発明では,蓄積情報に「支援可能な商品名,商品ごとの支援料金,地理的情報等のうち一以上の項目」が含まれ,最適の支援者の特定が「支援料金,支援者と顧客との地理的距離,支援者の過去の支援回数,支援者のアクセス回数,前記顧客が指名する者等のうち一以上の項目を満たす者の中から」行われているのに対して,引用発明では,蓄積情報(受付情報)にどのような情報が含まれ,仲介情報のどのような項目と照らし合わせることで,最適の支援者を特定しているのかが,明らかでない点。

[相違点4] 本願補正発明では,「特定した支援者が前記顧客に対して商品の機能や性能等についての説明や教授あるいは保守等についての支援を行うにあたって、日時,支援料金が安い者,知識量の豊富な者等にかかる支援条件について前記コンピュータシステムを通じて調整を図」る構成を有するのに対し,
引用発明では,それが明らかでない点。

[相違点5] 本願補正発明では,「顧客の第2端末装置と前記特定した支援者の第1端末装置との相互間を電子メールやインターネット電話等で接続する手続きとを自動的に実行する構成」を有するのに対し,引用発明では,仲介エージェント同士が情報交換した場合,交換相手の連絡先を報告する構成は有するものの,交換相手との接続が自動的になされる構成とはされていない点。

[相違点6] 本願補正発明では,「支援条件が成立したとき、前記コンピュータシステムは第2銀行サーバーにアクセスして支援料金を所定の口座から引き落とすとともに、第1銀行サーバーにアクセスして前記支援料金の全部または一部を前記特定した支援者の口座に振り込む」構成を有しているのに対し,引用発明では,それが明らかでない点。

5 判断

(1)相違点1について

前記3(2)の各記載事項によれば,引用例2には,ユーザからの,電子商品取引システムを通じて販売される商品に関する質問に対し,当該商品に関して知識を有する者がその回答を行う技術が開示されている。
ここで,引用例2の商品も,質問を行わなければ,必要なオプションが分からない商品であるから,本願補正発明にいう「単に販売しただけでは機能や性能等を十分に発揮できない商品」に相当する。
そうすると,引用発明において,支援者によって教授される知識を,「単に販売しただけでは機能や性能等を十分に発揮できない商品」であって,「コンピュータシステムを通じて販売または賃貸される商品」に関するものとすることは,当業者が容易になし得たことである。

(2)相違点2について

商品に関する知識の教授を,コンピュータシステムによる商品の販売および賃貸を行わない者(つまり,商品の購入者や使用者。)が行うことは,商品の知識の教授方法として,本願の出願日前に周知の技術である(例えば,国際公開第00/57326号パンフレット(第1頁第25行-第2頁第4行,第7頁第25行-第8頁11行,第9頁第13行-第22行参照)には,製品を販売する企業は関与せずに,非社員が製品に関する知識を教授することが,特開2000-194726号公報(段落【0092】,【0097】,【0098】参照)には,製品の販売側ではないクライアントPCから,掲示板を通じて製品に関する知識の教授が行われることが,それぞれ記載されている。)。このことは,商品の購入者や使用者から商品に関する知識の教授を受けることが,日常経験する事項であることからも,明らかである。
そうすると,引用発明において,支援者を「コンピュータシステムによる商品の販売および賃貸を行わない者」とすることは,当業者が必要に応じて適宜なし得たことである。

(3)相違点3について

仲介処理において,仲介処理のためにシステムに登録する情報に地理情報を含ませ,相手の選択を,相手との地理的距離に基づいて行うことは,本願の出願日前に周知の技術であったといえる(例えば,特開2000-167233号公報(段落【0028】-【0032】参照)には,仲介相手との地理的距離に基づいて,相手の選択を行う技術が,国際公開第00/57326号パンフレット(第10頁第6行-第27行参照)には,neighborhood,city,state,and/or country of residence(居住している地区,市,州,および/または国)に基づいて,相手の選択を行う技術が,それぞれ記載されている。)。
そうすると,引用発明において,仲介処理のために登録する蓄積情報(受付情報)を「支援可能な商品名,商品ごとの支援料金,地理情報等のうち一以上の項目にかかる蓄積情報」とし,仲介する支援者の特定を「支援料金,支援者と顧客との地理的距離,支援者の過去の支援回数,支援者のアクセス回数,前記顧客が指名する者等のうち一以上の項目を満たす者の中から」行うように構成することは,当業者が必要に応じて適宜なし得たことである。

(4)相違点4について

商取引支援システムにおいて,相手との契約にあたり,条件についてコンピュータシステムを通じて調整を図れるように構成することは,本願の出願日前に周知の技術であったといえる(例えば,「新田克己,契約を支援する交渉エージェントの基本機能,第46回 知識ベースシステム研究会資料,日本,社団法人人工知能学会,2000年1月24日,第41-46頁」には,商取引支援システムにおいて,契約交渉の機能を設けることが,特開2000-113056号公報(段落【0012】参照)には,商取引の支援を行う電子モールに交渉制御部を設けることが,それぞれ記載されている。)。
そうすると,引用発明において,「特定した支援者が前記顧客に対して商品の機能や性能等についての説明や教授あるいは保守等についての支援を行うにあたって、日時,支援料金が安い者,知識量の豊富な者等にかかる支援条件について前記コンピュータシステムを通じて調整を図」る機能を具備させることは,当業者が必要に応じて適宜なし得たことである。

(5)相違点5について

仲介処理において,相手との通信路の接続が自動的に行われる構成とすることは,本願の出願日前に周知の技術であったといえる(例えば,特開2000-167233号公報(段落【0032】参照)には,仲介処理が行われると,音声通話,電子メール等の通信手段で,自動的に相手と通信可能な状態とさせることが,引用例2(段落【0023】参照)には,商品に関する質問に応じて,電話や電子メールによって,相手との間でコミュニケーション路を接続することが,それぞれ記載されている。)。
そして,引用発明でも,接続に必要な情報は得られているのであるから,引用発明において,「顧客の第2端末装置と前記特定した支援者の第1端末装置との相互間を電子メールやインターネット電話等で接続する手続きとを自動的に実行する構成」とすることは,当業者が容易になし得たことである。

(6)相違点6について

支援者に対して被支援者が口座振替により支援料金を支払う構成することは,本願の出願日前に周知の技術であったといえる(例えば,国際公開第00/57326号パンフレット(第15頁第5行-第16頁第3行参照)には,被支援者である消費者が支援者である専門家に対し,口座振替によってアドバイスに対する料金を支払うことが,特表2000-511672号公報(第28頁第3行-第9行参照)には,被支援者であるエンドユーザーが支援者であるエキスパートに対し,口座振替によって支援に対する料金を支払うことが,それぞれ記載されている。)。
なお,いつの時点で料金の支払いを行わせるかは,当業者が必要に応じて適宜選択しうることである。
そうすると,引用発明において「支援条件が成立したとき、前記コンピュータシステムは第2銀行サーバーにアクセスして支援料金を所定の口座から引き落とすとともに、第1銀行サーバーにアクセスして前記支援料金の全部または一部を前記特定した支援者の口座に振り込む」構成とすることは,当業者が容易になし得たことである。

(7)結論

以上のとおり,相違点1-6に係る構成は,いずれも,当業者が容易に想到し得たものである。そして,本願補正発明の効果も,当業者が,予測できる範囲のものである。
したがって,本件補正発明は,引用発明,引用例2に記載された事項及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

6 むすび

以上の次第で,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例とされる同法による改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法第126条5項の規定に違反するので,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により,却下すべきものである。

第3 本願発明

1 本願発明の内容

以上のとおり,本件補正(平成18年7月13日に提出された手続補正書による補正)は却下されたので,本願の請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は,本件補正前の請求項2(平成18年3月8日に提出された手続補正書により補正された請求項2)に記載されたとおりのものであり,以下に再掲する。

「【請求項1】
端末装置からネットワークを通じて接続可能なコンピュータシステムを備え、商品の販売および賃貸の一方または双方にかかる商取引や当該商取引の支援を実現可能に構成した商取引支援システムであって、
商品を使用して知識を得た支援者が端末装置から前記コンピュータシステムにアクセスすると、支援可能な商品名,商品ごとの支援料金,地理情報等のうち一以上の項目にかかる蓄積情報を記録部に記録し、
前記コンピュータシステムを通じて販売または賃貸される商品についての支援を望む顧客が端末装置から前記コンピュータシステムにアクセスすると、前記記録部に記録された蓄積情報を探索して、支援料金,支援者と顧客との地理的距離,支援者の過去の支援回数,支援者のアクセス回数,前記顧客が指名する者等のうち一以上の項目を満たす者の中から最適の支援者を特定し、
特定した支援者が前記顧客に対して商品の機能や性能等についての説明や教授あるいは保守等についての支援を行うにあたって、日時,支援料金が安い者,知識量の豊富な者等にかかる支援条件について前記コンピュータシステムを通じて調整を図り、
前記支援条件が成立したとき、前記コンピュータシステムは前記顧客の端末装置と前記特定した支援者の端末装置とを接続する構成とした商取引支援システム。

【請求項2】
請求項1に記載した商取引支援システムであって、
コンピュータシステムは、支援条件が成立したとき、第2銀行サーバーにアクセスして支援料金を所定の口座から引き落とすとともに、第1銀行サーバーにアクセスして前記支援料金の全部または一部を支援者の口座に振り込む商取引支援システム。」

2 引用発明の内容及び引用例2の記載内容

引用発明については,第2,3(1)に,引用例2に記載された技術については,第2,3(2)において認定したとおりである。

3 対比・判断

第2,2で述べたように,本願補正発明は,本願発明に限定的減縮を加えたものである。逆に言えば,本件補正前の発明(本願発明)は,本願補正発明から,この限定をなくしたものである。
そうすると,本願発明の構成要件をすべて含み,これをより限定したものである本願補正発明が,前記第2,5において検討したとおり,引用発明,引用例2に記載の事項及び周知の事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,当業者が容易に発明をすることができたものということができる。

4 むすび

以上のとおり,本願発明は,引用発明,引用例2に記載された事項及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により,特許を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-06-24 
結審通知日 2009-06-30 
審決日 2009-07-14 
出願番号 特願2001-257006(P2001-257006)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06Q)
P 1 8・ 121- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小太刀 慶明谷口 信行川口 美樹  
特許庁審判長 相田 義明
特許庁審判官 小林 義晴
清田 健一
発明の名称 商取引支援システム  

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