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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1203083
審判番号 不服2007-3779  
総通号数 118 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-02-08 
確定日 2009-09-04 
事件の表示 平成 8年特許願第330583号「アモルファスSiCからなるX線リソグラフィー用マスクメンブレン及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 6月26日出願公開、特開平10-172884〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成8年12月11日の出願であって、平成14年7月26日付け及び平成16年7月5日付けで手続補正がなされた後、平成18年12月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成19年2月8日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年3月7日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成19年3月7日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成19年3月7日付けの手続補正を却下する。

[理由]
前記手続補正の内容は、補正前(平成16年7月5日付け手続補正によって補正。以下、同じ。)の請求項1を削除するとともに、補正前の請求項2に記載されていたアモルファスSiCからなるX線リソグラフィー用マスクメンブレンについて、「請求項1に記載の製造方法により作製された」という製造方法に関する限定を省いた前記マスクメンブレン、と補正しようとするものである。
しかしながら、請求項2についてする前記補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものではない。
また、請求項2についてする前記補正が、同条第4項第1号に規定する請求項の削除、同条第4項第3号に規定する誤記の訂正、及び同条第4項第4号に規定する明りょうでない記載の釈明を目的とするものでもないことは明らかである。

以上のとおり、前記補正は、前記特許法第17条の2第4項各号の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
平成19年3月7日付けの手続補正は前記のとおり却下されたので、本願の請求項1及び2に係る発明は、平成16年7月5日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明は次のとおりのものである。(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)

「ターゲットにSiCを用いたスパッタリング法で製膜するに際し、成膜条件が、入射電力を100?5,000W、スパッタリング圧力を1.0×10^(-3)?2.0×10^(-1)Torr、SiC膜の成長速度を100?5,000Å/minとすることを特徴とするアモルファスSiCからなるX線リソグラフィー用マスクメンブレンの製造方法。」

1 引用例
原査定の拒絶理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平3-196148号公報(以下、「引用例」という。)には、X線リソグラフィー用SiC膜の成膜方法に関して、以下の技術事項ならびに図表が記載されている。

記載事項ア.「2.特許請求の範囲」の項
「1.SiCよりなるターゲットを用い、スパッター法にて基板上に圧縮応力の状態でSiC膜を形成し、次いでこれをアニールして引張応力の状態とすることを特徴とするX線リソグラフィー用SiC膜の成膜方法。
2.・・・・・・・・・・・・
3.引張応力が0.1?8.0×10^(9)dyne/cm^(2)である請求項1に記載のX線リソグラフィー用SiC膜の成膜方法。
4.スパッター圧力が0.2?50×10^(-3)Torrである請求項1に記載のX線リソグラフィー用SiC膜の成膜方法。」

記載事項イ.第1頁右下欄第10?14行
「(産業上の利用分野)
高エネルギー電子線やシンクロトロン放射光の様な高エネルギービームを照射しても応力の変化が少ないX線リソグラフィー用SiC膜の成膜方法に関する。」

記載事項ウ.(課題を解決するための手段)の項中、第3頁左下欄第11?18行
「アニール処理条件は、アモルファスな状態で仕上げたSiC膜に結晶性を付与する為に、アニール温度が500℃以上であることが必要であり、好ましくは700℃以上である。又、アニール時間は充分にアニール処理するために2時間以上必要であり、好ましくは4?8時間である。アニール処理後の、SiCの結晶性の増加の目安としては、前述したX線回折ピークの波形から評価する。」

記載事項エ.同項中、第4頁左上欄第12行?左下欄第10行
「(実施例1?6、比較例1?3)
高周波マグネトロンスパッター装置SPF-332H型(日電アネルバ社製商品名)を用いて、カソード側に直径3インチで厚さが5mmの円盤状SiCターゲット(純度99.9%)をセットした。基板として、直径3インチで厚みが600μmの両面研磨シリコンウェハを用いて250℃に加熱した状態でアルゴンガスを7cc/分の流量で流した。排気系に通じるバルブでチャンバー内を所定の圧力に調整した後、パワー密度を10W/cm^(2)として15分間スパッターを行ない、膜厚1.0μmのSiC膜を作製した。
次に得られたSiC膜を設けたシリコン基板を以下の方法でアニール処理をした。先ず、合成石英製のウェハー治具にセットし、高温用炉内に静置した。炉内の圧力を20mmTorrとし、10℃/分の速度で昇温し、所定の温度に到達後、その温度下に一定時間保持し、次いで10℃/分の速度で冷却した。アニール後の内部応力を測定し、メンブレン化に必要な応力である0.1?8.0×10^(9)dyne/cm^(2)の引張応力のものを得た。アニール処理を行なうことにより、全て内部応力が引張応力の方向に変動した。その結果を第1表に示した。
次に第1表の実施例1?6のアニール後の試料について、X線回折の測定、及び耐高エネルギービーム性、メンブレン化適正、更に得られたメンブレンの可視光透過率について測定し、その結果を第2表に示した。メンブレン化適性及びメンブレンの可視光透過率の測定に使用した試料は高エネルギー照射処理をしていないものである。
X線回折の波形を第1図に示した。この波形より、2θ=30゜と2θ=40゜の波形を結ぶ線を基線として2θ=35.5゜における基線からのピーク高さL_(1)と2θ=33゜における基線からのピーク高さL_(2)の比L_(1)/L_(2)を求め、その結果を第2表に示した。又、比較例としてアニール処理を行なわない場合、及びアニール温度が500℃未満についても同様の測定を行ない、その結果を第2表に併記した。」

記載事項オ.第1表
第1表には、実施例1?6、比較例1?3について、スパッタ圧力、成膜後の内部応力、アニール温度、アニール後の内部応力について記載されていて、比較例1はアニール処理がなされていないことがわかる。

記載事項カ.第2表
第2表には、実施例1?6、比較例1?3について、X線回折のL_(1)/L_(2)比等について記載されている。

記載事項キ.第1図
第1図には、実施例1?6、比較例1?3について、SiC膜の結晶性を規定するためのX線回折波形が図示されている。

記載事項ア.?キ.の記載ならびに図示内容のうち、実施例1?6ならびに比較例2,3に関する記載ならびに図示内容からして、引用例には、
「SiCよりなるターゲットを用い、スパッター法にて基板上に圧縮応力の状態で、且つアモルファスな状態で仕上げたSiC膜を形成し、次いでこれをアニールして引張応力の状態とするX線リソグラフィー用SiC膜メンブレンの成膜方法において、
スパッター圧力を1.0×10^(-3)?35×10^(-3)Torrとして15分間スパッターを行ない、膜厚1.0μmのSiC膜を作製するX線リソグラフィー用SiC膜メンブレンの成膜方法。」の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているといえる。
また、同じく記載事項ア.?キ.の記載ならびに図示内容のうち、比較例1に関する記載ならびに図示内容からして、引用例には、
「SiCよりなるターゲットを用い、スパッター法にて基板上に引張応力の状態のSiC膜を、アニールすることなく形成するX線リソグラフィー用SiC膜メンブレンの成膜方法において、
スパッター圧力を45×10^(-3)Torrとして15分間スパッターを行ない、膜厚1.0μmのSiC膜を作製するX線リソグラフィー用SiC膜メンブレンの成膜方法。」の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているといえる。

2 対比
本願発明と引用発明1とを対比する。
(a)引用発明1の対象である「X線リソグラフィー用SiC膜メンブレンの成膜方法」は、本願発明の対象である「SiCからなるX線リソグラフィー用マスクメンブレンの製造方法」に相当する。
(b)引用発明1の「スパッター法」、「スパッター圧力」は、それぞれ、本願発明の「スパッタリング法」、「スパッタリング圧力」に相当する。
(c)引用発明1は、15分間スパッターを行ない、膜厚1.0μmのSiC膜を作製しているから、本願発明にいう「SiC膜の成長速度」は、約667Å/minであるといえる。
(d)本願発明は、「SiCからなるX線リソグラフィー用マスクメンブレン」の「SiC」は、「アモルファスSiC」であることを発明特定事項としている。
ここで、本願発明における「アモルファスSiCからなるX線リソグラフィー用マスクメンブレン」が、実施例1?4の場合に、「(アニール前の)アモルファスSiC」を指すのか、或いは、アニール後の「アニールSiC」を指すのかと指摘した平成21年1月29日付けの審尋に対し、本件審判請求人は、平成21年3月30日付けの回答書において、「アニールSiC」を指すとしている。
その根拠として、回答書の(1)において、アニール処理によって一部「結晶化」が進んでいるものと考えられるが、「X線回折法」で評価した範囲では明確なピークは確認できなかったことから、結晶化(多結晶)状態とまでは言えず、一般的に言われている「アモルファス」状態が維持されていると判断したとしている。
そこで、本件審判請求人が云うように、本願発明の「アモルファスSiCからなるX線リソグラフィー用マスクメンブレン」の「アモルファスSiC」が、前記「アニールSiC」であるとした場合について、本願発明と引用発明1と対比すると、引用例の実施例1?3及び比較例2,3については、第1図に示されたX線回折波形ならびに第2表の「X線回折のL_(1)/L_(2)比」の数値からして、X線回折法で評価した範囲では明確なピークは確認できず、アニール処理によって一部「結晶化」が進んでいるものの、一般的に言われている「アモルファス」状態が維持されているとするのが相当である。
してみると、引用発明1の「次いでこれをアニールして引張応力の状態」とした「X線リソグラフィー用SiC膜メンブレン」が、本願発明における「アモルファスSiCからなるX線リソグラフィー用マスクメンブレン」を含んでいることは明らかである。

上記(a)?(d)に記載したことからして、本願発明と引用発明1との両者は次の一致点、
「ターゲットにSiCを用いたスパッタリング法で製膜する、アモルファスSiCからなるX線リソグラフィー用マスクメンブレンの製造方法。」で一致し、次の点で相違する。

〈相違点1〉;
スパッタリング圧力に関する成膜条件が、
本願発明は、1.0×10^(-3)?2.0×10^(-1)Torrであるのに対して、引用発明1は、1.0×10^(-3)?35×10^(-3)Torrである点。
〈相違点2〉;
入射電力に関する成膜条件が、
本願発明は、100?5,000Wであるのに対して、引用発明1には具体的な記載がない点。
〈相違点3〉;
SiC膜の成長速度が、
本願発明は、100?5,000Å/minであるのに対して、引用発明1は、例えば約667Å/minである点。

なお、仮に、本願発明の「アモルファスSiCからなるX線リソグラフィー用マスクメンブレン」の「アモルファスSiC」が、前記「(アニール前の)アモルファスSiC」であるとしても、本願発明と引用発明2とを対比すると、引用例の比較例1のSiC膜をX線回折法で評価した第1図に示されたX線回折波形(明確なピークは確認できない)、ならびに、第2表の「X線回折のL_(1)/L_(2)比」の数値からして、前記比較例1のSiC膜は、一般的に言われている「アモルファス」状態にあるということができる。したがって、引用発明2の「引張応力の状態のSiC膜を、アニールすることなく形成するX線リソグラフィー用SiC膜メンブレン」は、本願発明の「アモルファスSiCからなるX線リソグラフィー用マスクメンブレン」に相当するということができる。
そうすると、仮に本願発明の「アモルファスSiC」を上記のように解したとしても、本願発明と引用発明2とは、上記一致点ならびに相違点2,3と同じ点で一致ならびに相違し、さらに、
〈相違点1’〉;
スパッタリング圧力に関する成膜条件が、
本願発明は、1.0×10^(-3)?2.0×10^(-1)Torrであるのに対して、引用発明2は、45×10^(-3)Torrである点、で相違する。

3 当審の判断
〈相違点1〉ならびに〈相違点1’〉について;
スパッタリング圧力に関する成膜条件は、引用発明1と本願発明とは1.0×10^(-3)?35×10^(-3)Torrの圧力範囲において、また、引用発明2と本願発明とは45×10^(-3)Torrの圧力を含む点において、明らかに一致するものであるから、 スパッタリング圧力について両者を別異のものとすることはできない。

〈相違点2〉について;
入射電力は、スパッタリング処理を行うチャンバーの大きさ、設定するSiC膜の成長速度等に応じて当業者が適宜設定し得る値であり、100?5,000Wとすることに格別の困難性は見いだせない。

〈相違点3〉について;
引用発明1、2のSiC膜の成長速度である約667Å/minが、本願発明のSiC膜の成長速度に含まれることは明らかであり、〈相違点3〉に関して、本願発明と引用発明1、2とに実質的な差異はない。
そして、いかなるSiC膜の成長速度とするかは、当業者が適宜設定し得る事項であり、100?5,000Å/minとすることに格別の困難性は見いだせない。

そして、本願発明の作用・効果も、引用発明1、2から予測される範囲内のもので、格別のものとも認められない。

したがって、本願発明の「アモルファスSiCからなるX線リソグラフィー用マスクメンブレン」の「アモルファスSiC」が「アニールSiC」を指すとしても、或いは、「(アニール前の)アモルファスSiC」を指すとしても、いずれにせよ、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-07-02 
結審通知日 2009-07-07 
審決日 2009-07-23 
出願番号 特願平8-330583
審決分類 P 1 8・ 572- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 新井 重雄  
特許庁審判長 村田 尚英
特許庁審判官 武田 悟
森林 克郎
発明の名称 アモルファスSiCからなるX線リソグラフィー用マスクメンブレン及びその製造方法  
代理人 荒井 鐘司  
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