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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01B
管理番号 1203151
審判番号 不服2008-10714  
総通号数 118 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-04-28 
確定日 2009-08-26 
事件の表示 特願2006- 17588「音響トランスデューサ」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 6月 8日出願公開、特開2006-145554〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、1996年5月10日{パリ条約による優先権主張1995年5月11日、米国、1995年7月10日、米国}を国際出願日とする特願平8-534235号の一部を平成17年11月10日{パリ条約による優先権主張1995年5月11日、米国、1995年7月10日、米国}に新たな特許出願(特願2005-326263号)としたものを、さらにその一部を平成18年1月26日{パリ条約による優先権主張1995年5月11日、米国、1995年7月10日、米国}に新たな特許出願(特願2006-17588号)としたものであって、平成20年1月23日付け(発送日 平成20年1月29日)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成20年4月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2 本願発明
平成19年3月12日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1には、
「導波管と、この該導波管に電気的に接続されたリターン導体と、前記導波管に連結されたテープと、ピックアップコイルと、を有し、前記導波管に沿って流れる電流パルスに歪波パルスが生じると音波が前記テープに伝わり、ピックアップコイルが電気信号を発生するトランスデューサであって、
前記導波管及び前記リターン導体を保持するためのサスペンション部材と、
前記導波管及び前記リターン導体の端部を受容するための手段と、
をさらに有し、前記テープが前記コイルの中に受容され、また前記テープの長さは、該テープを伝わる音波が前記コイルを通過した後に前記導波管から遠い側の前記テープの端部から時間遅れを伴って反射されて、この反射した音波が前記コイルを通過する音波に付加されるトランスデューサ。」と記載されている。

そこで、上記請求項1の記載について検討する。
「前記導波管に沿って流れる電流パルスに歪波パルスが生じる」における「歪波パルス」が、導波管に沿って流れる電流パルスにより前記導波管に生じることは明らかであるから、上記記載は、「前記導波管に沿って流れる電流パルスにより前記導波管に歪波パルスが生じる」の誤記と認める。
また、「前記テープの長さは、該テープを伝わる音波が前記コイルを通過した後に前記導波管から遠い側の前記テープの端部から時間遅れを伴って反射されて、この反射した音波が前記コイルを通過する音波に付加さされる」なる記載において、「前記テープの長さ」の主語に対応する述語が記載されていないものの、その述語は「長さである」ことは、文脈から明らかであり、また、「付加さされる」は「付加される」の誤記であることも明らかであるから、上記記載は、「前記テープの長さは、該テープを伝わる音波が前記コイルを通過した後に前記導波管から遠い側の前記テープの端部から時間遅れを伴って反射されて、この反射した音波が前記コイルを通過する音波に付加される長さである」の誤記であると認める。

したがって、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成19年3月12日付けの手続補正により補正された明細書、特許請求の範囲、及び図面の記載からみて、以下のとおりに認定した。
「導波管と、この該導波管に電気的に接続されたリターン導体と、前記導波管に連結されたテープと、ピックアップコイルと、を有し、前記導波管に沿って流れる電流パルスにより前記導波管に歪波パルスが生じると音波が前記テープに伝わり、ピックアップコイルが電気信号を発生するトランスデューサであって、
前記導波管及び前記リターン導体を保持するためのサスペンション部材と、
前記導波管及び前記リターン導体の端部を受容するための手段と、
をさらに有し、前記テープが前記コイルの中に受容され、また前記テープの長さは、該テープを伝わる音波が前記コイルを通過した後に前記導波管から遠い側の前記テープの端部から時間遅れを伴って反射されて、この反射した音波が前記コイルを通過する音波に付加される長さであるトランスデューサ。」

3 引用例
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の最先の優先日前に頒布された刊行物である特開昭60-82921号公報(以下「引用刊行物」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。

〈記載事項1〉
「本発明は磁歪効果を利用した位置検出器に係り」(公報第1頁右下欄第14?16行)
〈記載事項2〉
「第1図は、位置検出器の構成を示している。強磁性体でできている導波管1の内部に芯線2が設けてある。芯線2にパルス発生器8からパルス電流を印加すると、保護管3内に一定間隔で設置している固定永久磁石4と可動物体6に設置されている可動永久磁石7の存在する位置において、磁歪効果によって導波管1に超音波が発生し、導波管1を伝播する。(公報第2頁左上欄第1?8行)
〈記載事項3〉
「超音波がガイド10に到達すると、磁石11による磁界中に置かれているコイル12に、逆磁歪効果によって電圧が誘起される。この電圧を増幅器13で増幅し、端子14から信号処理回路に入力する。」(公報第2頁左上欄第8?12行)

上記記載事項1ないし3及び第1図から、以下の(1)?(4)の点が読み取れる。
(1)記載事項2及び第1図から、「芯線2のうち導波管から引き出されアースされている芯線部分(以下、「外部芯線部」という。)」の点
(2)記載事項2、3及び第1図から、「導波管1に発生した超音波がガイド10に伝播するように導波管1にガイド10が連結されている」点
(3)記載事項2、3及び第1図から、「導波管1の内部で、その長手方向に設けられた芯線2」の点及び「芯線2にパルス電流を印加すると、磁歪効果によって導波管1に超音波が発生し、該超音波が導波管1を伝播してガイド10に伝達する」点
(4)第1図から、「ガイド10は、導波管1側の端部から伸びて該導波管1から遠い側の自由端部で終える長さを有し、コイル12の中に挿入されている」点

したがって、上記記載事項1ないし3及び図面に基づけば、引用刊行物には、
「強磁性体の導波管1と、可動永久磁石7と、外部芯線部と、前記導波管1に連結されたガイド10と、コイル12と、を有し、導波管1の内部で、その長手方向に設けられた芯線2にパルス電流を印加することにより、可動永久磁石7の存在する位置において導波管1に磁歪効果によって超音波が発生し、該超音波が導波管1を伝播してガイド10に伝達し、コイル12が電圧を発生する位置検出器であって、
前記ガイド10が前記コイルの中に挿入され、前記ガイド10の長さは、導波管1側の端部から伸びて該導波管1から遠い側の自由端部で終える長さである位置検出器。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

4 対比
本願発明と引用発明とを比較する。
(1)引用発明の「導波管1」は、本願発明の「導波管」に相当し、以下同様に、「ガイド10」は「テープ」に、「コイル12」は「ピックアップコイル」に、「パルス電流」は「電流パルス」に、「電圧」は「電気信号」に、「挿入され」は「受容され」にそれぞれ相当する。
(2)引用刊行物の第1図の記載と本願明細書の段落【0046】からみて、引用発明の「外部芯線部」と本願発明の「リターン導体」とは、導波管に電流を流すための電流路を形成する導体の点で共通する。
(3)引用発明の「導波管1の内部で、その長手方向に設けられた芯線2にパルス電流を印加する」ことにより、「導波管1に沿ってパルス電流が流れる」ことは明らかである。
(4)引用発明が利用する物理現象である「磁歪効果」とは、いわゆる「Wiedemann効果」のことであり、引用発明において、強磁性体の導波管1に電流パルス信号を与えると、可動永久磁石7により上記導波管1に局部的なねじり歪みが発生し、上記導波管1に沿って音波が伝播することは明らかである。そして、引用発明の「導波管1」に発生する「局部的なねじり歪み」は、本願発明の「歪波パルス」に相当する。
また、引用発明の「超音波」は、本願発明の「音波」に含まれる概念である。
したがって、引用発明の「可動永久磁石7の存在する位置において導波管1に磁歪効果によって超音波が発生し、該超音波が導波管1を伝播してガイド10に伝達し」は、本願発明の「導波管に歪波パルスが生じると音波が前記テープに伝わり」に相当する。
(5)引用発明の対象である「位置検出器」は、導波管1に発生する局部的なねじり歪みを電圧に変換する装置といえるから、本願発明の対象である「トランスデューサ」に相当する。
(6)本願発明の「該テープを伝わる音波が前記コイルを通過した後に前記導波管から遠い側の前記テープの端部から時間遅れを伴って反射されて、この反射した音波が前記コイルを通過する音波に付加される長さ」と、引用発明の「導波管1側の端部から伸びて該導波管1から遠い側の自由端部で終える長さ」とは、所定の長さの点で共通する。

したがって、本願発明と引用発明の両者は、
「導波管と、該導波管に電流を流すための電流路を形成する導体と、前記導波管に連結されたテープと、ピックアップコイルと、を有し、前記導波管に沿って流れる電流パルスにより前記導波管に歪波パルスが生じると音波が前記テープに伝わり、ピックアップコイルが電気信号を発生するトランスデューサであって、
前記テープが前記コイルの中に受容され、また前記テープの長さは、所定の長さであるトランスデューサ。」の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
導波管に電流を流すための電流路を形成する導体として、本願発明は、「導波管に電気的に接続されたリターン導体」を有するのに対して、引用発明は、「外部芯線部」を有する点。
[相違点2]
本願発明は、「導波管及びリターン導体を保持しているサスペンション部材」を有しているのに対して、引用発明は、その限定がなされていない点。
[相違点3]
本願発明は、「前記導波管及び前記リターン導体の端部を受容するための手段」を有しているのに対して、引用発明は、当該受容手段を有しているかどうかが明確でない点。
[相違点4]
テープ(ガイド10)の所定の長さが、本願発明は、「該テープを伝わる音波が前記コイルを通過した後に前記導波管から遠い側の前記テープの端部から時間遅れを伴って反射されて、この反射した音波が前記コイルを通過する音波に付加される長さ」であるのに対して、引用発明は、「導波管1側の端部から伸びて該導波管1から遠い側の自由端部で終える長さ」である点。

5 当審の判断
(1)相違点1ないし3について
本願の最先の優先日当時において、引用発明と同じ技術分野に属する、磁歪効果、換言すればWiedemann効果を利用した位置検出器において、導波管に沿って電流を流すための電流路を形成する導体として、導波管に電気的に接続されたリターン導体は当業者にとって周知手段であり〔本願明細書の段落【0030】において従来技術が記載された文献として引用されている米国特許第3898555号明細書(FIG.5の「retern wire 40」)〕、引用発明の「外部芯線部」を当該周知技術である上記リターン導体に置換することに困難性はない。
したがって、相違点1に係る本願発明の発明特定事項は、当業者が周知技術に基づいて容易に想到し得る事項である。

また、上記位置検出器において、「導波管及びリターン導体を保持しているサスペンション部材」を有することは、周知技術であり〔上記米国特許第3898555号明細書(第3欄第35?52行、FIG.2の「damping element 33」)〕、上記周知技術を引用発明に適用することに困難性はない。
したがって、相違点2に係る本願発明の発明特定事項は、当業者が周知技術に基づいて容易に想到し得る事項である。
そして、導波管及びリターン導体は、何らかの手段で保持する、即ち本願発明でいう「受容する」必要があることは自明であり、その際、導波管及びリターン導体が受容される部位を導波管及びリターン導体の端部と特定することは設計事項である。
ちなみに、上記上記米国特許第3898555号明細書には、導波管の端部を受容する手段として、「ブラケット33」(bracket 33)(FIG.2)が記載されている。
したがって、相違点3に係る本願発明の発明特定事項は、当業者が周知技術に基づいて容易に想到し得る事項である。

(2)相違点4について
引用刊行物の位置検出器が図示された第1、4、6、8図の全てにおいて、ガイド10とコイル12との位置関係から、ガイド10の下端部がコイル12から突出していることを見て取れる。また、引用刊行物には、ガイド10の下端部がコイル12から突出したことにより、何らかの問題が生じる旨の記載がなされていない。
さらには、一般に、本願発明のガイド10の如き棒状またはテープ状の部材とコイルからなる、信号電圧を出力するコイル装置において、棒状またはテープ状の部材の上端部及び下端部にコイルを巻回しないこと、すなわち棒状またはテープ状の部材の長さをコイルから棒状またはテープ状の部材の端部が突出する長さに設計することは常套手段である。
してみれば、引用刊行物の記載から、ガイド10の下端部がコイル12から突出したものを想起することは当業者にとって困難なことではない。
そして、引用発明において、導波管1からガイド10に伝わる超音波は、ガイド1の下端部で反射され、ガイド10から伝わってきた超音波に付加されることは明らかである。
また、ガイド10の下端部がコイル12から突出したものにおいては、上記反射に関し、ガイド10(テープ)を伝わる超音波が前記コイル12を通過した後に、ガイド10の下端部(導波管から遠い側の前記テープの端部)から上記突出したガイドの長さに応じた時間遅れを伴って反射することも明らかである。

以上説示したことを総合すると、引用発明のガイド10の長さを、ガイド10(テープ)を伝わる音波がコイル12(コイル)を通過した後に導波管1(導波管)から遠い側の前記ガイド10(テープ)の下端部(端部)から時間遅れを伴って反射されて、この反射した超音波(音波)が前記コイル12(コイル)を通過する超音波(音波)に付加される長さとすることは、当業者が引用発明に基づいて容易に想到し得る事項といえる。
よって、相違点4に係る本願発明の発明特定事項は、当業者が引用発明に基づいて容易に想到し得る事項といえる。

そして、本願発明の効果は、引用刊行物の記載及び周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものである。

6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用刊行物に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-03-26 
結審通知日 2009-03-31 
審決日 2009-04-13 
出願番号 特願2006-17588(P2006-17588)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大和田 有軌  
特許庁審判長 江塚 政弘
特許庁審判官 森口 正治
山川 雅也
発明の名称 音響トランスデューサ  
代理人 岡田 英彦  
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