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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1203249
審判番号 不服2007-9711  
総通号数 118 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-04-05 
確定日 2009-08-24 
事件の表示 特願2003- 19149「パチンコ遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成16年8月19日出願公開、特開2004-229736〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第一.手続の経緯
本願は、平成15年1月28日の出願であって、拒絶理由通知に対応して平成18年11月2日に手続補正書が提出され、その後なされた最後の拒絶理由に対応して提出された平成19年2月2日付け手続補正書が却下されるとともに拒絶査定がなされ、当該拒絶査定に対して、同年4月5日に拒絶査定に対する審判が請求されるとともに、同年4月26日に手続補正がなされたものである。
また、当審において、平成20年12月3日付けで審査官による前置報告書の内容を添付して審尋を行い、平成21年2月3日に回答書が提出されている。

第二.平成19年4月26日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年4月26日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により補正された補正後の、本願の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は次のとおりである。
「複数の図柄を変動表示させる図柄表示手段と、
該図柄表示手段で表示させる図柄を変動表示開始するための始動口と、
前記始動口への遊技球の入賞によって開始された前記図柄表示手段の図柄の変動表示中、更に遊技球が前記始動口に入賞したときに、その入賞個数を記憶する入賞記憶手段と、
乱数を取得して大当たりか否かの抽選を行うメイン基板と、
図柄表示手段の表示を制御する図柄制御基板と、
を具備し、前記図柄表示手段で変動表示された複数の図柄が揃って停止表示したときに大当たり状態が発生するパチンコ遊技機において、
前記入賞記憶手段に記憶された入賞個数のみを表示する入賞個数表示手段と、
前記入賞記憶手段に記憶された入賞個数又はそれとは関わらない擬似数を表示する演出用擬似表示手段と、
を有し、且つ、前記図柄表示手段で行わせる図柄の変動時間を前記メイン基板にて設定し、その変動時間を前記図柄制御基板に送信するとともに、当該図柄制御基板は図柄変動時間を受信すると図柄変動選択テーブルから図柄の変動パターンを選択し、擬似的変動を行う図柄変動パターンが選択された場合、前記図柄表示手段が前記メイン基板では1回の変動動作とされる中で複数の擬似的変動動作を行いつつ、当該図柄変動選択テーブルで選択された図柄の変動パターンにおいて設定された疑似的変動を行うべき回数を疑似数として決定し、その擬似数を前記演出用擬似表示手段で表示させることを特徴とするパチンコ遊技機。」
(下線部は補正によって追加又は変更された箇所)

2.補正要件(目的)の検討
請求項1についての補正は、発明を特定するために必要な事項である「図柄制御基板」について「当該図柄制御基板は図柄変動時間を受信すると図柄変動選択テーブルから図柄の変動パターンを選択し、擬似的変動を行う図柄変動パターンが選択された場合、」を新たに付加する補正、及び補正前は「前記図柄制御基板が受信した当該変動時間に基づいて疑似数を決定」であったものを「当該図柄変動選択テーブルで選択された図柄の変動パターンにおいて設定された疑似的変動を行うべき回数を疑似数として決定」と変更する補正である。
そして、前者の補正は「図柄制御基板」について限定を付加するものであることが明らかである。
また、後者の補正における補正後の「図柄の変動パターン」は、前者の補正を考え合わせると、図柄制御基板が受信した図柄変動時間に基づいて図柄変動選択テーブルで選択されたものであることが分かるから、後者の補正は「疑似数」の決定に関して限定を付加するものということができる。
よって、本件補正は平成18年法律第55号による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(上記改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3.独立特許要件(特許法第29条第2項)についての検討
(1)引用刊行物記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、特開2001-187200号公報、特開2001-224786号公報、特開2000-24210号公報には以下の事項が記載されている。
A.特開2001-187200号公報(以下「刊行物A」という。)
「【0031】第1実施形態
まず、遊技機の一例であるパチンコ遊技機の全体の構成を説明する。図1は、パチンコ遊技機1を正面から見た正面図、図2は、パチンコ遊技機1の内部構造を示す全体背面図、図3は、パチンコ遊技機1の遊技盤を背面から見た背面図である。
【0033】遊技領域7の中央付近には、複数種類の識別情報としての図柄(特別図柄)を可変表示(更新表示)するためのCRT(Cathode Ray Tube)よりなる可変表示部9と、複数種類の識別情報としての普通図柄を可変表示するための7セグメントLED(Light Emitting Diode)によりなる可変表示器10とを含む可変表示装置8が設けられている。この実施の形態では、可変表示部9には、「左」,「中」,「右」の3つの図柄表示エリアを含む画像の表示領域が設けられており、左図柄、中図柄、右図柄の3つの特別図柄を含む各種の情報が表示領域において画像表示される。・・・
【0034】可変入賞球装置15の下部には、遊技者にとって有利な状態としての特定遊技状態(大当り状態)においてソレノイド21によって開状態とされる開閉板20が設けられている。この実施の形態では、開閉板20が大入賞口を開閉する手段となる。大入賞口内は特定入賞領域(Vゾーン)と通常入賞領域とに区分されており、開閉板20から遊技盤6の背面に導かれた入賞玉のうち特定入賞領域に入った入賞玉はVカウントスイッチ22で検出される。また、開閉板20からの入賞玉はカウントスイッチ23で検出される。可変表示装置8の下部には、始動入賞口14に入った入賞玉である始動入賞玉の記憶個数を表示する4個の表示部を有する始動入賞記憶表示器18が設けられている。この例では、4個を上限として始動入賞玉が記憶され、始動入賞がある毎に、始動入賞記憶表示器18が点灯している表示部を1つずつ増やす。そして、可変表示部9の可変表示が開始される毎に、点灯している表示部を1つずつ減らす。
【0036】打球発射装置から発射された打玉は、打球レールを通って遊技領域7に入り、その後、遊技領域7を下りてくる。打玉が通過ゲート11を通ってゲートスイッチ12で検出されると、可変表示器10の表示数字が連続的に変化する状態となる。また、打玉が始動入賞口14に入り始動口スイッチ17で検出されると、図柄の変動を開始できる状態であれば、可変表示部9で表示される図柄(特別図柄)がスクロールにより変動(可変表示)を始める。図柄の変動を開始できる状態でなければ、始動入賞記憶を1増やす。・・・
【0058】遊技制御基板31における基本回路53から表示制御基板80には、可変表示装置8(特に可変表示部9)の表示制御を指令する指令情報としての表示制御コマンドが送信される。表示制御基板80では、受信した表示制御コマンドにしたがって表示制御を行なう。・・・
【0095】次に、始動入賞口14への入賞に基づいて可変表示部9に可変表示される図柄の決定方法について図11および図12のフローチャートを参照して説明する。図11は、打玉が始動入賞口14に入賞したことを判定するために基本回路53により実行される処理を示すフローチャートである。
【0097】次にS44へ進み、大当り判定用乱数(R1)の値を抽出し、始動入賞記憶数に応じた乱数値格納エリアに格納する処理がなされる。・・・
【0100】そして、CPU56は、S51で読出した値、すなわち、抽出されている大当り判定用乱数(R1)の値に基づいて、前述した図10を用いて説明した処理により、大当りにするか、はずれにするかを判定(決定)する(S53)。
【0116】大当り表示処理(S306):停止図柄が大当り図柄の組合せである場合には、大当り表示用の表示制御コマンドが表示制御基板80に送信されるように制御するとともに内部状態(プロセスフラグ)をステップS307に移行するように更新する。そうでない場合には、内部状態をステップS309に移行するように更新する。なお、大当り図柄の組合せは、左右中図柄が揃った組合せである。また、遊技制御基板80の表示制御用CPU101は表示制御コマンドのデータに従って、可変表示部9に大当り表示を行なう。大当り表示は遊技者に大当りの発生を報知するためになされるものである。
【0117】大入賞口開放開始処理(S307):大入賞口を開放する制御を開始する。具体的には、カウンタやフラグを初期化するとともに、ソレノイド21を駆動して大入賞口を開放する。
【0120】前述したように、始動入賞口14に打玉が入賞すると、基本回路53は、ステップS11(図9参照)の特別図柄プロセス処理において、大当りとするかはずれとするかの決定、停止図柄の決定、変動表示期間の決定等を行ない、その決定に応じた表示制御コマンドおよびINT信号を表示制御基板80に向けて出力する。表示制御基板80側の表示制御用CPU101は、遊技制御基板31からの表示制御コマンドに応じて可変表示部9の表示制御を行なう。
【0135】表示制御基板80の側の制御データROM102においては、各変動時間コマンドが指定する変動時間および変動種類を表示するための表示制御データが記憶されており、変動時間コマンドが指定する変動時間および変動種類にしたがって表示制御が行なわれる。
【0168】図27(A)に示された変動パターンを実行する場合には、表示制御用CPU101は、パターンfが高速変動するパターンであることを予め認識する。そして、表示制御用CPU101は、パターンfの変動速度と変動期間とを考慮して、左,中,右停止図柄コマンドにより通知されている最終停止図柄から一時停止図柄を逆算して求め、求めた図柄を再変動時の一時停止図柄として、再変動の制御に用いる。そして、この場合、表示制御用CPU101は、一時停止図柄が遊技制御基板31からコマンドにより通知されている最終停止図柄と一致するように、リーチ動作開始前に中図柄の差替えを行なう。
【0178】さらに、図28(A)に示された変動パターンでは、中図柄がパターンfで高速変動する際に、左右図柄も同様に高速変動する。したがって、左,中,右停止図柄コマンドにより通知されている最終停止図柄が大当り図柄の組合せである場合には、一時停止時の一時停止図柄も、図柄の種類は異なるが、やはり大当り図柄の組合せである。よって、一時停止時に大当り図柄となり、その後、左,中,右図柄がパターンfで高速変動により再変動した場合に、遊技者は、一時停止時に大当り図柄が発生したと感じるとともに、再変動後に再度大当り図柄が提供されて再度興趣がかき立てられる。このように一時停止期間をおいて図柄が再度変動開始された後停止図柄を確定表示する制御を再変動制御(変更制御ともいう)という。・・・
【0208】図36(A)において、A,B,Cは、図26?図29における(A),(B),(C)に対応している。すなわち、抽出されたリーチ表示態様決定用乱数の値が上段に示される値であれば、表示制御用CPU101は、下段に示された変動パターン(リーチ表示態様)で図柄の変動を行なうことに決定する。たとえば、遊技制御基板31から受けた表示制御コマンドにより29.5秒のリーチ3での変動により大当りとする場合が通知され、抽出したリーチ表示態様決定用乱数の値が21である場合には、図29(C)に示された変動パターンで変動を行なうことに決定する。この場合の大当りとするか否かの判断は、変動時間コマンドと左,中,右停止図柄コマンドとのどちらのコマンドに基づいて判定してもよい。
【0209】また、図36(B)を参照して、表示制御用CPU101は、受信した表示制御コマンドに基づいて、リーチ予告用乱数を抽出し、その抽出値に基づいて、リーチ予告1をするか、リーチ予告2をするか、リーチ予告をしないかのいずれかを抽選により決定する。表示制御コマンドによりリーチにすることが指示されている場合には、抽選において、抽出値が0?3のいずれかであればリーチ予告を行なわないことに決定し、抽出値が4または5であればリーチ予告1の態様でリーチ予告を行なうことに決定し、抽出値が6または7であればリーチ予告2の態様でリーチ予告を行なうことに決定する。このような決定は、図に示されるようなリーチ時における抽出値とリーチ予告態様との関係を示したリーチ時用テーブルと呼ばれるデータを用いて行なわれる。一方、表示制御コマンドによりリーチにしないことが指示されている場合(リーチ時以外の場合)には、抽選において、抽出値が0?6のいずれかであればリーチ予告を行なわないことに決定し、抽出値が7であればリーチ予告1の態様でリーチ予告を行なうことに決定する。このような決定は、図に示されるようなリーチ時以外における抽出値とリーチ予告態様との関係を示したリーチ時以外用テーブルと呼ばれるデータを用いて行なわれる。
【0210】また、図36(C)を参照して、表示制御用CPU101は、受信した表示制御コマンドに基づいて大当り予告用乱数を抽出し、その抽出値に基づいて、大当り予告1をするか、大当り予告2をするか、大当り予告をしないかのいずれかを抽選により決定する。抽選において、表示制御コマンドにより大当りにすることが指示されている場合には、抽出値が0であれば大当り予告表示を行なわないことに決定し、抽出値が2であれば大当り予告1の態様で大当り予告表示を行なうことに決定し、抽出値が3であれば大当り予告2の態様で大当り予告表示を行なうことに決定する。このような決定は、図に示されるような大当り時における抽出値と大当り予告態様との関係を示した大当り時用テーブルと呼ばれるデータを用いて行なわれる。一方、抽選において、表示制御コマンドにより大当りにしないことが指示されている場合(はずれ時の場合)には、抽出値が0,1のいずれかであれば大当り予告表示を行なわないことに決定し、抽出値が2であれば大当り予告1の態様で大当り予告表示を行なうことに決定する。このような決定は、図に示されるようなはずれ時における抽出値と大当り予告態様との関係を示したはずれ時用テーブルと呼ばれるデータを用いて行なわれる。
【0258】この実施の形態では、図25等に示されるように、図柄の変動開始に関連する時点で変動時間コマンドおよび停止図柄コマンドが遊技制御基板31から送信され、その後、表示制御基板80において、表示制御用CPU101が独自に変動パターンの決定制御および図柄の差替え制御等を行なう。このため、可変表示部9に関する表示制御のかなりの部分が表示制御基板80側で実行されていることになる。・・・
【0285】また、1つの変動区間に対応して複数の変動パターンが用意され、表示制御用CPU101が適宜変動パターンを選択するように構成してもよい。そのようにすれば、基本回路53のCPU56は、少数種類の変動時間を管理するだけでよくなり、基本回路53のCPU56における表示制御に関する処理負担を軽減することができる。」
そして、刊行物Aの段落【0208】には、図36(A)がテーブルである旨の記載はないが、段落【0209】及び【0210】においては、図36(B)及び図36(C)について「テーブルと呼ばれるデータ」と記載されていることから、図36(A)は「リーチ表示態様決定用テーブル」であると認めることができる。

摘記した上記の記載や図面及び上記図36(A)についての認定等によれば、刊行物Aには、
「 複数種類の図柄を可変表示するための可変表示部9と、
打玉が入り始動口スイッチ17で検出されたとき、図柄の変動を開始できる状態であれば、前記可変表示部9で表示される図柄が変動を始めることとなる始動入賞口14と、を備え、
打玉が前記始動入賞口14に入り始動口スイッチ17で検出されたときに、図柄の変動を開始できる状態でなければ、始動入賞記憶を1増やし、
大当り判定用乱数(R1)の値を抽出し、その値に基づいて、大当りにするか、はずれにするかを判定する基本回路53と、
前記可変表示部9の表示制御を行なう表示制御基板80と、を具備し、
前記可変表示部9に左右中図柄が揃った組合せである大当り表示を行なったときに大入賞口を開放する制御を開始するパチンコ遊技機1において、
前記始動入賞口14に入った始動入賞玉の記憶個数を表示する始動入賞記憶表示器18と、を有し、
変動表示期間の決定を前記基本回路53が行ない、その決定に応じた表示制御コマンドを前記表示制御基板80に向けて出力するとともに、当該表示制御基板80はリーチ表示態様決定用テーブルにおいて、抽出されたリーチ表示態様決定用乱数の値と前記表示制御コマンドにより変動パターンを選択し、再変動を行なう変動パターンでは、一時停止期間をおいて図柄が再度変動開始された後停止図柄を確定表示するパチンコ遊技機1。」の発明(以下「引用発明」という。)が開示されていると認めることができる。

B.特開2001-224786号公報(以下「刊行物B」という。)
「【0005】【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、遊技領域(1a)における遊技の進行を制御する遊技制御手段(例えば、遊技制御装置20)からの指令に基づいて、複数の変動表示領域(4x、4y、4z等)が形成される変動表示装置(4a)に表示される変動表示遊技の表示制御を行う表示制御手段(例えば、表示制御装置40)を備え、前記変動表示領域の識別情報(601,602,603)の停止態様が特定の組み合わせ態様を導出したときに特典を付与可能な遊技機(例えば、パチンコ遊技機100)において、前記表示制御手段は、前記変動表示遊技中に前記識別情報が本停止状態となる過程においてキャラクタ(例えば、バッファロー図柄620、サイ図柄等)を出現させることにより、該キャラクタの出現数によって、前記識別情報の仮停止後に発生し得る該識別情報の再変動の回数を予測報知するような表示制御を行うことを特徴としている。
【0019】本発明に係るパチンコ遊技機100は、図4に示すように、変動表示遊技中に識別情報603(601、602)が本停止状態となる過程においてキャラクタ620、630を出現させることにより、該キャラクタ620、630の出現数によって、識別情報603(601、602)の仮停止後に発生し得る該識別情報603(601、602)の再変動の回数を予測報知することによって、たとえ遊技者が初心者であっても、遊技が本来意図する期待感の演出をすぐに理解できるようにすることを主な特徴としている。
【0042】このとき、表示画面4g(例えば、表示画面4gのうち変動表示領域4x、4y、4z以外の部分)に、バッファロー図柄(キャラクタ)620が表示される。あるいは、バッファロー図柄620は、リーチ状態となる前から、予め表示画面4gに表示されていても良い。つまり、特図変動表示遊技中に識別情報603が本停止状態となる過程におけるいずれかの時点で表示画面4gにバッファロー図柄620が出現する。この段階で、遊技者は、「識別情報603が仮停止状態となった後、1回の再変動が発生するだろう」といったように、キャラクタの出現数によって、識別情報603の仮停止後に発生し得る識別情報603の再変動の回数を予測できる。」

C.特開2000-24210号公報(以下「刊行物C」という。)
「【0005】【課題を解決するための手段】請求項1の遊技機は、複数の図柄を可変表示可能な複数の図柄表示部を設け、図柄変動信号により図柄表示部の図柄が変動を開始し、所定時間後に、図柄が確定表示する可変表示ゲームが行われる遊技機であって、1回の図柄変動開始信号によって、複数回の疑似確定表示を行う可変表示ゲームをするとき、その可変表示ゲームの制限回数を小図柄表示部を介して表示することによって、明確にその制限回数を遊技者に知らせることができる。」

(2)引用発明と本願補正発明との対比
発明の詳細な説明には、本願補正発明における「擬似的変動動作」及び「擬似数」が、各々「再変動」及び「再変動回数」を意味するものであるとは明記されていないが、審査経緯及び本願の明細書全体の記載等から見て、そのように解釈することが出願人の意図とも合致すると認められるので当該解釈を前提に対比する。

引用発明の「複数種類の図柄を可変表示するための」は、本願補正発明の「複数の図柄を変動表示させる」に相当し、以下同様に、
「可変表示部9」は「図柄表示手段」に、
「大当り判定用乱数(R1)の値を抽出し」は「乱数を取得して」に、
「その値に基づいて、大当りにするか、はずれにするかを判定する」は「大当たりか否かの抽選を行う」に、
「基本回路53」は「メイン基板」に、
「表示制御を行なう」は「表示を制御する」に、
「表示制御基板80」は「図柄制御基板」に、
「前記可変表示部9に左右中図柄が揃った組合せである大当り表示を行なったときに」は「前記図柄表示手段で変動表示された複数の図柄が揃って停止表示したときに」に、
「大入賞口を開放する制御を開始する」は「大当たり状態が発生する」に、
「パチンコ遊技機1」は「パチンコ遊技機」に、
「変動表示期間の決定を前記基本回路53が行ない」は「前記図柄表示手段で行わせる図柄の変動時間を前記メイン基板にて設定し」に、
「その決定に応じた表示制御コマンドを前記表示制御基板80に向けて出力する」は「その変動時間を前記図柄制御基板に送信する」に、
「変動パターン」は「図柄の変動パターン」に、それぞれ相当する。
さらに、刊行物Aの記載等からみて、以下のことが言える。

a.引用発明の「始動入賞口14」は打玉が入り始動口スイッチ17で検出されたとき、図柄の変動を開始できる状態であれば、前記可変表示部9で表示される図柄が変動を始めるものであるから、本願補正発明における「図柄表示手段で表示させる図柄を変動表示開始するための始動口」に相当するものということができる。

b.引用発明の「打玉が前記始動入賞口14に入り始動口スイッチ17で検出されたとき」は本願補正発明の「遊技球が前記始動口に入賞したとき」に相当し、引用発明における「図柄の変動を開始できる状態でな」いことは、本願補正発明における「前記始動口への遊技球の入賞によって開始された前記図柄表示手段の図柄の変動表示中」であることと同様の状態にほかならない。
さらに、引用発明が「始動入賞記憶を1増やし」ていることからみて、引用発明には本願補正発明の「入賞個数を記憶する入賞記憶手段」に相当する手段が備わっていることは明らかであるから、引用発明は本願補正発明の「前記始動口への遊技球の入賞によって開始された前記図柄表示手段の図柄の変動表示中、更に遊技球が前記始動口に入賞したときに、その入賞個数を記憶する入賞記憶手段」に相当する構成を有するものといえる。

c.引用発明の「始動入賞口14」は上記aに記載したとおり、本願補正発明の「図柄表示手段で表示させる図柄を変動表示開始するための始動口」に相当し、本願補正発明の「入賞個数」は遊技球がその始動口に入賞したときに記憶されるものであるから、引用発明の「前記始動入賞口14に入った始動入賞玉の記憶個数」は本願補正発明の「前記入賞記憶手段に記憶された入賞個数」に相当している。
また、引用発明の「始動入賞記憶表示器18」は本願補正発明の「入賞個数表示手段」に相当し、引用発明の「始動入賞記憶表示器18」は始動入賞口14に入った始動入賞玉の記憶個数以外の情報を表示するものではないことが明らかである。
したがって、引用発明の「前記始動入賞口14に入った始動入賞玉の記憶個数を表示する始動入賞記憶表示器18」は、本願補正発明の「前記入賞記憶手段に記憶された入賞個数のみを表示する入賞個数表示手段」に相当するものということができる。

d.引用発明の「リーチ表示態様決定用テーブル」は本願補正発明の「図柄変動選択テーブル」に相当し、引用発明の「表示制御コマンド」は本願補正発明の「図柄変動時間」に相当する情報を含んでいる。
また、引用発明の「表示制御基板80」が、変動パターンを選択する前に、その表示制御コマンドを受信していることは明らかであり、「リーチ表示態様決定用テーブルにおいて、抽出されたリーチ表示態様決定用乱数の値と前記表示制御コマンドにより変動パターンを選択」は“リーチ表示態様決定用テーブルから変動パターンを選択”と言い換えることができるから、引用発明は本願補正発明の「当該図柄制御基板は図柄変動時間を受信すると図柄変動選択テーブルから図柄の変動パターンを選択し」に相当する構成を有しているということができる。

以上を総合すると、両者は、
「 複数の図柄を変動表示させる図柄表示手段と、
該図柄表示手段で表示させる図柄を変動表示開始するための始動口と、
前記始動口への遊技球の入賞によって開始された前記図柄表示手段の図柄の変動表示中、更に遊技球が前記始動口に入賞したときに、その入賞個数を記憶する入賞記憶手段と、
乱数を取得して大当たりか否かの抽選を行うメイン基板と、
図柄表示手段の表示を制御する図柄制御基板と、
を具備し、前記図柄表示手段で変動表示された複数の図柄が揃って停止表示したときに大当たり状態が発生するパチンコ遊技機において、
前記入賞記憶手段に記憶された入賞個数のみを表示する入賞個数表示手段と、
を有し、且つ、前記図柄表示手段で行わせる図柄の変動時間を前記メイン基板にて設定し、その変動時間を前記図柄制御基板に送信するとともに、当該図柄制御基板は図柄変動時間を受信すると図柄変動選択テーブルから図柄の変動パターンを選択するパチンコ遊技機。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]本願補正発明は「入賞記憶手段に記憶された入賞個数又はそれとは関わらない擬似数を表示する演出用擬似表示手段」を有しているのに対し、引用発明はそのような手段を有していない点。
[相違点2]本願補正発明は「擬似的変動を行う図柄変動パターンが選択された場合、前記図柄表示手段が前記メイン基板では1回の変動動作とされる中で複数の擬似的変動動作を行いつつ、当該図柄変動選択テーブルで選択された図柄の変動パターンにおいて設定された疑似的変動を行うべき回数を疑似数として決定し、その擬似数を前記演出用擬似表示手段で表示させる」のに対し、引用発明は「一時停止期間をおいて図柄が再度変動開始された後停止図柄を確定表示する」「再変動を行なう変動パターン」を表示するものの、再変動を行なう回数が不明であり、しかも、当該回数の表示を行うものではない点。

(3)判断
[相違点1及び2について]
相違点1と2は密接に関連しているので、合わせて検討する。
刊行物Bには、変動表示装置4aに、識別情報601?603が本停止状態となる過程において、識別情報の仮停止後に発生し得る識別情報の再変動の回数、すなわち1回の変動動作とされる中で行われる複数の擬似的変動回数を、表示画面4gのうち変動表示領域4x、4y、4z以外の部分の表示画面に出現させるキャラクタの数により予測報知すること(以下「刊行物B記載の技術」という。)が示されており、この表示画面が本願補正発明における演出用擬似表示手段に相当し、しかも、このような擬似的変動を1回に限定しないことは、刊行物Cにも示されるように、パチンコ遊技機において従来周知の技術(以下「周知技術」という。)である。
さらに、当該擬似的変動回数は、確定停止に至るまで図柄が仮停止、擬似的変動を繰り返す繰り返し回数であると解釈され、当該繰り返し回数の相違が図柄変動パターンの相違となることは当然である。
そして、刊行物Aの図27(A)、(B)及び図28(A)、(B)に一時停止の後に変動する複数の変動パターンが示されており、引用発明と刊行物B記載の技術はいずれもパチンコ遊技機における図柄の再変動に関連したものであるから、引用発明に刊行物B記載の技術及び周知技術を適用して、一時停止の後に変動する回数を変動パターンに応じて異なるものとするとともに、その回数を表示する手段を設けて、相違点1及び2に係る本願補正発明の構成とすることは、パチンコ遊技機の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に想到できたものである。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明、刊行物B記載の技術及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。
よって、本願補正発明は、引用発明、刊行物B記載の技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)むすび
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第三.本願発明について
1.本願発明
平成19年4月26日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成18年11月2日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「複数の図柄を変動表示させる図柄表示手段と、
該図柄表示手段で表示させる図柄を変動表示開始するための始動口と、
前記始動口への遊技球の入賞によって開始された前記図柄表示手段の図柄の変動表示中、更に遊技球が前記始動口に入賞したときに、その入賞個数を記憶する入賞記憶手段と、
乱数を取得して大当たりか否かの抽選を行うメイン基板と、
図柄表示手段の表示を制御する図柄制御基板と、
を具備し、前記図柄表示手段で変動表示された複数の図柄が揃って停止表示したときに大当たり状態が発生するパチンコ遊技機において、
前記入賞記憶手段に記憶された入賞個数のみを表示する入賞個数表示手段と、
前記入賞記憶手段に記憶された入賞個数又はそれとは関わらない擬似数を表示する演出用擬似表示手段と、
を有し、且つ、前記図柄表示手段で行わせる図柄の変動時間を前記メイン基板にて設定し、その変動時間を前記図柄制御基板に送信するとともに、前記図柄表示手段が前記メイン基板では1回の変動動作とされる中で複数の擬似的変動動作を行いつつ、前記図柄制御基板が受信した当該変動時間に基づいて擬似数を決定し、その擬似数を前記演出用擬似表示手段で表示させることを特徴とするパチンコ遊技機。」

2.特許法第29条第2項の検討
(1)引用刊行物記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物A?C及びその記載事項は、前記「第二.3.(1)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、本願補正発明から「図柄制御基板」の限定事項である「当該図柄制御基板は図柄変動時間を受信すると図柄変動選択テーブルから図柄の変動パターンを選択し、擬似的変動を行う図柄変動パターンが選択された場合、」を省くとともに、前記「第二.2.」で後者の補正について検討したとおり、本願補正発明における「疑似数」の決定に関しての限定事項を省いたものということができる。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第二.3.(3)」に記載したとおり、引用発明、刊行物B記載の技術及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明、刊行物B記載の技術及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明、刊行物B記載の技術及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第四.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、刊行物B記載の技術及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、請求項2に係る発明については検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-06-30 
結審通知日 2009-07-01 
審決日 2009-07-14 
出願番号 特願2003-19149(P2003-19149)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 齋藤 智也  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 有家 秀郎
森 雅之
発明の名称 パチンコ遊技機  
代理人 越川 隆夫  

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