• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01J
管理番号 1203250
審判番号 不服2007-12430  
総通号数 118 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-04-27 
確定日 2009-08-24 
事件の表示 平成10年特許願第141267号「表示素子用蛍光膜の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成11年11月30日出願公開、特開平11-329235〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成10年5月22日の出願であって、平成19年1月26日付け(発送日:平成19年1月31日)で拒絶査定がなされ、これに対して平成19年4月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、当審において、平成20年11月25日付け(発送日:平成20年12月2日)で拒絶の理由を通知したところ、これに対して平成21年3月2日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで明細書を対象とする手続補正がなされたものである。

2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成21年3月2日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載された以下のとおりのものと認める。(以下「本願発明」という。)

「【請求項1】
a)基材フィルムの上に光吸収層、四窒酸ペンタエリトリトール又はトリニトロトルエンからなる緩衝層、蛍光体層をその順に積層してなる多層構成のドナーフィルムを用意し、このドナーフィルムの前記蛍光体層側が基板と対向するように、該基板から所定距離ほど離隔された位置に前記ドナーフィルムを設ける段階と、
b)前記ドナーフィルムにエネルギー源からエネルギーを照射して前記蛍光体層の蛍光体を前記基板上に転写させた後、熱処理する段階とを含み、
前記b)段階において、前記エネルギー源がレーザー光源、キセノンランプ及びハロゲンランプよりなる群から選択されることを特徴とする表示素子用蛍光膜の製造方法。」

3 引用刊行物に記載された発明
(1)当審の拒絶の理由で引用され、本願の出願前の平成6年10月21日に頒布された刊行物である特開平6-295671号公報(以下、「引用刊行物1」という。)には、「蛍光膜形成方法とそれに用いる蛍光膜形成用転写材」の発明に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。

<記載事項1>
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ガラス基板上に、特に陰極線管のフェースプレート上に蛍光膜を容易に効率よく形成する方法及びそれに用いる転写材に関する。」

<記載事項2>
「【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、近年ノンインパクト記録方法としてよく検討されている熱転写記録方法において、熱源としてレーザーを用いるレーザー熱転写記録方法を利用すれば、非常に迅速にしかも効率よく陰極線管のフェースプレート上に蛍光膜を形成することが出来ることを見いだした。熱転写記録方法とは、例えば基材上に熱溶融性インクを有したインクリボンを、インク層の背面側からサーマルヘッドやレーザーなどの加熱素子で加熱圧着することにより、インクを被記録紙に溶融転写する方法であるが、その中で特にレーザーを加熱源として利用すると、通常のサーマルヘッドを使用する場合に比べて、更に次のようなメリットが生じるのである。
(1)サーマルヘッドではヘッドの蓄熱があり、走査をそれほど速くできないが、レーザーではそのようなことが無いため、走査を非常に速く行え、サーマルヘッドを使用する場合に比べて、さらに短時間で転写が行える。
(2)サーマルヘッド方式では加熱ドットの大きさが約50ないし200μmであるが、レーザーでは、10μm程度の加熱ドットを作ることができ、形成されるパターンの追随性が非常に良い。
【0007】すなわち、本発明の蛍光膜形成方法は、少なくとも蛍光体と熱溶融性バインダーとを含む熱転写性蛍光体層がベースフィルム上に形成された転写材の、前記熱転写性蛍光体層をガラス基板に対向させ、前記転写材にレーザーを照射し、その熱により前記熱転写性蛍光体層をガラス基板上にパターン状に転写し、焼成することにより蛍光膜を前記ガラス基板上に形成するものである。
【0008】また、本発明に用いる蛍光膜形成用転写材は、少なくとも蛍光体と熱溶融性バインダーとを含む熱転写性蛍光体層をベースフィルム上に形成されたものであるが、前記転写材が熱転写性蛍光体層、ベースフィルム、または熱転写性蛍光体層とベースフィルムの間の中間層のうち少なくとも一層に赤外線吸収剤を含有することが、特に好ましい。その理由としては、赤外線吸収剤を使用することによって、レーザーの光熱変換効率が上がるため、出力が比較的弱いが扱い易い半導体レーザーも使用可能になるからである。」

<記載事項3>
「【0020】
【実施例】以下実施例により、本発明を更に詳細に説明するが、その要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお実施例中、「部」は「重量部」を示す。
[実施例1]インキ塗布面の背面が耐熱滑性加工されたポリエチレンテレフタレートフィルム(6μm厚)上に、下記組成のインキを、乾燥塗工厚みが15μmになるように、マイクログラビア法により塗工し、転写材を得た。
【0021】
【表1】
組成
エチレン-酢酸ビニル樹脂エマルジョン 10部
(固形分40%)
パラフィンワックスエマルジョン 20部
(固形分40%)
蛍光体粉末(ZnS:Cu、Al;粒径4.5μm) 24部
水 30部
この転写材をフェースプレート上に重ね、透明なガラス板で押さえた後、ガラス板の上から、レーザー光(YAGレーザー出力0.5W、ビーム径20μm)でストライプ状に走査露光を行った。転写材を引き剥すと、きれいなストライプ状の蛍光体層がフェースプレート上に得られた。」

図面の図2からみて、ベースフィルムの上に、下から赤外線吸収剤を含有する接着層または剥離層、熱転写性蛍光体層を積層した蛍光膜形成用転写材が見て取れる。

図面の図4からみて、蛍光膜形成用転写材の熱転写性蛍光体層をフェースプレート上に重ねて、レーザー光源からレーザーを照射することが見て取れる。

上記記載事項2乃至3からみて、転写材を得て、この転写材をフェースプレート上に重ねる段階が読み取れる。

上記記載事項2からみて、蛍光膜形成用転写材にレーザーを照射し、熱転写性蛍光体層をガラス基板上に転写し、焼成する段階が読み取れる。

上記記載事項1からみて、陰極線管のフェースプレート上に蛍光膜を形成する方法が読み取れる。

よって、前記記載事項1乃至3及び図面の記載からみて、引用刊行物1には、以下の発明が記載されているものと認められる。
「a)ベースフィルムの上に、下から赤外線吸収剤を含有する接着層または剥離層、熱転写性蛍光体層を積層した蛍光膜形成用転写材を得て、この蛍光膜形成用転写材の前記熱転写性蛍光体層をフェースプレート上に重ねる段階と、
b)前記蛍光膜形成用転写材にレーザー光源からレーザーを照射し、前記熱転写性蛍光体層をフェースプレートに転写し、焼成する段階とを含み、
陰極線管のフェースプレート上に蛍光膜を形成する方法。」(以下、「引用発明1」という。)

(2)当審の拒絶の理由に引用され、本願の出願前の平成7年1月6日に頒布された刊行物である特開平7-1841号公報(以下、「引用刊行物2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

<記載事項4>
「【0010】本発明によれば、約10重量パーセント(後に定義する如く)以上の熱的に有効な窒素含有量を有するガス発生ポリマーが、熱マス転写材料の優れた推進剤として有用であることを発見したのである。

(中略)

【0013】他の態様において、本発明は順次にその上に被覆形成層を設けた支持体を含有する、熱転写ドナー成分を提供するものであって:(a)第一の層は黒色金属放射線吸収剤を含有し;(b)第二の層は好ましくは約10重量パーセント以上の熱的に有効な窒素含有量を持つガス発生ポリマーを含有し;そして(c)第三の層は熱マス転写材料を含有する、熱転写ドナー成分である。」

<記載事項5>
「【0036】ガス発生ポリマーは、例えば赤外レーザービームの露光によるように、急速に加熱されたとき、ガス、特に窒素ガス(N_(2))を遊離する任意のポリマーである。加熱で窒素ガスを遊離するポリマーは、一般に熱的に分解する官能基を持っている。ポリマーそれ自身がガス遊離してもよく、光照射時に分解してガスを生成できる材料を分散又は添加してもよい(例えばジアゾニウム塩とポリマー)。適当な、熱的に分解し得る官能基の例は、アジド、アルキルアゾ、ジアゾ、ジアゾニウム、ジアジリノ、ニトロ、ジフルオロアミノ、CF(NO_(2))_(2)、シアノ、ニトラト、トリアゾール等を含むが、これに限定されるものではない。熱的に分解し得る基は、重合に先立って、或いは例えば、芳香環のジアゾ化(例えば、亜硝酸ナトリウムで)、或いはトリエチルアミンの存在下でアミン又はβ-ジケトンの上にトシルアジドを用いたジアゾ転移のような実存のポリマーの変成のいずれかによって、ガス発生ポリマー中に組み込まれる。
【0037】エネルギーを持ったポリマーは、所定の閾値温度以上にミリ秒からナノ秒の時間スケールで加熱した場合に発熱的に分解してガス、衝撃波、圧力等を発生する官能基を含有するポリマーと規定する。このようなポリマーは例えば、アジド、ニトラト、及びニトロアミノ(nitramino)官能基を有しでもよい。このようなポリマーの(非限定的な)例としてはポリ(ビス(アジドメチル))オキセタン(BAMO)、グリシジルアジドポリマー(GAP)、ポリビニルニトレート(PVN)、ニトロセルロース及びポリカーボネート類がある。また、エネルギーを持ったポリマーをエネルギーを持った補助剤、ガス形成補助剤、又は熱的又は光化学的分解用の触媒を含有するポリマー状材料として規定しても良い。
【0038】エネルギーを持った補助剤を用いて前述のエネルギーを持ったポリマー物理的及び熱的特性を改良しても良い。このような補助剤を分解温度を低下させる可塑剤又は「キッカー(kickers)」として使用しても良い。このような補助剤の(非限定的な)例としては、エネルギーを持った分子RDX(ヘキサヒドロ-1,3,5-トリニトロ-1,3,5-トリアジン)、TNT(トリニトロトルエン)及びPETN(ペンタエリトリトールテトラニトレート)がある。」

したがって、引用刊行物2には以下の事項が記載されている。

ア 熱マス転写材料の優れた推進剤として有用なガス発生ポリマーを、黒色金属放射線吸収剤を含有する層と、熱マス転写材料を含有する層の間の中間層とすること(上記記載事項4)。

イ ガス発生ポリマーは、TNT(トリニトロトルエン)、PETN(ペンタエリトリトールテトラニトレート)のエネルギーを持った補助剤の触媒を含有すること(上記記載事項5)。

(3)当審の拒絶の理由に引用され、本願の出願前の平成6年11月24日に頒布された刊行物である特表平6-510490号公報(以下、「引用刊行物3」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

<記載事項6>
「簡単に言うと、本発明は、複合除去転写画像媒体から、隣接して見当を合わせたレセプター要素へのコントラストをなす情報パターンの転写に関する改良された方法であって、該複合除去転写画像形成媒体が、支持基体(i)、実質的に(i)と同様な広がりを有する少なくとも一つの動的剥離層(ii)、およびこれも実質的に(i)と同様の広がりを有する画像形成放射除去キャリヤトップコート(iii)であって、特に光、より望ましくはレーザー除去キャリヤトップコートを含み、上記画像形成放射除去キャリヤトップコート(iii)が画像形成量のコントラスト画像形成物質をその中に含み、かつ上記動的剥離層(ii)が、例えば、レーザーエネルギー等の画像形成放射を、少なくとも該キャリヤトップコート(iii)の画像形成的除去物質転写を起こすのに十分な速度で吸収する方法を特徴とする。特に、本発明は、前記レセプター要素上への前記画像形成媒体の少なくとも前記キャリヤトップコートの画像形成露出面の確実な除去物質転写を行うのに十分な速度で前記複合除去転写画像形成媒体を情報パターンに従って画像形成的に照射し、それによって前記画像形成物質がその上に上記情報パターンを描写することを含む改良された方法を特徴とする。
また、本発明は、このような複合除去転写画像形成媒体自体、並びに、そのような複合除去転写画像形成媒体、および、例えば、向かい合わせに見当を合わせて直接的接触させて、または25ミクロンまで、または特定に場合には100ミクロンまで拡張しうる僅かな間隔を空けて、前記媒体と隣接して見当を合わせたレセプター要素を含む除去転写画像形成・記録に採用した構成を特徴とする。
また、本発明は、上述の構成および例えばレーザーエネルギー並びに電磁波および超音波放射等のその他のエネルギー源により選択的に該複合除去転写画像形成媒体を照射し、画像形成媒体の放射除去キャリヤトップコートの少なくとも選択的に照射された部分を、ある場合には、少なくとも一つの動的剥離層自身の対応する部分とともにレセプター要素に確実に除去物質転写する手段を含む除去転写画像形成・記録を目的とした組み合わせ(assemb1y)を特徴とする。」(第7頁左下欄第17行-右下欄第21行)

したがって、引用刊行物3には以下の事項が記載されている。

ウ レーザー照射による熱転写方法において、複合除去転写画像形成媒体と、レーザーの照射により該媒体の一部が転写されるレセプター要素とを、直接接触、または僅かな間隔を空けて、向かい合わせにすること(上記記載事項6)。

4 対比
本願発明と引用発明1とを対比する。

引用発明1の「ベースフィルム」、「赤外線吸収剤を含有する接着層または剥離層」、「熱転写性蛍光体層」、「蛍光膜形成用転写材」、「フェースプレート」は、それぞれ本願発明の「基材フィルム」、「光吸収層」、「蛍光体層」、「ドナーフィルム」、「基板」に相当するから、引用発明1の「a)ベースフィルムの上に、下から赤外線吸収剤を含有する接着層または剥離層、熱転写性蛍光体層を積層した蛍光膜形成用転写材を得て、この蛍光膜形成用転写材の前記熱転写性蛍光体層をフェースプレート上に重ねる段階」と、本願発明の「a)基材フィルムの上に光吸収層、四窒酸ペンタエリトリトール又はトリニトロトルエンからなる緩衝層、蛍光体層をその順に積層してなる多層構成のドナーフィルムを用意し、このドナーフィルムの前記蛍光体層側が基板と対向するように、該基板から所定距離ほど離隔された位置に前記ドナーフィルムを設ける段階」とは、「a)基材フィルムの上に光吸収層、蛍光体層をその順に積層してなる多層構成のドナーフィルムを用意し、このドナーフィルムの前記蛍光体層側が基板と対向するように、前記ドナーフィルムを設ける段階」という点で共通する。

引用発明1の「焼成する」は、本願発明の「熱処理する」に相当するから、引用発明1の「b)前記蛍光膜形成用転写材にレーザー光源からレーザーを照射し、前記熱転写性蛍光体層をフェースプレートに転写し、焼成する段階とを含み」は、本願発明の「b)前記ドナーフィルムにエネルギー源からエネルギーを照射して前記蛍光体層の蛍光体を前記基板上に転写させた後、熱処理する段階とを含み、前記b)段階において、前記エネルギー源がレーザー光源、キセノンランプ及びハロゲンランプよりなる群から選択される」に相当する。

引用発明1の対象である「陰極線管のフェースプレート上に蛍光膜を形成する方法」は、本願発明の対象である「表示素子用蛍光膜の製造方法」に相当する。

したがって、本願発明と引用発明1の両者は、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。

<一致点>
「a)基材フィルムの上に光吸収層、蛍光体層をその順に積層してなる多層構成のドナーフィルムを用意し、このドナーフィルムの前記蛍光体層側が基板と対向するように、前記ドナーフィルムを設ける段階と、
b)前記ドナーフィルムにエネルギー源からエネルギーを照射して前記蛍光体層の蛍光体を前記基板上に転写させた後、熱処理する段階とを含み、
前記b)段階において、前記エネルギー源がレーザー光源、キセノンランプ及びハロゲンランプよりなる群から選択されることを特徴とする表示素子用蛍光膜の製造方法。」

<相違点1>
用意する多層構成のドナーフィルムが、本願発明では、基材フィルムの上に、下から光吸収層、四窒酸ペンタエリトリトール又はトリニトロトルエンからなる緩衝層、蛍光体層をその順に積層してなるものであるのに対して、引用発明1では、ベースフィルムの上に、赤外線吸収剤を含有する接着層または剥離層、熱転写性蛍光体層をその順に積層してなるものであり、その間に緩衝層がない点。

<相違点2>
ドナーフィルムの蛍光体層側が基板と対向するように、ドナーフィルムを設ける段階において、本願発明では、ドナーフィルムを基板から所定距離ほど離隔された位置に設けるのに対して、引用発明1では、蛍光膜形成用転写材の熱転写性蛍光体層をフェースプレート上に重ねる点。

5 判断
(1)相違点1
上述したように、引用刊行物2には、熱マス転写材料の優れた推進剤として有用なガス発生ポリマーを、黒色金属放射線吸収剤を含有する層と、熱マス転写材料を含有する層の間の中間層とすること、ガス発生ポリマーは、TNT(トリニトロトルエン)、PETN(ペンタエリトリトールテトラニトレート)のエネルギーを持った補助剤の触媒を含有することが記載されている。そして、引用発明1と引用刊行物2に記載された発明とは、いずれもレーザー照射による熱転写方法であるから、引用刊行物2に記載の構成を引用発明1に適用することは当業者にとって困難なことではない。

したがって、相違点1に係る本願発明の発明特定事項は、当業者であれば引用刊行物1、2に記載された発明に基づいて容易に想到し得ることである。

(2)相違点2
上述したように、引用刊行物3には、レーザー照射による熱転写方法において、複合除去転写画像形成媒体と、レーザーの照射により該媒体の一部が転写されるレセプター要素とを、直接接触、または僅かな間隔を空けて、向かい合わせにすることが記載されている。引用発明1と引用刊行物3に記載された発明とは、いずれもレーザー照射による熱転写方法であるから、引用発明1において、ドナーフィルムを基板の上に直接接触させているのに代えて、引用刊行物3に記載されているように、基板から所定距離ほど離隔された位置にドナーフィルムを設けることは、当業者が適宜になし得ることである。

したがって、相違点2に係る本願発明の発明特定事項は、当業者であれば引用刊行物1、3に記載された発明に基づいて容易に想到し得ることである。

そして、本願発明によって奏される効果は、引用刊行物1乃至3の記載から当業者が予測し得る程度のものに過ぎない。

したがって、本願発明は、引用刊行物1乃至3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用刊行物1乃至3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-03-24 
結審通知日 2009-03-31 
審決日 2009-04-13 
出願番号 特願平10-141267
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 紀史  
特許庁審判長 江塚 政弘
特許庁審判官 山川 雅也
濱本 禎広
発明の名称 表示素子用蛍光膜の製造方法  
代理人 佐伯 義文  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ