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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1203332 |
審判番号 | 不服2006-21427 |
総通号数 | 118 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-10-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-09-25 |
確定日 | 2009-09-10 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第188840号「電子サーチ・検索に適したフォーマットでのビデオプログラム圧縮表現自動提供方法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 4月14日出願公開、特開平10- 98684〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1. 手続の経緯 本願は、平成9年7月15日(パリ優先権主張1996年7月15日、米国)の出願であって、平成17年9月7日付け拒絶理由通知に対して、手続補正はされることなく、同年12月20日付けで意見書のみが提出され、平成18年1月16日付け拒絶理由通知に対して、同年4月7日付けで手続補正がされたが、同年6月21日付けで拒絶査定された。これに対して、同年9月25日に拒絶査定不服審判が請求され、同年10月20日付けで、補正をする者が本願出願人ではない「ルーセント テクノロジーズ インコーポレーテッド」であって、書類の受付番号が「50602038169」である手続補正書が提出されたが、この手続補正書は、補正をする者が本願出願人以外の者であることを理由として返戻しされ、同日付けで、補正をする者が本願出願人である「エイ・ティ・アンド・ティ・コーポレーション」であって、書類の受付番号が「50602038349」である手続補正書(以下、「平成18年10月20日付け手続補正書」という。)が提出され、手続補正がされたものである。 2. 本願発明 本願の請求項1乃至27に係る発明は、平成18年10月20日付け手続補正書により補正された明細書の記載からみて、本願の特許請求の範囲の請求項1乃至27に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。 「 【請求項1】 電子サーチ・検索に適したフォーマットでのビデオプログラム圧縮表現を自動的に提供する方法であって、 ビデオプログラムの圧縮版を表す電子データを受け取るステップを含み、前記ビデオプログラムは連続する画像フレームからなり、前記画像フレームを所定の速度で連続して表示したときに実物であるかように画像が連続的に変化することを視覚に訴えるものであり、前記ビデオプログラムはビデオ成分とそのビデオ成分に付随する第二の情報関連メディア成分とを有し、前記電子データは、該ビデオプログラムのビデオ成分の各セグメントと該セグメントに付随する前記第二の情報関連メディア成分の一部とからの代表フレームを含み、さらに、 前記電子データの表示をハイパテキストフォーマットに自動的に変換し、ハイパテキスト画像入り写しを形成するステップと、 前記ハイパテキスト画像入り写しを電子媒体に記録するステップとを含むことを特徴とする方法。」 なお、本願発明における「あるかように」とは、「あるかのように」の誤記と認める。 3. 引用例 原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先権主張日前である平成7年7月28日に頒布された刊行物である、特開平7-192003号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の記載がある。 (a) 「 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、動画像中の字幕の現われているシーンを検出し、そのシーンの代表画像を重要度の高い画像として一覧表示することにより所望のシーンの検索を行う動画像検索装置及び方法に関する。 【0002】 【従来の技術】近年,計算機の高速化と大容量化を背景にして,従来は扱えなかった映画やビデオなどの動画像情報を対象としたデータベースの構築が活発になっている。これに伴い,蓄積された大量の動画像の中から、所望のシーンを効率良く選び出す検索技術の実用化が進められている。動画像の検索には大きく分けて2つのアプローチがある。 (1) 動画像に予めシーンの特徴を記述したインデックスやキーワードを付与し、ユーザが検索時に言葉や条件式などで所望のシーンの特徴を指示し,計算機がそれに合致したシーンを見つけ出す方法。 (2) 映像の概要を示すために動画像を何等かの基準で抽出しそれらを直接ユーザに提示することで、ユーザが自分の目で確認しながら所望のシーンを見つけ出す方法。 【0003】(1)の方法は,見たいシーンについて曖昧な記憶や情報しか持ち合わせていない一般ユーザにとっては適切な条件設定が困難で自由な検索が妨げられるという問題がある。(2)の方法であれば,提示された映像の概要を見ながら,所望のシーンかどうかを識別するだけでよいので,初心者にも簡単に検索を行うことができる。しかしながら,検索を効率良く行うためにはこうした概要のために抽出される画像の数は十分小さくなければならず,膨大な動画像情報の中から重要な部分だけを上手に選びだして概要を作成する必要がある。この概要の作成は莫大な時間と労力を消費するため、手作業は実用的ではない。自動的に動画像の中から代表画像を抽出する一方法が情報処理学会論文誌 Vol.33, No.4, "カラービデオ映像における自動索引付け法と物体探索法"に示されている。この方法は動画像をシーンごとに自動的に分割して,各シーン中の一枚の画像あるいは部分的な動画像を縮小して一覧表示することで検索の手掛かりとするものである。しかしこの方法においては,シーンの重要な部分がその一覧中に含まれないことが起こりうる一方、そもそもシーン自体が重要でない場合にも一覧に登録されてしまうという問題がある。 【0004】上述の問題を解決するためには,一覧として表示する画像の重要度を何らかの尺度で測り,重要度の高いものを選ぶ必要がある。しかも,実用的であるためには、この作業は計算機によって自動で行えるか,あるいは人間の作業が最小限になるよう計算機による支援により行えるものである必要がある。特定のシーンを自動的に検出する方法として、字幕が現れているシーンを検出する方法がある。このような方法として、第44回情報処理学会全国大会予稿集,2-301, "大相撲対戦からの認識に基づく内容識別法"に記載のものがある。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】この"大相撲対戦からの認識に基づく内容識別法"に記載の字幕検出方法は,相撲中継の対戦字幕など定まった表示形態をした特定字幕を検出するものである。例えば、対戦字幕であれば、白色の字幕(力士名)が画面の左半分と右半分のそれぞれ中央に大きく提示されることに着目し、画像を白色に対して二値化して、その白色の画素の分布状況を検出することにより実行される。従って、特定の番組の,しかも,特定の表示形態をした字幕部分を検出することしかできないという本質的な問題がある。そのため,この方法をそのまま適用しても、別の番組はもとより同じ番組でも表示形態の異なる字幕は検出できないため,一般の映像について概要情報を作成することはできない。 【0006】本発明の目的は,動画像中に現われる様々な形態の字幕を検出し、字幕の現れているシーンの代表画像を動画像中から自動的に選び出すことによって的確な映像の概要を作成し,また、ユーザが簡単に所望のシーンを探しだし、有効に活用するべく、そのようにして抽出された代表画像を各種の字幕の特徴を利用して提示する動画像検索装置および方法を提供することである。 【0007】 【課題を解決するための手段】動画像として取り込んだデジタル画像データについて、フレーム画像ごとに第一の閾値以上の輝度を有する画素を抽出する輝度判定手段と、その抽出された画素について、一連のフレーム画像について同位置に現われる画素を有するフレーム画像を抽出するフレーム照合手段を設け、抽出されたフレーム画像を上記代表画像として出力する。 【0008】更に、輝度判定手段により抽出された画素について、近傍がその輝度と比較して輝度の差が第二の閾値以上である画素を抽出する輝度差判定手段と、フレーム照合手段により抽出されたフレーム画像について同位置に現われる画素が密に存在する領域を字幕の現われている領域として抽出する字幕領域抽出手段を設ける。 【0009】また、検出された字幕領域の情報を使って、得られた代表画像を動画像表示手段に提示する。特に、ユーザに対してわかりやすく提示するために、字幕の表示形態による分類に基づいて代表画像を提示する。あるいは、字幕の存在時間によって字幕の上位・下位を判定し代表画像を階層化して提示する。さらに、字幕の文字認識を行い、同一文字列の存在による分類に基づき代表画像を提示する。または文字認識した結果を分類するための辞書とこれを参照する手段を設け、代表画像を字幕の意味内容により分類して提示する。また,一度に多くのシーンの画像を一覧表示しようとして,シーン画像の1つ1つが小さくなって字幕が読みにくくなる場合のために,字幕部分だけを拡大して表示する手段を設ける。」 (b) 「 【0013】このようにして検出した字幕の現われているフレーム画像を一覧にして提示することにより、ユーザは一覧の中から所望のシーンを素早く探しだすことができる。さらに字幕は映像内容に対応するものであるから、このようにして検出した字幕情報を使って、単なる代表画像の一覧表示にとどまらず、代表画像を各種の方法で分類し、ある意味的まとまりをもたせて代表画像をユーザに提示することにより、動画像検索をわかりやすく有効に活用するために資することができる。具体的には、字幕の種類で分類する手段を設けることによって、探す範囲を絞り込むことができ、より素早く所望のシーンを探し出すことができる。また、字幕の上位・下位を判定する手段を設けることによって、階層的な探索ができる。さらに、字幕を文字認識する手段を設けることで、ユーザが直接提示した任意の文字列をキーとした検索が可能になる。文字認識した結果を分類するための辞書と、これを参照する手段を設けることによって、字幕をその意味合いによって分類することができる。また,字幕部分だけを拡大して表示する手段を設けることによって,一覧のシーン画像の1つ1つが小さいときでも,文字がつぶれてユーザが読みにくくなることがない。」 (c) 「 【0015】図2a)は、CPU7によって実行される処理をブロック図で示したものである。矢印は信号またはデータの流れを示している。CPU7の処理動作は、大きく5つの処理部分に分けられる。字幕検出処理部1700は図1に示した動画像再生装置10からA/D変換器3を通してデジタル画像として取り込まれ、メモリ9及び外部情報記憶装置6に記憶された動画像情報を受取り、字幕検出処理を実行する。その処理により得られる字幕の位置や大きさなどの情報、及び一覧として提示される画像データは後述するデータ構造体の形式で記憶される(1710,1712)。画像情報管理部1702はそれらのデータの入出力を管理する。1706はユーザ・インタフェース部であり、ユーザからの各種の指示を受け付ける。ユーザ・インタフェース部1706から画像情報管理部1702への矢印は、後述する字幕検出修正処理の指示に対応するものである。また、映像の概要である一連の代表画像の提示についての指示はユーザ・インタフェース部1706から画像提示処理部1704に伝達される。画像提示処理部1704はその指示に応じて画像情報管理部1702を通じて字幕属性情報データ、画像データを受け取って解析し、一連の画像情報をユーザからの指示に対応するフォーマットで画像表示部1708に伝達する。画像表示部1708は、ディスプレイ装置1に伝達された画像を提示する。GUIを使用すれば、ユーザ・インタフェース部1706への入力と画像表示部1708からの出力は同じディスプレイ装置1の画面上に実現することができる。」 (d) 「 【0033】これまで述べたような字幕の検出処理により得られる字幕に関する情報をユーザが有効に利用できるよう、わかりやすく提示する方法について述べる。図11はコンピュータのディスプレイ上への提示の一例を示している。ウインドウ700は映像の概要を示す代表的なフレーム画像を抽出し,それらを一覧にして表示する。代表フレーム画像は,字幕区間の先頭の画像を機械的に抽出するなどして選ぶ。代表画像は,NTSC本来の解像度でサンプリングされた映像のままの大きさでは,コンピュータのディスプレイで表示しきれなかったり,表示できる個数が限られてしまうので,間引き処理等によって縮小して用いる。ユーザはこれらの代表画像を確認しつつ、見たいシーンを検索することができる。見たいシーンを見つかったならば、そのシーンをモニタウインドウ702に表示させる。この場合、再生するシーンの選択はウインドウ700に一覧表示されているシーンへのクリックと連動させて行う。モニタウインドウ702に映像を再生する方法としては、計算機に接続された動画像再生装置が出力する映像を用いる方法と,外部情報記憶装置に登録されたデジタル化された映像を用いる方法とがある。動画像再生装置による場合には,シーンの先頭のフレーム番号を動画像再生装置に送り,そのフレーム番号に対応するシーンから再生を開始する。そして,シーン末尾のフレーム番号に到達した時点で再生を中断する命令を動画像再生装置に送る。デジタル化された映像の場合は,図9に示す物理映像構造体400の形式で記憶された映像データから,シーン先頭のフレーム番号に対応するフレームの画像データを抽出してグラフィックデータとして表示する。1フレーム分の表示処理が終了すると,次のフレームの表示処理を連続して行うことで動画像の表示とする。表示処理に要する時間に合わせて一定時間あたりに表示するフレーム画像の枚数を調節し,動画像が早送り気味になったりスロー気味になったりしないようにする。また、ボタン704は,ビデオ映像の再生状態を制御するためのボタンで,マウスやタッチパネルのクリックに応じて,ビデオ映像の再生や早送り・巻き戻しといった制御を行う。これらの操作により、検索したシーンの前後について容易に確認することができる。708はテキスト入出力ウインドウであり、後述する字幕中の文字列を検索する等に利用する。テキストの入力にはキーボード11を用いる。これらのウインドウは,ポインティングデバイス5の一つであるマウスを使って自由に動かせるカーソル706を操作して画面上の任意の位置に移動できる。あるいは,別の種類のポインティングデバイスであるタッチパネルを使っても同様のことができる。 【0034】代表画像を提示するウインドウ700は、検出した字幕の情報を利用することによりユーザの見たいシーンを検索する作業を容易にすることができる。以下、字幕情報を利用した代表画像の一覧提示方法について説明する。一覧表示の仕方としては,ビデオ映像中における出現順に時系列に並べる方法を基本とする。時系列は代表画像のフレーム番号に基づいて決定される。図12は,代表画像604を単純に時系列に並べたもので,左上がビデオ映像の先頭側,右下が同じく末尾側になる。1行で表示しきれない場合には,図のように折り返して複数行に渡って表示を行い,さらに,1枚のウインドウで表示しきれなければ,スクロールバー602が現れてスクロール表示を行う。」 (e) 「 【0038】図14は,代表画像についてある基準に基づき階層化し、その階層化した状態を視覚的に明示して表示した例である。その階層化の基準としては、例えば字幕の存在する時間の包含関係または字幕の表示形態をとる。字幕の存在する時間の包含関係とは、あるシーンについて大見出しに対応する字幕は,そのシーンの間ずっと現れていることが多く、また,その間に時折現れる字幕は,そのシーンの中のもっと細かな部分部分,いわば小見出しに対応するものであるからそれを利用する。字幕の存在する区間は各字幕につき字幕区間構造体の始点フレーム番号と終点フレーム番号とを参照することにより得られるので,その区間の相互の包含関係を調べることで,字幕が大見出しなのか小見出しなのかを区別することができる。図14は,シーンの代表画像604について、大見出しの字幕が現れている代表画像を上層に,小見出しの代表画像を下層に並べ,包含関係がわかるように線606で上層・下層の代表画像どうしを結んでいる。このような構造木は,包含関係のあるグループごとに各々作られ,それが横方向に並ぶ。上層の字幕どうしをグループにして,構造木の階層数を増やすこともできる。1枚のウインドウで表示できないときには,縦方向・横方向それぞれについてスクロールバーが現れて,表示しきれない部分をスクロール表示する。代表画像の数が多いときなどには,上層の字幕の代表画像だけを表示して大まかに候補を見つけてから,下層の字幕を表示させて絞り込むといったことができる。以上の例では,存在時間の包含関係で上層・下層を決定したが,図13に関して述べた分類の結果を使って上層・下層を決定することもできる。これは,特にニュース番組などにおいては,大見出しに相当する字幕を掲げて総論を説明したあと,細かい事項を説明し,また別件の総論を説明するという流れの繰り返しであることに着目している。前述の方法により、大見出しのグループを抽出してそれらが現れているシーンを上層の代表画像とし,各字幕の字幕区間構造体を参照して、そのシーンから次の大見出しの字幕が現れているシーンまでに現われている各シーンの代表画像を下層に表示する。また、上層・下層の判定はシステムが判定基準を保持して自動的に行うことも、先に述べた表示形態による分類表示などにおいて分類したグループをユーザが任意に選択して上層となるシーンを設定して,階層化表示を実行することも可能である。 【0039】代表画像に現われた字幕を文字として認識して、その情報を利用することを考える。輝度によって判定された字幕の文字部分について,従来より広く利用されている文字認識の技術を適用することで,代表画像に現われた字幕をJISコード等の文字コードで表現することができる。JISコードの文字は,日本語ワードプロセッサに用いられている仮名漢字変換等の手法により,任意の文字列をキーボードから人間が入力することができるので,そうした入力文字列をキーにした字幕の検索,すなわち,そうした字幕の現れているシーンの検索を行うことができる。また、字幕の文字を認識することにより、その字幕の内容によるグループ化が可能になる。同じ単語を含む字幕どうしを同じグループとして分類することもできる。さらに,単語とその意味合いを対応づける辞書を予め作成しておくことにより,字幕文字列中の単語が,例えば,人名なのか,あるいは,ある特定の分野の専門用語なのかを識別することができる。人名であれば,人名に関する字幕というグループで分類し,政治用語があれば政治に関するグループ,医学用語であれば,医学グループというように分類することができる。その表示形式の一例を図15に示す。ウインドウ600の左端に文字列608が表示されている。また,単語を分類するための辞書の構造体の一例を図16に示す。900は,単語を格納する配列,902はコード化された単語であり,分類のための属性情報配列904へのポインタを合わせ持つ。906は分類記号であり,その単語が人名なのか,政治用語なのかがコード化されて格納される。単語は多義性を持つので,複数の分類記号を持てるようにしている。 【0040】これまで述べてきた一覧表示においては,探索の効率を上げるために一目で確認できるシーンの数を増やそうとすると,ディスプレイの表示の大きさや解像度に限界があるため,シーンの代表画像を縮小して表示しなくてはならない。しかし,縮小率を上げていくと字幕が読めなくなるという問題がある。そこで,図17に示すように,字幕位置構造体に記憶された字幕部分を切り出してその部分だけを相対的に拡大して,すなわち,縮小率を代表画像604より低くして,604の近傍に表示する。このとき,横書きの字幕の場合は604の下に表示し,縦書きの場合は右横にというように,なるべく代表画像間の間を大きくとらなくてすむよう配慮する。字幕の部分は代表画像全体に比べて小さな領域であるので,字幕部分を拡大した画像を添えても,代表画像全体の縮小率を下げるよりも表示に必要な面積は遥かに少なくて済む。これにより,多数の代表画像の表示と字幕が正しく読めることとの両立を図ることができる。この表示方法は,これまで述べてきた字幕の現れているシーンを選択的に一覧表示するときのみならず,字幕の出ているシーンを含む全てのシーンを単純に一覧表示する場合にも有効である。」 (f) 「 【0049】 【発明の効果】本発明により,字幕が現れているシーンだけが選別されて一覧表示されるので,ユーザはその中から所望のシーンを素早く探しだすことができる。」 上記引用例の(a)?(f)の記載事項及び図面を総合すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 <引用発明> 「検索のために、ビデオ映像から字幕の現れているシーンの代表画像(604)を自動的に選び出して、図12に示されているように、ビデオ映像中における出現順に時系列に複数の代表画像(604)を並べて一覧表示する方法であって、 図12に示されている一覧表示を表す画像データを画像表示部(1708)が受け取るステップを含み、 前記ビデオ映像は一連のフレーム画像からなり、 前記ビデオ映像は動画像とその動画像に付随する字幕とを有し、 前記一覧表示を表す画像データは、該ビデオ映像の動画像の各シーンと該シーンに付随する前記字幕のうち図14の上層に示されている大見出しの字幕とからなる代表画像(604)を含む方法。」 4. 対比 本願発明と引用発明とを比較すると、次のことがいえる。 (1) 引用発明における「ビデオ映像から字幕の現れているシーンの代表画像(604)を自動的に選び出して、図12に示されているように、ビデオ映像中における出現順に時系列に複数の代表画像(604)を並べて一覧表示する方法」は、本願発明における「ビデオプログラム圧縮表現を自動的に提供する方法」に対応し、この中の、引用発明における図12に示されている一覧表示が、本願発明におけるビデオプログラム圧縮表現に対応している。 (2) 引用発明における「図12に示されている一覧表示」は、本願発明における「ビデオプログラムの圧縮版」に相当する。 (3) 引用発明における「画像データ」は、本願発明における「電子データ」に相当する。 (4) 引用発明における「ビデオ映像」は、映画などであるから、本願発明における「ビデオプログラム」に相当する。 (5) 引用発明における「一連のフレーム画像」は、本願発明における「連続する画像フレーム」に相当する。 (6) 引用発明における「動画像」は、本願発明における「ビデオ成分」に相当する。 (7) 引用発明における「字幕」は、本願発明における「第二の情報関連メディア成分」に相当する。 (8) 引用発明における「シーン」は、本願発明における「セグメント」に相当する。 (9) 引用発明における「字幕のうち図14の上層に示されている大見出しの字幕」は、本願発明における「第二の情報関連メディア成分の一部」に相当する。 (10) 本願発明における「とからの」との表現は、その技術的意義が必ずしも明瞭ではないが、明細書全体の記載を参酌すると、本願発明における「前記電子データは、該ビデオプログラムのビデオ成分の各セグメントと該セグメントに付随する前記第二の情報関連メディア成分の一部とからの代表フレームを含み、」との記載は、前記電子データが代表フレームを含むことを前提とし、この代表フレームが、第1の要素である「該ビデオプログラムのビデオ成分の各セグメント」と、第2の要素である「該セグメントに付随する前記第二の情報関連メディア成分の一部」とからなるものから得られる代表フレームであることを意味しているものといえる。そうすると、引用発明における「代表画像(604)」は、本願発明における「代表フレーム」に相当する。 なお、本願発明における「前記電子データは、該ビデオプログラムのビデオ成分の各セグメントと該セグメントに付随する前記第二の情報関連メディア成分の一部とからの代表フレームを含み、」との部分に対応する説明として、本願の当初明細書の【0005】に、「画像入り写し表示には、ビデオプログラムのビデオ成分の各セグメントからの代表フレームと、該セグメントに関連する第二のメディア成分の一部とが含まれている。」と記載されていたことを考慮して、本願発明における電子データが、ビデオプログラムのビデオ成分の各セグメントからの代表フレームと、該セグメントに関連する第二のメディア成分の一部とを含むものであることが、平成18年10月20日付けの手続補正書によって補正されて請求項に明確に記載されていたとした場合について念のため検討しても、引用発明の図12と図14に示されている一覧表示は、映画などのビデオ映像の動画像の各シーンから抽出した代表画像(604)と、そのシーンに関連する字幕の一部、すなわち、本願当初明細書の【0005】における「ビデオプログラムのビデオ成分の各セグメントからの代表フレーム」と「該セグメントに関連する第二のメディア成分の一部」との両方を含んでいるものである。 してみると、本願発明と引用発明とは次の点で一致する。 <一致点> 「検索のために、ビデオプログラム圧縮表現を自動的に提供する方法であって、 ビデオプログラムの圧縮版を表す電子データを受け取るステップを含み、 前記ビデオプログラムは連続する画像フレームからなり、 前記ビデオプログラムはビデオ成分とそのビデオ成分に付随する第二の情報関連メディア成分とを有し、 前記電子データは、該ビデオプログラムのビデオ成分の各セグメントと該セグメントに付随する前記第二の情報関連メディア成分の一部とからの代表フレームを含む方法。」 一方で、本願発明と引用発明とは次の点で相違する。 <相違点1> 本願発明におけるビデオプログラム圧縮表現が「電子サーチ・検索に適したフォーマットでの」ものであることについて、引用発明には、これに対応する要件である図12に示されている一覧表示が検索のためのものであることが示されているのみであって、この図12に示されている一覧表示を電子サーチ・検索に適したフォーマットでのものとすることまでは示されていない点。 <相違点2> 本願発明におけるビデオプログラムが、「前記画像フレームを所定の速度で連続して表示したときに実物であるかように画像が連続的に変化することを視覚に訴えるものであり、」との要件が、引用発明に明確には示されていない点。 <相違点3> 本願発明における「前記電子データの表示をハイパテキストフォーマットに自動的に変換し、ハイパテキスト画像入り写しを形成するステップと、前記ハイパテキスト画像入り写しを電子媒体に記録するステップとを含むこと」との要件が引用発明には示されていない点。 5. 判断 上記相違点について検討する。 <相違点1,3について> 本願発明における「電子サーチ・検索に適したフォーマット」について、本願の明細書の記載を検討すると、該フォーマットは、ワールドワイドウェブでの電子サーチ・検索に適したハイパテキストマークアップ言語(HTML)のフォーマットを意味し、より一般的には、コンピュータや通信網での電子検索に適したハイパテキスト言語のフォーマットであるといえる。(本願の当初明細書の【0001】には、「本発明は、一般には電子サーチ・検索に適したフォーマットでビデオプログラムの圧縮表現を自動的に提供する方法に関し、特に、ワールドワイドウェブでの電子サーチ・検索に適したフォーマットでビデオプログラムの圧縮表現を提供する方法に関するものである。」と、【0011】には、「本発明によれば、ビデオプログラムの圧縮版である電子データは、ハイパテキストマークアップ言語(HTML)でフォーマット化され、結果としてのHTMLドキュメントはワールドワイドウェブと互換性を持つ。」と、【0025】には、「例えば、ワールドワイドウェブ用のHTMLドキュメントとしてフォーマット化されるビデオプログラムの圧縮版である電子データとして本発明を説明したが、より一般的には、コンピュータや通信網での電子検索に適したハイパテキスト言語にフォーマット化されているものならどのようなデータにでも本発明は適用可能である。」と記載されている。) そして、引用発明と同一技術分野において、電子サーチ・検索に適したフォーマットとしてハイパー・テキスト・マークアップ言語(HTML)を用いること、及び、電子データで表されている表示の内容を、ハイパー・テキスト・マークアップ言語(HTML)のフォーマットに自動的に変換して電子媒体に記録することは、周知な技術事項である。(例えば、1996年4月15日に頒布された刊行物である、日経MAC、1996年5月号の第114?117ページに記載されていた記事「Internet Square」(日経BP社発行。)、1995年10月15日に頒布された刊行物である、情報処理学会論文誌、第36巻、第10号の第2371?2379ページに記載されていた論文「電子ニュースのダイジェスト自動作成」(著者、佐藤円、佐藤理史、篠田陽一。社団法人情報処理学会発行。)参照。)引用発明において図12に示されている一覧表示を表す電子データを、上記周知な技術事項を採用して、電子サーチ・検索に適したフォーマットでのものとすること、及び、ハイパー・テキスト・マークアップ言語(HTML)のフォーマットに自動的に変換して電子媒体に記録することに格別な困難性は認められない。してみると、引用発明において、「電子サーチ・検索に適したフォーマットでのものとすること」、及び、「前記電子データの表示をハイパテキストフォーマットに自動的に変換し、ハイパテキスト画像入り写しを形成するステップと、前記ハイパテキスト画像入り写しを電子媒体に記録するステップとを含む」ように構成することは、当業者が容易に成し得たことである。 なお、本願発明における「ハイパテキスト画像入り写し」との表現は、単に、元の電子データの表示をハイパテキストフォーマットに変換した結果として得られる情報であり、元の電子データの表示に含まれていた画像が変換後の情報にも入っており、元の電子データの表示を原本と見たとき、この原本とは別の写しの情報であることを意味しているだけであるから、この本願発明の「ハイパテキスト画像入り写し」なるものは、引用発明において図12に示されている一覧表示を表す電子データを、ハイパー・テキスト・マークアップ言語(HTML)のフォーマットに変換した結果として当然得られる情報に対応するものということができる。 <相違点2について> ビデオプログラムすなわちビデオの映像が、画像フレームを所定の速度で連続して表示したときに実物であるかのように画像が連続的に変化することを視覚に訴えるものであることは、引用発明が対象としている映画などのビデオ映像それ自体がもともと有していた性質であったから、また、本願優先権主張日前の技術常識でもあったから、引用発明におけるビデオ映像も、「前記画像フレームを所定の速度で連続して表示したときに実物であるかように画像が連続的に変化することを視覚に訴えるものであ」るものといえ、該相違点2は格別なものとはいえない。 また、本願発明の構成によってもたらされる効果も、引用発明及び公知技術から当業者であれば予測することができた程度のものであって、格別のものとは認められない。 したがって、本願発明は、引用発明及び公知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 6. むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって、その余の請求項については検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-04-15 |
結審通知日 | 2009-04-20 |
審決日 | 2009-05-01 |
出願番号 | 特願平9-188840 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 辻本 泰隆 |
特許庁審判長 |
田口 英雄 |
特許庁審判官 |
立川 功 真木 健彦 |
発明の名称 | 電子サーチ・検索に適したフォーマットでのビデオプログラム圧縮表現自動提供方法 |
代理人 | 臼井 伸一 |
代理人 | 越智 隆夫 |
代理人 | 岡部 正夫 |
代理人 | 朝日 伸光 |
代理人 | 本宮 照久 |
代理人 | 加藤 伸晃 |