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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04M
管理番号 1203340
審判番号 不服2006-28142  
総通号数 118 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-12-14 
確定日 2009-09-10 
事件の表示 特願2004-252828「情報通信端末」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 3月16日出願公開、特開2006- 74215〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本件出願は、平成16年8月31日の出願であって、平成18年11月9日付けで拒絶査定され、同年12月14日に審判請求がなされたものであり、当審において平成21年4月14日付けで拒絶理由が通知され、同年6月17日付けで意見書の提出と共に手続補正があったものである。
本件出願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成21年6月17日付けで補正された明細書および図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。

(本願発明)
「【請求項1】
表示手段、該表示手段に表示を行うための表示情報に係る表示関連情報を含む情報を非接触で受信する受信手段、前記表示関連情報を含む情報を接触により受信するための装置側端子、前記表示情報を記憶する装置側記憶手段、及び、表示情報を表示するように表示手段を制御する装置側制御部を有する付属表示装置と、
前記付属表示装置を着脱自在に装着するための端末本体側装着手段、前記付属表示装置の装着状態を検知する装着検知手段、前記表示関連情報を記憶する端末本体側記憶手段、前記付属表示装置に前記表示関連情報を非接触で送信する送信手段、前記付属表示装置が装着されているときに前記装置側端子と接触して表示関連情報を送信するための端末本体側端子、及び、前記端末本体側記憶手段から読み出した表示関連情報を、前記装着検知手段の検知結果によって、前記送信手段と前記端末本体側端子のいずれかに選択的に伝達する端末本体側制御部を有する情報通信端末本体と
を備え、
前記端末本体側制御部は、電源容量情報または電界強度情報の少なくとも一つを含む前記表示関連情報を、情報通信端末本体の更新タイミングで、前記前記送信手段又は前記端末本体側端子から、前記付属表示装置に送信させ、
前記装置側制御部は、前記装着検知手段の検知結果に基づいて、非装着時において、前記表示手段の一部の領域に前記表示関連情報に係る表示情報を表示させ、他の領域に前記装置側記憶手段に記憶された前記表示情報を表示させることを特徴とする情報通信端末。」


2.引用例に記載された発明
(1)当審の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2004-172728号公報(以下、「引用例」という。)には、「携帯電話機」として、図面と共に次の記載がある。

イ.「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、操作部が携帯電話機本体から脱着可能な携帯電話機に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、携帯電話機の利便性向上の点から、携帯電話機本体と表示操作部が脱着可能な構成となっているものが増えてきている。
通信相手の電話番号などの情報を入力する入力部を有する操作部が携帯電話機本体から着脱可能なことにより、当該電話機の使用者が受話部、送話部を耳、口から離さずに、通話中に入力部にメモなどのデータを入力することができる携帯電話機がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平9-321848号公報」(2頁19?32行)

ロ.「【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態について図1ないし図4を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施の形態に係る携帯電話機の概略構成を示したブロック図である。携帯電話機は、携帯電話機本体100と、携帯電話機本体100から分離可能に構成された表示操作部200とから構成される。
携帯電話機本体100は、アンテナ105を介して、基地局との間で無線信号を送受信する無線部(無線通信部)101と、CPU104に制御され、無線部101で受信した受信信号をスピーカ106に出力し、マイク107からの送信信号を無線部101に送出する制御部102とを備える。
【0009】
また、制御部102には、タイマーが備えられており、電波強度メッセージと親認識番号を表示操作部200へ送信すると同時に、このタイマ-を起動する。また、制御部102は、表示操作部200から正常受信メッセージと子認識番号を受信すると、タイマーを停止する。
また、制御部102は、禁止手段として機能し、無線通信部によって携帯電話機本体100と表示操作部200との間で無線通信が行えない場合に、所定の時間経過後、無線通信が可能となるまで、携帯電話機本体100を入力操作禁止状態とする。
【0010】
また、携帯電話機本体100は、通話キー、終話キー、通信相手の電話番号などを入力する入力部111と、短縮番号などのデータを記憶するメモリ103とを備えている。
さらに携帯電話機本体100は、表示操作部200とデータを送受する送受信部108と、携帯電話機本体100を動作させる電池109と、操作部200と携帯電話機本体100とを電気的に接続する接続端子110とを備えている。
【0011】
表示操作部200は、通話キー、終話キー、アルファベット(QWERTY)キーなどを有する入力部201と、入力したデータや携帯電話機本体100から受信したデータを表示する表示部202と、電話番号やメールアドレス、スケジュールなどを記憶するメモリ203と、メモリ203および送受信部205を制御するCPU204とを備えている。
また、表示操作部200は、携帯電話機本体100とデータを送受する送受信部205と、表示操作部200を動作させる電池206と、操作部200の電源をオン/オフする電源スイッチ207と、アラームを鳴動させるためのスピーカ209と、携帯電話機本体100と電気的に接続する接続端子208とを備えている。
【0012】
次に、本実施の形態の携帯電話機の動作について説明する。
携帯電話機本体100と表示操作部200が一体となっている場合に、携帯電話機本体100の電源オンまたは電源オフは、表示操作部200に設けられた電源スイッチ207を操作することによりオン/オフできるようになっている。なお、携帯電話機本体100の送受信部108だけは、電源スイッチ207のオン/オフに関わらず電源が供給され続ける。
携帯電話機本体100と表示操作部200が分離している場合に、表示操作部200の電源オンまたは電源オフは、表示操作部200に設けられた電源スイッチ207を操作することによりオン/オフできるようになっている。
【0013】
同様に、携帯電話機本体100と表示操作部200が分離している場合に、携帯電話機本体100と表示操作部200の電源オンまたは電源オフは、表示操作部200に設けられた電源スイッチ207を操作することによりオン/オフできるようになっている。なお、携帯電話機本体100の送受信部108だけは、電源スイッチ27のオン/オフに関わらず電源が供給され続ける。また、携帯電話機本体100だけでは電源オンまたは電源オフをすることができないようになっている。
【0014】
携帯電話機本体100の接続端子110と、表示操作部200の接続端子208とが接触することにより、携帯電話機本体100と表示操作部200は接続され、互いにデータのやり取りができるようになる。
携帯電話機本体部100の送受信部108と、操作部200の送受信部205とがブルートゥースによる信号を送受信することにより、携帯電話機本体100と操作部200との間でデータがやりとりされる。なお、送受信部108、205ともに、近距離無線通信のブルートゥース・モジュールで構成されるものとする。」(3頁10行?4頁17行)

ハ.「【0018】
図2は、携帯電話機の外観を示した図である。携帯電話機本体100には、上部にスピーカ106が下部にマイク107が配置されている。
スピーカ106とマイク107との間には、着脱可能に構成された表示操作部200が配置されている。この表示操作部200には、その表面に入力部201と表示部202とが配置されている。
入力部201は、通話キー、終話キー、アルファベット(QWERTY)キーなどの携帯電話機や電話帳などを操作するために使用者が操作するキーで構成され、表示部202には入力部201から入力したデータや携帯電話機本体100から受信したデータを表示する液晶表示器などの表示器で構成されている。
【0019】
表示操作部200は、その表面に送受信部205を有している。この送受信部205は、携帯電話機本体100の送受信部108とデータの送受信を行う。送受信部205は、ブルートゥースによるデータを送受信するためのブルートゥース・モジュールにより構成されている。
また、表示操作部200は、その表面かつ携帯電話機本体100の接続端子110と対向する位置に、接続端子208を有している。
【0020】
携帯電話機本体100は、その表面に入力部(テンキーパッド)111、送受信部108と、接続端子110を有している。
送受信部108は、操作部200の送受信部205とデータの送受信を行い、ブルートゥースによるデータを送受信するためのブルートゥース・モジュー.ルにより構成されている。
携帯電話機による通話中に、携帯電話機の使用者が何らかのメモを取る必要が生じたときは、表示操作部200のアルファベット(QWERTY)キーなどのキーを操作することにより、キー操作の内容がCPU204によりメモリ203に記憶される。
接続端子110は、表示操作部200が携帯電話機本体100と一体となっているとき、相互のデータのやりとりをする接続端子110と、接続端子208を介して携帯電話機本体100から表示操作部200への電源を供給し充電することもできる。
【0021】
次に、図3および図4を参照しながら、携帯電話機本体100と表示操作部200とのメッセージのやり取りについて説明する。図3は、表示操作部200の表示部202の表示例を示した図である。図4は、携帯電話機本体100と表示操作部200とのメッセージのやり取りの流れを示した図である。
携帯電話機本体100は、電波強度を無線部101から得ると、アンテナピクト(図3参照)を表示するための電波強度メッセージを親認識番号とともに表示操作部200に対して送信する(ステップS401)。このメッセージは、定期的に送信されるようになっている。
表示操作部200は、携帯電話機本体100からの電波強度メッセージを受信すると、携帯電話機本体100に対して送信されてきたメッセージを正常に受信したことを、正常受信メッセージに子認識番号とともに返信し、アンテナピクトを更新、表示する(ステップS402)。」(5頁1?42行)


上記引用例の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、
まず、引用例の「携帯電話機」は、上記イ.【0001】に「操作部が携帯電話機本体から脱着可能な携帯電話機」とあり、上記ロ.図1には「携帯電話機は、携帯電話機本体100と、携帯電話機本体100から分離可能に構成された表示操作部200とから構成される。」とあって、上記ハ.【0018】図2をも参照すれば、
「携帯電話機本体100」と、これと着脱可能に構成された「表示操作部200」とを備えたものであり、「携帯電話機本体100」は「表示操作部200」を装着するための『本体側装着手段』(図2の「携帯電話機本体100」内面凹部が相当)を有するということができる。
また、上記ロ.【0011】および図1によれば、その「表示操作部200」は、携帯電話機本体100から受信したデータを表示する「表示部202」、電話番号やメールアドレス、スケジュールなどを記憶する「メモリ203」と、メモリ203および送受信部205を制御する「CPU204」とを備えているものであり、
さらに、携帯電話機本体100とデータを送受する「送受信部205」と、携帯電話機本体100と電気的に接続する「接続端子208」とを備えているものである。
また、上記ロ.【0008】、【0010】および図1によれば、その「携帯電話機本体100」は、「CPU104」のほか、短縮番号などのデータを記憶する「メモリ103」、表示操作部200とデータを送受する「送受信部108」と、操作部200と携帯電話機本体100とを電気的に接続する「接続端子110」とを備えているものである。
そして、上記ロ.【0014】の、「携帯電話機本体100の接続端子110と、表示操作部200の接続端子208とが接触することにより、携帯電話機本体100と表示操作部200は接続され、互いにデータのやり取りができるようになる。
携帯電話機本体部100の送受信部108と、操作部200の送受信部205とがブルートゥースによる信号を送受信することにより、携帯電話機本体100と操作部200との間でデータがやりとりされる。なお、送受信部108、205ともに、近距離無線通信のブルートゥース・モジュールで構成されるものとする。」なる記載によれば、
上記「接続端子208」、「接続端子110」は、データを「接触」によりやりとりするための手段であって、
また、「ブルートゥース」は「近距離無線通信」とあり、無線による非接触の通信方式であるのは技術常識であるから、
上記「送受信部205」、「送受信部108」は、データを『非接触』でやりとりするための手段であるということができる。
そして、上記ロ.【0012】、【0013】の記載も参酌すれば、
この「接続端子208」、「接続端子110」を経由した、「接触」でのデータのやりとりは、携帯電話機本体100と表示操作部200が「一体となって」、「接続され」ている場合、すなわち『装着されているとき』に行われるものであるのは明らかであり、
また、この「送受信部205」、「送受信部108」を経由した、「非接触」でのデータのやりとりは、携帯電話機本体100と表示操作部200が「分離している場合」、すなわち『非装着時において』行われるものであるのも明らかである。
また、上記ハ.【0021】および図3、4によれば、
上記「携帯電話機本体100」と「表示操作部200」との間でやり取りされる表示を行うためのデータの具体例として、
「電波強度メッセージ」が、「携帯電話機本体100」側から「表示操作部200」に対して「定期的」に送信され、「表示部202」の『右上隅』に、これに対応する「アンテナピクト」(図3参照)が表示されることが記載されており、
ここで、この「定期的」な「電波強度メッセージ」の送信は、「表示操作部200」の装着の状態に応じて、「送受信部108、又は接続端子110」から行われることになるのも明らかなことである。

以上をまとめると引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

(引用発明)
「 表示部202、該表示部202に表示を行うためのデータを非接触でやりとりする送受信部205、前記データを接触によりやりとりする接続端子208、データを記憶するメモリ203、及び、CPU204を有する表示操作部200と、
前記表示操作部200を着脱可能に装着するための本体側装着手段、データを記憶するメモリ103、前記表示操作部200と前記データを非接触でやりとりする送受信部108、前記表示操作部200が装着されているときに前記接続端子208と接触してデータをやりとりするための接続端子110、及び、CPU104を有する携帯電話機本体100と
を備え、
携帯電話機本体100は、電波強度メッセージを、定期的に、前記送受信部108、又は前記接続端子110から、前記表示操作部200に対して送信し、
前記表示操作部200は、前記表示部202の右上隅に前記電波強度メッセージに対応するアンテナピクトを表示する
携帯電話機」



3.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。
まず、引用発明の「携帯電話機」は、通信端末の一種であって、引用例の上記ロ.【0011】には「メールアドレス」などともあって、情報通信機能も有するものであるから、本願発明の「情報通信端末」に相当する。
また、引用発明の「表示操作部200」は、「携帯電話機本体100」に付属する表示装置であるから、本願発明の「付属表示装置」に相当する。
また、引用発明の「表示部202」、「送受信部205」における受信部分、「接続端子208」、「メモリ203」、「CPU204」は、「表示操作部200」(付属表示装置)側の構成要素であるから、それぞれ本願発明の「表示手段」、「受信手段」、「装置側端子」、「装置側記憶手段」、「装置側制御部」に相当する。
また、引用発明の「本体側装着手段」、「メモリ103」、「送受信部108」における送信部分、「接続端子110」、「CPU104」は、「携帯電話機本体100」(情報通信端末本体)側の構成要素であるから、それぞれ本願発明の、「端末本体側装着手段」、「端末本体側記憶手段」、「送信手段」、「端末本体側端子」、「端末本体側制御部」に相当する。
また、引用発明の「着脱可能」とは、着脱が自在に可能なのであるから、「着脱自在」ということができ、
「データ」は「情報」であって、
「データ」の「接触」または「非接触」での「やりとり」とは、双方向の通信の一方に着目すれば、「表示操作部200」(付属表示装置)側における「受信」、および「携帯電話機本体100」(情報通信端末本体)側における「送信」にあたる。

以上をまとめると、本願発明と引用発明は、以下の点で一致し、また相違する。

(一致点)
「 表示手段、該表示手段に表示を行うための情報を非接触で受信する受信手段、前記情報を接触により受信するための装置側端子、情報を記憶する装置側記憶手段、及び、装置側制御部を有する付属表示装置と、
前記付属表示装置を着脱自在に装着するための端末本体側装着手段、情報を記憶する端末本体側記憶手段、前記付属表示装置に前記情報を非接触で送信する送信手段、前記付属表示装置が装着されているときに前記装置側端子と接触して情報を送信するための端末本体側端子、及び、端末本体側制御部を有する情報通信端末本体と
を備えた
情報通信端末。」

(相違点)
(1)「情報」の点に関し、
本願発明は「付属表示装置」側においては、「表示情報に係る表示関連情報を含む情報」が受信されて、「前記表示情報」が「装置側記憶手段」に記憶され、「情報通信端末本体」側においては、「前記表示関連情報」が、「端末本体側記憶手段」に記憶され読み出されて送信されるのに対し、
引用発明においては、単に「データ」がやりとりされるのであって、「メモリ103」、「メモリ203」に記憶されるデータとの関連も不明な点。

(2)「装置側制御部」に関し、
本願発明は「表示情報を表示するように表示手段を制御する」のに対し、
引用発明の「CPU204」はその様な構成を有しない点。

(3)「情報通信端末本体」に関し、
本願発明は「前記付属表示装置の装着状態を検知する装着検知手段」を有し、「端末本体側制御部」が「前記端末本体側記憶手段から読み出した表示関連情報を、前記装着検知手段の検知結果によって、前記送信手段と前記端末本体側端子のいずれかに選択的に伝達する」のに対し、
引用発明の「携帯電話機本体100」はそのような検知手段について記載が無く、「CPU104」の動作も不明な点。

(4)端末本体側の制御動作に関し、
本願発明は「前記端末本体側制御部は、電源容量情報または電界強度情報の少なくとも一つを含む前記表示関連情報を、情報通信端末本体の更新タイミングで、前記前記送信手段又は前記端末本体側端子から、前記付属表示装置に送信」させるのに対し、
引用発明は「携帯電話機本体100は、電波強度メッセージを、定期的に、前記送受信部108、又は前記接続端子110から、前記表示操作部200に対して送信」する点。

(5)装置側の制御動作に関し、
本願発明は「前記装置側制御部は、前記装着検知手段の検知結果に基づいて、非装着時において、前記表示手段の一部の領域に前記表示関連情報に係る表示情報を表示させ、他の領域に前記装置側記憶手段に記憶された前記表示情報を表示させる」のに対し、
引用発明は「前記表示操作部200は、前記表示部202の右上隅に前記電波強度メッセージに対応するアンテナピクトを表示する」点。


上記相違点(1)の「情報」の点について検討する。
一般に、情報通信端末のような通信手段および表示手段を備えた情報処理機器において、表示手段に実際に表示される情報を生成するためには、これに「関連」した種々の情報が必要であって、通信手段を介してこのような「表示関連情報」を含めた情報が送受信され、メモリなどの記憶手段にも記憶されて、読み出され表示されるのは周知技術である。
このような周知技術の具体例としては、例えば、情報通信端末が電子メールやWebのホームページを受信表示する際には、テキスト(文字コード)として送信されてきた電子メールやホームページデータ(そこには、テキスト本文以外にも、例えばフォーマットや書式指定などの「表示関連情報」も含まれる)を一旦受信して端末本体のメモリに蓄積した後、これを読み出して、例えばビットマップのフォントデータ等により変換制御して、表示情報として表示されるものである。
また、当審の拒絶理由通知において挙げた、特開2001-144884号公報(図3、【0029】、【0050】、【0051】等)、特開2003-264642号公報(図3、【0051】?【0063】等)も、同様な周知技術の記載がある。
このような周知技術を、引用発明の情報通信端末本体と付属表示装置間における通信及び記憶表示に適用するのは、当業者でれば適宜になし得ることであるから、相違点(1)は格別のものではない。

上記相違点(2)の「装置側制御部」について検討する。
明示的に図面等に記載されるかはともかく、一般に情報機器の表示部に表示を行うためには、表示制御のための制御部が存在するのは当然のことである。
例えば、当審の拒絶理由通知において挙げた、特開2004-120056号公報(図3の「3-1制御部B」)、特開2001-144884号公報(図3の「制御部21」)には、このような制御部の明示があり、
引用例においても、すくなくとも、「送受信部205」経由のデータを「表示部202」に表示するには、「CPU204」が介在するしかないことは引用例図1の接続関係よりも明らかであるから、結局引用発明の「CPU204」は、「表示部202」に対して、「表示情報を表示するように表示手段を制御する」ということができるものであって、相違点(2)も格別のことではない。

上記相違点(3)の「情報通信端末本体」の有する「装着検知手段」、およびその「検知結果」による「選択的な伝達」に関し検討する。
一般に、有線通信手段と無線通信手段を有してなる通信装置において、有線接続を検知して有線通信手段を選択して通信を行うことは、特開2003-280778号公報(【請求項1】、【請求項2】)、特開2004-172774号公報(【請求項1】、【請求項2】)、特開2003-319485号公報(図1,2)、特開2003-337551号公報(【要約】の【解決手段】)、特開2002-108521号公報(図1?3)などにあるように周知の技術である。
このような周知技術を、引用発明の携帯電話機に適用するに特段の阻害要因はなく、引用発明の「携帯電話機本体100」において、「接続端子208と接触してデータをやりとりするための接続端子110」(端末本体側端子)は有線通信手段の構成要素であり、「データを非接触でやりとりする送受信部108」(送信手段)は無線通信手段を構成するものであって、「表示操作部200」(付属表示装置)が装着されれば、端子が接触して有線接続が成立するのは技術常識であるから、
引用発明の「携帯電話機本体100」(情報通信端末本体)に、有線接続を検知する手段として「表示操作部200」(付属表示装置)の装着状態を検知する「装着検知手段」を設け、「CPU104」(端末本体側制御部)が、「メモリ103」(端末本体側記憶手段)から読み出したデータ(表示関連情報)を、前記装着検知手段の検知結果によって、「送受信部108」(送信手段)と「接続端子110」(端末本体側端子)のいずれかに「選択的に伝達する」ようになすことは、当業者であれば容易になし得たものである。
したがって、相違点(3)も格別のことではない。

相違点(4)の端末本体側の制御動作について検討する。
まず、制御動作の主体につき検討するに、上記相違点(2)の表示部の制御についての検討で述べたと同様に、引用発明の「携帯電話機本体100」においても、実質的な制御の主体は「CPU104」(端末本体側制御部)であると認められるから、制御動作の主体の相違は格別のことではない。
つぎに、引用発明の「電波強度メッセージ」につき検討するに、「電波」の「強度」とは電界の強度に対応するものであり、「メッセージ」とは当然に「情報」であるから、引用発明の「電波強度メッセージ」とは、本願発明の「電源容量情報または電界強度情報の少なくとも一つ」における「電界強度情報」に相当するものである。そしてこの「電波強度メッセージ」に対応する「アンテナピクト」が受信側の「表示操作部200」(付属表示装置)において更新、表示されるのであるから、引用発明の「電波強度メッセージ」は結局「表示関連情報」と言い得るものである。
さらに、引用発明の「定期的に」の点について検討するに、引用例の記載(上記ハ.【0021】末尾)によれば、引用発明における「定期的」とは、前記「電波強度メッセージ」の「携帯電話機本体100」(情報通信端末本体)からの送信のタイミングのことであって、この結果、前記のように受信側の「表示操作部200」(付属表示装置)において「アンテナピクト」が更新、表示されるのであるから、結局のところ、送信側の「情報通信端末本体」のタイミングで更新表示されるものであって、「情報通信端末本体の更新タイミングで」と言い得ることである。
したがって、相違点(4)は格別のものではない。

最後に、相違点(5)の装置側の制御動作について検討する。
まず、装置側の制御動作の主体につき検討するに、上記相違点(2)、(4)についての判断で述べたように、引用発明の「表示操作部200」における実質的な制御の主体は「CPU204」(装置側制御部)であると認められるから、装置側の制御動作においても主体の相違は格別のことではない。
また、引用発明の「表示部202の右上隅」とは「表示手段の一部の領域」であって、「アンテナピクト」は実際に表示部に表示される表示情報であるから、引用発明の「電波強度メッセージに対応するアンテナピクト」は「表示関連情報に係る表示情報」である。
そして、本願発明の「前記装着検知手段の検知結果に基づいて、非装着時において、」の点について検討するに、
「装着検知手段の検知結果」とは「付属表示装置」の装着の状態を検知した結果であるから、相違点(3)でのべたような周知技術を適用して「装着検知手段」を引用発明に設けた場合に、その検知結果に基づいて表示の態様を変更制御する程度のことは、当業者が適宜になし得ることであり、また、表示の内容と表示領域の配分は、当業者が必要に応じて定め得る設計的事項に過ぎないから、「他の領域に前記装置側記憶手段に記憶された前記表示情報を表示させる」ことも適宜のことに過ぎず、格別のことでもない。
したがって、全体としての相違点(5)も格別のことではない。

そして、本願発明の効果も引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲のものである。
また、当審の拒絶理由通知に対する意見書を参酌しても、上記認定を覆すに足りるものは見あたらない。


4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-07-13 
結審通知日 2009-07-14 
審決日 2009-07-27 
出願番号 特願2004-252828(P2004-252828)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 萩原 義則  
特許庁審判長 石井 研一
特許庁審判官 山本 春樹
小宮 慎司
発明の名称 情報通信端末  
代理人 小林 久夫  
代理人 山東 元希  
代理人 佐々木 宗治  
代理人 大村 昇  
代理人 高梨 範夫  
代理人 安島 清  

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