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審決分類 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 F23N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F23N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F23N
管理番号 1203347
審判番号 不服2007-8550  
総通号数 118 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-03-23 
確定日 2009-09-10 
事件の表示 平成10年特許願第197988号「燃焼機器」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 1月18日出願公開、特開2000- 18576〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.本願の経緯

本件出願(以下「本願」という。)は,平成10年6月29日の出願であって,平成19年2月22日付け(発送日:同年2月27日)で拒絶査定がなされ,これに対し,同年3月23日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに,同年4月20日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。

2.平成19年4月20日付け手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の結論]

平成19年4月20日付けの手続補正(以下「本件補正」という)を却下する。

[理由]

(1)補正後の本願発明

本件補正により,特許請求の範囲の請求項1は,次のように補正された。
「燃焼機器の燃焼により発生した排気を外部に導くための排気通路には該排気通路外の空気と連通する通孔が設けられていて,その通孔を出入りする気体の温度を検出する排気あふれ温度検出手段が設けられ,該排気あふれ温度検出手段により検出される気体の温度が温度センサによって得られるデータではない値で与えられる設定のしきい値よりも高いときには上記通孔から排気が漏れているものと検知して燃焼運転の安全動作を行う機能を備えた燃焼機器であって,データ格納部には燃焼熱量が大きくなるに従って上記しきい値を高くするための燃焼熱量としきい値との関係がしきい値可変設定用データとして格納されており,燃焼運転時における燃焼熱量を上記しきい値可変設定用データに照らし合わせて燃焼機器の燃焼熱量が大きくなるに従って高くする方向に前記燃焼熱量の大きさに応じて上記しきい値を可変設定するしきい値可変設定部が設けられていることを特徴とする燃焼機器。」

(2)補正の適否

前記補正は,請求項1に記載した発明を特定するための必要な事項である「設定のしきい値」について,「温度センサによって得られるデータではない値で与えられる」との限定を付加するものである。
そして,補正後の請求項1に係る発明は,補正前の請求項1に係る発明と,産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで,本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について,以下に検討する。

(3)引用文献記載の発明

原査定の拒絶の理由に引用された,特開昭55-35807号公報(以下「引用文献」という)には,図面と共に,次の事項が記載されている。

a.「(1)本体と排気筒との中間に逆流止め板と空気吸入口とを備えた燃焼器具において,前記空気吸入口部分に温度検知素子を取付けて溢れ排気ガスの温度を測定し,この測定温度と基準温度との差から溢れる排気ガスの量を判別することを特徴とする燃焼器具における溢れ検知方法。」(特許請求の範囲)

b.「(3)基準温度として排気筒内の排気ガスの温度を用いることを特徴とする特許請求の範囲第(1)項記載の燃焼器具における溢れ検知方法。」(特許請求の範囲)

c.「この発明は,燃焼器具の排気筒が閉塞したかどうかを迅速,確実に判別することができるようにした燃焼器具における溢れ検知方法に関するものである。
第1図はこの発明の検知対象である排気筒を有する燃焼器具の断面略図で,1は燃焼器具の本体,2は排気筒,3は逆流止め板,4は空気吸入口,5は煙突である。
このような燃焼器具においては,本体1で燃焼が行われ,その排気ガスGは逆流止め板3の外周を経て,空気吸入口4から吸入した空気Aとともに排気筒2から外部へ排出される。」(第1ページ左下欄第18行-同右下欄第9行)

d.「第1図において,排気ガスGが空気吸入口4から溢れると,これが少量の場合は同一場所から吸込まれる室内の空気Aによつて冷却されて温度が下がるが,溢れ量が増加すると吸込まれる空気量は減少し,溢れる排気ガスGの温度は上昇する。そして,温度測定は,排気ガスGの組成,濃度および温度の影響もない。この発明は上記の点から溢れる排気ガスの温度を測定し,これと室温または逆流止め板3における排気ガス温度と比較し,その差の大小によつて溢れ量の大小を判別するものである。
第2図はこの発明の一実施例を示すもので,符号1?4は第1図と同じであり,10は溢れた排気ガスの温度測定のための温度検知素子で,空気吸入口4の排気筒2側の内面に取付けられている。11は室温測定のための温度検知素子で,室内の適宜の個所に取付けられている。12は比較器で,両温度検知素子10,11の出力の差を出力Pとして出すもので,この出力Pで適宜の指示計や記録計を駆動する。
測定に際しては,上記のように,温度検知素子10を排気筒2に取付け(他方の温度検知素子11は測定器本体に取付けておけばよく,測定の都度,設置する必要はない),比較器12の出力の大小をみれば,溢れの排気ガス量の大小を直ちに知ることができる。」(第2ページ右上欄第13行-同左下欄第18行)

e.「なお,上記の実施例はいずれも室温を基準として,溢れ排気ガス温度との差をみたが,逆流止め板3の近くに他の温度検出素子11を設置し,これにより得られた排気筒内の排気ガスの温度を基準としてもよい。また,各温度検出素子10,11はいずれもブリツジ回路の一辺に入るようにして用いればよく,このこと自体は公知であるのでその図示は省略する。
以上詳細に説明したように,この発明は排気ガスの溢れを検知するのに,空気吸入口部分に温度検知素子を設けて,溢れ排気ガスの温度を測定し,この温度と基準温度(室内温度または排気筒中の排気ガス温度)との差をみて行うようにしたので,温度の測定のみによつて溢れ量を知ることができる。したがつて,排気ガスの組成や濃度,あるいは温度等に影響されずに,簡便に燃焼器具の溢れ排気ガスの量を知ることができる利点を有する。」(第3ページ右上欄第2行-同第18行)

そして,上記記載e及び第1図の記載事項から,空気吸入口4からは,空気Aが吸入されており,温度検知素子10が,空気吸入口を出入りする,溢れ排気ガス及び吸入される空気Aの両方の気体の温度を検知可能であることは,明らかである。

また,排気筒中の排気ガス温度は,燃焼器具の燃焼熱量に応じて変化するものであって,排気筒中の排気ガス温度に対応して変化する基準温度が,燃焼器具の燃焼熱量が大きくなるに従って,高い値となることは,明らかである。

そこで,これらの記載事項及び図示事項を総合すると,引用文献には,次の発明(以下「引用文献記載の発明」という。)が記載されている。

「燃焼器具の燃焼により発生した排気ガスを外部に導くための排気筒には,該排気筒外の空気と連通する空気吸入口が設けられていて,その空気吸入口を出入りする気体の温度を検出する温度検知素子が設けられ,該温度検知素子により測定される気体の温度と,他の温度検知素子により得られた排気筒中の排気ガス温度を基準温度とし,該温度検知素子により測定される気体の温度と,該他の温度検知素子により測定される基準温度との差によって,上記空気吸入口から排気ガスが漏れていることを検知し適宜の指示計や記録計を駆動する燃焼器具であって,燃焼器具の燃焼熱量が大きくなるに従って基準温度が高い値とされる燃焼器具。」

(4)対比

本件補正発明と引用文献記載の発明とを対比する。

引用文献記載の発明の「燃焼器具」は,本件補正発明の「燃焼機器」に相当し,同様に,「排気ガス」は「排気」に,「排気筒」は,「排気通路」に,「空気吸入口」は「通孔」に,「温度検知素子」は「排気あふれ温度検出手段」に,それぞれ,相当する。
また,引用文献記載の発明の「適宜の指示計や記録計を駆動する」ことと,本件補正発明の「燃焼運転の安全動作を行う」ことは,ともに,排気が漏れていることが検知された際に,「異常対応を行う」点で共通している。
そして,引用文献記載の発明の「基準温度」と,本件補正発明の「しきい値」は,ともに,排気が漏れていることを検知する際に,排気あふれ温度検出手段によって検出される排気温度と比較される「比較温度」である点で共通している。

したがって,両者は,

「燃焼機器の燃焼により発生した排気を外部に導くための排気通路には該排気通路外の空気と連通する通孔が設けられていて,その通孔を出入りする気体の温度を検出する排気あふれ温度検出手段が設けられ,該排気あふれ温度検出手段により検出される気体の温度と比較温度とにより上記通孔から排気が漏れているものと検知して異常対応を行う機能を備えた燃焼機器であって,燃焼機器の燃焼熱量が大きくなるに従って比較温度を高くする方向に設定される燃焼機器。」

である点で一致し,次の点で相違している。

[相違点1]
異常対応が,本件補正発明では「燃焼運転の安全動作を行う」のに対して,引用文献記載の発明では「適宜の指示計や記録計を駆動する」ものではあるものの,指示計や記録計を駆動することによって,具体的にどのような動作がなされるのか明らかでない点。

[相違点2]
排気が漏れているものと検知する際に,排気あふれ温度検出手段によって検出される排気温度と比較される比較温度が,本件補正発明では「温度センサによって得られるデータではない値で与えられる設定のしきい値」であるのに対して,引用文献記載の発明では「他の温度検知素子により得られた排気筒中の排気ガス温度」であって,さらに,本件補正発明は「データ格納部には燃焼熱量が大きくなるに従って上記しきい値を高くするための燃焼熱量としきい値との関係がしきい値可変設定用データとして格納されており,燃焼運転時における燃焼熱量を上記しきい値可変設定用データに照らし合わせて燃焼機器の燃焼熱量が大きくなるに従って高くする方向に前記燃焼熱量の大きさに応じて上記しきい値を可変設定するしきい値可変設定部が設けられている」のに対して,引用文献記載の発明では,このような構成を有していない点。

(5)判断

上記相違点について検討する。

・相違点1について

燃焼機器の排気通路から排気が漏れていることが検知された際に,燃焼運転の安全動作を行うことは,本願出願前周知の技術である(例えば,特開平4-174207号公報,特開平4-143513号公報参照。)。

そうしてみると,排気が漏れていることが検知された際の異常対応として,引用文献記載の発明の「適宜の指示計や記録計を駆動する」に際し,燃焼運転の安全動作を行うようにすることは,上記周知技術に倣って,当業者が容易に想到し得たことである。

・相違点2について

燃焼機器の排気通路から排気があふれているものと検知する際に,逆流流出部(通孔)近傍の温度が,燃焼器具の燃焼性能によって決まり,測定によって得られた所定温度を越えたか否か判断し,燃焼状態に応じて排気のあふれ状態を監視することは,本願出願前周知の技術である(例えば,特開平4-174207号公報,特開平4-143513号公報参照。)。
そして,上記周知技術における「所定温度」は,「測定によって得られた」ものであって,燃焼機器の動作時における実測値ではなく,あらかじめ得られたデータであるから「温度センサによって得られるデータでない値で与えられる設定のしきい値」といえる。
また,燃焼性能が大きくなるに従って,所定温度が高い値となることは,当業者にとって自明の事項であって,所定温度を設定するために,燃焼性能と所定温度データとの関係を設定用データとしてデータ格納部に格納しておくことは,慣用手段にすぎない。
さらに,選択された燃焼性能を,所定温度を設定するための設定用データに照らし合わせて,燃焼性能に応じて所定温度を可変設定することも,当業者にとって自明の事項である。

そうしてみると,排気が漏れているものと検知する際に,排気あふれ温度検出手段によって検出される排気温度と比較される比較温度として,引用文献記載の発明の「他の温度検知素子により得られた排気筒中の排気ガス温度」に代えて,「温度センサによって得られるデータではない値で与えられる設定のしきい値」を用いるとともに,「データ格納部には燃焼熱量が大きくなるに従って上記しきい値を高くするための燃焼熱量としきい値との関係がしきい値可変設定用データとして格納されており,燃焼運転時における燃焼熱量を上記しきい値可変設定用データに照らし合わせて燃焼機器の燃焼熱量が大きくなるに従って高くする方向に前記燃焼熱量の大きさに応じて上記しきい値を可変設定するしきい値可変設定部が設けられている」ようにすることは,上記周知技術に倣って,当業者が容易に想到し得たことである。

そして,本件補正発明の効果も,引用文献記載の発明及び周知技術から当業者が予測し得た程度のものであって,格別のものとはいえない。

したがって,本件補正発明は,引用文献記載の発明及び周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(6)むすび

以上のとおり,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について

(1)本願発明

本件補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成19年1月11日付けの手続補正書により補正された明細書の,特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,次のとおりのものと認める。

「燃焼機器の燃焼により発生した排気を外部に導くための排気通路には該排気通路外の空気と連通する通孔が設けられていて,その通孔を出入りする気体の温度を検出する排気あふれ温度検出手段が設けられ,該排気あふれ温度検出手段により検出される気体の温度が設定のしきい値よりも高いときには上記通孔から排気が漏れているものと検知して燃焼運転の安全動作を行う機能を備えた燃焼機器であって,データ格納部には燃焼熱量が大きくなるに従って上記しきい値を高くするための燃焼熱量としきい値との関係がしきい値可変設定用データとして格納されており,燃焼運転時における燃焼熱量を上記しきい値可変設定用データに照らし合わせて燃焼機器の燃焼熱量が大きくなるに従って高くする方向に前記燃焼熱量の大きさに応じて上記しきい値を可変設定するしきい値可変設定部が設けられていることを特徴とする燃焼機器。」

(2)引用文献記載の発明

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献,及び,その記載事項は,前記2.(3)に記載したとおりである。

(3)対比・判断

本願発明は,前記「2.[理由]」で検討した本件補正発明において,「設定のしきい値」について,「温度センサによって得られるデータではない値で与えられる」との限定を省くものである。

そうすると,本願発明の構成要件全てを含み,さらに他の要件を付加したものに相当する本件補正発明が,前記「2.[理由](5)判断」に示したとおり,引用文献に記載された発明及び周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,同様の理由により,本願発明も引用文献に記載された発明及び周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび

以上のとおり,本願発明は,引用文献記載の発明及び周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条第2項の規定により,特許を受けることができない。

したがって,本願は,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-07-10 
結審通知日 2009-07-14 
審決日 2009-07-27 
出願番号 特願平10-197988
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F23N)
P 1 8・ 57- Z (F23N)
P 1 8・ 575- Z (F23N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松下 聡  
特許庁審判長 岡本 昌直
特許庁審判官 豊島 唯
長崎 洋一
発明の名称 燃焼機器  
代理人 五十嵐 清  

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