• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E21D
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 E21D
管理番号 1203361
審判番号 不服2007-34588  
総通号数 118 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-12-25 
確定日 2009-09-10 
事件の表示 特願2000-386796「コンクリートセグメントのグラウトホール」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 7月 5日出願公開、特開2002-188395〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本願は、平成12年12月20日の出願であって、平成19年11月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月25日に拒絶査定に対する審判の請求がなされるとともに、平成20年1月23日に手続補正がなされたものである。
その後、前置報告書の内容について、審判請求人の意見を求めるために平成21年2月27日付けで審尋がなされ、同年4月30日に当該審尋に対する回答書が提出された。

【2】平成20年1月23日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成20年1月23日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
[1]補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、以下のとおり、補正前のものから補正後のものに補正された。

(補正前)
「内外面に多条ネジとして略一定肉厚のネジ山部を形成しているネジ山付き合成樹脂管と、このネジ山付き合成樹脂管の一端の内面に螺合している合成樹脂製栓と、前記ネジ山付き合成樹脂管の他端の内面に螺合している逆止弁とからなる合成樹脂組立て体を、前記合成樹脂製栓がコンクリートセグメントの内面側になるようにコンクリートセグメントの厚さ方向に沿って埋設して、雌ネジ管を有する空洞として形成するグラウトホールであり、前記合成樹脂製栓は、前記ネジ山付き合成樹脂管の内面の多条ネジに噛み合う多条ネジを外面に形成しているネジ部と、このネジ部の一端に設けており、ネジ部の外周径よりも大きな径である略つば状に形成している円板部と、この円板部を設けたネジ部の付け根部分に装着した弾性材の密閉用環状体とからなり、前記ネジ山付き合成樹脂管の前記合成樹脂製栓が螺合している一端には、その周縁部に、前記合成樹脂製栓のネジ部と円板部との付け根部分から円板部の外周面に向かって傾斜しており、前記密閉用環状体が密接する傾斜面を形成していることを特徴とするグラウトホール。」

(補正後)
「内外面に多条ネジとして略一定肉厚のネジ山部を形成しているネジ山付き合成樹脂間管と、このネジ山付き合成樹脂管の一端の内面に螺合している合成樹脂製栓と、前記ネジ山付き合成樹脂管の他端の内面に螺合している逆止弁とからなる合成樹脂組立て体を、前記合成樹脂製栓がコンクリートセグメントの内面側になるようにコンクリートセグメントの厚さ方向に沿って埋設して、雌ネジ管を有する空洞として形成するグラウトホールであり、前記合成樹脂製栓は、前記ネジ山付き合成樹脂管の内面の多条ネジに噛み合う多条ネジを外面に形成しているネジ部と、このネジ部の一端に設けており、ネジ部の外周径よりも大きな径である略つば状に形成している円板部と、この円板部を設けたネジ部の付け根部分に形成した装着溝に装着した弾性材の密閉用環状体とからなり、前記ネジ山付き合成樹脂管の前記合成樹脂管の前記合成樹脂性栓が螺合している一端には、その周縁部に、前記合成樹脂製栓のネジ部と円板部との付け根部分から円板部の外周面に向かって傾斜しており、前記密閉用環状体が密接する傾斜面を形成しているとともに傾斜面に連結して水平部と垂直部があり、前記装着溝の下方の空隙が形成されていることを特徴とするグラウトホール。」

[2]検討
上記補正は、補正前の「ネジ山付き合成樹脂管の傾斜面」に「傾斜面に連結して水平部と垂直部があり、前記装着溝の下方の空隙が形成されていること」という特定事項を追加する補正を含むものである。
請求人は、その補正の根拠について「本件出願時の図面、特に図2に詳細に明示されている構成を具体的に表現したもので、その補正は新規事項の追加に相当しないもの」である(平成20年1月23日提出の、審判請求書の請求の理由を補正する手続補正書の2.参照)と主張し、また補正された発明について「押しつぶされた密閉用環状体7は、図2に示すように傾斜面2bをコンクリートセグメント6のコンクリートに押し付けることになる。その際、装着用溝3eの下方に空隙3fがあるので合成樹脂栓が移動できる。」(同4.参照)とその作用・効果を主張している。
上記特定事項の追加について検討する。
請求人は上記の通り、その補正の根拠として主に図2を挙げているが、図2は図1のA部拡大断面図(即ち部分の断面を示す図面)であることから、全体の構成を把握するために図1を参酌する。
そうすると、上記特定事項は、ネジ山付き合成樹脂管の断面の左側部分については当てはまるものの、同断面の右側部分については、該当する構成が見あたらない。
さらに、これらの部分の螺合状態を示し、かつ断面図ではない表記も含まれている図3を参酌すると、ネジ山付き合成樹脂管の断面の左側部分に空隙のように表記された部分(本件補正により図番3fとして追加されるとともに、明細書の【0027】段落に、その作用効果が追加された。)は、装着用溝3eの下方に一様に形成されているわけではなく、左側から右側に向かうにつれて、ねじ山の切り上がりとともに減少し、ほぼ中央で消滅していることがわかる。
すなわち、上記特定事項に記載されたような「空隙」は、各図面から明らかなものではない。
したがって本件補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものでない。
そうであるから、上記特定事項に基づく上記作用・効果に関する主張も採用することができない。

以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり、決定する。


【3】本願発明について
平成20年1月23日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、願書に最初に添付された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのもの(以下「本願発明」という。)である。(上記【2】[1]の(補正前)参照。)
[1]引用刊行物
1.原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である、特許第2987319号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(イ)「【請求項1】内面が多条ネジのネジ山を形成し、外面が内面のネジ山に対応して内面のネジ山よりやや大きい径のネジ山を形成するように成形された略一定肉厚のネジ山部を有するネジ山付き合成樹脂管の一端に合成樹脂製栓を螺合により取付け・・・た、合成樹脂組立体を、合成樹脂製栓がコンクリートセグメントの内面側になるように、コンクリートセグメントの厚さ方向に沿って埋設して雌ネジ管を有する空洞を形成してあることを特徴とするコンクリートセグメントのグラウトホール。」(特許請求の範囲)
(ロ)「図2は図1で示される各合成樹脂製成形品の組立体をコンクリートセグメントの厚さ方向に沿って埋設してグラウトホールを形成した例の断面図である。
この例ではネジ山付き合成樹脂管1は、一端のネジ山開始点2a、2b、2cから螺旋状にネジ山を成形した3条ネジのネジ部3とそれに続く円管部と円錐部5とからなり、円管部外面に凸条4を持ち、円錐部5は十字形に切り裂かれた形に成形されている。
合成樹脂製栓6は円板6aと3条ネジのネジ部6bよりなるよう成形されている。」(段落【0012】?【0014】)
(ハ)「これら三種の合成樹脂製成形品を使用して、合成樹脂製栓6をネジ山付き合成樹脂管1に螺合し、・・・合成樹脂製の組立体を作る。」(段落【0016】)
(ニ)「・・・ネジ山付き合成樹脂管1の円錐部5の十字形に切り裂かれた各片が裏込め材の逆流を防止し・・・」(段落【0020】)
(ホ)図1(b)には合成樹脂製栓の例の斜視図が記載されており、円板6aが略つば状に形成されていることが見て取れる。

これらの記載を総合すると、引用文献1には以下の発明が記載されているものと認められる。
「内面が多条ネジのネジ山を形成し、外面が内面のネジ山に対応して内面のネジ山よりやや大きい径のネジ山を形成するように成形された略一定肉厚のネジ山部を有するネジ山付き合成樹脂管の一端に合成樹脂製栓を螺合により取付け、前記ネジ山部に続いて円管部と円錐部が設けられており、円錐部に裏込め材の逆流を防止するための十字形に切り裂かれた片を有する合成樹脂組立体を、合成樹脂製栓がコンクリートセグメントの内面側になるように、コンクリートセグメントの厚さ方向に沿って埋設して雌ネジ管を有する空洞を形成してあるコンクリートセグメントのグラウトホールであり、合成樹脂製栓は略つば状に形成している円板と、ネジ山付き合成樹脂管に螺合する多条ネジのネジ部を有するグラウトホール。」(以下「引用文献1記載の発明」という。)
2.同じく特開平7-279590号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(ヘ)「【0009】
【実施例】以下に本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図3,図4に示すように、プレキャストコンクリート製の複数のトンネル用セグメント1(他物の一例)を互いに径方向及び軸芯方向に連結固定してトンネルHを造成してある。前記セグメント1はトンネル周方向に沿って湾曲した形状で、そのほぼ中心部には厚み方向に貫通する状態のグラウト注入孔1a(流体が流通可能な空間部の一例)を設けてあり、トンネルHの横穴周壁Xの造成が完了した時点で、グラウト材をそのグラウト注入用孔1a内に注入して、横穴周壁Xの外周面と土壌との間にグラウト材を充填し、土壌の崩壊を防止するようにしてある。セグメント1のグラウト注入用孔1aの両開口部のうち、径方向内方側の開口部周りには、台形雌ねじ部2(以下、雌ねじ部2と略称する。図1参照)を備えるダクタイル鋳鉄製のプラグ栓取付け金具3を、その雌ねじ部2をグラウト注入用孔1aと同芯にした状態で埋設してあり、グラウト材をそのグラウト注入用孔1a内に注入した後に、前記雌ねじ部2にプラグ栓5の台形雄ねじ部4(以下、雄ねじ部4と略称する。図1参照)を螺合してグラウト注入用孔1aを塞ぐようにしてある。
【0010】
図1に示すように、前記プラグ栓取付け金具3は円筒状のもので、雌ねじ部2の前記一端部側にはプラグ栓5を受けるための台座8を形成してある。なお、このプラグ栓取付け金具3は鋳造以外に鋼管に雌ねじ部2を機械加工して成形することもできる。
【0011】
前記プラグ栓5は樹脂製で、図2に示すように、プラグ栓取付け金具3の雌ねじ部2に前記雄ねじ部4を螺合した状態で、雌ねじ部2の雌ねじ孔10を閉塞可能に、雄ねじ部4の軸芯方向一端部を、円形のフランジ部9を備える閉塞壁状に形成して構成してある。さらに、雄ねじ部4と雌ねじ部2の螺合に伴って、雌ねじ孔10の開口周部12とフランジ部9とに挟圧されることにより、前記開口周部12とフランジ部9との間をシールするゴム製Oリング(弾性シール部材の一例)11を、フランジ部9と雄ねじ部4の軸芯方向の基端部との間に外嵌し、フランジ部9と前記雌ねじ孔10の開口周部12との挟圧によるOリング11の拡径を一定以内に抑える拡径抑制部9aを、雄ねじ部4の軸芯方向先端側に向けてフランジ部9に突設するとともに、拡径抑制部9aの突出量を、Oリング11の肉厚よりも小さく設定してある。」
(ト)図面(特に図2参照)には、フランジ部9の径が雄ねじ部4の外径よりも大きいこと、及びゴム製Oリング11が密接する開口周部12に傾斜面が形成されていることが見て取れる。

[3]対比
そこで、本願発明と引用文献1記載の発明とを比較すると、引用文献1記載の発明の「ネジ山付き合成樹脂管」、「合成樹脂製栓」、「裏込め材の逆流を防止するための十字形に切り裂かれた片を有する円錐部」、「合成樹脂組立体」及び「円板」は、それぞれ本願発明の「ネジ山付き合成樹脂管」、「合成樹脂製栓」、「逆止弁」、「合成樹脂組立て体」及び「円板部」に相当する。

したがって両者は、
「内外面に多条ネジとして略一定肉厚のネジ山部を形成しているネジ山付き合成樹脂管と、このネジ山付き合成樹脂管の一端の内面に螺合している合成樹脂製栓と、前記ネジ山付き合成樹脂管の他端に設けた逆止弁とからなる合成樹脂組立て体を、前記合成樹脂製栓がコンクリートセグメントの内面側になるようにコンクリートセグメントの厚さ方向に沿って埋設して、雌ネジ管を有する空洞として形成するグラウトホールであり、前記合成樹脂製栓は、前記ネジ山付き合成樹脂管の内面の多条ネジに噛み合う多条ネジを外面に形成しているネジ部と、このネジ部の一端に設けており、略つば状に形成している円板部とからなるグラウトホール。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]本願発明では、逆止弁をネジ山付き合成樹脂管の他端の内面に螺合しているのに対して、引用文献1記載の発明では、その結合の仕方が不明な点。
[相違点2]本願発明は、合成樹脂製栓の円板部の径がネジ部の外周径よりも大きく、かつ、この円板部を設けたネジ部の付け根部分に弾性材の密閉用環状体を装着し、前記ネジ山付き合成樹脂管の前記合成樹脂製栓が螺合している一端には、その周縁部に、前記合成樹脂製栓のネジ部と円板部との付け根部分から円板部の外周面に向かって傾斜しており、前記密閉用環状体が密接する傾斜面を形成しているのに対して、引用文献1記載の発明は、そのような構成を有していない点。

(4)判断
[相違点1]について
使用時に一体化して用いる2つの部材を、螺合により結合することは、ごく普通に行われている周知・慣用技術であり、引用文献1記載の発明の逆止弁をネジ山付き合成樹脂管の他端の内面に螺合することは、当業者が適宜決定しうる事項である。
[相違点2]について
引用文献2には、コンクリートセグメントのグラウトホールの止水性を向上するために「プラグ栓(本願発明の合成樹脂製栓に相当)のフランジ部(同、円板部に相当)の径が雄ねじ部の外径よりも大きくし、プラグ栓のネジ部の付け根部分にゴム製Oリング(同、密閉用環状体に相当)を装着し、開口周部にフランジ部の外周面に向かって傾斜しており、ゴム製Oリングが密接する傾斜面を形成」すること(以下、「引用文献2記載の発明」という。)が記載されている。
引用文献1記載の発明において、グラウトホールの止水性を向上させるために引用文献2記載の発明を適用することは、当業者が容易になし得る事項である。
また、本願発明の作用効果も、各引用文献記載の発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用文献1記載の発明及び引用文献2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1記載の発明及び引用文献2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-07-10 
結審通知日 2009-07-14 
審決日 2009-07-28 
出願番号 特願2000-386796(P2000-386796)
審決分類 P 1 8・ 561- Z (E21D)
P 1 8・ 121- Z (E21D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 本郷 徹河原 英雄  
特許庁審判長 神 悦彦
特許庁審判官 草野 顕子
山口 由木
発明の名称 コンクリートセグメントのグラウトホール  
代理人 久門 知  
代理人 久門 享  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ