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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1203426
審判番号 不服2008-7281  
総通号数 118 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-03-25 
確定日 2009-09-09 
事件の表示 特願2000-318290「多面配置型太陽電池装置が用いられた標識柱」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 4月26日出願公開、特開2002-124696〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成12年10月18日に出願したものであって、平成19年10月24日付け及び平成20年1月23日付けで手続補正がなされたが、同年2月13日付けで同年1月23日付け手続補正について補正却下の決定がなされると共に、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年3月25日付けで拒絶査定不服審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。

2 本件補正についての却下の決定
(1)結論
本件補正を却下する。

(2)理由
ア 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1につき、補正前(平成19年10月24日付け手続補正後のもの。)の
「少なくとも2つの太陽電池パネルを有し、該太陽電池パネルはそれぞれ異なる方向に向けて設置されている多面配置型太陽電池装置が用いられた標識柱であって、支柱と、支柱の上端部に取り付けられた太陽電池部と支柱の側面部に取り付けられた標識部と支柱の下端部に取り付けられた基礎部により構成され、前記太陽電池部は少なくとも2つの太陽電池パネルを有し、該太陽電池パネルはそれぞれ異なる方向に向けて設置され、このそれぞれ異なる方向に向けて設置された少なくとも2つの太陽電池パネルで発電された電力でもって、支柱の側面部に取り付けられた標識部内に設けられた光源を発光させるようになされたことを特徴とする多面配置型太陽電池装置が用いられた標識柱。」

「少なくとも2つの太陽電池パネルを有し、該太陽電池パネルはそれぞれ異なる方向に向けて設置されている多面配置型太陽電池装置が用いられた標識柱であって、支柱と、支柱の上端部に取り付けられた太陽電池部と支柱の側面部に取り付けられた標識部と支柱の下端部に取り付けられた基礎部により構成され、支柱の上端部に取り付けられた前記太陽電池部は少なくとも2つの太陽電池パネルを有し、その2つの太陽電池パネルの内、1つは太陽光に直接照射されるように太陽電池部の表面に設置されると共に、年間を通して得られる電力が極大となる方向に向けて設置され、他の1つは、太陽光に直接照射されず、太陽光の散乱光及び反射光が照射されるように太陽電池部の裏面に設置されると共に、表面に設置された太陽電池パネルの方向と正反対の方向に向けて設置され、そしてかかる太陽電池部の表裏両面に設置された、太陽光に直接照射される表面の太陽電池パネルと、太陽光に直接照射されず、太陽光の散乱光及び反射光が照射される裏面の太陽電池パネルとで発電された電力でもって、支柱の側面部に取り付けられた標識部内に設けられた光源を発光させるようになされたことを特徴とする多面配置型太陽電池装置が用いられた標識柱。」
に補正する内容を含むものである。

イ 補正の目的
上記補正の内容は、補正前の請求項1の「2つの太陽電池パネル」の設置位置及び設置方向について限定するものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当すると認められる。

ウ 独立特許要件
本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて検討する。

(ア)刊行物の記載
a 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平6-348211号公報(以下「引用例1」という。)には、以下の記載がある。

「【特許請求の範囲】
【請求項1】太陽電池の受光面を外部に露見させたエネルギー受板と、発光ランプを設けた交通標識表示部を備えた交通標識本体とを組み合わせて構成され、上記エネルギー受板の太陽電池からの電気エネルギーを、大容量のパワーコンデンサに蓄積し、このパワーコンデンサから昇圧回路に電気エネルギーを供給して昇圧させて上記発光ランプを点灯駆動させるようにしたソーラ自光式交通標識。
【請求項2】上記エネルギー受板は上記交通標識本体の上部に設置され、太陽光に対して傾度調整可能になっている請求項1記載のソーラ自光式交通標識。」、
「【0008】
【実施例】以下、本発明の一実施例について、図面に基づいて説明する。図1,図2は本発明の自光式交通標識の一実施例を示している。Aはエネルギー受板であり、複数の太陽電池1を、各々の受光面1aが外部に露見するようにアレイ型に配置して構成されており、その枠体2の両端を交通標識本体Bの上方に設けた台座3にヒンジ部6によって枢支させて取り付け、受光面1aが適正に太陽の方向に向かうように傾度調整できるようになっている。
【0009】交通標識本体Bは、支柱4の上部に交通標識表示部5を取り付けており、この交通標識表示部5は、その内部に後述するパワーコンデンサCと、発光ランプLを内蔵させた構造となっており、発光ランプLが点灯すれば、交通標識表示部5が内部より照らされて、交通標識が点灯表示されるようになっている。このような本発明は、発光ランプLとしては、蛍光灯や白熱ランプの他、発光ダイオードが使用でき、特に後者の発光ダイオードを使用したときには、消費電力を著しく軽減できる。また、パワーコンデンサCとしては、環境汚染の問題もなく、安全で軽量かつ大容量の電気2重層コンデンサが望ましく採用される。」

b 同じく、特開平11-340491号公報(以下「引用例2」という。)には、以下の記載がある。

「【0018】
平地又はビルの屋上などの平坦地に、この実施の形態における太陽電池装置10が複数組設置される。1つの太陽電池装置10は、図1に示すように、上記した両面入射型太陽電池素子を複数個備えた太陽電池パネル1…が支持架台2に取り付けられている。互いの太陽電池パネル1…は電気的に接続されている。
・・・
【0021】
また、支持架台2の太陽電池パネル1…が取り付けられる取り付け部が30?60度程度の所定の角度になるように、前側脚部2aと後側脚部2bとの長さが決められている。従って、支持架台2の取り付け部に太陽電池パネル1…を取り付けると、太陽電池パネル1…は地面に対して30?60度の角度を有して設置される。
【0022】
図3に示すように、太陽光は、太陽電池パネル1…の表面側に与えられると共に、開口部3を通り地面により反射され、太陽電池パネル1…の裏面側へ与えられる。
【0023】
このように、太陽電池パネル1…の表面側には太陽からの直接光が照射される。また、開口部3を透過した太陽光は、設置面で反射し、太陽電池パネル1…の裏面側に与えられる。
【0024】
この結果、太陽電池パネル1…の表裏面に光が与えられることになり、両面光入射型太陽電池素子の出力電力の増大を図ることができる。」

(イ)引用発明
a 上記(ア)aによれば、引用例1には、次の発明が記載されているものと認められる。

「太陽電池の受光面を外部に露見させたエネルギー受板と、発光ランプを設けた交通標識表示部を備えた交通標識本体とを組み合わせて構成され、上記エネルギー受板の太陽電池からの電気エネルギーを、大容量のパワーコンデンサに蓄積し、このパワーコンデンサから昇圧回路に電気エネルギーを供給して昇圧させて上記発光ランプを点灯駆動させるようにしたソーラ自光式交通標識であって、上記エネルギー受板は上記交通標識本体の上方に設けた台座に取り付けられ、太陽光に対して傾度調整可能になっており、上記交通標識本体は、支柱の上部に上記交通標識表示部を取り付けたものである、ソーラ自光式交通標識。」(以下「引用発明」という。)

(ウ)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。

a 引用発明の「太陽電池の受光面を外部に露見させたエネルギー受板」、「支柱」、「発光ランプ」及び「交通標識表示部」は、本願補正発明の「『太陽電池パネル』を有する『太陽電池部』」、「支柱」、「標識部内に設けられた光源」及び「標識部」に相当し、引用発明の「ソーラ自光式交通標識」は、本願補正発明の「太陽電池装置が用いられた標識柱」に相当する。
また、引用発明は、「エネルギー受板の太陽電池からの電気エネルギーを、大容量のパワーコンデンサに蓄積し、このパワーコンデンサから昇圧回路に電気エネルギーを供給して昇圧させて上記発光ランプを点灯駆動させるようにした」ものであるから、「太陽電池パネルで発電された電力でもって、標識部内に設けられた光源を発光させるようになされた」点で、本願補正発明と一致する。

b 以上によれば、両者は、
「太陽電池パネルを有する太陽電池装置が用いられた標識柱であって、支柱と太陽電池部と標識部とにより構成され、前記太陽電池部は太陽電池パネルを有し、太陽電池パネルで発電された電力でもって、支柱に取り付けられた標識部内に設けられた光源を発光させるようになされた太陽電池装置が用いられた標識柱。」
である点で一致し、下記(a)及び(b)の点で相違するものと認められる。

(a)本願補正発明では、支柱の上端部に太陽電池部が取り付けられ、支柱の側面部に標識部が取り付けられ、支柱の下端部に基礎部が取り付けられているのに対して、引用発明では、支柱の上部に標識部(交通標識表示部)が取り付けられた交通標識本体の上方に設けた台座に太陽電池部(エネルギー受板)が取り付けられたものであり、また、支柱の下端部に基礎部が取り付けられているのかどうか不明である点(以下「相違点1」という。)。

(b)本願補正発明は、「少なくとも2つの太陽電池パネルを有し、該太陽電池パネルはそれぞれ異なる方向に向けて設置されている多面配置型太陽電池装置が用いられ」、「その2つの太陽電池パネルの内、1つは太陽光に直接照射されるように太陽電池部の表面に設置されると共に、年間を通して得られる電力が極大となる方向に向けて設置され、他の1つは、太陽光に直接照射されず、太陽光の散乱光及び反射光が照射されるように太陽電池部の裏面に設置されると共に、表面に設置された太陽電池パネルの方向と正反対の方向に向けて設置され、そしてかかる太陽電池部の表裏両面に設置された、太陽光に直接照射される表面の太陽電池パネルと、太陽光に直接照射されず、太陽光の散乱光及び反射光が照射される裏面の太陽電池パネルとで発電」されるものであるのに対して、引用発明は、そのようなものでない点(以下「相違点2」という。)。

(エ)相違点についての判断
a 相違点1について
標識柱において、太陽電池部及び標識部をどのような位置に取り付けるかは、当業者が設計上適宜定めることのできる程度の事項というべきであり、支柱の上端部に太陽電池部を取り付け、支柱の側面部に標識部を取り付けることに格別の困難はない(例えば、原査定の拒絶の理由に引用した特開平7-140921号公報【0007】及び図1にみられるとおりである。)。
また、道路標識等に用いられる標識柱において、支柱の下端部に基礎部を取り付けることは、必要に応じて適宜なされる慣用手段にすぎない。
したがって、引用発明において、相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得る設計変更程度のことである。

b 相違点2について
引用発明は、太陽電池からの電気エネルギーを利用して発光ランプを点灯駆動させるものであるから、太陽光の有効利用を図ることは、当業者が当然考慮することであって、年間を通して得られる電力が極大となる方向に向けて太陽光に直接照射されるように太陽電池パネルを太陽電池部の表面に設置することは、当業者が適宜なし得る程度のことである。
しかるところ、上記(ア)bによれば、引用例2には、太陽からの直接光が太陽電池パネルの表面側に照射されるようにし、設置面で反射した太陽光が太陽電池パネルの裏面側に与えられるようにして、太陽電池パネルの表裏面に光が与えられることにより、太陽電池素子の出力電力の増大を図る技術が開示されているものと認められる。
してみると、引用発明の太陽電池部においても、出力電力の増大を図るために、太陽電池部の表裏面において与えられる光を発電に利用できるようにすることは、引用例2開示の上記技術に基づいて当業者が容易に想到し得る程度のことであり、そのために、太陽電池部の裏面側にも太陽電池パネルを設置することは、当業者にとって、まず想起し得る程度のことというべきである(例えば、原査定の拒絶の理由に引用した実願昭62-52540号(実開昭63-159854号)のマイクロフィルムの実用新案登録請求の範囲に「基板の表裏面に太陽電池の受光素子を一面に貼着してなる」と記載されるとおりである。)。
そして、引用発明において、年間を通して得られる電力が極大となる方向に向けて太陽光に直接照射されるように太陽電池パネルを太陽電池部の表面に設置すると共に、太陽電池部の裏面側にも太陽電池パネルを設置することにより、相違点2に係る本願補正発明の構成、すなわち、「少なくとも2つの太陽電池パネルを有し、該太陽電池パネルはそれぞれ異なる方向に向けて設置されている多面配置型太陽電池装置が用いられ」、「その2つの太陽電池パネルの内、1つは太陽光に直接照射されるように太陽電池部の表面に設置されると共に、年間を通して得られる電力が極大となる方向に向けて設置され、他の1つは、太陽光に直接照射されず、太陽光の散乱光及び反射光が照射されるように太陽電池部の裏面に設置されると共に、表面に設置された太陽電池パネルの方向と正反対の方向に向けて設置され、そしてかかる太陽電池部の表裏両面に設置された、太陽光に直接照射される表面の太陽電池パネルと、太陽光に直接照射されず、太陽光の散乱光及び反射光が照射される裏面の太陽電池パネルとで発電」されるとの構成を得ることができるものと認められる。
したがって、引用発明において、相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得る程度のことである。

(オ)小括
以上の検討によれば、本願補正発明は、引用発明及び引用例2開示の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3 本願発明について
(1)本願発明
上記のとおり、本件補正は却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成19年10月24日付けで補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項2に記載された事項によって特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記2(2)アにおいて、補正前のものとして示したとおりのものである。

(2)判断
前記2(2)イのとおり、本件補正は、特許請求の範囲を減縮を目的としたものと認められる。
しかるところ、前記2(2)ウで検討したとおり、本願発明に係る特許請求の範囲を減縮したものである本願補正発明が、引用発明及び引用例2開示の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである以上、減縮前の本願発明も、本願補正発明と同様の理由により、引用発明及び引用例2開示の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用例2開示の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-06-30 
結審通知日 2009-07-07 
審決日 2009-07-21 
出願番号 特願2000-318290(P2000-318290)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加藤 昌伸  
特許庁審判長 服部 秀男
特許庁審判官 田部 元史
右田 昌士
発明の名称 多面配置型太陽電池装置が用いられた標識柱  

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