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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1203494
審判番号 不服2007-13383  
総通号数 118 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-05-08 
確定日 2009-09-08 
事件の表示 特願2001-351689「カラープロファイルを測定ないし換算する方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 8月23日出願公開、特開2002-237962〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯
本願は,平成13年11月16日(パリ条約による優先権主張2000年11月17日,ドイツ連邦共和国)の出願であって,平成18年5月30日付けで拒絶理由が通知され,これに対して同年12月6日に意見書が提出されるとともに,同日付けで手続補正がなされたところ,平成19年2月2日付けで拒絶査定がされ,これに対して同年5月8日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに,同日付けで手続補正がなされたものである。


第2 本願発明
1 補正後の発明
本願の特許請求の範囲の請求項1ないし18に係る発明は,平成19年5月8日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1ないし18に記載された事項により特定されるものと認められる,以下のとおりのものである。

「 【請求項1】 特定のプロセスパラメータの第1の集合について,次元m(mは自然数)のデバイスインディペンデントなプロセス空間Q(m)から次元n(nは自然数)のデバイスディペンデントなプロセス空間K’(n)への写像A’を決定することによってカラープロファイルを作成する方法において,
少なくとも1つの要素で特定のプロセスパラメータの第1の集合と異なる特定のプロセスパラメータの第2の集合についての,Q(m)から次元n(nは自然数)のデバイスディペンデントなプロセス空間K(n)への既知の写像Aと,K(n)からK'(n)への写像TKまたはQ(m)からそれ自体への写像TQのいずれかとの連結によって写像A’が表されることを特徴とする,カラープロファイルを作成する方法。
【請求項2】 前記デバイスディペンデントなプロセス空間が,デバイスディペンデントな印刷を表す色空間,または印刷前段階でのデバイスディペンデントな再現を表す色空間である,請求項1記載のカラープロファイルを作成する方法。
【請求項3】 前記デバイスインディペンデントなプロセス空間Q(m)が次元3を有している,請求項1または2記載のカラープロファイルを作成する方法。
【請求項4】 前記デバイスインディペンデントなプロセス空間Q(m)が[Lab]空間または[XYZ]空間である,請求項1から3までのいずれか1項記載のカラープロファイルを作成する方法。
【請求項5】 前記デバイスディペンデントなプロセス空間K(n)およびK'(n)が次元3,4,または4を超える次元を有している,請求項1から4までのいずれか1項記載のカラープロファイルを作成する方法。
【請求項6】 前記デバイスインディペンデントなプロセス空間K(n)およびK'(n)が,Cシアン,Mマゼンタ,Yイエロー,Kブラック,およびS特殊な色を有する[C,M,Y]空間,[C,M,Y,K]空間または[C,M,Y,K,S]空間である,請求項1から5までのいずれか1項記載のカラープロファイルを作成する方法。
【請求項7】 前記写像TKまたは前記写像TQが線形である,請求項1から6までのいずれか1項記載のカラープロファイルを作成する方法。
【請求項8】 前記デバイスディペンデントなプロセス空間K(n)のベースの要素とK'(n)のベースの要素がわずかしか異なっていない,請求項1から7までのいずれか1項記載のカラープロファイルを作成する方法。
【請求項9】 前記デバイスディペンデントなプロセス空間K(n)のベースとK'(n)のベースが1つの要素によってのみ互いに異なっている,請求項8記載のカラープロファイルを作成する方法。
【請求項10】 前記写像Aが,Q(m)の少なくとも1つの部分集合からK(n)の少なくとも1つの部分集合へ,アフィン写像として表現可能である,請求項1から9までのいずれか1項記載のカラープロファイルを作成する方法。
【請求項11】 前記アフィン写像Aの変位ベクトルが被印刷体の作用を表している,請求項10に記載のカラープロファイルを作成する方法。
【請求項12】 前記デバイスディペンデントなプロセス空間K(n)から前記デバイスディペンデントなプロセス空間K(n)への変換Rが追加的に行われる,請求項1から11までのいずれか1項記載のカラープロファイルを作成する方法。
【請求項13】 前記デバイスディペンデントなプロセス空間K’(n)の,分解Zi(iは自然数)によって得られた部分領域への写像A’が行われる,請求項1から12までのいずれか1項記載のカラープロファイルを作成する方法。
【請求項14】 写像A’のm個の関数値を決定するために,前記デバイスディペンデントなプロセス空間K’(n)の,前記分解Zi(iは自然数)によって得られた,前記プロセス空間のサブセットまたは一部で,前記デバイスインディペンデントなプロセス空間
Q(m)のインディペンデントなm個の点についてm回の測定が行われる,請求項13記載のカラープロファイルを作成する方法。
【請求項15】 前記分解Zi(iは自然数)によって得られたそれぞれの領域における写像A’がアフィン写像である,請求項13または14記載のカラープロファイルを作成する方法。
【請求項16】 m次元のデバイスインディペンデントなプロセス空間Q(m)からn次元のデバイスディペンデントなプロセス空間K’(n)への写像A’を用いて(n,mは自然数)カラープロファイルを作成する装置において,
既知のカラープロファイル,すなわちデバイスインディペンデントなプロセス空間Q(m)からデバイスディペンデントなプロセス空間K(n)への写像Aに基づいて,新しいカラープロファイル,すなわち写像A’を,K(n)からK’(n)への写像および/またはQ(m)からQ’(m)への写像を含む各写像の連結を表す計算規則によって作成する計算ユニット(55)を有していることを特徴とする,カラープロファイルを作成する装置。
【請求項17】 印刷前段階の装置において,請求項16記載の装置を有していることを特徴とする印刷前段階の機器。
【請求項18】 印刷機において,請求項16記載の少なくとも1つの装置を有していることを特徴とする印刷機。」

2 補正前の発明
上記補正前の,平成18年12月6日付けの手続補正による特許請求の範囲は,以下のとおりのものである。

「 【請求項1】 特定のプロセスパラメータの第1の集合について,次元m(mは自然数)のデバイスインディペンデントなプロセス空間Q(m)から次元n(nは自然数)のデバイスディペンデントなプロセス空間K’(n)への写像A’を決定することによってカラープロファイルを作成する方法において,
少なくとも1つの要素で特定のプロセスパラメータの第1の集合と異なる特定のプロセスパラメータの第2の集合についての,Q(m)から次元n(nは自然数)のデバイスディペンデントなプロセス空間K(n)への既知の写像Aと,K(n)からK'(n)への写像TKまたはQ(m)からそれ自体への写像TQのいずれかとの連結によって写像A’が表されることを特徴とする,カラープロファイルを作成する方法。
【請求項2】 前記デバイスディペンデントなプロセス空間が,デバイスディペンデントな印刷を表す,または印刷前段階でのデバイスディペンデントな再現を表す色空間である,請求項1記載のカラープロファイルを作成する方法。
【請求項3】 前記デバイスインディペンデントなプロセス空間Q(m)が次元3を有している,請求項1または2記載のカラープロファイルを作成する方法。
【請求項4】 前記デバイスインディペンデントなプロセス空間Q(m)が[Lab]空間または[XYZ]空間である,請求項1から3までのいずれか1項記載のカラープロファイルを作成する方法。
【請求項5】 前記デバイスディペンデントなプロセス空間K(n)およびK'(n)が次元3,4,または4を超える次元を有している,請求項1から4までのいずれか1項記載のカラープロファイルを作成する方法。
【請求項6】 前記デバイスインディペンデントなプロセス空間K(n)およびK'(n)が,Cシアン,Mマゼンタ,Yイエロー,Kブラック,およびS特殊な色を有する[C,M,Y]空間,[C,M,Y,K]空間または[C,M,Y,K,S]空間である,請求項1から5までのいずれか1項記載のカラープロファイルを作成する方法。
【請求項7】 前記写像TKまたは前記写像TQが線形である,請求項1から6までのいずれか1項記載のカラープロファイルを作成する方法。
【請求項8】 前記写像TKまたは前記写像TQが,0に近い値の小さな回転角と1に近いわずかな拡大率による線形変換によって表現される,請求項1から7までのいずれか1項記載のカラープロファイルを作成する方法。
【請求項9】 前記デバイスディペンデントなプロセス空間K(n)のベースとK'(n)のベースがわずかしか異なっていない,請求項1から8までのいずれか1項記載のカラープロファイルを作成する方法。
【請求項10】 前記デバイスディペンデントなプロセス空間K(n)のベースとK'(n)のベースが1つの要素によってのみ互いに異なっている,請求項9記載のカラープロファイルを作成する方法。
【請求項11】 前記写像Aが,Q(m)の少なくとも1つの部分集合からK(n)の少なくとも1つの部分集合へ,つまり局所的に,アフィン画像として表現可能である,請求項1から10までのいずれか1項記載のカラープロファイルを作成する方法。
【請求項12】 前記アフィン写像Aの変位ベクトルが被印刷体の作用を表している,請求項1から11までのいずれか1項記載のカラープロファイルを作成する方法。
【請求項13】 前記デバイスディペンデントなプロセス空間K(n)からそれ自体への追加の変換Rが行われる,請求項1から12までのいずれか1項記載のカラープロファイルを作成する方法。
【請求項14】 前記デバイスディペンデントなプロセス空間K’(n)の,分解Zi(iは自然数)によって得られた部分領域への写像A’が行われる,請求項1から13までのいずれか1項記載のカラープロファイルを作成する方法。
【請求項15】 写像A’のm個の関数値を決定するために,前記デバイスディペンデントなプロセス空間K’(n)の,前記分解Zi(iは自然数)によって得られた部分領域で,前記デバイスインディペンデントなプロセス空間Q(m)のインディペンデントなm個の点についてm回の測定が行われる,請求項14記載のカラープロファイルを作成する方法。
【請求項16】 前記分解Zi(iは自然数)によって得られたそれぞれの領域における写像A’がアフィン写像である,請求項14または15記載のカラープロファイルを作成する方法。
【請求項17】 m次元のデバイスインディペンデントなプロセス空間Q(m)からn次元のデバイスディペンデントなプロセス空間K’(n)への写像A’を用いて(n,mは自然数)カラープロファイルを作成する装置において,
既知のカラープロファイル,すなわちデバイスインディペンデントなプロセス空間Q(m)からデバイスディペンデントなプロセス空間K(n)への写像Aに基づいて,新しいカラープロファイル,すなわち写像A’を,K(n)からK’(n)への写像および/またはQ(m)からQ’(m)への写像を含む各写像の連結を表す計算規則によって作成する計算ユニット(55)を有していることを特徴とする,カラープロファイルを作成する装置。
【請求項18】 印刷前段階のデバイスにおいて,請求項17記載の装置を有していることを特徴とする印刷前段階の機器。
【請求項19】 印刷機において,請求項17記載の少なくとも1つの装置を有していることを特徴とする印刷機。」

3 補正の目的の適否についての判断
請求項2において「印刷を表す」を「印刷を表す色空間」とする補正は,印刷を表す,・・・色空間」との修飾関係を明りょうにしたものであるから,明りょうでない記載の釈明といえる。よって,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下,「平成18年法改正前特許法」という。)第17条の2第3項第4号(明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。))に規定される事項を目的としたものに該当する。
補正前の請求項8を削除する補正は,平成18年法改正前特許法第17条の2第4項第1号(請求項の削除)に規定される事項を目的とするものに該当する。なお,当該補正により,当該請求項以下の請求項において,その請求項の番号及び引用する請求項の番号を形式的に補正しているが,このような形式的な補正を認めない理由はない。
請求項8(補正前の請求項9)において「ベース」を「ベースの要素」とする補正,請求項10(補正前の請求項11)において「つまり局所的に,アフィン画像として」を「アフィン写像として」とする補正,請求項12(補正前の請求項13)において「プロセス空間K(n)からそれ自体への追加の変換Rが行われる」を「プロセス空間K(n)から前記デバイスディペンデントなプロセス空間K(n)への変換Rが追加的に行われる」とする補正,請求項14(補正前の請求項15)において「部分領域」を「前記プロセス空間のサブセットまたは一部」とする補正,請求項17(補正前の請求項18)において「デバイス」を「装置」とする補正は,それぞれ,平成18年5月30日付拒絶理由通知書において不明と指摘された事項を明りょうにしたものであるから,明りょうでない記載の釈明といえる。よって,平成18年法改正前特許法第17条の2第3項第4号(明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。))に規定される事項を目的としたものに該当する。
したがって,平成19年5月8日付け手続補正書による補正は,その目的において適法になされたものといえる。

そこで,当該補正後の本件出願が,原査定で指摘された拒絶の理由を解消しているかについて以下に検討する。


第3 原査定の要旨
原審では,平成18年5月30日付けで拒絶理由が通知され,その(理由1)は,特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない,というものであり,また(理由2)は,発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない,というものであって,その中で次のような指摘を行っている。

1 理由1について
(ア)「1.請求項1,17について
請求項1に記載された「特定のプロセスパラメータの第1のセット」,「次元m(mは自然数)のデバイスインディペンデントなプロセス空間Q(m)から次元n(nは自然数)のデバイスディペンデントなプロセス空間K'(n)への画像A'」及び「少なくとも1つの要素で特定のプロセスパラメータの第1のセットと区別される特定のプロセスパラメータの別のセット」,「Q(m)から次元n(nは自然数)のデバイスディペンデントなプロセス空間K(n)への既知の画像A」のそれぞれの定義が不明である。
請求項17に記載された「m次元のデバイスインディペンデントなプロセス空間Q(m)からn次元のデバイスディペンデントなプロセス空間K'(n)への画像A'」及び「デバイスインディペンデントなプロセス空間Q(m)からデバイスディペンデントなプロセス空間K(n)への画像A」の定義が不明である。
請求項1に「K(n)からK'(n)への画像TKまたはQ(m)からそれ自体への画像TQのいずれかとの連鎖によって画像A'が表される」と記載されているが,具体的にどのような構成であるのか不明である。
請求項17に「K(n)からK'(n)への画像および/またはQ(m)からQ'(m)への画像を含む各画像の連鎖を表す計算規則」の定義が不明である。」

(イ)「10.請求項13について
請求項13に記載された「それ自体への追加の変換R」の定義が不明である。」

2 理由2について
(ア)「1.【0013】について
【0013】に記載された「デバイスディペンデントなプロセス空間K(n)からデバイスディペンデントなプロセス空間K’(n)への画像TKとの連鎖」及び「デバイスインディペンデントなプロセス空間Q(m)からそれ自体への画像TQとの連鎖」のそれぞれの定義が不明である。」

(イ)「2.【0014】について
(中略)
【0014】に「測定された以前の色の[Lab]値のベースにおける変換TQについてのmxmマトリクスは,・・・最小になるように選択する」と記載されているが,具体的にどのような構成であるのか不明である。
【0014】に「変換TKを表すnxnマトリクスの2n-1個の別の項目を,以前の色の[Lab]値のベースにおけるm次元ベクトルの成分から求めることができる」と記載されているが,具体的にどのような構成であるのか不明である。」

(ウ)「5.【0017】について
【0017】に記載された「それ自体への追加の修正画像R」,「画像A,修正画像R,および変換TKの連鎖」及び「画像A,R,およびTKの連鎖」のそれぞれの定義が不明である。」

(エ)「8.【0022】について
- 【0022】に記載された内容全体が,対応する図4を参照しても,具体的にどのような構成であるのか不明である。」

また,原審では,この出願については,上記拒絶理由通知書に記載した理由によって拒絶すべきものである,として平成19年2月2日付けで拒絶査定がなされ,その「備考」欄には,上記拒絶理由の(理由1)及び(理由2)に関連して,次のように指摘している。

3 理由1について
(ア)「請求項1に「K(n)からK'(n)への写像TKまたはQ(m)からそれ自体への写像TQ」と記載されているが,具体的にどのような構成であるのか,依然として不明である。請求項17についても同様である。」

(イ)「請求項13に「それ自体への追加の変換R」の定義が,依然として不明である。」

4 理由2について
(ア)「【0014】に「測定された以前の色の[Lab]値のベースにおける変換TQについてのm×mマトリクスは,・・・最小になるように選択する」と記載されているが,具体的にどのような構成であるのか,依然として不明である。(特に「写像TK」及び「変換TQ」が具体的にどのように算出されるのか不明である。)」

(イ)「【0014】に「変換TKを表すn×nマトリクスの2n-1個の別の項目を,以前の色の[Lab]値のベースにおけるm次元ベクトルの成分から求めることができる」と記載されているが,具体的にどのような構成であるのか,依然として不明である。」

(ウ)「【0017】に記載された「それ自体への追加の修正写像R」,「修正画像R」の定義が,依然として不明である。」

(エ)「【0022】に記載された内容が,具体的にどのような構成であるのか依然として不明である。(【0022】に記載された「追加の写像Zi」の定義が不明である。また,「それぞれの分離した部分空間におけるm個の点のこれらのグループ各々について,本発明の方法では,図1の説明で詳しく述べたように,以前のカラープロファイルの対応するm個の点から写像TQを算出する変換マトリクスと変位が得られる。それに応じて部分空間について,K(n)からK’(n)への写像TKを表すマトリクスがそれぞれ算出される」と記載されているが,上記2つのマトリクスを具体的にどのように算出するのか不明である。)」


第4 当審の判断
前記「第2 1」に記載した補正後の発明,及び発明の詳細な説明の記載が,特許法第36条第6項第2号,及び第4項の規定を満たしているか否かについて,検討する。

1 「K(n)からK'(n)への写像TKまたはQ(m)からそれ自体への写像TQ」について(前記「第3 1(ア)」及び「第3 2(ア)」,「第3 2(イ)」,「第3 3(ア)」,「第3 4(ア)」,「第3 4(イ)」の指摘事項に対して)

(1)特許請求の範囲に記載された特許を受けようとする発明が明確であるか否かについて(特許法第36条第6項第2号関係)

本願の請求項1における「Q(m)からそれ自体への写像TQ」との記載からは,「写像TQ」がプロセス空間Q(m)から,同じプロセス空間Q(m)に向けての何らかの写像であることは把握できるものの,プロセス空間Q(m)内の,どのような点を,同プロセス空間Q(m)内の,どのような点に,どのような規則に基づいて写像するものであるのか,特許請求の範囲において何ら特定されていない。したがって,請求項1に係る発明において,「Q(m)からそれ自体への写像TQ」がどのような写像であるのか,明確でない。
また,方法発明である請求項1に係る発明の装置発明である請求項16についても,同様である。

この点について,審判請求人は,平成19年7月25日付けの手続補正書において,
「請求項1および請求項17(新請求項16)の「それ自体への写像TQ」とは「Q(m)」に向けての写像TQを意味します。Q(m)はm次元空間です。写像TQは,Q(m)の複数のm次元ベクトルの各々をQ(m)の他の(一般に,異なった)m次元ベクトルに関連付けることです。」
と説明している。
しかしながら,「写像TQ」が,プロセス空間「Q(m)」から,同プロセス空間「Q(m)」への写像であることは明確であるものの,「Q(m)の他の(一般に,異なった)m次元ベクトル」が,どのようなものであるのか,またそれが「Q(m)の複数のm次元ベクトルの各々」に対して,どのような関係にあるものであるのかについて,何ら明確に特定されていないから,「それ自体への写像TQ」が,どのような写像であるのか,依然として不明である。

さらに,平成20年11月12日付け回答書において,
「Q(m)からそれ自体の写像TQについては,二次元空間の例が図3,および段落0018から0021に詳細に記載されています。つまり,Q(m)からそれ自体の写像TQは同じプロセス空間Q(m)での写像,と言うことができます。」
と説明している。
しかしながら,図3及び段落【0018】ないし【0021】には,プロセス空間Q(m)において「頂点1,2,3,4をもつ正方形」が,「四角形1’,2’,3’,4’」に写像されるといった,一般的な写像の作用についての説明がなされているだけで,変換後の「四角形1’,2’,3’,4’」や「点1’,3’,4’」,「点1’,2’,4’」が,それぞれ,どのような四角形,どのような点であるのか,これらがどのように決められたものであるのか,といった「写像TQ」の技術的な意味については何ら記載されておらず,「それ自体への写像TQ」が,どのような写像であるのか,依然として不明であるといわざるを得ない。

したがって,請求項1における「K(n)からK'(n)への写像TKまたはQ(m)からそれ自体への写像TQ」との記載は,当該写像が具体的にどのようなものを表しているのか,依然として不明であるから,特許請求の範囲に記載された請求項1及び16に係る発明は明確とはいえず,本件出願は,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

(2)発明の詳細な説明の記載は,当業者が本願の発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるか否かについて(特許法第36条第4項関係)

前記「第4 1(1)」で検討したように,特許請求の範囲における「K(n)からK'(n)への写像TKまたはQ(m)からそれ自体への写像TQ」との記載が不明であるから,当該記載に関する発明の詳細な説明の記載を参酌することにする。

ア 「Q(m)からそれ自体への写像TQ」について
発明の詳細な説明には,段落【0014】及び【0018】ないし【0021】,図3に,当該事項に関する記載が認められる。

a 段落【0014】について
段落【0014】には「デバイスディペンデントなプロセス空間K’(n)から選ばれた値について,デバイスインディペンデントなプロセス空間Q(m)からデバイスインディペンデントな値を測定する。」との記載があるが,「選ばれた値」とは,何によって,どのように選ばれた,どのような値であるのか,また「測定する」とあるが,測定がどのように行われるものであるのか,不明である。

また,同段落には「デバイスインディペンデントなプロセス空間Q(m)のm個のインディペンデントな点を新たな色で測定することにより,および,以前の色のデバイスインディペンデントなプロセス空間Q(m)におけるm個の対応する点がわかっていることにより,線形変換TQを表す,m×mマトリクスのm×m個の未知の項目,および場合により変位ベクトルを計算することができる。そのためには,m×m個の未知数,ないし追加の変位がある場合には(m+1)×(m+1)個の未知数を含む,1次方程式の体系を解く。」との記載がある。
当該記載において,「プロセス空間Q(m)のm個のインディペンデントな点」とは,どのようにして選ばれた,どのようなm個の点であるのか,この場合の「インディペンデント」とは,どのような意味で用いられているのか(例えば,当該点が存在する空間が,デバイスインディペンデントであるという意味であるのか,m個の点が,相互に何らかのインディペンデントな関係にあるという意味であるのか等),不明である。
「以前の色」とは,どのような色を表しているのか,また「新たな色」とは,どのような関係にある色であるのか,不明である。
「以前の色のデバイスインディペンデントなプロセス空間Q(m)におけるm個の対応する点」とは,何に対して「対応する点」であるのか,当該「m個の対応する点」が,どのような点を表しているのか,不明である。
「mxmマトリクスのmxm個の未知の項目」や「変位ベクトル」を,「デバイスインディペンデントなプロセス空間Q(m)のm個のインディペンデントな点を新たな色で測定すること」,及び「以前の色のデバイスインディペンデントなプロセス空間Q(m)におけるm個の対応する点がわかっていること」から,具体的に,どのように計算することができるのか,不明である。
「m×m個の未知数,ないし追加の変位がある場合には(m+1)×(m+1)個の未知数を含む,1次方程式の体系」とは,どのようなものであって,どのように「解く」のか,不明である。

以上のとおり,段落【0014】の記載は明確ではなく,その記載からは,「写像TQ」の具体的な構成,その算出方法を,明確に理解することができない。

b 段落【0018】ないし【0021】及び図3について
段落【0018】ないし【0021】及び図3には,プロセス空間Q(m)において「頂点1,2,3,4をもつ正方形」が,「四角形1’,2’,3’,4’」に写像されるといった,一般的な写像の作用については記載されているものの,変換後の「四角形1’,2’,3’,4’」又は「点1’,3’,4’」,「点1’,2’,4’」が,それぞれ,どのような四角形又は点であるのか,これらが,どのように決められたものであるのか,といった当該「写像TQ」に関する事項が何ら記載されていない。よって,「写像TQ」の技術的意味(変換後の四角形や点がどのようなものを表すものであって,どのような規則の写像であるのか)や,具体的な算出方法などについては,依然として不明である。

以上のとおり,段落【0018】ないし【0021】及び図3の記載は明確ではなく,その記載からは,「写像TQ」の具体的な構成,その算出方法を,明確に理解することができない。

イ 「K(n)からK'(n)への写像TK」について
発明の詳細な説明には,段落【0014】に,当該事項に関する記載が認められる。

段落【0014】には「測定された以前の色の[Lab]値のベースにおける変換TQについてのmxmマトリクスは,実質的に,以前の色に基づいて新たな色を表すことができる割合を表している。したがって各項目は,変換マトリクスTKのブロックの項目と近似的に等しい。それぞれ追加の色についての別の2n-1個の項目を決定するため,1次式における新たな追加の色の[Lab]値と,以前の追加の色の[Lab]値,および[CMY]から選択した2つの色の[Lab]値とを関連づける。換言すると,m個の方程式からなる1次方程式の体系を,m個の変数について解く。追加の色は,m個の変数のm次元のベクトルの成分の値の合計が最小になるように選択する。ただし,これとは別の最適化方法も考えられる。変化が小さい場合,本発明による方法では,変換TKを表すnxnマトリクスの2n-1個の別の項目を,以前の色の[Lab]値のベースにおけるm次元ベクトルの成分から求めることができる。」との記載があるが,当該記載が,どのようなことを表しているのか,全体的に不明である。
特に,「測定された以前の色の[Lab]値のベースにおける変換TQについてのmxmマトリクスは,実質的に,以前の色に基づいて新たな色を表すことができる割合を表している。」との記載において,「測定された以前の色の[Lab]値のベースにおける変換TQ」とは,どのようなものであるのか,「mxmマトリクス」が「以前の色に基づいて新たな色を表すことができる割合」を表しているとは,どのような事項を表しているのか,不明である。
「追加の色」とは,どのような色を表しているのか,不明である。
「1次式における新たな追加の色の[Lab]値」,「以前の追加の色の[Lab]値」,「[CMY]から選択した2つの色の[Lab]値」との記載において,各値の色が,どのようなものであるのか,それぞれが,どのような関係にある色の値を関連づけるものであるのか,不明である。
「m個の方程式からなる1次方程式の体系を,m個の変数について解く。追加の色は,m個の変数のm次元のベクトルの成分の値の合計が最小になるように選択する。」とは,具体的に,どのような解法を表しているのか,不明である。
「変換TKを表すnxnマトリクスの2n-1個の別の項目を,以前の色の[Lab]値のベースにおけるm次元ベクトルの成分から」,具体的に,どのように「求めることができる。」のか,不明である。

以上のとおり,段落【0014】の記載は明確ではなく,その記載からは,「写像TK」の具体的な構成,その算出方法を,明確に理解することができない。

ウ 発明の詳細な説明の記載は,当業者が本願の発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるか否かについてのむすび
したがって,発明の詳細な説明には,「K(n)からK'(n)への写像TKまたはQ(m)からそれ自体への写像TQ」の具体的な構成,その算出方法が,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえず,本件出願は,特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。


2 「デバイスディペンデントなプロセス空間K(n)から前記デバイスディペンデントなプロセス空間K(n)への変換Rが追加的に行われる」点について(前記「第3 1(イ)」及び「第3 2(ウ)」,「第3 3(イ)」,「第3 4(ウ)」の指摘事項に対して)

(1)特許請求の範囲に記載された特許を受けようとする発明が明確であるか否かについて(特許法第36条第6項第2号関係)

本願の請求項12における「デバイスディペンデントなプロセス空間K(n)から前記デバイスディペンデントなプロセス空間K(n)への変換Rが追加的に行われる」との記載は,「変換R」がプロセス空間K(n)から,同じプロセス空間K(n)に向けての何らかの写像であることは把握できるものの,プロセス空間K(n)内の,どのような点を,同プロセス空間K(n)内の,どのような点に,どのような規則に基づいて写像するものであるのか,特許請求の範囲において何ら特定されていない。また,当該「変換R」が,どのような場合に「追加的に行われる」ものであるのか,「追加的に行われる」ことの技術的意義が,特許請求の範囲では何ら明確にされていない。

この点について,審判請求人は,平成19年7月25日付けの手続補正書において,
「請求項13(新請求項12)の「それ自体への追加の変換Rが行なわれる」を「前記デバイスディペンデントなプロセス空間K(n)への変換Rが追加的に行なわれる」に言い換えました。」
と説明している。
しかしながら,「それ自体」を,デバイスディペンデントなプロセス空間K(n)から「前記デバイスディペンデントなプロセス空間K(n)へ」,そして「追加の変換Rが行われる」ことを「変換Rが追加的に行われる」と言い換えたところで,「変換R」が,どのような変換であるのか,何ら特定されるものではなく,また「追加」の技術的意義が明確になるものでもない。

さらに,平成20年11月12日付け回答書において,
「請求項12の「前記デバイスディペンデントなプロセス空間K(n)から前記デバイスディペンデントなプロセス空間K(n)への変換R」については,段落0018から0021と図3にその例が記載されています。」
と説明している。
しかしながら,段落【0018】ないし【0021】及び図3は,デバイスインディペンデントなプロセス空間Q(m)上で行われる「写像TQ」に関する説明であって,そもそも,デバイスインディペンデントなプロセス空間K(n) から前記デバイスディペンデントなプロセス空間K(n)で行われる「変換R」の説明ではなく,また「写像TQ」と「変換R」が同様なものであるといったような記載も認められないから,審判請求人の説明は,当を得ていない。

したがって,請求項12における「デバイスディペンデントなプロセス空間K(n)から前記デバイスディペンデントなプロセス空間K(n)への変換Rが追加的に行われる」との記載は,当該変換が具体的にどのようなものを表しているのか,依然として不明であるから,特許請求の範囲に記載された請求項12に係る発明は明確とはいえず,本件出願は,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

(2)発明の詳細な説明の記載は,当業者が本願の発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるか否かについて(特許法第36条第4項関係)

前記「第4 2(1)」で検討したように,特許請求の範囲における「デバイスディペンデントなプロセス空間K(n)から前記デバイスディペンデントなプロセス空間K(n)への変換Rが追加的に行われる」との記載が不明であるから,当該機際に関する発明の詳細な説明の記載を参酌することにする。
発明の詳細な説明には,段落【0017】に,当該事項に関する記載が認められる。

段落【0017】には「図2には・・・(中略)・・・デバイスディペンデントなプロセス空間K(n)からそれ自体への追加の修正写像Rを示している。」との記載があるものの,それ以上に「修正写像R」を説明する記載は認められない。よって,「修正写像R」がプロセス空間K(n)から同プロセス空間K(n)への写像であることは把握できるものの,「修正写像R」が,プロセス空間K(n)内の,どのような点を,同プロセス空間K(n)内の,どのような点に,どのような規則に基づいて変換するものであるのか,その定義について,またどのように算出されるものであるのかについて,何ら記載されておらず,不明である。また,「追加」の技術的意義についても,何ら記載されていない。

以上のとおり,段落【0017】の記載は明確ではなく,その記載からは,「変換R」の具体的な構成,算出方法,ならびに「追加的に行われる」との技術的意義を,明確に理解することができない。

したがって,発明の詳細な説明には,「デバイスディペンデントなプロセス空間K(n)から前記デバイスディペンデントなプロセス空間K(n)への変換R」の具体的な構成,その算出方法,「追加的に行われる」との技術的意義について,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえず,本件出願は,特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。


3 段落【0022】の記載について(前記「第3 2(エ)」及び「第3 4(エ)」の指摘事項に対して)

段落【0022】において,「追加の写像Ziは,デバイスディペンデントなプロセス空間K’(n)をi個の分離した部分空間に分解している。」との記載があるが,「部分空間に分解する写像」とは,具体的に,どのような写像であるのか,またプロセス空間K’(n)における,どのような点が,部分空間なる空間における,どのような点に,どのような規則に基づいて写像されるものであるのか,図4を参酌しても,依然として不明である。
また,「そして,それぞれの分離した部分空間におけるm個の点のこれらのグループ各々について,本発明の方法では,図1の説明で詳しく述べたように,以前のカラープロファイルの対応するm個の点から写像TQを算出する変換マトリクスと変位が得られる。それに応じて部分空間について,K(n)からK’(n)への写像TKを表すマトリクスがそれぞれ算出される。」との記載があるが,図1の説明,つまり段落【0014】及び【0018】?【0021】の記載自体が不明であり,「写像TQを算出する変換マトリクス」及び「変位」を,どのように得ているのか,「写像TKを表すマトリクス」を,どのように算出しているのか,依然として不明である。

この点について,審判請求人は,平成19年7月25日付けの手続補正書において,
「[0022]の「追加の写像Zi」では,デバイスディペンデントなプロセス空間K’(n)をi個の分離した部分量に分解し,分離したこれらの部分量のm個の点について,写像A’-1で得られた点がデバイスインディペンデントなプロセス空間Q(m)で測定されます。[0022]の「以前のカラープロファイルの帰属のm個の点から写像TQを算出する変換マトリクスと変位が得られる。それに応じて分解の部分領域について,K(n)からK’(n)への写像TKを表すマトリクスがそれぞれ算出される。」については[0014]に記載されたとおりです。」
と説明している。
しかしながら,「追加の写像Zi」とは,段落【0022】に「追加の写像Ziは,デバイスディペンデントなプロセス空間K’(n)をi個の分離した部分空間に分解している。」と記載されるものであって,図4にも,プロセス空間K’(n)から,同プロセス空間K’(n)(内の部分領域?)への写像として示されている。つまり,「追加の写像Zi」自体は,デバイスインディペンデントな空間Q(m)からそれ自体への写像TQや,デバイスディペンデントな空間K(n)からデバイスディペンデントな空間K’(n)への写像TKとは異なる写像と考えられる。このような「追加の写像Zi」に対して,「分離したこれらの部分空間のいずれにもm個の点があり,これらの点について,写像A’-1で得られた点がデバイスインディペンデントなプロセス空間Q(m)で測定される。そして,それぞれの分離した部分空間におけるm個の点のこれらのグループ各々について,本発明の方法では,図1の説明で詳しく述べたように,以前のカラープロファイルの対応するm個の点から写像TQを算出する変換マトリクスと変位が得られる。それに応じて部分空間について,K(n)からK’(n)への写像TKを表すマトリクスがそれぞれ算出される。」との記載のみでは,プロセス空間Q(m)で測定された点から,どのように「追加の写像Zi」を算出するのか,不明といわざるを得ない。
また,「以前のカラープロファイルの帰属のm個の点から写像TQを算出する変換マトリクスと変位が得られる。それに応じて分解の部分領域について,K(n)からK’(n)への写像TKを表すマトリクスがそれぞれ算出される。」については[0014]に記載されたとおりです。」と説明しているが,前記「第4 1(2)」で検討したように,段落【0014】の記載自体明確でなく,その記載から「写像TQ」,「変位」,「写像TK」の具体的な構成,その算出方法は明確に理解することができないから,当該記載についても,依然として不明であるといわざるを得ない。なお,「追加の写像Zi」は,前記したように「写像TQ」,「写像TK」とは異なるものと考えられるから,仮に「写像TQ」,「変位」,「写像TK」の具体的な構成,その算出方法が理解できたとしても,それをもって,「追加の写像Zi」が明確となるものでもない。

さらに,平成20年11月12日付け回答書においては,上記手続補正書で説明された点を除くと,
「写像TQを算出する変換マトリクス,写像TKを表すマトリクスの算出方法は,当業者であれば,[0014]から[0019]に記載された内容から容易だと思料します。」
と説明している。
しかしながら,前記したように「追加の写像Zi」は,「写像TQ」,「写像TK」とは,異なる別の写像である。したがって,「写像TQを算出する変換マトリクス」,「写像TKを表すマトリクスの算出方法」が,仮に,段落【0014】ないし【0019】に記載された内容から容易だとしても(実際は,前記「第4 1(2)」で検討したように明確に理解することができないものあるが),「写像TQ」,「写像TK」とは異なる別の写像である「追加の写像Zi」が明確である理由にはならず,当該記載に対する説明としては,当を得ていない。

以上のとおり,段落【0022】の記載は明確ではなく,その記載からは,「追加の写像Zi」とは,どのような写像であるのか,どのように算出されているのか,「写像TQを算出する変換マトリクス」及び「変位」を,どのように得ているのか,「写像TKを表すマトリクス」を,どのように算出しているのか,明確に理解することができない。

したがって,発明の詳細な説明には,「追加の写像Zi」の具体的な構成,算出方法について,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえず,本件出願は,特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。


第5 むすび
以上のとおり,本願明細書の特許請求の範囲の記載及び発明の詳細な説明の記載は依然として明確ではないから,この出願は,特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない,及び発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない,とした拒絶査定に誤りはない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-03-19 
結審通知日 2009-03-31 
審決日 2009-04-14 
出願番号 特願2001-351689(P2001-351689)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (H04N)
P 1 8・ 536- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 豊田 好一  
特許庁審判長 板橋 通孝
特許庁審判官 原 光明
廣川 浩
発明の名称 カラープロファイルを測定ないし換算する方法および装置  
代理人 宮崎 昭夫  
代理人 緒方 雅昭  
代理人 石橋 政幸  
復代理人 石橋 亮一  

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