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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1203522
審判番号 不服2006-18119  
総通号数 118 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-08-18 
確定日 2009-09-11 
事件の表示 特願2001-511078「色校正方法および装置並びに色校正プログラムを記録した記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 1月25日国際公開、WO01/06757〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、平成11年7月19日を国際出願日とする出願であって、平成14年1月10日に国内書面が提出されたものであり、平成18年3月20日付けで拒絶理由が通知され、平成18年5月29日付けで手続補正書が提出されたが、当該拒絶理由通知書に記載された理由により平成18年7月12日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成18年8月18日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成18年9月19日付けで手続補正書が提出されたものである。

2.拒絶査定の要点

拒絶査定は、平成18年3月20日付け拒絶理由通知書に記載された理由の内、[理由1]および[理由2]によってなされたものである。
平成18年3月20日付けで通知した拒絶理由通知書における[理由1]および[理由2]は以下のとおりである。

「 [理由1]
.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された下記の刊行物1-4に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項3、5、10、16、18
引用文献1又は2、及び引用文献3
(備考略)
・請求項6-7、12-13、19-20
引用文献3及び4
(備考)引用文献3(主に請求項1参照)には、校正印刷用画像データを生成する発明が記載されている。
引 用 文 献 等 一 覧
1.特開平8-212324号公報
2.特開平8-265587号公報
3.特表平8-511141号公報
4.特開平5-48892号公報

[理由2]
この出願は、明細書及び図面の記載が下記(1)-(9)の点で、特許法第36条第4項及び第6項第2号に規定する要件を満たしていない。



(1)請求項2に係る発明の記載は以下の点で不明確である。
・(1-/(2N-1))は誤記である。
・「校正印刷機に対する色空間の全体にわたる画像データの変換値からなるルックアップテーブル」、「ルックアップテーブルにおける任意の参照データPの色値」、「ルックアップテーブルにおける任意の参照データIの色値」、「参照データIの色値の「変更値」の記載からは、「変換値」、「参照データP」、参照データI」、「変更値」が、それぞれどの様に関連して、本願発明の色校正方法が実施されるかが不明確である。
・「紙面露出面積率が100%の位置に印刷機の印刷用紙の紙色値を付加したとき」の変更値を求める発明は記載されているが、紙面露出面積率が100%以外の場合に変更値がどの様にして求められるかが不明確である。
(2)請求項3に係る発明の記載は以下の点で不明確である。
・「紙面露出面積率」から「ルックアップテーブル」をどの様にして修正するかが不明確である。
・「印刷機の印刷用紙の紙色値を色空間内に付加したとき、色空間におけるどの範囲までの参照データに影響が及ぼされるのかを表す影響範囲を指定するステップ」との記載は不明確である。
当該記載は、「参照データ」がどの様なデータであるかが不明確である。
また、影響範囲をどの様にして指定するか、影響範囲とはどの様な指標であるか、また、影響範囲が色空間とどの様に関連するかが不明確である。
・「紙色値」及び「影響範囲」からどの様にして「影響値」が求められるかが不明確である。
(中略)
(6)上記(1)で指摘した点は、請求項9、15の記載についても同様である。
(7)上記(2)で指摘した点は、請求項10、16の記載についても同様である。
(後略) 」

そして、拒絶査定では、[理由1]についての備考欄において、請求項2、5、7および3、10、16についての検討内容が示されている。
また、[理由2]について、備考欄に次の内容が示されている。

「補正された請求項2の記載は、以下の点が不明確である。
また、意見書の「(2-2)(ii)上記指摘事項(b)について」で、出願人はるる説明するが、これらの説明が発明の詳細な説明のどの記載に対応し、請求項2の記載にどの様に反映されているかが分からない。
・「前記校正刷りにおける紙面露出面積率に基づいて前記ルックアップテーブルを修正する」との記載からは、「紙面露出面積率」から「ルックアップテーブル」をどの様にして修正するかが不明確である。
また、「前記ルックアップテーブルを修正するステップは、 前記印刷機の印刷用紙の紙色値を色空間内に付加したときに、前記色空間におけるどの範囲までの参照データに影響が及ぼされるのかを表す影響範囲を指定するステップと、
前記紙色値および前記影響範囲の値に基づいて各参照データに対する影響値を求め、参照データに影響値を加えるステップと、からなっている」と記載されるが、前記「紙面露出面積率」に基づいて「前記ルックアップテーブルを修正する」ものではない。
したがって、「ルックアップテーブルを修正するステップ」は不明確である。
・「印刷機の印刷用紙の紙色値を色空間内に付加したとき、色空間におけるどの範囲までの参照データに影響が及ぼされるのかを表す影響範囲を指定するステップ」との記載からは、「参照データ」がどの様なデータであるかが不明確である。
また、影響範囲をどの様にして指定するか、影響範囲とはどの様な指標であるか、また、影響範囲が色空間とどの様に関連するかが不明確である。
・「前記紙色値および前記影響範囲の値に基づいて各参照データに対する影響値を求め」との記載からは、「紙色値」及び「影響範囲」からどの様にして「影響値」が求められるかが不明確である。
さらに、補正された請求項5、7の記載についても同様である。 」

3.本願特許請求の範囲

平成18年9月19日付けで提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の記載は以下のとおりである。

「【特許請求の範囲】
【請求項1】
面積階調のみを行う印刷方式の校正刷りを作成する場合であって、かつ前記印刷機の印刷用紙と前記校正印刷機の印刷用紙との間において紙色がインクの透過率を考慮する必要がない程度に近似している場合に、校正印刷機による校正刷りにおいて印刷機による印刷物の色再現性を向上させるための方法であって、
(a)前記校正印刷機に対する色空間の全体にわたる画像データの変換値からなるルックアップテーブルを作成するステップと、
(b)前記ルックアップテーブルにおける任意の参照データPの色値が(Cp,Mp,Yp,Bkp)で、それぞれNビットデータであるとするときは、紙面露出面積率αを、
α=(1-Cp/(2N -1))×(1 -Mp/(2N -1))
×(1-Yp/(2N -1))×(1-Bkp/(2N -1))
によって求めるが、
前記ルックアップテーブルにおける任意の参照データPの色値が(Cp,Mp,Yp,Bkp)
で、それぞれ百分率データであるとするときには、紙面露出面積率αを、
α=(1-Cp/100)×(1-Mp/100)
×(1-Yp/100)×(1-Bkp/100)
によって求め、さらに、
紙面露出面積率が100%の位置に前記印刷機の印刷用紙の紙色値(Ca,Ma,Ya,Bka)を付加したときの、前記ルックアップテーブルにおける任意の参照データIの色値(Ci,Mi,Yi,Bki)の変更値(Ci', Mi', Yi', Bki')を、
Ci'=Ci +Ca ×α、Mi'=Mi +Ma ×α、Yi'=Yi +Ya ×α、
Bki' =Bki+Bka×α
によって求め、この変更値を参照データの色値に置き換えることによって、前記ルックアップテーブルを修正するステップと、
(c)前記修正したルックアップテーブルを用いて校正刷りを作成するステップと、からなっていることを特徴とする色校正法。
【請求項2】
濃度階調および面積階調の両方を行う印刷方式の校正刷りを作成する場合であって、かつ前記印刷機の印刷用紙と前記校正印刷機の印刷用紙との間において紙色がインクの透過率を考慮する必要がない程度に近似している場合に、校正印刷機による校正刷りにおいて印刷機による印刷物の色再現性を向上させるための方法であって、
(a)前記校正印刷機に対する色空間の全体にわたる画像データの変換値からなるルックアップテーブルを作成するステップと、
(b)前記印刷機の印刷用紙の紙色値を色空間内に付加したときに、前記ルックアップテーブルの参照データのうち前記色空間におけるどの範囲までの参照データに影響が及ぼされるのかを表す影響範囲を指定し、前記紙色値および前記影響範囲の値に基づいて各参照データに対する影響値を求め、参照データに影響値を加えることによって前記ルックアップテーブルを修正するステップと、
(c)前記修正したルックアップテーブルを用いて校正刷りを作成するステップと、からなっていることを特徴とする色校正法。
【請求項3】
前記ステップ(c)は、
前記修正したルックアップテーブルを用いて変換した画像データを、予め設定しておいた前記印刷機の印刷用紙の紙色のバラツキの程度を表すノイズの強度と分布量とに基づいて変化させ、この変化させた画像データを用いて校正刷りを作成するステップからなっていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の色校正法。
【請求項4】
コンピュータを利用して校正印刷機による校正刷りにおいて印刷機による印刷物の色再現性を向上させるための色校正装置であって、
前記校正印刷機に対する色空間の全体にわたる画像データの変換値からなるルックアップテーブルを生成するルックアップテーブル生成部と、
前記印刷機の印刷用紙の紙色のバラツキの程度を表すノイズの強度と分布量とを設定するためのノイズ強度・分布量入力部と、
前記印刷機の印刷用紙の紙色を指定するための本紙紙色入力部と、
前記ルックアップテーブルを修正するルックアップテーブル修正部と、
前記ルックアップテーブル修正部によって修正されたルックアップテーブルを用いて変換した画像データを、前記ノイズ強度・分布量入力部に入力されたノイズの強度と分布量とに基づいて変化させ、この変化させた画像データを出力する画像データ変換部とを有し、
面積階調のみを行う印刷方式の校正刷りを作成する場合であって、かつ前記印刷機の印刷用紙と前記校正印刷機の印刷用紙との間において紙色がインクの透過率を考慮する必要がない程度に近似している場合には、
前記ルックアップテーブル修正部は、
前記ルックアップテーブルにおける任意の参照データPの色値が(Cp,Mp,Yp,Bkp)で、それぞれNビットデータであるとするときは、紙面露出面積率αを、
α=(1-Cp/(2N -1))×(1 -Mp/(2N -1))
×(1-Yp/(2N -1))×(1-Bkp/(2N -1))
によって求めるが、
前記ルックアップテーブルにおける任意の参照データPの色値が(Cp,Mp,Yp,Bkp)で、それぞれ百分率データであるとするときには、紙面露出面積率αを、
α=(1-Cp/100)×(1-Mp/100)
×(1-Yp/100)×(1-Bkp/100)
によって求める紙面露出面積率演算部と、
紙面露出面積率が100%の位置に前記印刷機の印刷用紙の紙色値(Ca,Ma,Ya,Bka)を付加したときの、前記ルックアップテーブルにおける任意の参照データIの色値(Ci,Mi,Yi,Bki)の変更値(Ci', Mi', Yi', Bki')を、
Ci'=Ci +Ca ×α、Mi'=Mi +Ma ×α、Yi'=Yi +Ya ×α、
Bki' =Bki+Bka×α
によって求め、この変更値を参照データの色値に置き換える色変更値演算部と、を有し、
濃度階調および面積階調の両方を行う印刷方式の校正刷りを作成する場合であって、かつ前記印刷機の印刷用紙と前記校正印刷機の印刷用紙との間において紙色がインクの透過率を考慮する必要がない程度に近似している場合には、
前記ルックアップテーブル修正部は、
前記印刷機の印刷用紙の紙色値を色空間内に付加したときに、前記ルックアップテーブルの参照データのうち前記色空間におけるどの範囲までの参照データに影響が及ぼされるのかを表す影響範囲を指定するための影響範囲入力部と、
前記紙色値および前記影響範囲の値に基づいて各参照データに対する影響値を求め、参照データに影響値を加える影響値演算部と、を有していることを特徴とする色校正装置。
(請求項5以下を省略) 」

4.当審の判断

当該補正された特許請求の範囲の請求項2は、拒絶理由通知で指摘した補正前の請求項3に相当するものである。したがって、拒絶査定における請求項2は拒絶理由における請求項3についてのものである。
以下、該請求項2の記載が特許法第36条第4項および第6項第2号の規定を満たしているか否かについて検討する。

前記したように、拒絶理由通知([理由2])では、次の点を指摘している。

「(2)請求項3に係る発明の記載は以下の点で不明確である。
(略)
また、影響範囲をどの様にして指定するか、影響範囲とはどの様な指標であるか、また、影響範囲が色空間とどの様に関連するかが不明確である。
・「紙色値」及び「影響範囲」からどの様にして「影響値」が求められるかが不明確である。」

また、拒絶査定では次ように指摘がされている。
「補正された請求項2の記載は、以下の点が不明確である。
また、意見書の「(2-2)(ii)上記指摘事項(b)について」で、出願人はるる説明するが、これらの説明が発明の詳細な説明のどの記載に対応し、請求項2の記載にどの様に反映されているかが分からない。
(略)
また、影響範囲をどの様にして指定するか、影響範囲とはどの様な指標であるか、また、影響範囲が色空間とどの様に関連するかが不明確である。
・「前記紙色値および前記影響範囲の値に基づいて各参照データに対する影響値を求め」との記載からは、「紙色値」及び「影響範囲」からどの様にして「影響値」が求められるかが不明確である。 」

一方、「影響範囲」「影響値」については、段落0019には、次のように記載されている。
「【0019】
上記課題を解決するため、第3発明は、コンピュータを利用して校正印刷機による校正刷りにおいて印刷機による印刷物の色再現性を向上させるための色校正装置であって、前記校正印刷機に対する色空間の全体にわたる画像データの変換値からなるルックアップテーブルを生成するルックアップテーブル生成部と、前記印刷機の印刷用紙の紙色のバラツキの程度を表すノイズの強度と分布量とを設定するためのノイズ強度・分布量入力部と、前記印刷機の印刷用紙の紙色を指定するための本紙紙色入力部と、前記ルックアップテーブルを修正するルックアップテーブル修正部と、前記ルックアップテーブル修正部によって修正されたルックアップテーブルを用いて変換した画像データを、前記ノイズ強度・分布量入力部に入力されたノイズの強度と分布量とに基づいて変化させ、この変化させた画像データを出力する画像データ変換部とを有し、面積階調のみを行う印刷方式の校正刷りを作成する場合であって、かつ前記印刷機の印刷用紙と前記校正印刷機の印刷用紙との間において紙色がインクの透過率を考慮する必要がない程度に近似している場合には、前記ルックアップテーブル修正部は、前記ルックアップテーブルにおける任意の参照データPの色値が(Cp,Mp,Yp,Bkp)で、それぞれNビットデータであるとするときは、紙面露出面積率αを、
α=(1-Cp/(2N -1))×(1 -Mp/(2N -1))
×(1-Yp/(2N -1))×(1-Bkp/(2N -1))
によって求めるが、前記ルックアップテーブルにおける任意の参照データPの色値が(Cp,Mp,Yp,Bkp)で、それぞれ百分率データであるとするときには、紙面露出面積率αを、
α=(1-Cp/100)×(1-Mp/100)
×(1-Yp/100)×(1-Bkp/100)
によって求める紙面露出面積率演算部と、紙面露出面積率が100%の位置に前記印刷機の印刷用紙の紙色値(Ca,Ma,Ya,Bka)を付加したときの、前記ルックアップテーブルにおける任意の参照データIの色値(Ci,Mi,Yi,Bki)の変更値(Ci', Mi', Yi', Bki')を、
Ci'=Ci +Ca ×α、Mi'=Mi +Ma ×α、Yi'=Yi +Ya ×α、
Bki' =Bki+Bka×α
によって求め、この変更値を参照データの色値に置き換える色変更値演算部と、を有し、
濃度階調および面積階調の両方を行う印刷方式の校正刷りを作成する場合であって、かつ前記印刷機の印刷用紙と前記校正印刷機の印刷用紙との間において紙色がインクの透過率を考慮する必要がない程度に近似している場合には、前記ルックアップテーブル修正部は、前記印刷機の印刷用紙の紙色値を色空間内に付加したときに、前記ルックアップテーブルの参照データのうち前記色空間における『どの範囲』までの参照データに影響が及ぼされるのかを表す『影響範囲』を指定するための影響範囲入力部と、前記紙色値および前記影響範囲の値に基づいて各参照データに対する『影響値』を求め、参照データに『影響値』を加える『影響値演算部』と、を有していることを特徴とする色校正装置を構成したものである。 」
(注:『』は審決において付与。以下同様。)

また、段落0028?0031には次のように記載されている。
「【0028】
『影響範囲』および『影響値の』導出方法について説明する。本紙の紙色値(Ca,Ma,Ya,Bk)は、色空間の全体または一定の影響範囲内においてリニアまたは特性の曲線特性をもって、ルックアップテーブルの各参照データに影響を及ぼすと仮定される。今、任意の参照データIの色値(Ci,Mi,Yi,Bki)に対して、紙色値(Ca,Ma,Ya,Bka)がリニアに影響を及ぼした場合の、『影響値(Cieff, Mieff, Yieff, Bkieff )』は次のように求められる。
【0029】
まず、『参照データIにおける紙色値の影響率』は、色空間全体における紙色値が導入される点Qの座標値(x=0,y=0,z=0,w=0)から『参照データIの座標値』までの距離の比に等しいと考える。参照データIの座標値を(xi,yi,zi,wi )とすると、点Qおよび参照値データIの間の距離Dは、
D=max(|xi -0|,|yi -0|,|zi -0|,|wi -0|)
ここで、max(a,b,c)は、a、b、cの値のうちの最大値を取り出すことを意味する、によって規定される。
【0030】
そして、『影響範囲を色空間の全体と指定したとき』、『参照データIに対する影響値』は、
Cieff=Ca ×(D-xi)/D
Mieff=Ma ×(D-yi)/D
Yieff=Ya ×(D-zi)/D
Bkieff =Bka×(D-wi)/D
となる。
【0031】
このようにして修正されたルックアップテーブルを用いて変換された画像データは、ノイズの強度および分布量に基づいて変化せしめられ(図1、ステップ(11)参照)、この変化せしめられた画像データを用いてカラープリンタによる校正刷りが作成される(図1、ステップ(12)参照)。
この場合にも、『紙色影響率をリニアにとったとき』は、光学的ドットゲイン値が考慮されなくなるが、これも『適当な曲線特性を付加した影響率の導出』を行うことにより十分に目的を達成することができる。
作成された校正刷りは、本紙の紙色を的確に再現したものとなっている。 」

ここで、段落0029における、「まず、『参照データIにおける紙色値の影響率』は、色空間全体における紙色値が導入される点Qの座標値(x=0,y=0,z=0,w=0)から『参照データIの座標値』までの距離の比に等しいと考える。」の文意が不明であり、「参照データIの座標値を(xi,yi,zi,wi )」が何を示すか不明であり、さらに、「考える」「とすると」という記載は仮定の論理であって、「点Qおよび参照値データIの間の距離Dは、 D=max(|xi -0|,|yi -0|,|zi -0|,|wi -0|)(略)によって規定される。」は、これがどのよう技術的事項を表現しているのか、その前提が不明である。

したがって、
(1)請求項2において、前記校正刷りにおける紙面露出面積率に基づいて前記ルックアップテーブルを修正する」との記載からは、「紙面露出面積率」から「ルックアップテーブル」をどの様にして修正するかが不明確であり、よって、「ルックアップテーブルを修正するステップ」とはどういうことであるのか、
(2)請求項2において、「印刷機の印刷用紙の紙色値を色空間内に付加したとき、色空間におけるどの範囲までの参照データに影響が及ぼされるのかを表す影響範囲を指定するステップ」との記載からは、「参照データ」がどの様なデータであるか、
は不明であり、発明の詳細な説明の記載には、
(3)「前記紙色値および前記影響範囲の値に基づいて各参照データに対する影響値を求め」について、「紙色値」及び「影響範囲」から、どの様にして「影響値」が求められるかが記載されていない。

よって、発明の詳細な説明には、この発明の属する分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度の明確かつ十分な記載がされておらず、特許請求の範囲乗せ2の記載は、発明を明確に記載したものではない。

5.むすび

以上のとおりであるから、「この出願は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項及び第6項第2号に規定する要件を満たしていない。」とした拒絶査定に誤りはない。

よって、原査定を取り消す、この出願の発明は特許すべきものであるとする審判請求の趣旨は認められないから、余の拒絶理由について検討するまでもなく、結論のとおり審決する。

6.付記

(1)平成18年9月19日付け手続補正の適否について

当該手続補正において請求項1にした補正は、発明を特定するために必要な事項を限定するものではないから、特許請求の範囲の減縮に当たらない。
また、請求項の削除、誤記の訂正、明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)のいずれにも当たらない。
よって、審判請求時の補正は、特許法第17条の2第4項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当せず、同法第17条の2第4項の規定に違反するものであるから、形式上は同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
しかしながら、原査定はそもそも請求項1に係る発明についてなされたものではなく、当該請求項1に付いての補正は、内容において実質的に違いのあるものではないことから、請求項1について補正の適否判断することに本質的な意味がない。

審判請求において審理すべきは請求項2についてであることから、審判請求人(出願人)の意思を尊重し、本審決においては、意向の反映された手続補正を適法なものとした。


(2)回答書における審判請求人の主張について

審判請求人は、平成20年10月20日審尋に対する平成20年12月18日付け回答書において、特許請求の範囲から請求項1?3および請求項5?7を削除するとともに、請求項4を審判請求時のように補正致したい旨を述べている。
しかしながら、本件出願について請求項1に係る発明が特許法第29条第2項の規定による拒絶理由が存在しないとしても、請求項4は、内容的に請求項1と請求項2の内容を包含するものであり、請求項4は上記検討した請求項2と同様の記載不備が存在する。
また、補正により、特許法第36条第4項の規定による拒絶理由が解消するものでない。
よって、補正をしたとしても、本件出願は記載不備により独立して特許を受けることができるものではないから、補正の機会についてその必要性を認めない。
 
審理終結日 2009-07-09 
結審通知日 2009-07-15 
審決日 2009-07-28 
出願番号 特願2001-511078(P2001-511078)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (H04N)
P 1 8・ 536- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 金田 孝之  
特許庁審判長 板橋 通孝
特許庁審判官 廣川 浩
千葉 輝久
発明の名称 色校正方法および装置並びに色校正プログラムを記録した記録媒体  
代理人 特許業務法人みのり特許事務所  
代理人 特許業務法人みのり特許事務所  
代理人 特許業務法人みのり特許事務所  
代理人 特許業務法人みのり特許事務所  
代理人 特許業務法人みのり特許事務所  

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