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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  E04H
管理番号 1204005
審判番号 無効2008-800067  
総通号数 119 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-11-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2008-04-16 
確定日 2009-08-24 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3839448号「プレストレストコンクリート構造物」の特許無効審判事件についてされた平成20年9月11日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の決定(平成20年(行ケ)第10393号、平成21年2月13日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由
第一 手続の経緯
本件特許第3839448号に係る手続の経緯の概要は以下のとおりである。
・平成16年 9月15日 出願
・平成18年 8月11日 設定登録
・平成20年 4月16日 無効の審判請求
・平成20年 7月11日 答弁書(被請求人提出)
・平成20年 9月11日 審決(特許第3839448号の請求項1?2 に係る発明についての特許を無効とする。以下 、「一次審決」という。)
・平成20年10月27日 審決取消の提起(被請求人による)(平成20 年行(ケ)10393号)
・平成20年12月16日 訂正の審判請求(訂正2008-390134 号)
・平成21年 2月13日 特許法181条2項の規定に基づく決定(特許 庁が無効2008-800067号事件につい て平成20年9月11日にした審決を取り消す 。)
・平成21年 2月19日 訂正請求のための期間指定通知
・平成21年 3月 5日 訂正請求
・平成21年 4月 8日 上申書(被請求人提出)
・平成21年 4月 9日 弁駁書(請求人提出)
・平成21年 5月22日 意見書(請求人提出)
・平成21年 5月22日 答弁書(被請求人提出)

なお,被請求人は平成20年2月19日付け訂正請求のための期間指定通知に対して訂正請求をしなかったので、被請求人が行った平成20年12月16日付けの訂正審判請求(訂正2008-390134号)は、特許法134条の3第5項の規定により、当該期間の末日である平成21年3月5日に、その訂正審判の請求書に添付された訂正した明細書、特許請求の範囲又は図面を援用した訂正請求とみなされた。

第二 訂正請求について
1.訂正請求の内容
平成21年3月5日付の訂正請求(以下、「本件訂正」という。)は、本件特許の特許請求の範囲を,訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求めるものであり,次の事項をその訂正内容とするものである。
(1)訂正事項a
請求項1の「少なくとも底版」を、「少なくとも底版全体が一体施工されてなる底版」と訂正する。
(2)訂正事項b
請求項1の「底版と剛結合される側壁」を、「該底版と剛結合される側壁」と訂正する。
(3)訂正事項c
請求項1の「鉛直方向の緊張材にはプレストレス力が導入されており」を、「鉛直方向および該周方向の緊張材にはそれぞれプレストレス力が導入されており」と訂正する。
(4)訂正事項d
請求項1の「該側壁が、側壁上端から側壁途中までは一定の部材厚に成形されており、側壁途中から側壁下端の壁厚方向の外側に向かって段状に部材厚が大きくなるように成形されており」を、「該側壁は、縦断面形状が段付き形状になるように、側壁上端から側壁途中までは一定の部材厚に成形されており、側壁途中から側壁下端の壁厚方向の外側に向かって段状に部材厚が大きくなるように成形されており」と訂正する。
(5)訂正事項e
請求項1の「該段状の部分においても前記鉛直方向の緊張材とは別途の鉛直方向の緊張材が配設されるとともに」を、「該段状に部材厚が大きくなるように成形された部分においても前記鉛直方向の緊張材とは別途の鉛直方向の緊張材が配設されるとともに」と訂正する。
(6)訂正事項f
請求項1の「該緊張材にプレストレス力が導入されて」を、「該別途の鉛直方向の緊張材にプレストレス力が導入されており、側壁下端に生じる過大な曲げモーメントが低減されるようになって」と訂正する。
(7)訂正事項g
請求項2を削除する。

2.訂正の適否
訂正事項aにおける訂正内容は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された「少なくとも底版」を、「少なくとも底版全体が一体施工されてなる底版」と限定するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当し、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。また、特許明細書の段落0012には「本発明のプレストレストコンクリート構造物は、・・・底版全体を一体で施工することにより、品質のよいプレストレストコンクリート構造物を提供することを目的としている。」と記載され、段落0016には「施工方法としては、底版全体を一体で構築した後に側壁を立ち上げていく。」と記載され、段落0026には「本発明のプレストレストコンクリート構造物によれば、底版全体を一体施工しながらも、発生曲げモーメントを比較的小さな数値内に収めることができ、鉛直方向の鉄筋量を低減することができる。」と記載されているから、上記訂正事項aは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。
訂正事項bにおける訂正内容は、訂正前の「底版」を「該底版」と訂正するものであるが、「底版」がそれ以前に記載された「底版」を意味していることをより明確にするものであり、明りょうでない記載の釈明を目的としたものに該当し、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもなく、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。
訂正事項cにおける訂正内容は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された「周方向の緊張材」に「プレストレス力が導入されて」いるとの限定を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当し、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。また、特許明細書の段落0023には「周方向の緊張材にプレストレス力を導入した際に生じる、側壁を内側へ変形させようとする曲げモーメントを低減することができる。」と記載され、段落0040には「周方向の緊張材に導入されるプレストレス力は、図4に示す満液時を想定しているため、容器構造物10bが完成した直後等の空液時においては、図示するように、側壁1の下端に過大な曲げモーメント(側壁を内側へ変形させようとする曲げモーメント)が生じてしまう。」と記載されているから、上記訂正事項cは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。
訂正事項dにおける訂正内容は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された「側壁上端から側壁途中までは一定の部材厚に成形されており、側壁途中から側壁下端の壁厚方向の外側に向かって段状に部材厚が大きくなるように成形されており」に「縦断面形状が段付き形状になるように、」との限定を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当し、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。また、特許明細書の段落0033には「この容器構造物10aは、側壁1の高さh2から下方において、壁厚が大きくなる部分1aを備え、縦断面的には1段の段付き形状の側壁を有した容器構造物である。」と記載されているが、当該記載は、請求項1に係る発明の「実施の形態」(図3)の前提となるものであるから、上記訂正事項dは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。
訂正事項eにおける訂正内容は、特許請求の範囲の請求項1に記載された「別途の鉛直方向の緊張材が配設される」のが訂正前では「段状部分」であったのが、訂正後は「段状に部材厚が大きくなるように成形された部分」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当し、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。また、特許明細書の段落0035には「図3には、本発明の容器構造物の実施の形態を示している。この容器構造物10bは、壁厚が大きくなる部分1aを備え、その内部に、鉛直方向の緊張材であるPC鋼棒4aが配設され、」と記載されているから、上記訂正事項eは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。
訂正事項fにおける訂正内容のうち、訂正前の「該緊張材」を「該別途の鉛直方向の緊張材」と訂正することは、「緊張材」が「別途の鉛直方向の緊張材」を意味していることをより明確にするものであり、明りょうでない記載の釈明を目的としたものに該当し、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもなく、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。
訂正事項fにおける訂正内容のうち、訂正前の「プレストレス力が導入されて」に続いて「側壁下端に生じる過大な曲げモーメントが低減されるようになって」との記載を加入することは、鉛直方向の緊張材にプレストレス力が導入されることによる作用を構成要件として記載するものであり、請求項1に係る発明を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当し、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。また、特許明細書の段落0023には「側壁一般部には、該側壁の上端から下端まで延びる鉛直方向の緊張材を配設し、壁厚が大きくなる部分には別途の鉛直方向の緊張材を配設する。壁厚が大きくなる部分に配設された緊張材にプレストレス力を導入することにより、側壁を外側に変形させようとする曲げモーメントを生じさせることが可能となる。そのため、周方向の緊張材にプレストレス力を導入した際に生じる、側壁を内側へ変形させようとする曲げモーメントを低減することができる。」と記載され、段落0041には「PC鋼棒4aにプレストレス力を導入し(その際の曲げモーメント分布は、図5を参照)、・・・図8の合成曲げモーメント分布図によれば、側壁下端に生じていた過大な曲げモーメント(側壁を内側へ変形させようとする曲げモーメント)が低減されて、相対的に小さな曲げモーメントとなっていることが分かる。」と記載されているから、当該訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。
請求項の削除は特許請求の範囲を実質的に減縮するものであるから、訂正事項gは特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当し、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもなく、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。

ところで、請求人は本件訂正について訂正目的要件違反であるとの主張を明らかには行っていないが、平成21年4月9日付け弁駁書(13頁11?16行)において「以上のとおり、「側壁下端に生じる過大な曲げモーメントを低減する」という作用効果が、別途の鉛直方向の緊張材に導入されたプレストレス力により生じる曲げモーメントのみにより奏されるものと解するべきか、側壁の上端から下端まで延設する鉛直方向の緊張材及び別途の鉛直方向の緊張材にそれぞれ導入されたプレストレス力により生ずる合成された曲げモーメントにより奏されるものと解するべきかは、本件特許に係る出願の明細書の記載からは定かではありません。」と記載している。そして、当該記載において、上記訂正事項fは発明の構成を不明りょうにするものであって訂正の目的のいずれにも該当せず訂正目的要件に違反し、当該訂正は認められるべきものではない旨の主張をしているとも解する余地があるので、この点について検討する。
訂正された特許請求の範囲の「該段状に部材厚が大きくなるように整形された部分においても前記鉛直方向の緊張材とは別途の鉛直方向の緊張材が配設されるとともに該別途の鉛直方向の緊張材にプレストレス力が導入されており、側壁下端に生じる過大な曲げモーメントが低減されるようになっている」との文脈からみて、別途の鉛直方向の緊張材にプレストレス力が導入されることにより側壁下端に生じる過大な曲げモーメントが低減されると解するのが自然であり、特許明細書の段落0023の「側壁一般部には、該側壁の上端から下端まで延びる鉛直方向の緊張材を配設し、壁厚が大きくなる部分には別途の鉛直方向の緊張材を配設する。壁厚が大きくなる部分に配設された緊張材にプレストレス力を導入することにより、側壁を外側に変形させようとする曲げモーメントを生じさせることが可能となる。そのため、周方向の緊張材にプレストレス力を導入した際に生じる、側壁を内側へ変形させようとする曲げモーメントを低減することができる。」との記載、段落0041の「PC鋼棒4aにプレストレス力を導入し(その際の曲げモーメント分布は、図5を参照)、・・・図8の合成曲げモーメント分布図によれば、側壁下端に生じていた過大な曲げモーメント(側壁を内側へ変形させようとする曲げモーメント)が低減されて、相対的に小さな曲げモーメントとなっていることが分かる。」との記載からも裏付けられている。
なお、請求人は、平成21年5月22日付け意見書において、「この構成が追加された影響は、本件上申書34頁下から4行目-同頁末行の「本件特許発明は、『段状に部材厚が大きくなるように成形された部分に別途の鉛直方向の緊張材』を配設し、『別途の鉛直方向の緊張材』に『プレストレスが導入され』、これによって、側壁下端の固定端モーメントに対処するものである。」との主張が、特許請求の範囲の記載に基づく主張となったという程度のものです。」(3頁11?16行)と記載しており、また「この点において、「別途の鉛直方向の緊張材にプレストレス力が導入され」なる構成によって、「周方向の緊張材にプレストレス力が導入されることによって側壁下端に生じる過大な曲げモーメント」を低減するものであるとする本件特許発明の構成と異なるところはありません。」(4頁8?11行)と記載しており、別途の鉛直方向の緊張材にプレストレスが導入されることによって、側壁下端の固定端モーメントに対処するものであることを認めている。

以上のとおり,訂正事項a?gは、特許請求の範囲の減縮または明りようでない記載の釈明を目的とするものであるから,特許法134条の2第1項ただし書の規定に適合している。そして,訂正事項a?gは、いずれも,願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであって,実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから,同法134条の2第5項において準用する同法126条3項及び4項の規定に適合するので、本件訂正を認める。

第三 本件発明
以上のように、本件訂正請求が認められることから、本件特許発明は、本件訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。(以下、「本件発明」という。)
「【請求項1】
少なくとも底版全体が一体施工されてなる該底版と、該底版上に立設するとともに該底版と剛結合される側壁とから構成される円筒状または略円筒状のプレストレストコンクリート構造物において、
前記側壁の内部には、プレストレス力を導入可能で該側壁の上端から下端まで延設する鉛直方向の緊張材および周方向の緊張材が配設されるとともに該鉛直方向および該周方向の緊張材にはそれぞれプレストレス力が導入されており、
該側壁は、縦断面形状が段付き形状になるように、側壁上端から側壁途中までは一定の部材厚に成形されており、側壁途中から側壁下端の壁厚方向の外側に向かって段状に部材厚が大きくなるように成形されており、
該段状に部材厚が大きくなるように成形された部分においても前記鉛直方向の緊張材とは別途の鉛直方向の緊張材が配設されるとともに該別途の鉛直方向の緊張材にプレストレス力が導入されており、側壁下端に生じる過大な曲げモーメントが低減されるようになっていることからなるプレストレストコンクリート構造物。」

第四 当事者の主張
1.請求人の主張の概略
(1)審判請求書における主張
請求人は、本件特許の請求項1、2に係る発明についての特許を無効とする,審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由として、次の(理由1)および(理由2)により、本件特許の請求項1、2(審決注:訂正前の特許請求の範囲のもの)に係る発明の特許は無効とすべきであると主張し、証拠方法として甲第1号証および甲第2号証を提出している。なお、訂正前の請求項2に係る発明に対する主張は、請求項2が訂正により削除されたので、記載しない。
[無効理由]
(理由1)甲第1号証には請求項1に係る発明の全構成に相当する構成が記載されているから、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明であり、あるいは、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法29条1項3号に該当して特許を受けることができないものであり、あるいは、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許発明1は同法123条1項2号の規定により、無効とすべきである
(理由2)甲第2号証には、請求項1に係る発明の構成A?C、Eに相当する構成と、側壁の外側に向かって段状に部材厚が大きくなるように成形された部分において、鉛直方向の緊張材の下端部が折り返されて、当該段状の部分に2本の鉛直方向緊張材が埋設された構成が記載されており、この構成において、緊張材を折り返すことに代えて、別の緊張材を設ける構成とすること、すなわち、構成要件Dとすることは、当業者が容易になし得る程度のことである。したがって、本件特許発明1は甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許発明1は同法123条1項2号の規定により、無効とすべきである。

[証拠方法]
甲第1号証:「最近のプレストレストコンクリート構造物と30年の歩み」 、昭和61年1月25日発行、発行所 社団法人 プレストレ ストコンクリート技術協会、56?58頁
甲第2号証:Manuel Thome Guezala、"60000m^(3 )prestressed concrete
containtment tank for liquid natural gas"、FIP notes、
1992年2月、p9?12

(2)平成21年4月9日付け弁駁書における主張
請求人は、弁駁書において、以下の主張をしている。
今回の訂正によって本件特許発明を実質的に限定している点は、「側壁下端に生じる過大な曲げモーメントが低減される」との限定のみにある(8頁5?7行)。
甲第1号証に記載の発明の側壁下端部には、内側にハンチが形成されているので、別途の鉛直方向のPC鋼棒にプレストレス力が導入されることにより生ずる曲げモーメントは、側壁下端部付近で側壁を外側に曲げようとする曲げモーメントとなり(側壁下端に生じる過大な曲げモーメントを低減する)、別途の鉛直方向のPC鋼棒と側壁の上端から下端まで延設するPC鋼棒のそれぞれにプレストレス力が導入されることにより生ずる合成された曲げモーメントも、側壁下端部付近で側壁を外側に曲げようとする曲げモーメントとなるから、訂正によって限定されたとする「側壁下端に生じる過大な曲げモーメントが低減されるようになっている」をどのように解釈したとしても、甲第1号証に記載された発明との相違点とはなり得ない(13頁17?26行)。
したがって、訂正が認められたとしても、訂正された発明は依然として進歩性を欠くものであり、本件特許(訂正された発明に係る特許)は特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、無効である。

(3)平成21年5月22日意見書における主張
請求人は、意見書において、以下の主張をしている。
イ.訂正請求によって「側壁下端に生じる過大な曲げモーメントが低減される」との構成が追加された影響は、「本件特許発明は、『段状に部材厚が大きくなるように成形された部分に別途の鉛直方向の緊張材』を配設し、『別途の鉛直方向の緊張材』に『プレストレス力が導入され』、これによって、側壁下端の固定端モーメントに対処するものである。」との主張が、特許請求の範囲の記載に基づく主張となったという程度のものである。そして、甲第1号証に記載されたPC外槽においても、PC外槽の側壁に配設された鉛直方向のPC鋼棒は、導入されるプレストレス力によって側壁を外側に曲げようとするモーメント(側壁下端に生じる固定端モーメントを低減させる曲げモーメント)を生じさせるものであり、そもそも甲第1号証に記載された発明との相違点になるものではない(以上、3頁11?22行)。
ロ.甲第1号証に記載されたPC外槽の下端においては、短尺のPC鋼棒は側壁の断面中心から外側に位置し、短尺のPC鋼棒にプレストレス力が加わることにより、側壁を外側に曲げようとするモーメントが生じる。この点において、「別途の鉛直方向の緊張材にプレストレス力が導入され」なる構成によって、「周方向の緊張材もプレストレス力が導入されることによって側壁下端に生じる過大な曲げモーメント」を低減するものであるとする本件特許発明の構成と異なるところはない(以上、4頁5?11行)。
ハ.訂正後の本件特許発明は、その側壁下端の内側の構成を何ら限定するものではないから、側壁下端にハンチが形成されたものを排除するものではない(4頁12?14行)。側壁下端にハンチがあることを本件特許発明との相違点であるとする被請求人の主張は誤りである(4頁29行?5頁1行)。

2.被請求人の主張の概略
(1)被請求人は、平成20年7月11日付け答弁書において,本件審判の請求を棄却する、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求め、(理由1)および(理由2)の主張は理由のないものであり、本件特許発明は、特許法29条1項3号及び2項の規定により特許を受けられないものではないので、無効とされるべきものではないと主張している。
(2)被請求人は、平成21年3月5日付けで訂正請求(平成20年12月16日付け訂正審判請求書)を行い、特に、「底版全体が一体施工されてなる」および「側壁下端に生じる過大な曲げモーメントが低減されるようになって」との限定がされた。
そして、平成21年4月8日付け上申書において、一次審決は甲第1号証のPC外槽における「壁下端ハンチ」を看過したものであり、一次審決で認定される甲第1号証に記載のPC外槽ではその固定端モーメントに対処する構成が存在しないのに対し、本件特許発明は段状に部材厚が大きくなるように成形された部分に配設された別途の鉛直方向の緊張材に導入されるプレストレス力によって側壁を外側に曲げようとする曲げモーメントを発生させ固定端モーメントに対処するものである、と主張している(14、34?37頁)。また、甲第2号証に記載の貯蔵タンクの底版が分割施工された底版であるから、「側壁下端に生じる過大な曲げモーメント」が生じるものでないと主張(16?20頁)し、一次審決において刊行物「プレストレストコンクリート」および刊行物「とびしま技報」の認定に誤りがあると主張(23?33行)している。
また、平成21年5月22日付け答弁書においても、上記と同様の主張をしている。

第五 無効理由について
1.請求人の提出した証拠の記載事項
(1)甲第1号証(「最近のプレストレストコンクリート構造物と30年の歩み」)
甲第1号証には、写真-4.2、図-4.5、図4-6、図-4.7とともに以下の記載事項が記載されている。
なお、以下において、「○1」等と表記しているものは、刊行物では○の中に数字が描かれた記号であるが、システムの制限により審決で当該記号を記載することができないため、そのように表記を行ったものである。

・記載事項1
「4.3 LPG地上式貯槽のPC外槽(文献4)
4.3.1 概要
大分油化興産(株)が昭和電工大分石油化学コンビナートの東北端用地に建設したLPG基地に、68,000kl(40,000t)のLPG貯槽2基を昭和56年5月から翌年10月にわたって建設した。この貯槽は内槽を密閉自立型の内槽とし、外槽をプレストレスコンクリート製のPC外槽を採用している(写真-4.2)。
PC外槽式貯槽の構造一般図を図-4.5に、工事数量を表-4.5に示す。」(56頁4?13行)

・記載事項2
「4.3.2 設計
PC外槽は最大貯蔵量の状態で内槽より液漏れが発生し、かつ地震時の影響を受けても安全であるように設計されている。設計条件を表-4.6に示す。
荷重の組合せは、○1通常運転時{永久荷重(自重、屋根、内圧)+プレストレス+変動荷重(温度、風)}、○2地震時{○1の状態で地震力が作用した場合}、○3漏液時{○1の状態に液圧が作用した場合、の以上3ケースである。」(57頁下から17行?7行)

・記載事項3
「4.3.3 構造
側壁と底版は剛結構造で、底版をRC構造としている(図-4.6)。側壁はPC構造で、内径62m、壁厚を一般部55cmおよび45cm、側壁下端部を103cmとしている。」(58頁1行?4行)

・記載事項4
「4.3.4 プレストレス
円周方向には漏液時に液圧および内圧が作用してフープテンションが作用する。この引張力に対して約10kgf/cm^(2)程度の圧縮応力が残るようにプレストレスを与えた。PCテンドンの定着はディビダーク式ストランド工法を使用した。PC鋼より線φ15.2を9本束ねたテンドンを側壁6ロッドまで、40段配置し、7ロット以上は7本束ねたテンドンを29段配置した。
鉛直方向プレストレスは鉛直方向に分離施工であることと円周方向プレストレスによる曲げモーメントに対応するため、PC鋼棒を配置して導入した。壁厚55cm部は28.5cm間隔、45cm部は57cm間隔である。」(58頁14行?25行)

・記載事項5
写真-4.2には、円筒状または略円筒状のLPGタンクが写されている。

・記載事項6
「図-4.6 PC鋼材配置およびコンクリート施工区分」(58頁)には、側壁上端から側壁下端まで(「側壁施工順序」で○14?○1)長さ26.788mのPC鋼棒を配設すること、側壁途中から側壁下端まで(「側壁施工順序」で○7?○1)長さ14.176mのPC鋼棒を配設することが図示されている。また、内壁が側壁途中から側壁下端まで(「側壁施工順序」で○7?○1)の部分において、側壁上端から側壁途中まで(「側壁施工順序」で○14?○8)に比べて外側に壁厚を厚くすること、縦断面形状が段付き形状となっていることが図示されている。

・記載事項7
「図-4.6 PC鋼材配置およびコンクリート施工区分」(58頁)には、側壁下端から2400mmの範囲(「側壁施工順序」で○1とされた部分)において、下になる程側壁が断面で内側に向かって厚さが増すこと、すなわち、いわゆる「ハンチ」を設けることが図示されている。

以上の記載事項1?7および写真-4.2、図-4.5、図4-6、図-4.7に基づけば、甲第1号証には以下の発明が記載されていると認められる。
「RC構造の底版と該底版上に立設するとともに底版とは剛結構造される側壁とから構成される円筒状または略円筒状のプレストレスコンクリート製のPC外槽を用いたLPG地上式貯槽において、
前記側壁の内部には、プレストレス力を導入可能で該側壁の上端から下端まで延設する鉛直方向のPC鋼棒および円周方向のPCテンドンが配設されるとともに該鉛直方向のPC鋼棒および該周方向のPCテンドンにはプレストレス力が導入されており、
該側壁は、縦断面形状が段付き形状となるように、側壁上端から側壁途中までは45cmの厚さに成形されており、側壁途中から側壁下端の壁厚方向の外側に向かって段状に部材厚が大きくなるように55cmの厚さで成形されており、
側壁の途中から下端までにおいて前記鉛直方向のPC鋼棒とは別途の鉛直方向のPC鋼棒が配設されるとともに該別途の鉛直方向のPC鋼棒にプレストレス力が導入されており、側壁下端の内側にはハンチが設けられている、プレストレスコンクリート製のPC外槽を用いたLPG地上式貯槽。」(以下、「甲1発明」という。)

(2)甲第2号証("60000m^(3 )prestressed concrete containtment tank for liquid natural gas")
甲第2号証には、Fig1.Typical section、Fig2.Schematic layout、Fig3.とともに以下の記載事項が記載されている。

・記載事項ア
「容積60,000m^(3)のプレストレストコンクリート製液化天然ガス格納用タンク」(9頁のタイトル)

・記載事項イ
「外側タンク(図1)の主な特徴は、
-締め固められた土石の上に設けられた直径54.01mのベーススラブ
-円筒状の壁、厚さ0.70m、高さ40.85m、内径49.41m
-球体状の、厚さ0.30m、半径49.41mの鉄筋コンクリート製ドーム(コンクリートは、ドームの下に加圧空気を注入することで持ち上げられた鋼製ドームに打設した)
-ポンプ及び他のタンクの設備を設置するためのドーム上の鋼製プラットホームである。」(9頁左欄8?16行)

・記載事項ウ
「円形基礎の環状梁とベーススラブとの間には一時的な施工継目があり、施工継目は壁と環状梁のプレストレス力導入後に無収縮コンクリートで固められる。」(10頁左欄3?6行)

・記載事項エ
「円形のコンクリートスラブは、直径54.01mで、大体において一定の厚さであるが、周縁部の梁は分厚くなっている。その周縁部には1.4m幅の施工継目があり、最下端の壁にプレストレスが導入された後、施工継目はコンクリートで固められる。タンクの壁は環状梁に固定されているので、壁の最下端に導入されたプレストレス力の一部は底版に伝播し、そのため、壁コンクリート打設後、環状梁にプレストレス力を導入することとなる。」(11頁左欄17?24行)

・記載事項オ
「プレストレスコンクリート壁
壁は、コンクリート基礎との接合位置で1.50mに増厚される箇所を除いて、0.70mの一定厚さであり、コンクリート製ドームに一体に接続されている。壁の水平及び垂直方向のプレストレスが導入されている。
水平プレストレスは、壁の全高に亘って、不等間隔で設けられた全周リングにより導入される。各リングは、それぞれが180°をカバーする2つのテンドンからなり、それらは4つの控え壁にアンカー止めされている。各リングは、隣接する2つのリングと90°ずらせて設けられている。」(11頁左欄28?36行)

・記載事項カ
「鉛直プレストレスは、均等に分散配置された一連のテンドンにより導入される(図2)。典型的な鉛直テンドンはJ型であり、その上部は、壁の頂部にアンカー止めされ、下部は、上述のように、厚さ1.50mの増厚部分内にある。控え壁にアンカー止めされるテンドンはL型である。」(11頁左欄44?48行)

・記載事項キ
9頁のFig1.の左下部には、「Construction joint 1.40 m wide」と記載されている。

以上の記載事項ア?キおよびFig1.?Fig3.に基づけば、甲第2号証には以下の発明が記載されていると認められる。
「コンクリートスラブと、コンクリートスラブ上に立設されるとともに、コンクリートスラブと固定されるプレストレストコンクリート壁とから構成される円筒状のプレストレストコンクリート製液化天然ガス格納用タンクにおいて、
前記プレストレストコンクリート壁の内部には、プレストレス力を導入可能で該プレストレストコンクリート壁の上端から下端まで延設する鉛直方向のJ型のテンドンおよび周方向のテンドンが配設されるとともに該鉛直方向のテンドンおよび該周方向のテンドンにはそれぞれプレストレス力が導入されており、
該プレストレストコンクリート壁が、上端から下端部付近まで0.70m厚さに成形され、下端の壁厚方向の外側に向かって段状に1.50m厚さの増厚部分が成形されており、その増厚部分にJ型の緊張部材の折り返し部分が配置されているプレストレストコンクリート製液化天然ガス格納用タンク。」(以下、「甲2発明」という。)

2.プレストレストコンクリート構造物の側壁下端に生じる曲げモーメントに対応するための出願時の技術について
本件出願時における、液化ガス貯蔵施設、水槽等のPC円形構造物の側壁下端に生じる曲げモーメントに対応するための技術について検討する。
円周方向にプレストレスを導入するPC円形構造物において、側壁と底版を剛結合とした場合に、PC円形構造物が空になった時等に、側壁下端部に曲げモーメント(固定端モーメント)が生じ、この曲げモーメントに対処する必要があるということは、広く知られていたものと認められる(参考文献Aの31?36頁、参考文献Bの18?19頁、参考文献Cの1頁右下欄13行?2頁左上欄2行、参考文献Dの2欄34行?3欄25行を参照)。
そして、種々の対処方法のうち、少なくとも以下のものは周知である。
(1)側壁下端部にハンチを形成
プレストレスト力が導入される側壁下端部の内側を肉厚としてハンチを形成し、これにより鉛直方向の緊張材を側壁内で相対的に偏心させて固定端モーメントを打ち消すモーメントを発生させる(参考文献Aの36頁、参考文献Bの18?19頁及び図-5、参考文献Cの2頁左上欄2?13行、参考文献Dの3欄26行?4欄6行を参照)。
(2)底版を分割して構築
側壁が上部に形成される外周縁部とその内側の内周部とに空隙を設けることで底版を分割し、円周方向のプレストレスを側壁に導入した後、該空隙部にコンクリート打設することにより、固定端モーメントを抑制する(参考文献Cの特許請求の範囲参照)。
<参考文献>
A:「最近のプレストレストコンクリート構造物と30年の歩み」(甲 第1号証と同じ)
B:「プレストレストコンクリート」、平成5年9月30日発行、第3 5巻第5号(通巻207号)
C:特開昭59-126874号公報
D:特公昭49-12202号公報

3.無効理由1について
請求人は、本件発明は、甲第1号証に記載された発明であり、あるいは、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであると主張しているので、この主張について検討する。
(1)対比
本件発明と甲1発明を対比する。
甲1発明の「RC構造の底版」は本件発明の「底版」に相当し、以下同様に、「底版とは剛結構造される」は「底版と剛結合される」に、「鉛直方向のPC鋼棒」は「鉛直方向の緊張材」に、「円周方向のPCテンドン」は「周方向の緊張材」に、「壁厚45cmの厚さ」は「一定の部材厚」に、「段状に部材厚が大きくなるように55cmの厚さで成形され」は「段状に部材厚が大きくなるように成形され」に、「プレストレスコンクリート製のPC外槽を用いたLPG地上式貯槽」は「プレストレストコンクリート構造物」に、各々相当する。
そして、甲第1号証には、底版全体が一体施工されるとは明記されていない。しかし、甲1号証には、底版は一体的に図示(図-4.5、図-4.6)されており、継ぎ目を設ける、分割施工をする等の記載は全くなく、一般にPC外槽を構築する際には底版を一体施工することがよく行われていることを考慮すると、甲1発明の底版は、全体が一体で施工されてなると解するのが自然である。なお、請求人は甲第1号証としていないが、甲第1号証と同じ「最近のプレストレストコンクリート構造物と30年の歩み」の59頁(被請求人が提出した平成21年4月8日付け上申書に乙1号証として添付)の図-4.8の「LPGタンクの施工順序」をみても、初期に底版の施工を行った後、再度底版に関連する施工を行うことが記載されていないことからも裏付けられる。
また、甲1発明は、側壁途中から側壁下端の壁厚方向の外側に向かって段状に部材厚が大きくなるように成形された部分を有するが、これは、側壁の下部になる程、漏液時に作用する液圧が高くなるため、これに対応して緊張材、鉄筋を多く配置する必要があり、そのために側壁の下部を増厚したものと解され、また、この増厚された部分には別途の鉛直方向の緊張材は配置されていない。
更に、甲1発明は、鉛直方向のPC鋼棒及び別途の鉛直方向のPC鋼棒にプレストレス力が導入され、側壁下端の内側にはハンチが設けられているものであるから、上記「第五 無効理由について」「2.プレストレストコンクリート構造物の側壁下端に生じる曲げモーメントに対応するための出願時の技術について」「(1)側壁下端部にハンチを形成」に記載した周知技術と同様なものであって、甲1発明は「側壁下端に生じる過大な曲げモーメントが低減されるようになっている」ものと認められる。そのため、「側壁下端に生じる過大な曲げモーメントが低減されるようになっている」点に限っては本件発明も甲1発明も一致するものの、曲げモーメントの低減は、本件発明では部材厚が大きくなるように成形された部分に配設され、プレストレス力が導入された別途の鉛直方向の緊張材によるものであるのに対し、甲1発明ではプレストレス力が導入された鉛直方向のPC鋼棒及び別途の鉛直方向のPC鋼棒と側壁下端の内側に設けられたハンチによるものである点で相違している。
そうすると、本件発明と甲1発明は、
「少なくとも底版全体が一体施工されてなる該底版と、該底版上に立設するとともに該底版と剛結合される側壁とから構成される円筒状または略円筒状のプレストレストコンクリート構造物において、
前記側壁の内部には、プレストレス力を導入可能で該側壁の上端から下端まで延設する鉛直方向の緊張材および周方向の緊張材が配設されるとともに該鉛直方向および該周方向の緊張材にはそれぞれプレストレス力が導入されており、
該側壁は、縦断面形状が段付き形状になるように、側壁上端から側壁途中までは一定の部材厚に成形されており、側壁途中から側壁下端の壁厚方向の外側に向かって段状に部材厚が大きくなるように成形されており、
前記鉛直方向の緊張材とは別途の鉛直方向の緊張材が配設されるとともに該別途の鉛直方向の緊張材にプレストレス力が導入されているプレストレストコンクリート構造物。」である点で一致し、以下の点で相違している。
<相違点1>
本件発明においては、段状に部材厚が大きくなるように成形された部分に別途の鉛直方向の緊張材が配設されるとともに該別途の鉛直方向の緊張材にプレストレス力が導入されており、側壁下端に生じる過大な曲げモーメントが低減されるようになっているのに対し、甲1発明においては、側壁途中から側壁下端の壁厚方向の外側に向かって段状に部材厚が大きくなるように成形された部分を有するものの、部材厚が大きくなるように成形された部分には別途の鉛直方向の緊張材は配設されておらず、側壁下端の内側のハンチにより側壁下端に生じる過大な曲げモーメントが低減されるようになっている点。

(2)判断
(イ)29条1項3号について
甲1発明は、上記<相違点1>として挙げたように、「段状に部材厚が大きくなるように成形された部分に別途の鉛直方向の緊張材が配設されるとともに該別途の鉛直方向の緊張材にプレストレス力が導入されており、側壁下端に生じる過大な曲げモーメントが低減されるようになっている」との構成を有するものではないから、本件発明は甲第1号証に記載された発明であるということはできない。

(ロ)29条2項について
上記<相違点1>について検討する。
甲2発明の「該プレストレストコンクリート壁が、上端から下端部付近まで0.70m厚さに成形され、下端の壁厚方向の外側に向かって段状に1.50m厚さの増厚部分が成形されており、」は、増厚部分においては0.7m厚さに0.8m厚さを加えて1.50mにしたことを意味し、0.8m厚さの部分は本件発明の「部材厚が大きくなるように成形」された部分に相当する。そして、0.8m厚さの部分にJ型のテンドンの折り返し部分が配置されており、プレストレストコンクリート壁およびテンドンは側壁および緊張材ということができる。
したがって、側壁の上端から下端まで延設する鉛直方向の緊張材とは別途かどうかは別として、甲2発明は、側壁の段状に部材厚が大きくなるように成形された部分に鉛直方向の緊張材が配設されるとともに当該鉛直方向の緊張材にプレストレス力が導入されるものである。しかし、甲2発明は、「円形基礎の環状梁とベーススラブとの間には一時的な施工継目があり、施工継目は壁と環状梁のプレストレス力導入後に無収縮コンクリートで固められる。」(記載事項ウ)からみて、上記「第五 無効理由について」「2.プレストレストコンクリート構造物の側壁下端に生じる曲げモーメントに対応するための出願時の技術について」「(2)底版を分割して構築」に記載した周知技術と同様なものであって、底版を分割して構築することにより「側壁下端に生じる過大な曲げモーメントが低減されるようになっている」ものと認められ、「段状に部材厚が大きくなるように成形された部分に別途の鉛直方向の緊張材が配設されるとともに該別途の鉛直方向の緊張材にプレストレス力が導入されており、側壁下端に生じる過大な曲げモーメントが低減されるようになっている」ものとは認められない。
また、刊行物「とびしま技報」(1979、2 No.20、1?20頁)(特に、図-9)には、段状に部材厚が大きくなるように成形された部分にU字ケーブルの折り返し部である鉛直方向のケーブルが配設されている点が記載され、ケーブルは緊張材であるから、側壁の上端から下端まで延設する鉛直方向の緊張材とは別途かどうかは別として、「とびしま技報」には、側壁の段状に部材厚が大きくなるように成形された部分に鉛直方向の緊張材が配設されるとともに当該鉛直方向の緊張材にプレストレス力を導入するとの技術事項が記載されている。しかし、図-9によれば、部材厚が大きくなるように成形されかつU字ケーブルの折り返し部である鉛直方向のケーブルが配設されているのは、EL(標高)841.8(840+1.8)?835(840-5.0)の範囲であり、図-5および図-6によれば、上記範囲の近傍には底版に相当するものは存在しない。したがって、「とびしま技報」に記載された技術事項は、部材厚が大きくなるように成形された部分に配設した鉛直方向の緊張材にプレストレス力を導入しているものであるが、これにより側壁下端に生じる過大な曲げモーメントが低減されるようになっているものとは認められない。
以上により、本件出願前において、段状に部材厚が大きくなるように成形された部分において鉛直方向の緊張材を配設し、プレストレス力を導入することは周知の技術手段と認められ、また、例を挙げるまでなく、プレストレストコンクリート構造物において、コンクリート部材の断面を荷重等の条件に応じて変化させること、およびこれに応じてコンクリート内にPC鋼材を適宜範囲に配置することは、プレストレストコンクリート構造物の設計時に普通に行われる技術常識にすぎないということができる。しかしながら、「段状に部材厚が大きくなるように成形された部分に別途の鉛直方向の緊張材が配設されるとともに該別途の鉛直方向の緊張材にプレストレス力が導入されており、側壁下端に生じる過大な曲げモーメントが低減されるようになっている」ことを周知ということはできない。
そうすると、<相違点1>のうち「段状に部材厚が大きくなるように成形された部分において鉛直方向の緊張材を配設する」ということが周知技術であったとしても、当該周知技術は「側壁下端に生じる過大な曲げモーメントが低減されるようになっている」ものではないから、甲1発明に上記周知技術を適用しても<相違点1>は解消することができず、本件発明が甲1発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものとすることはできない。
仮に、甲1発明において「段状に部材厚が大きくなるように成形された部分において鉛直方向の緊張材を配設」すれば、必然として力学的にみて「側壁下端に生じる過大な曲げモーメントが低減される」ものとなると解したとしても、そもそも「側壁下端に生じる過大な曲げモーメントが低減される」ことのない上記周知技術を甲1発明に適用することを当業者が容易に想起したものとは認められない。

以上総合すると、甲1号証は「段状に部材厚が大きくなるように成形された部分に別途の鉛直方向の緊張材が配設されるとともに該別途の鉛直方向の緊張材にプレストレス力が導入されており、側壁下端に生じる過大な曲げモーメントが低減されるようになっている」との構成を開示するものではなく、当該構成を容易なものとすることもできないから、本件発明は甲1発明から容易になし得たものとすることはできない。

そして、本件発明が、上記<相違点1>により「本発明のプレストレストコンクリート構造物によれば、満液時で設計された構造物の周方向のプレストレス力によって生じる、側壁を内側へ変形させようとする曲げモーメントを効果的に低減することができる。また、本発明のプレストレストコンクリート構造物によれば、底版全体を一体施工しながらも、発生曲げモーメントを比較的小さな数値内に収めることができ、鉛直方向の鉄筋量を低減することができる。したがって、側壁下端付近の過密配筋を防止することができ、品質のよいプレストレストコンクリート構造物を提供することができる。さらに、本発明のプレストレストコンクリート構造物によれば、施工性の向上と施工コストの低減を図ることができる。」という作用効果を奏することは明らかである。

(3)補足的検討
イ.請求人は、「甲第1号証に記載されたPC外槽の下端においては、短尺のPC鋼棒は側壁の断面中心から外側に位置し、短尺のPC鋼棒にプレストレス力が加わることにより、側壁を外側に曲げようとするモーメントが生じる。この点において、「別途の鉛直方向の緊張材にプレストレス力が導入され」なる構成によって、「周方向の緊張材もプレストレス力が導入されることによって側壁下端に生じる過大な曲げモーメント」を低減するものであるとする本件特許発明の構成と異なるところはない。」と主張しているので、この点について検討する。
甲第1号証の図-4.6において、短尺のPC鋼棒(L=14.176mのもの)は側壁の断面中心から外側に位置するように図示されており、力学的にみて、その場合には側壁を外側に曲げようとするモーメントが生じることは明白である。同時に、その内側には長尺のPC鋼棒(L=14.176mのもの)が断面中心から内側に位置するように図示されており、力学的にみて、その場合には側壁を内側に曲げようとするモーメントが生じることは明白である。
そして、側壁施工順序○2?○7における側壁における曲げモーメントは、短尺のPC鋼棒による外側に曲げようとするモーメントと長尺のPC鋼棒による内側に曲げようとするモーメントとの合成された曲げモーメントである。そして、それがどのような曲げモーメントとなるかは、短尺のPC鋼棒と長尺のPC鋼棒の位置関係、それぞれに導入するプレストレス力の強さ等により決まるものであるが、その詳細は甲第1号証では不明である。
一方、側壁施工順序○1における側壁は、その内側に増厚されてハンチが形成されているものであるから、短尺及び長尺のPC鋼棒はいずれも側壁の断面中心から外側に位置するものとなっている。そのため、プレストレス力が導入された短尺及び長尺のPC鋼棒とハンチにより、側壁下端に生じる過大な曲げモーメントを低減するものと認められる。
以上によれば、甲1発明は、短尺のPC鋼棒を側壁の断面中心から外側に位置させて側壁下端に生じる過大な曲げモーメントを低減しようとするという技術思想ではなく、ハンチを設けて側壁下端に生じる過大な曲げモーメントを低減しようとする技術思想と認められる。

ロ.請求人は、「訂正後の本件特許発明は、その側壁下端の内側の構成を何ら限定するものではないから、側壁下端にハンチが形成されたものを排除するものではない。側壁下端にハンチがあることを本件特許発明との相違点であるとする被請求人の主張は誤りである。」と主張しているので、この点について検討する。
請求人の主張するとおり、本件発明は、その側壁下端の内側の構成を何ら限定するものではなく、ハンチを形成することは任意(ハンチは有っても無くてもよい)であることは明らかである。これを前提として、本審決では本件発明を特定する事項である「該段状に部材厚が大きくなるように成形された部分においても前記鉛直方向の緊張材とは別途の鉛直方向の緊張材が配設されるとともに該別途の鉛直方向の緊張材にプレストレス力が導入されており、側壁下端に生じる過大な曲げモーメントが低減されるようになっている」について検討を行ったものである。

(4)無効理由1についてのまとめ
したがって、本件発明は、甲第1号証に記載された発明であり、あるいは、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである、とすることはできない。

4.無効理由2について
請求人は、本件発明は、甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであると主張しているので、この主張について検討する。
(1)対比
本件発明と甲2発明を対比する。
甲2発明の「コンクリートスラブ」は本件発明の「底版」に相当し、以下同様に、「コンクリートスラブと固定される」は「底版と剛結合される」に、「プレストレストコンクリート壁」は「側壁」に、「周方向のテンドン」は「周方向の緊張材」に、「プレストレストコンクリート製液化天然ガス格納用タンク」は「プレストレストコンクリート構造物」に、各々相当する。
また、甲2発明の「該プレストレストコンクリート壁が、上端から下端部付近まで0.70m厚さに成形され、下端の壁厚方向の外側に向かって段状に1.50m厚さの増厚部分が成形されており、」は、0.7m厚さに0.8m厚さを加えて1.50mしたことを意味し、0.8m厚さの部分は本件発明の「部材厚が大きくなるように成形」された部分に相当する。また、当該記載は、縦断面形状が段付き形状となっていることを意味しているから、本件発明の「該側壁は、縦断面形状が段付き形状になるように、側壁上端から側壁途中までは一定の部材厚に成形されており、側壁途中から側壁下端の壁厚方向の外側に向かって段状に部材厚が大きくなるように成形されており、」に相当する。
更に、甲2発明の「J型テンドン」のうち、プレストレストコンクリート壁の0.70m厚さの部分に配置され、かつプレストレストコンクリート壁上端から下端部まで配置されるテンドンの部分は、本件発明の「プレストレス力を導入可能で該側壁の上端から下端まで延設する鉛直方向の緊張材」に相当し、甲2発明の「J型テンドン」のうち、0.8m厚さの部分に配置されるJ型テンドンの折り返し部分は、本件発明の「部材厚が大きくなるように成形された部分」に配設された「鉛直方向の緊張材」に相当する。そして、側壁の上端から下端まで延設する鉛直方向の緊張材(J型テンドンの一部)と「別途」かどうかはさておき、本件発明と甲2発明は「段状に部材厚が大きくなるように成形された部分においても鉛直方向の緊張材が配設されるとともに該鉛直方向の緊張材にプレストレス力が導入されており」という点において一致している。
そうすると、本件発明と甲2発明は、
「少なくとも該底版と、底版上に立設するとともに該底版と剛結合される側壁とから構成される円筒状または略円筒状のプレストレストコンクリート構造物において、
前記側壁の内部には、プレストレス力を導入可能で該側壁の上端から下端まで延設する鉛直方向の緊張材および周方向の緊張材が配設されるとともに該鉛直方向および該周方向の緊張材にはそれぞれプレストレス力が導入されており、
該側壁は、縦断面形状が段付き形状になるように、側壁上端から側壁途中までは一定の部材厚に成形されており、側壁途中から側壁下端の壁厚方向の外側に向かって段状に部材厚が大きくなるように成形されており、
該段状に部材厚が大きくなるように成形された部分においても鉛直方向の緊張材が配設されるとともに該鉛直方向の緊張材にプレストレス力が導入されているプレストレストコンクリート構造物。」である点で一致し、以下の点で相違している。
<相違点2>
底版全体が、本件発明では一体施工されてなるのに対し、甲2発明ではそのような構成を有していない点。
<相違点3>
部材厚が大きくなるように成形された部分に配設される鉛直方向の緊張材と側壁の上端から下端まで延設する鉛直方向の緊張材は、本件発明では「別途の」ものとなっているのに対し、甲2発明では一つの緊張材である点。
<相違点4>
本件発明では、部材厚が大きくなるように成形された部分に配設される鉛直方向の緊張材にプレストレス力が導入されており、側壁下端に生じる過大な曲げモーメントが低減されるようになっているのに対し、甲2発明では、部材厚が大きくなるように成形された部分に配設される鉛直方向の緊張材にプレストレス力が導入されているが、側壁下端に生じる過大な曲げモーメントが低減されるようになっているか不明な点。

(2)判断
上記相違点2?4について検討する。
<相違点2>について
「第五 無効理由について」「2.プレストレストコンクリート構造物の側壁下端に生じる曲げモーメントに対応するための出願時の技術について」にも記載した参考文献C(特開昭59-126874号公報)(従来技術の記載参照)にも示されるように、プレストレストコンクリート製タンクにおいて底版を一体施工することは従来周知技術と認められる。したがって、甲2発明において上記周知手段を採用して底版を一体施工することは当業者であれば想到容易である。なお、甲2発明において、単に底版を一体施工とすると、分割施工という側壁下端に生じる過大な曲げモーメントを低減する手段がなくなるため、ハンチを設ける等、側壁下端に生じる過大な曲げモーメントを低減する手段を別途設ける必要がある。

<相違点3>について
一般に、プレストレストコンクリート構造物において、コンクリート内にPC鋼材をどの位置に配置するか、どのようなPC鋼材を配置するかは構造設計において最適なものとなるように決定されるものであり、コンクリート内に配置する特定のPC鋼材を別途のものとするか一つのものとするかは、施工性、強度等を考慮して決定される設計事項である。
そうすると、甲2発明において、部材厚が大きくなるように成形された部分に配設される鉛直方向の緊張材と側壁の上端から下端まで延設する鉛直方向の緊張材を別途のものとするか否かは、設計事項に過ぎない。

<相違点4>について
甲2発明は、「円形基礎の環状梁とベーススラブとの間には一時的な施工継目があり、施工継目は壁と環状梁のプレストレス力導入後に無収縮コンクリートで固められる。」(記載事項ウ)からみて、上記「第五 無効理由について」「2.プレストレストコンクリート構造物の側壁下端に生じる曲げモーメントに対応するための出願時の技術について」「(2)底版を分割して構築」に記載した周知技術と同様なものであって、底版を分割して構築することにより「側壁下端に生じる過大な曲げモーメントが低減されるようになっている」ものと認められる。また、「施工継目は壁と環状梁のプレストレス力導入後に無収縮コンクリートで固められる」との記載によれば、増厚部分に配置されるJ型テンドンの折り返し部分にプレストレス力を導入した後、施工継目が固められるものと認められるから、J型テンドンの折り返し部分は「側壁下端に生じる過大な曲げモーメントが低減される」との作用を奏するものとは認められない。
したがって、甲2発明は、「部材厚が大きくなるように成形された部分においても鉛直方向の緊張材が配設」される点で本件発明と一応一致しているものの、「側壁下端に生じる過大な曲げモーメントが低減」するのは当該緊張材ではなく、底版を分割施工することによるものである。
また、「3.無効理由1について」「(2)判断」「(ロ)29条2項について」で検討したように、段状に部材厚が大きくなるように成形された部分において鉛直方向の緊張材を配設することは周知の技術手段と認められるが、「段状に部材厚が大きくなるように成形された部分に鉛直方向の緊張材が配設されるとともに該鉛直方向の緊張材にプレストレス力が導入されており、側壁下端に生じる過大な曲げモーメントが低減されるようになっている」ことを周知ということはできない。したがって、甲2発明に上記周知技術を適用しても<相違点4>は解消することができず、本件発明が甲2発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものとすることはできない。

以上総合すると、甲2号証は「段状に部材厚が大きくなるように成形された部分に鉛直方向の緊張材が配設されるとともに該鉛直方向の緊張材にプレストレス力が導入されており、側壁下端に生じる過大な曲げモーメントが低減されるようになっている」との構成を開示するものではなく、当該構成を容易なものとすることもできないから、本件発明は甲2発明から容易になし得たものとすることはできない。

そして、本件発明が、上記<相違点4>により「本発明のプレストレストコンクリート構造物によれば、満液時で設計された構造物の周方向のプレストレス力によって生じる、側壁を内側へ変形させようとする曲げモーメントを効果的に低減することができる。また、本発明のプレストレストコンクリート構造物によれば、底版全体を一体施工しながらも、発生曲げモーメントを比較的小さな数値内に収めることができ、鉛直方向の鉄筋量を低減することができる。したがって、側壁下端付近の過密配筋を防止することができ、品質のよいプレストレストコンクリート構造物を提供することができる。さらに、本発明のプレストレストコンクリート構造物によれば、施工性の向上と施工コストの低減を図ることができる。」という作用効果を奏することは明らかである。

(3)無効理由2についてのまとめ
したがって、本件発明は、甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである、とはいえない。

第六 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張および証拠方法によっては、本件発明の特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】少なくとも底版全体が一体施工されてなる該底版と、該底版上に立設するとともに該底版と剛結合される側壁とから構成される円筒状または略円筒状のプレストレストコンクリート構造物において、
前記側壁の内部には、プレストレス力を導入可能で該側壁の上端から下端まで延設する鉛直方向の緊張材および周方向の緊張材が配設されるとともに該鉛直方向および該周方向の緊張材にはそれぞれプレストレス力が導入されており、
該側壁は、縦断面形状が段付き形状になるように、側壁上端から側壁途中までは一定の部材厚に成形されており、側壁途中から側壁下端の壁厚方向の外側に向かって段状に部材厚が大きくなるように成形されており、
該段状に部材厚が大きくなるように成形された部分においても前記鉛直方向の緊張材とは別途の鉛直方向の緊張材が配設されるとともに該別途の鉛直方向の緊張材にプレストレス力が導入されており、側壁下端に生じる過大な曲げモーメントが低減されるようになっていることからなるプレストレストコンクリート構造物。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2008-08-13 
結審通知日 2008-08-29 
審決日 2008-09-11 
出願番号 特願2004-268430(P2004-268430)
審決分類 P 1 113・ 121- YA (E04H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 五十幡 直子  
特許庁審判長 伊藤 陽
特許庁審判官 河本 明彦
川島 陵司
登録日 2006-08-11 
登録番号 特許第3839448号(P3839448)
発明の名称 プレストレストコンクリート構造物  
代理人 早川 康  
代理人 関谷 三男  
代理人 石川 滝治  
代理人 関谷 三男  
代理人 平木 祐輔  
代理人 小林 武  
代理人 石川 滝治  
代理人 平木 祐輔  
代理人 早川 康  

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