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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04M 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04M |
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管理番号 | 1204128 |
審判番号 | 不服2006-2590 |
総通号数 | 119 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-11-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-02-13 |
確定日 | 2009-09-15 |
事件の表示 | 平成10年特許願第200310号「無線電話」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 4月30日出願公開、特開平11-122335〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成10年7月15日(パリ条約による優先権主張1997年7月16日、英国)の出願であって、平成17年11月4日付けで拒絶査定され、これに対し、平成18年2月13日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年3月15日付けで手続補正がなされ、当審により、拒絶の理由が発せられたのに対し、平成20年8月7日付けで手続補正がなされたものである。 第2.補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成20年8月7日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.本願発明と補正後の発明 上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の平成18年3月15日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された 「ユーザが操作できるスイッチ及びユーザからの音声情報を受け取るマイクロホンを有するヘッドセットと、 上記スイッチ及びマイクロホンの両方を経てユーザにより入力された情報に応答して、無線電話に記憶された複数の電話番号の1つを選択するための選択手段とを備え、 上記選択した電話番号をその後の上記スイッチの動作でダイヤルすることを特徴とするポータブル無線電話。」 という発明(以下、「本願発明」という。)を、 「ユーザが操作できるスイッチ及びユーザからの音声情報を受け取るマイクロホンを有するヘッドセットと、 上記スイッチの第1のタイプの動作及びマイクロホンの両方を経てユーザにより入力された情報に応答して、無線電話に記憶された複数の電話番号の1つを選択するための選択手段とを備え、 上記選択した電話番号をその後の上記スイッチの第2のタイプの動作でダイヤルすることを特徴とするポータブル無線電話。」 という発明(以下、「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである。 2.補正の適否 (1)新規事項の有無、補正の目的要件 本件補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において、補正前の「スイッチ及びマイクロホンの両方を経てユーザにより入力された情報」について「スイッチの第1のタイプの動作及びマイクロホンの両方を経てユーザにより入力された情報」と、また、補正前の「スイッチの動作でダイヤルする」ことについて、「スイッチの第2のタイプの動作でダイヤルする」と、それぞれ、スイッチの動作のタイプを規定することにより特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第17条の2第3項(新規事項)及び第4項第2号(補正の目的)の規定に適合している。 (2)独立特許要件 本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。 [補正後の発明] 上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で「補正後の発明」として認定したとおりである。 [引用例] 当審の拒絶理由に引用された特開平4-306944号公報(以下「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 「【0005】 【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため、本発明は、従来の携帯無線電話装置に加え、音声を認識し認識結果を出力する音声認識部と、本体とヘッドセットを接続する接続線の途中に接続線と一体に構成されたスイッチ手段と、前記スイッチ手段が操作されたことを検知し、ヘッドセットの送話器から入力された音声を音声経路切換部を制御して前記音声認識部へ入力し、その認識結果出力により無線電話として動作する制御機能を制御部に設けたものである。 【0006】 【作用】上記の構成により、ヘッドセットと本体を接続する接続線の途中に設けられたスイッチを押しながら、音声にて操作を指示することができるので、本体をポケットに入れたまま、電話をかけたり終話したり、また着信を受けることができる。 【0007】 【実施例】本発明の一実施例について説明する。図1は、本発明による携帯無線電話装置の構成を示すブロック図で、本実施例が図3に示した従来例と異なる点は、キーボード3および接続線9の途中にそれぞれ、音声による指示モードに切り換える機能切換スイッチ3dおよび15を設けた点と、本体1の中に、入力された音声による操作指示を認識し、その結果を出力する音声認識部16を備えた点と、表示部4に電話番号のほかに、モード表示,メッセージが表示できるようにした点である。その他は従来例と変りがないので、同じ構成回路および部品には同一符号を付して説明を省略する。 【0008】以上のように構成された携帯無線電話装置について、その動作を説明する。まず、ヘッドセット2が接続されている場合について説明する。通常は、キーボード3による指示モードで使用されるが、キーボード指示モードによる発信・終話および着信の動作は従来例と同様なので、その説明を省略する。音声指示モードにより電話をかける場合は、まず、機能切換スイッチ15を押すと、制御部14はこれを検知して、音声指示モードへ切り換える。音声指示モードになると、送話器10の音声出力は音声経路切換部13を介して音声認識部16に入力される。この状態で“イチ”“ニ”と発声すると音声認識部16はこれを認識して、キーボードのテンキー“1”“2”に対応するコードを制御部14に出力する。制御部14は電話番号を表示部4に表示させる。次に、“カイシ”と発声すると、音声認識部16はこれを認識して、開始キー3aに対応するコードを制御部14に出力する。制御部14は開始キー3aが押された場合と同様に無線部12を介して固定局と制御信号のやりとりを行い、リンクが成立したら、音声経路切換部13を制御して、受話器11を受話音声経路に接続する。機能切換スイッチ15が離されると、制御部14は、音声指示モードからキーボード指示モードに切り換え、送話器10を音声認識部16から切り離し、音声経路に接続して、無線部12を介して相手と通話できるようにする。通話が終了し、終話しようとする場合は、再び機能切換スイッチ15を押しながら、“シュウワ”と発声すると、同様に音声認識部16が終話キー3bに対応するコードを制御部14に出力し、制御部14は、終話の動作を行う。待機状態で、無線部12に受信している信号は、制御部14がモニタしており、固定局からの呼出しを検知すると、呼び出し音を鳴らして着信を知らせる。使用者が機能切換スイッチ15を押しながら、“カイシ”と発声すると、音声認識部16が開始キー3aに対応するコードを制御部14に出力し、制御部14は音声経路切換部13を制御して、受話器11を音声経路に接続する。機能切換スイッチ15が離されると、制御部14は、音声指示モードからキーボード指示モードに切り換え送話器10を音声認識部16から切り離し、音声経路に接続して無線部12を介して相手と通話できるようにする。ヘッドセット2が本体1に接続されていない場合は、本体1側の送話器5、受話器6が音声経路に接続され、キーボード3の機能切換スイッチ3dを使用して同様に音声指示モードの操作が可能である。」(段落【0005】?【0008】) 上記引用例の記載及びこの分野における技術常識を考慮すると、ヘッドセットの送話器はマイクロホンであり、マイクロホンは音声情報が入力されるものであり、機能切換スイッチはユーザが操作するものである。また、電話をかける場合に、“イチ”“ニ”と発声するとこれを認識してキーボードのテンキー“1”“2”に対応するコードを制御部に出力することは、音声認識により電話番号を入力することであり、“カイシ”と発声すると、音声認識部が開始キーに対応するコードを制御部に出力し、制御部が開始キーが押された場合と同様の処理を行うことは、その後の動作の記載を参酌すれば、音声による指示でダイヤルすることであると言える。 したがって、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。 (引用発明) 「ユーザが操作できるスイッチ及びユーザからの音声情報が入力されるマイクロホンを有するヘッドセットと、 上記スイッチの音声による指示モードに切り換える操作及びマイクロホンの両方を経てユーザにより入力された情報に応答して、音声認識により電話番号を入力する手段とを備え、 上記入力した電話番号をその後の音声による指示でダイヤルする携帯無線電話装置。」 [対比・判断] 「音声情報が入力されるマイクロホン」は、音声情報の入力についてマイクロホンを主体として表現すれば、音声情報を受け取るマイクロホンということができ、引用発明の「音声による指示モードに切り換える操作」を「第1のタイプの動作」と称することは任意であり、引用発明の「音声認識により電話番号を入力する手段」と補正後の発明の「無線電話に記憶された複数の電話番号の1つを選択するための選択手段」は、ともに電話番号を特定する手段であり、引用発明の「入力した電話番号をその後の音声による指示でダイヤルする」ことと、補正後の発明の「選択した電話番号をその後の上記スイッチの第2のタイプの動作でダイヤルする」ことは、ともに特定した電話番号をその後のユーザの行動を契機としてダイヤルする点で共通し、引用発明の「携帯無線電話装置」は、携帯可能な無線電話であるから、ポータブル無線電話である。 したがって、補正後の発明と引用発明は、以下の点で一致し、また、相違している。 (一致点) 「ユーザが操作できるスイッチ及びユーザからの音声情報を受け取るマイクロホンを有するヘッドセットと、 上記スイッチの第1のタイプの動作及びマイクロホンの両方を経てユーザにより入力された情報に応答して、電話番号を特定する手段とを備え、 上記特定した電話番号をその後のユーザの行動を契機としてダイヤルするポータブル無線電話。」 (相違点1) 電話番号を特定する手段が、補正後の発明は、無線電話に記憶された複数の電話番号の1つを選択するための選択手段であるのに対し、引用発明は、電話番号を入力する手段である点。 (相違点2) 電話番号をダイヤルする契機となるユーザの行動について、補正後の発明は、「上記スイッチ」すなわちヘッドセットのスイッチの第2のタイプの動作を契機とするのに対し、引用発明は、音声による指示を契機とする点。 そこで、上記相違点について検討する。 まず、相違点1について検討するに、ダイヤルする際に、電話番号を入力する代わりに、予め登録した電話番号から選択してダイヤルすることは常套手段であり、また、音声認識を行う電話機において、ユーザの操作及び音声に応答して、記憶された複数の電話番号の一つを選択することは周知(例えば、特開平1-152851号公報(第2頁左下欄第9行?第3頁左上欄第2行)、特開平9-8894号公報(段落【0067】?【0071】)参照)であるから、引用発明において、音声認識により電話番号を入力する手段に代えて、無線電話に記憶された複数の電話番号の1つを選択するための選択手段を設けることは、当業者が容易になし得たことである。 次に、相違点2について検討するに、引用発明において、音声による指示は、開始キー、すなわちスイッチが押された場合と同様の処理を行うための指示であり、また、携帯電話において、ヘッドセット等のスイッチの操作を契機としてダイヤルすることは周知(例えば、特開平5-103063号公報(段落【0009】?【0013】)、特開平5-327844号公報(段落【0009】?【0013】、【0025】、【0026】)参照)であるから、引用発明において、音声による指示を契機とすることに代えて、ヘッドセットのスイッチの操作を契機とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。そしてその際、一つのスイッチに、その操作に応じて異なる複数の機能を割り当てることによりキー数の増加を避けることが周知(特開平5-103063号公報(段落【0009】?【0013】)、特開平5-35291号公報(段落【0025】?【0027】)、特開平7-162498号公報(【0012】?【0014】)参照)であることに鑑みれば、引用発明においてヘッドセットに設けられているスイッチを、その操作に応じて異なる複数の機能を割り当てることが可能なスイッチとし、ダイヤルする契機となるスイッチの動作を、上記第1のタイプの動作とは異なる動作とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。 以上のとおりであるから、補正後の発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者であれば容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3.結語 したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3.本願発明について 1.本願発明 平成20年8月7日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は上記「第2.補正却下の決定」の項中の「1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。 2.引用発明 引用発明は、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「2.補正の適否」の項中の「(2)独立特許要件」の項中の「[引用例]」で認定したとおりである。 3.対比・判断 そこで、本願発明と引用発明とを対比するに、本願発明は上記補正後の発明から本件補正に係る限定を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成に本件補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「2.補正の適否」の項中の「(2)独立特許要件」の項で検討したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者であれば容易に発明できたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者であれば容易に発明できたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、上記引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-04-15 |
結審通知日 | 2009-04-20 |
審決日 | 2009-05-01 |
出願番号 | 特願平10-200310 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H04M)
P 1 8・ 575- WZ (H04M) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小林 勝広 |
特許庁審判長 |
山本 春樹 |
特許庁審判官 |
土居 仁士 石井 研一 |
発明の名称 | 無線電話 |
代理人 | 中村 稔 |
代理人 | 宍戸 嘉一 |
代理人 | 小川 信夫 |
代理人 | 大塚 文昭 |