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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1204208
審判番号 不服2007-29835  
総通号数 119 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-11-01 
確定日 2009-09-17 
事件の表示 特願2003-77275「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成16年10月14日出願公開、特開2004-283291〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第一.手続の経緯
本願は、平成15年3月20日を出願日とする特許出願であって、平成19年1月15日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内である同年3月23日に意見書及び手続補正書が提出され、同年9月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月1日に拒絶査定不服審判が請求され、同月22日付けで手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。
また、当審において、平成20年12月3日付けで審査官による前置報告書の内容を添付して審尋を行い、請求人から平成21年2月6日に回答書が提出されている。

第二.本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年11月22日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1(以下「本願補正発明」という。)は以下のように補正された。
「 左目用画像及び右目用画像を表示領域に表示することにより遊技者に立体画像を見せる表示装置と、前記表示装置の表示領域にて複数の識別情報を変動表示させて変動表示ゲームを行う表示制御手段と、この変動表示ゲームの結果態様に関連して特定の遊技価値を付与する特別遊技状態を生起可能な特別遊技状態制御手段と、を備える遊技機において、
前記表示制御手段は、
予め設定した識別情報の画像データ及び前記変動表示ゲーム中の識別情報の表示態様が時間経過に対応して設定された複数のシーケンスデータを記憶するデータ記憶手段と、
前記データ記憶手段に記憶された複数のシーケンスデータから、表示を行うシーケンスデータを選択するシーケンスデータ選択手段と、
前記シーケンスデータ選択手段により選択されたシーケンスデータに基づいて、前記表示領域の前面側に立体表示される識別情報の再生位置を前記変動表示ゲームの時間経過に対応して仮想的に設定する再生位置設定手段と、
前記再生位置設定手段により仮想的に設定された再生位置に基づいて、前記表示領域と再生位置との奥行き方向の距離を特定可能な座標パラメータを決定する座標パラメータ決定手段と、
前記座標パラメータ決定手段により決定された座標パラメータに基づいて、前記識別情報の画像データから左眼用画像と右眼用画像をそれぞれ生成する左右画像生成手段と、
前記左右画像生成手段により生成された左眼用画像と右眼用画像とを合成して、前記表示装置に表示させる合成手段と、
を備え、
前記再生位置設定手段は、前記表示領域の前面側に立体表示される複数の識別情報毎に再生位置を設定するとともに、当該複数の識別情報が等差な奥行き間隔で隣り合うように再生位置を設定し、 前記左右画像生成手段は、前記表示領域と再生位置の奥行き方向の距離に対する前記識別情報の画像データの水平方向の視差量が予め段階的に設定されたテーブルを用いて、前記座標パラメータ決定手段により決定された座標パラメータに対応する視差量を算出し、当該視差量に基づいて前記識別情報の画像データから前記左眼用画像と右眼用画像をそれぞれ生成することを特徴とする遊技機。」
(下線部は補正によって追加された箇所)

2.補正要件(目的)の検討
請求項1についての補正は、発明を特定するために必要な事項である、「左右画像生成手段」について、「前記表示領域と再生位置の奥行き方向の距離に対する前記識別情報の画像データの水平方向の視差量が予め段階的に設定されたテーブルを用いて、前記座標パラメータ決定手段により決定された座標パラメータに対応する視差量を算出し、当該視差量に基づいて前記識別情報の画像データから前記左眼用画像と右眼用画像をそれぞれ生成する」ものである点を具体的に限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に相当する。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に該当する。

3.補正要件(独立特許要件:特許法第29条第2項)の検討
(1)引用刊行物記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、特開平9-298761号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、
「【請求項1】 複数のスプライト画像が表示優先順位にしたがって表示される表示装置、
表示すべき各スプライト画像の二次元画像情報を発生させるとともに、各スプライト画像に対する視差情報を発生させる第1手段、
各スプライト画像に対する視差情報に基づいて、各スプライト画像の表示優先順位を決定し、各スプライト画像の二次元画像情報から、表示装置の表示位置ごとに、表示優先順位に応じた二次元画像情報を選択する第2手段、
第2手段によって選択された二次元画像情報から、それに対応するスプライト画像の視差情報に応じた視差を有する左目用表示データと右目用表示データとを生成する第3手段、ならびに第3手段によって生成された左目用表示データと右目用表示データとに基づいて、表示装置に各スプライト画像の立体画像を表示させる第4手段、
を備えている立体画像表示装置。
【0001】【発明の属する技術分野】この発明は、パチンコ機等に立体画像を表示する立体画像表示装置に関する。
【0002】【従来の技術】パチンコ機として、液晶表示器等の表示器を備え、当たり情報等に応じた画像が表示器に表示される機種がある。
【0011】ところで、最近、パチンコ機の趣向性を高めるために、画像を立体的に表示させるパチンコ機が開発されている。・・・
【0022】また、この発明は、1画面内のパターングラフィック画像において、その一部のみを立体表示させたり、1画面内のパターングラフィック画像における複数の領域の画像を、互いに視差が異なる立体画像として表示させたりすることも可能となる立体画像表示装置を提供することを目的とする。
【0023】【課題を解決するための手段】この発明による第1の立体画像表示装置は、複数のスプライト画像が表示優先順位にしたがって表示される表示装置、表示すべき各スプライト画像の二次元画像情報を発生させるとともに、各スプライト画像に対する視差情報を発生させる第1手段、・・・
【0026】表示装置としては、たとえば、カラー液晶表示装置が用いられる。第1手段としては、たとえば、複数のスプライト画像の二次元画像情報および各スプライト画像の二次元画像情報毎の視差情報が予め記憶されている記憶手段、ならびに記憶手段から表示すべき各スプライト画像の二次元画像情報およびそれに対応する視差情報を読み出す手段を備えているものが用いられる。
【0032】立体画像表示装置は、表示制御ユニット1と単板式のカラー液晶表示器(LCD)2とを備えている。表示制御ユニット1は、CPU11、そのプログラム等を記憶するROM12、必要なデータを記憶するRAM13、パターングラフィック情報(背景画像情報)およびスプライト画像情報が記憶されたCG-ROM14、CG-ROM14の記憶内容に基づいて表示すべき画像の映像信号を生成するVDP(Video Display Processor)15およびLCD2を制御するLCDタイミングコントローラ16を備えている。CG-ROM14には、二次元画像情報が記憶されている。
【0033】CPU11には、パチンコ機の状態を管理しているP機制御部から、当たり情報、出玉情報等が送られてくる。CPU11は、P機制御部から送られてきた情報に応じて、対応する表示画像の映像信号(R、G、B信号)をVDP15に生成させるためのVDP制御信号をVDP15に出力する。VDP制御信号とは、たとえばスプライト画像を生成したり、パターングラフィック画像(背景画像)を生成したりするための制御信号である。
【0043】スプライト画像発生部25は、CPUインタフェース21から送られてくるスプライト画像生成用の制御データを格納するスプライトメモリ26を備えている。スプライト画像発生部25は、スプライトメモリ26に格納されたスプライト画像生成用の制御データに基づいて、スプライト画像情報(絵素情報)を、CG-ROMインタフェース27を介してCG-ROM14から取り込む。
【0044】図4は、スプライトメモリ26の内容を示している。この例では、スプライトメモリ26には、1画面に最大k個分のスプライト画像1?kを表示するために、k個分の制御データ格納エリアE1?Ekが設けられている。各制御データ格納エリアE1?Ekには、読み出すべきスプライト画像情報が格納されているCG-ROM14のアドレス(読み出しアドレス)、当該スプライト画像の表示位置を示すX座標およびY座標、ならびに視差量の情報(視差情報)が格納される。
【0048】カラーバス制御部28は、視差情報に基づいて、カラーバス上に出力されたパターングラフィック画像情報およびスプライト画像情報の表示優先順位を決定し、決定した表示優先順位に基づいて、カラーバス上に出力されたパターングラフィック画像情報およびスプライト画像情報から、表示画面中の各表示位置において表示すべき情報を選択して、ルックアップテーブル29に送る。
【0049】ルックアップテーブル29は、送られてきた情報(絵素情報:カラーコード)を、対応する映像信号(R、G、B信号)に変換し、得られた映像信号(R、G、B信号)をRGBの組単位でかつ1絵素期間ごとに2D/3D変換回路30に送る。
【0050】2D/3D変換回路30は、この例では、パターングラフィック画像に対する映像信号に対しては、視差のない右目用映像信号(R_(R )信号、G_(R )信号、B_(R )信号)と左目用映像信号(R_(L )信号、G_(L )信号、B_(L )信号)とを生成する。2D/3D変換回路30は、スプライト画像に対する映像信号に対しては、視差情報に応じた視差を持つ右目用映像信号(R_(R )信号、 G_(R )信号、B_(R )信号)と左目用映像信号(R_(L )信号、G_(L )信号、B_(L )信号)とを生成する。
【0051】そして、生成された右目用映像信号(R_(R )信号、G_(R )信号、B_(R )信号)と左目用映像信号(R_(L )信号、G_(L )信号、B_(L )信号)とが、1ドット毎に交互となる立体映像信号が得られるようなRGBの組単位の信号を生成して、1絵素期間ごとに出力する。
【0052】2D/3D変換回路30から出力された立体映像信号は、LCD2に送られ、右目用映像信号(R_(R )信号、G_(R )信号、B_(R )信号)と左目用映像信号(R_(L )信号、G_(L )信号、B_(L )信号)とが、1ドット毎に交互となるように表示される。したがって、右目用映像と左目用映像との間で視差を有するスプライト画像が表示された場合において、右目用映像を右目のみで観察し、左目用映像を左目のみで観察することにより、スプライト画像を立体視することができる。
【0055】2D/3D変換回路30の入力信号(R、G、B信号)は、第2の選択回路33の右目用の映像信号の入力端子IR_(R )、IG_(R )、IB_(R )に、右目用の映像信号(R_(R )、G_(R )、B_(R )信号)として供給される。また、2D/3D変換回路30の入力信号(R、G、B信号)は、第1の選択回路32の第1のRGB入力端子にも供給される。さらに、2D/3D変換回路30の入力信号(R、G、B信号)は、シフトレジスタ31の入力端子にも供給される。
【0056】シフトレジスタ31の各段F1?Fjの出力は、第1の選択回路32の第2のRGB入力端子?第(j+1)のRGB入力端子にそれぞれ供給される。第1の選択回路32は、入力された複数組のRGB信号のうち、2D/3D変換回路30の入力信号に対応する視差情報に応じた位相ずれ量をもつ1組のRGB信号を選択して、RGB出力端子に出力する。第1の選択回路32のRGB出力端子から出力されたRGB信号は、左目用の映像信号として、第2の選択回路33の左目用の映像信号の入力端子IR_(L )、IG_(L )、IB_(L )に供給される。
【0057】第2の選択回路33は、右目用の映像信号の入力端子IR_(R )、IG_(R )、IB_(R )に入力された右目用の映像信号R_(R )、G_(R )、B_(R )と、左目用の映像信号の入力端子IR_(L )、IG_(L )、IB_(L )に入力された左目用の映像信号 R_(L )、G_(L )、B_(L )とを1ドット毎に組み合わせて、立体映像信号出力端子 OR_(S )、OG_(S )、OB_(S )から立体映像信号R_(S )、G_(S )、B_(S )を出力する。
【0064】視差情報は、この例では、0?jの範囲内であるものとする。この例では、グラフィック画像に対しては、視差情報が”0”であるものとして取り扱われる。視差情報が”1”であるスプライト画像のRGB信号が2D/3D変換回路30に入力されている場合について説明する。」
と記載されており、摘記した上記の記載や図面等によれば、引用文献1には
「 左目用表示データと右目用表示データとに基づいて、各スプライト画像の立体画像が表示される表示装置と、当たり情報等に応じて、対応する表示画像の映像信号を生成する表示制御ユニット1と、を備えるパチンコ機において、
前記表示制御ユニット1は、
複数のスプライト画像についてのスプライト画像情報が記憶されたCG-ROM14及び複数のスプライト画像の表示位置を示すX座標およびY座標、ならびに視差情報を含むスプライト画像生成用の制御データを格納するスプライトメモリ26と、
前記スプライトメモリ26に格納されたスプライト画像生成用の制御データに基づいて、スプライト画像情報をCG-ROM14から取り込むスプライト画像発生部25と、
前記スプライトメモリ26から表示すべき各スプライト画像の表示位置を示すX座標およびY座標およびそれに対応する視差情報を読み出す手段と、
前記視差情報に応じた視差を持つ右目用映像信号と左目用映像信号とを生成し、生成された右目用映像信号と左目用映像信号とが、1ドット毎に交互となる立体映像信号が得られるようなRGBの組単位の信号を生成して、1絵素期間ごとに出力する2D/3D変換回路30と、
を備え、
視差が大きいスプライト画像ほど、モニタ面に対して前方に存在するように立体視され、
前記複数のスプライト画像の視差情報は0?jの範囲内であり、前記2D/3D変換回路30は、入力されているスプライト画像の視差情報に応じた位相ずれ量をもつ1組のRGB信号を選択して、RGB出力端子に出力するパチンコ機。」
の発明(以下「引用発明」という。)が開示されていると認められる。

(2)引用発明と本願補正発明との対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを比較すると、引用発明の「表示制御ユニット1」及び「パチンコ機」は、それぞれ本願補正発明の「表示制御手段」及び「遊技機」に相当する。
さらに、引用文献1の記載等からみて、以下のことが言える。

a.引用発明の「表示装置」に表示領域があること及び引用発明の「左目用表示データと右目用表示データ」が左目用画像と右目用画像をその表示装置の表示領域に表示するためのものであることは明らかであり、引用発明において「立体画像が表示される」ことは遊技者に立体画像を見せることにほかならないから、引用発明は本願補正発明の「左目用画像及び右目用画像を表示領域に表示することにより遊技者に立体画像を見せる表示装置」に相当する構成を有しているということができる。

b.引用発明のパチンコ機は当たり情報等に応じて、対応する表示画像の映像信号を生成しており、複数のスプライト画像が表示されること、従来パチンコ機において複数の識別情報を変動表示させて変動表示ゲームを行うことがごく普通に行われていることを考慮すると、引用発明の「スプライト画像」は、本願補正発明の「識別情報」の画像に相当するものということができ、引用発明も本願発明と同様「表示装置の表示領域にて複数の識別情報を変動表示させて変動表示ゲームを行う」ものと認めることができる。

c.上記bで述べたように引用発明の「スプライト画像」は本願補正発明の「識別情報」の画像に相当するから、引用発明の「複数のスプライト画像についてのスプライト画像情報」は本願補正発明の「識別情報の画像データ」に相当するものといえる。
そして、引用発明においても「スプライト画像情報」や「スプライト画像生成用の制御データ」が予め設定されていることは当然である。
また、引用発明の「スプライト画像生成用の制御データ」がスプライト画像の表示態様を制御するものであることも明らかであるとともに、上記bで述べたように引用発明も「複数の識別情報を変動表示させて変動表示ゲームを行う」ものと認められるから、引用発明の「CG-ROM14」及び「スプライトメモリ26」と本願補正発明の「データ記憶手段」とは、“予め設定した識別情報の画像データ及び変動ゲーム中の識別情報の表示態様に関するデータ”を記憶する手段である点で共通する。

d.上記cで述べたように、引用発明の「CG-ROM14」及び「スプライトメモリ26」と本願補正発明の「データ記憶手段」とは、“予め設定した識別情報の画像データ及び変動ゲーム中の識別情報の表示態様に関するデータ”を記憶するものである点で共通し、引用発明がスプライトメモリ26に格納されたスプライト画像生成用の制御データに基づいて、スプライト画像情報をCG-ROM14から取り込んでいることやスプライトメモリ26から表示すべき各スプライト画像の表示位置を示すX座標およびY座標、ならびにそれに対応する視差情報を読み出していることから、引用発明は表示を行うスプライト画像について、スプライト画像生成用の制御データやスプライト画像情報を複数のデータから選択しているものであるといえる。
そうしてみると、引用発明の「スプライト画像発生部25」及び「X座標およびY座標、ならびにそれに対応する視差情報を読み出す手段」と本願補正発明の「シーケンスデータ選択手段」とは、“データを記憶する手段に記憶された複数のデータから、表示を行うデータを選択する”手段である点で共通する。

e.引用発明は「スプライト画像生成用の制御データ」に「複数のスプライト画像の表示位置を示すX座標およびY座標、ならびに視差情報」を含み、視差が大きいスプライト画像ほど、モニタ面に対して前方に存在するように立体視されている。
そして、引用発明において「表示位置を示す」ことは、本願補正発明において「再生位置を設定する」ことと同様の意味であるということができ、引用発明の上記「X座標およびY座標、ならびに視差情報」は、上記dで述べたことから“データを選択する手段により選択されたデータ”といえるから、引用発明と本願補正発明は、“データを選択する手段により選択されたデータに基づいて、表示領域の前面側に立体表示される識別情報の再生位置を設定する”手段を備えている点で共通する。

f.引用発明では視差が大きいスプライト画像ほど、モニタ面に対して前方に存在するように立体視されることからみて、その視差情報は本願補正発明の「表示領域と再生位置との奥行き方向の距離を特定可能な座標パラメータ」に相当するものということができ、引用発明において視差情報を読み出して映像信号の生成に用いることは、本願補正発明において「座標パラメータを決定する」ことと同等である。

g.上記fで述べたように、引用発明の「視差情報」は本願補正発明の「表示領域と再生位置との奥行き方向の距離を特定可能な座標パラメータ」に相当するとともに、引用発明において「視差情報に応じた位相ずれ量をもつ1組のRGB信号を選択して、RGB出力端子に出力する」こと及び「生成された右目用映像信号と左目用映像信号とが、1ドット毎に交互となる立体映像信号が得られるようなRGBの組単位の信号を生成して、1絵素期間ごとに出力する」ことは、本願補正発明において「座標パラメータに基づいて、前記識別情報の画像データから左眼用画像と右眼用画像をそれぞれ生成する」こと及び「生成された左眼用画像と右眼用画像とを合成して、前記表示装置に表示させる」ことに相当するものといえるから、引用発明の「2D/3D変換回路30」は本願補正発明の「左右画像生成手段」及び「合成手段」に相当するものといえる。

h.引用発明は「視差が大きいスプライト画像ほど、モニタ面に対して前方に存在するように立体視され」るものであるから、本願補正発明の「表示領域の前面側に立体表示される複数の識別情報毎に再生位置を設定する」機能を有しているといえる。

i.引用発明の「スプライト画像」、「視差情報に応じた」及び「位相ずれ量」は、それぞれ本願補正発明の「識別情報の画像データ」、「座標パラメータに対応する」及び「水平方向の視差量」に相当するものといえる。
また、引用発明において「1組のRGB信号を選択して、RGB出力端子に出力する」ことは、上記gでも述べたように、本願発明において「左眼用画像と右眼用画像をそれぞれ生成する」ことに相当するから、引用発明と本願補正発明は“座標パラメータに対応する視差量に基づいて識別情報の画像データから左眼用画像と右眼用画像をそれぞれ生成する”機能を有する点で共通する。

以上を総合すると、両者は、
「 左目用画像及び右目用画像を表示領域に表示することにより遊技者に立体画像を見せる表示装置と、前記表示装置の表示領域にて複数の識別情報を変動表示させて変動表示ゲームを行う表示制御手段と、を備える遊技機において、
前記表示制御手段は、
予め設定した識別情報の画像データ及び前記変動表示ゲーム中の識別情報の表示態様に関するデータを記憶する手段と、
前記データを記憶する手段に記憶された複数のデータから、表示を行うデータを選択する手段と、
前記データを選択する手段により選択されたデータに基づいて、前記表示領域の前面側に立体表示される識別情報の再生位置を設定する手段と、
前記表示領域と再生位置との奥行き方向の距離を特定可能な座標パラメータを決定する手段と、
前記座標パラメータに基づいて、前記識別情報の画像データから左眼用画像と右眼用画像をそれぞれ生成する左右画像生成手段と、
前記左右画像生成手段により生成された左眼用画像と右眼用画像とを合成して、前記表示装置に表示させる合成手段と、
を備え、
前記再生位置を設定する手段は、前記表示領域の前面側に立体表示される複数の識別情報毎に再生位置を設定し、
前記左右画像生成手段は、前記座標パラメータに対応する視差量に基づいて前記識別情報の画像データから前記左眼用画像と右眼用画像をそれぞれ生成する遊技機。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]本願補正発明は、変動表示ゲームの結果態様に関連して特定の遊技価値を付与する特別遊技状態を生起可能な特別遊技状態制御手段を備えているのに対し、引用発明は、そのような制御手段を備えているか明らかでない点。
[相違点2]本願補正発明は、変動表示ゲーム中の識別情報の表示態様が時間経過に対応して設定された複数のシーケンスデータを記憶し、表示を行うシーケンスデータを選択するものであるのに対し、引用発明は、スプライト画像生成用の制御データとして時間経過に対応して設定されたデータを格納し、そのようなデータを選択しているか否か不明である点。
[相違点3]本願補正発明は、立体表示される識別情報の再生位置を変動表示ゲームの時間経過に対応して仮想的に設定するとともに座標パラメータをその仮想的に設定された再生位置に基づいて決定するのに対し、引用発明は、立体視表示されるスプライト画像の表示位置を仮想的に設定して視差情報を決定するものではない点及び時間経過に対応して設定するものであるか否か不明である点。
[相違点4]本願補正発明は、複数の識別情報が等差な奥行き間隔で隣り合うように再生位置を設定しているのに対し、引用発明は、複数のスプライト画像がどのような位置関係でモニタ面に対して前方に存在するように立体視されるか明らかでない点。
[相違点5]本願補正発明は、決定された座標パラメータに対応する視差量を表示領域と再生位置の奥行き方向の距離に対する識別情報の画像データの水平方向の視差量が予め段階的に設定されたテーブルを用いて算出し、当該視差量に基づいて前記識別情報の画像データから前記左眼用画像と右眼用画像をそれぞれ生成するのに対し、引用発明は、どのような手段で視差情報に応じた位相ずれ量をもつ1組のRGB信号を選択して、RGB出力端子に出力しているか明らかでない点。

(3)相違点の検討及び判断
[相違点1について]
パチンコ機において、当たり外れの情報を受けて表示装置の表示領域にて複数の識別情報を変動表示させて変動表示ゲームを行うとともに、この変動表示ゲームの結果態様に関連して特定の遊技価値を付与する特別遊技状態を生起させることは、例を挙げるまでもなく従来普通に行われていることである。
そうしてみると、引用発明の「表示装置」に表示される変動表示ゲームの結果態様に関連して特定の遊技価値を付与する特別遊技状態を生起可能とすることは、遊技機の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に想到し得ることである。
[相違点2について]
遊技機において、図柄を立体的に表示する立体表示画像を、変動表示中に位置や大きさを変化させて表示することは、例えば特開2001-231968号公報(特に段落【0014】、【0015】)や特開2001-314594号公報(特に段落【0057】)に記載されるように、従来周知の技術(以下「周知技術1」という。)であるから、引用発明において、スプライト画像の位置や大きさ、ひいてはスプライト画像がモニタ面に対してどの程度前方に存在するように立体視されるかについて、時間経過に対応して変化させて表示することは、当業者が何ら困難無く考えつくことである。
そして、画像を時間経過に対応して変化させて表示するために、時系列のデータを記憶しておき、時間経過に対応して適当なデータを選択するようにすることは、動画像を作成して表示する技術において、従来ごく普通に採用されている技術(以下「慣用技術」という。)であるから、引用発明に周知技術1及び慣用技術を採用し、相違点2に係る本願補正発明のような構成とすることは、当業者であれば容易に想到できることである。
[相違点3について]
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に国内において頒布された刊行物である特開2002-73003号公報(以下「引用文献2」という。)には、段落【0007】【0031】及び図3、4等からみて、ゲーム装置において立体視画像を生成する際に、オブジェクト空間内に仮視点を設定するとともに、立体的に表示するオブジェクトの位置を、仮視点に基づく視点座標系に変換し、仮視点に対する各オブジェクトの角度・向き等を計算すると共に、各オブジェクトを構成する頂点と仮視点との相対距離、すなわち、仮視点に対する各頂点の奥行情報を算出すること(以下「引用文献2記載の技術1」という。)が記載されていると認められる。
また、引用文献2記載の「オブジェクト」及び「奥行情報」は、それぞれ本願補正発明の「識別情報」及び「座標パラメータ」、引用発明の「スプライト画像」及び「視差情報」に対応するものであり、引用文献2記載の技術1において「オブジェクトの位置を仮視点に基づく視点座標系に変換」すること及び「仮視点に対する各頂点の奥行情報を算出すること」は、本願補正発明において「再生位置を仮想的に設定する」こと及び「仮想的に設定された再生位置に基づいて、前記表示領域と再生位置との奥行き方向の距離を特定可能な座標パラメータを決定する」ことに相当するものといえる。
そして、引用発明及び引用文献2記載の技術1ともにゲーム装置における立体視表示に関するものである点及び上記[相違点2について]の項で述べた、画像を時間経過に対応して変化させて表示する点に関する周知技術1や慣用技術を考え合わせると、引用発明に引用文献2記載の技術1を適用するとともに周知技術1及び慣用技術を採用して、相違点3に係る本願補正発明のような構成とすることは、当業者であれば容易に想到できることと判断される。
[相違点4について]
引用発明は、複数のスプライト画像(本願補正発明の「複数の識別情報」に相当)がどのような位置関係で立体視されるものか明らかではないが、摘記した引用文献1の段落【0046】の「視差が大きいスプライト画像ほど、モニタ面に対して前方に存在するように立体視される」といった記載からみて、スプライト画像ごとにどの程度モニタ面に対して前方に存在するように立体視されるかを異ならせることもできるものと認められる。
そして、遊技機の分野において、複数の識別情報の大きさや位置は、演出効果等を考慮して適宜決定されるものであるから、スプライト画像ごとにどの程度モニタ面に対して前方に存在するように立体視されるかを異ならせることもできる引用発明において、複数のスプライト画像を階段状に見えるようにするため、相違点4に係る本願補正発明のような位置関係とすることは、当業者であれば容易に想到できることである。
[相違点5について]
引用文献2には、段落【0007】【0032】等からみて、立体視画像を表示するゲーム装置において、算出した奥行情報に基づいて両眼視差Δθ及びずれ量Δxを算出し、水平方向にそれぞれずらすことによって、左目用の立体視画像と、右目用の立体視画像を生成すること(以下「引用文献2記載の技術2」という。)が記載されているものと認められ、引用文献2記載の「奥行情報」及び「ずれ量Δx」は、それぞれ本願補正発明の「座標パラメータ」及び「視差量」、引用発明の「視差情報」及び「位相ずれ量」に対応するものである。
また、遊技機の表示制御において、予め用意されたテーブルを参照して制御に必要な情報を得ることは、例えば特開2002-336462号公報(特に段落【0042】)や特開2000-315077号公報(特に段落【0051】、【0066】)に記載されるように、従来周知の技術(以下「周知技術2」という。)であり、テーブルである以上制御に必要な情報が段階的に設定されることは当然である。
そして、引用発明及び引用文献2記載の技術2ともにゲーム装置における立体視表示に関するものであるから、引用発明に引用文献2記載の技術2を適用して、視差情報に応じた位相ずれ量を算出し、算出した位相ずれ量をもつ1組のRGB信号を選択して出力するようにすること及びその位相ずれ量算出の際に周知技術2を採用し、予め用意された視差情報に対する位相ずれ量が段階的に設定されたテーブルを用いるようにして、相違点5に係る本願補正発明のような構成とすることは、当業者であれば容易に想到できることと判断される。

さらに、本願補正発明の作用効果も、引用発明、引用文献2記載の技術1、2、周知技術1、2及び慣用技術に基いて、当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明、引用文献2記載の技術1、2、周知技術1、2及び慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.むすび
以上のとおりであるので、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第三.本願発明について
1.本願発明
平成19年11月22日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成19年3月23日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「 左目用画像及び右目用画像を表示領域に表示することにより遊技者に立体画像を見せる表示装置と、前記表示装置の表示領域にて複数の識別情報を変動表示させて変動表示ゲームを行う表示制御手段と、この変動表示ゲームの結果態様に関連して特定の遊技価値を付与する特別遊技状態を生起可能な特別遊技状態制御手段と、を備える遊技機において、
前記表示制御手段は、
予め設定した識別情報の画像データ及び前記変動表示ゲーム中の識別情報の表示態様が時間経過に対応して設定された複数のシーケンスデータを記憶するデータ記憶手段と、
前記データ記憶手段に記憶された複数のシーケンスデータから、表示を行うシーケンスデータを選択するシーケンスデータ選択手段と、
前記シーケンスデータ選択手段により選択されたシーケンスデータに基づいて、前記表示領域の前面側に立体表示される識別情報の再生位置を前記変動表示ゲームの時間経過に対応して仮想的に設定する再生位置設定手段と、
前記再生位置設定手段により仮想的に設定された再生位置に基づいて、前記表示領域と再生位置との奥行き方向の距離を特定可能な座標パラメータを決定する座標パラメータ決定手段と、
前記座標パラメータ決定手段により決定された座標パラメータに基づいて、前記識別情報の画像データから左眼用画像と右眼用画像をそれぞれ生成する左右画像生成手段と、
前記左右画像生成手段により生成された左眼用画像と右眼用画像とを合成して、前記表示装置に表示させる合成手段と、
を備え、
前記再生位置設定手段は、前記表示領域の前面側に立体表示される複数の識別情報毎に再生位置を設定するとともに、当該複数の識別情報が等差な奥行き間隔で隣り合うように再生位置を設定することを特徴とする遊技機。」

2.特許法第29条第2項の検討
(1)引用刊行物記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1及びその記載事項は、前記「第二.3.(1)」に記載したとおりである。

(2)引用発明と本願発明との対比
本願発明は、前記「第二」で検討した本願補正発明の「前記左右画像生成手段は、前記表示領域と再生位置の奥行き方向の距離に対する前記識別情報の画像データの水平方向の視差量が予め段階的に設定されたテーブルを用いて、前記座標パラメータ決定手段により決定された座標パラメータに対応する視差量を算出し、当該視差量に基づいて前記識別情報の画像データから前記左眼用画像と右眼用画像をそれぞれ生成する」を削除し、本願補正発明の「左右画像生成手段」についての限定をなくしたものである。
そうすると、本願発明の構成要件の一部である「左右画像生成手段」を具体的に限定したものに相当する本願補正発明が、前記「第二.3.(3)」に記載したとおり、引用発明、引用文献2記載の技術1、2、周知技術1、2及び慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明、引用文献2記載の技術1、2、周知技術1、2及び慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献2記載の技術1、2、周知技術1、2及び慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第四.むすび
本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-07-08 
結審通知日 2009-07-14 
審決日 2009-08-06 
出願番号 特願2003-77275(P2003-77275)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊藤 陽高橋 三成  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 森 雅之
小林 俊久
発明の名称 遊技機  
代理人 後藤 政喜  

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