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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1204214 |
審判番号 | 不服2007-32093 |
総通号数 | 119 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-11-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-11-28 |
確定日 | 2009-09-17 |
事件の表示 | 特願2006-274617「弾球遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 1月11日出願公開、特開2007- 658〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成13年6月1日に出願した特願2001-166984号の一部を平成18年10月6日に新たな特許出願(分割出願)としたものであって、平成19年11月1日付け(発送日:11月6日)で拒絶査定がされ、これに対し、同年11月28日に拒絶査定不服審判が請求され、同日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成19年11月28日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成19年11月28日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)補正の内容 平成19年11月28日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲は、 「【請求項1】 遊技盤の面上に形成される遊技領域における遊技球の挙動により遊技が行われ、始動口への遊技球の入賞に起因して特別遊技を実行し、特別遊技が発生したか否かを示す特別図柄を表示する弾球遊技機において、 前記特別図柄を表示する表示部の上方及び左右を囲み、左下端と右下端との間を開放した開放部を有する周壁と、 前記周壁から分離し前記表示部から離れた前記表示部の下方であって前記周壁の開放部下方に独立して前記遊技盤に装着されるステージとを備え、 前記ステージは、遊技球を落下させる前縁部を有し、該前縁部を前記始動口の上方に位置させた ことを特徴とする弾球遊技機。」 に補正された。 本件補正は、補正前(平成19年8月20日付け手続補正による補正)の請求項1において「表示部の下方」という事項について、「表示部から離れた前記表示部の下方」という技術事項(下線部)を加えたものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(平成18年法律第55号附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下検討する。 (2)引用文献に記載された事項 原査定の拒絶の理由において引用文献2として引用された特開平10-113429号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。 (ア)「【0008】[1]パチンコ球を遊技媒体とし、遊技盤面(12)上に役物(20)と、該役物(20)を作動させる始動入賞口(13)と、該始動入賞口(13)から離れた位置で前記遊技盤面(12)上を跳ね落ちるパチンコ球を前記始動入賞口(13)の上方へ誘導する誘導路(50)と、その他複数の入賞口を設け、パチンコ球の入賞による賞出球を獲得する遊技を行うパチンコ機(10)において、前記誘導路(50)は前記始動入賞口(13)の上方で前記遊技盤面(12)に固着して前記始動入賞口(13)の左右両方向に延びるガイド面(51)を有し、該ガイド面(51)は前記始動入賞口(13)の直上に当たる部位にガイド面(51)を転がって来たパチンコ球を落下させるための切込み(60)を形成したことを特徴とするパチンコ機(10)。」 (イ)「【0014】パチンコ球が始動入賞口(13)に入賞すると、入賞球1球毎に所定数の賞球が払い出される。また、その一回の入賞に基づいて抽選が行われ、役物である可変表示手段(20)において絵柄の表示変化動作が行われる。所定時間経過すると絵柄の表示変化動作が停止し、前記抽選の結果が絵柄の所定の組合せで表示される。 【0015】前記抽選結果が「当たり」であった場合、可変入賞口(30)が所定の開閉動作を行って入賞のチャンスが格段に大きくなる特別価値状態が生じる。前記可変入賞口(30)の所定の開閉動作の間に入賞球が有ると、その入賞球に所定数をかけた数の賞球が払い出される。」 (ウ)「【0022】図1に示すように、本実施例に係る遊技機10は遊技者がハンドル11を回転操作することにより遊技盤面12上にパチンコ球を打ち出し、かかる打球の入賞により払い出される賞球の獲得をするパチンコ機10である。 【0023】例示したパチンコ機10は、内蔵された制御手段(図示せず)が遊技盤面12上の始動入賞口13へのパチンコ球の入賞に基づき抽選を行い、その結果を役物である可変表示手段20によって表示させるもので、抽選結果が「当たり」であると絵柄の所定の組合せが表示され、可変入賞口30が開閉動作して遊技者に有利な特別価値状態を発生させる機種である。 【0024】遊技盤面12の略中央部には始動入賞口13が配設され、その上方はワープゾーンWを形成するために、パチンコ球を始動入賞口13へ誘導する誘導路50が配置されている。更にその上方には絵柄の可変表示を行う可変表示手段20が配設されている。始動入賞口13の下方には可変入賞口30が配設され、また、遊技盤面12の適所にパチンコ球を弾く多数の釘、それに各種入賞口やアウト口等が配置されている。 【0025】可変表示手段20は、別個に表示変化の可能な3つの区分けされた部分を有し、始動入賞口13へのパチンコ球の入賞に基づき絵柄の表示を変化させるもので、制御手段による抽選結果を絵柄の組合せによって表示するものである。抽選結果が「当たり」の場合には、同一の数字を3つ並べて表示する等、遊技者に容易に分かる特定の組合せを表示する。」 (エ)「【0028】図2に示したように誘導路50は可変表示手段20と始動入賞口13との間で、始動入賞口13を下に見る位置から左右対称に延設した板状体である。この板状体は例えばプラスチック等で断面を略L字型に形成したもので、起立した部分を遊技盤面12に固着したものである。 【0029】誘導路50の上面はそこに乗ったパチンコ球がスムーズに転がるように形成されたガイド面51である。ガイド面51にはそこに乗ったパチンコ球が自然に転がるように、左右の両端部から中心に向かって、即ち、始動入賞口13の直上に当たる部位に向かって下向きの傾斜がつけられている。 【0030】誘導路50は始動入賞口13の直上に当たる部位に切込み60が形成されている。切込み60の切り口は周縁部が、遊技盤面12に近い方から遠い方へ向かってやや下向するように傾斜している。切込み60の幅は遊技盤面12に近い方から遠い方へ向かって広く形成されており、最も広い部分の幅は、パチンコ球Pの直径よりもやや大きく取られている。」 引用例における「誘導路50は可変表示手段20と始動入賞口13との間で、始動入賞口13を下に見る位置から左右対称に延設した板状体である。」(段落【0028】)の記載および図1ないし図3から見て、誘導路(50)は、可変表示手段(20)から離れた位置にあり、可変表示手段(20)の下方であって独立して遊技盤面上に装着されていると理解することができる。 また、遊技盤面上に設けられた役物(20)は、「役物である可変表示手段(20)」と記載されているから、可変表示手段(20)と読み替えることができる。 したがって、上記(ア)ないし(エ)の記載、図面を総合すると、引用例には、 「1 遊技盤面(12)上に可変表示手段(20)と、該可変表示手段(20)を作動させる始動入賞口(13)と、該始動入賞口(13)から離れた位置で前記遊技盤面(12)上を跳ね落ちるパチンコ球を前記始動入賞口(13)の上方へ誘導する誘導路(50)とを備え、 2 パチンコ球が始動入賞口(13)に入賞すると、その一回の入賞に基づいて抽選が行われ、役物である可変表示手段(20)において絵柄の表示変化動作が行われ、所定時間経過すると絵柄の表示変化動作が停止し、前記抽選の結果が絵柄の所定の組合せで表示されるパチンコ機(10)であって、 3 前記可変表示手段(20)から離れた位置にあり、前記可変表示手段(20)の下方であって独立して前記遊技盤面上に装着される誘導路(50)を備え、 4 前記誘導路(50)は、パチンコ球を落下させるための切込み(60)を有し、該切込みを前記始動入賞口(13)の上方に位置させたパチンコ機(10)」 の発明が開示されていると認めることができる。 (以下、この発明を「引用発明」という。) (3)対比 引用発明の「遊技盤面(12)」、「抽選の結果が絵柄の所定の組合せで表示される可変表示手段(20)」、「始動入賞口(13)」、「誘導路(50)」、「パチンコ機(10)」及び「切込み(60)」は、それぞれ本願補正発明の「遊技盤の面上」、「特定の図柄を表示する表示部」、「始動口」、「ステージ」、「弾球遊技機」及び「前縁部」に相当する。 そして、引用発明は「パチンコ球が始動入賞口(13)に入賞すると、その一回の入賞に基づいて抽選が行われ、役物である可変表示手段(20)において絵柄の表示変化動作が行われ、所定時間経過すると絵柄の表示変化動作が停止し、前記抽選の結果が絵柄の所定の組合せで表示されるパチンコ機(10)」であることから、引用発明と本願補正発明とは「遊技盤の面上に形成される遊技領域における遊技球の挙動により遊技が行われ、始動口への遊技球の入賞に起因して特別遊技を実行し、特別遊技が発生したか否かを示す特別図柄を表示する弾球遊技機」である点で一致することは明らかである。 また、引用発明は、「前記可変表示手段(20)から離れた位置にあり、前記可変表示手段の下方であって独立して前記遊技盤面上に装着される誘導路(50)を備え」ていることから、表示部を囲む周壁から分離しているかは別にして、誘導路(50)は、「表示部から離れた前記表示部の下方であって独立して前記遊技盤に装着され」ている点で本願補正発明と共通するといえる。 さらに、引用発明の「前記誘導路(50)は、パチンコ球を落下させる切込み(60)を有し、該切込みを前記始動入賞口(13)の上方に位置させた」ことは、本願補正発明の「前記ステージは、遊技球を落下させる前縁部を有し、該前縁部を前記始動口の上方に位置させた」ことと一致する。 以上のことから、両者は、 <一致点> 「遊技盤の面上に形成される遊技領域における遊技球の挙動により遊技が行われ、始動口への遊技球の入賞に起因して特別遊技を実行し、特別遊技が発生したか否かを示す特別図柄を表示する弾球遊技機において、 前記特別図柄を表示する表示部と、 前記表示部から離れた前記表示部の下方であって独立して前記遊技盤に装着されるステージとを備え、 前記ステージは、遊技球を落下させる前縁部を有し、該前縁部を前記始動口の上方に位置させた ことを特徴とする弾球遊技機。」 である点で一致し、以下の点で相違している。 <相違点> 本願補正発明は、特別図柄を表示する表示部に「表示部の上方及び左右を囲み、左下端と右下端との間を開放した開放部を有する周壁」を有し、かつ、ステージが「前記周壁から分離して前記周壁の開放部下方に独立して装着され」ているのに対し、 引用発明は、特定の図柄を表示する表示手段に上記のような周壁が設けられておらず、したがって、誘導路について当該周壁との配置関係が特定される構成を有しない点 (4)判断 <相違点>について 特別図柄を表示する表示部について、当該表示部の上方及び左右を囲み、左下端と右下端との間(つまりは、下辺部)に開放部がある周壁を備えたものは、拒絶査定時に示した、特開平2-302285号公報、特開平9-276491号公報及び特開平11-9782号公報に記載されているように周知技術である。 したがって、引用発明における可変表示手段(20)について、本願補正発明のような周壁、つまり「表示部の上方及び左右を囲み、左下端と右下端との間を開放した開放部を有する周壁」を設ける程度のことは、当業者が適宜なし得るものと認められる。 そして、引用例の記載(図面等)を見れば、誘導路(50)は、表示手段の下方に位置し、かつ他の部材から離れて独立して装着されるものと認識できるのであるから、引用発明において、表示手段に上記周壁を設けた場合、当該誘導路をこの周壁から離して独立して設けることは容易に想到できたということができる。 (なお、周壁の下辺に開放部があるのであるから、誘導路を周壁から独立して設ければ、誘導路が開放部の下方に位置することは当然である。) 一方、請求人は審判請求書及び平成21年4月3日付け回答書において、 1.刊行物1(引用例)に記載の発明は、できるだけ多くのパチンコ球を誘導路に乗せることを目的としたものであるのに対し、周壁は、誘導路に乗るパチンコ球を減らすものであるから、刊行物1の発明に周壁を設けることは刊行物1記載の発明の目的を阻害するものであり、発明の適用(組合せ)には阻害要因がある。 2.刊行物2?4(上記した周知技術)はいずれも、周壁の下辺の開放部に独立しない「ステージ」に相当する部材を有するものである。したがって、刊行物1に刊行物2?4記載の「周壁」を適用した場合、「表示部から離れた・・・ステージ」は不必要であるだけでなく、「屋上屋を重ねる」ことになり不合理であって、刊行物1の誘導路と刊行物2?4の周壁を組み合わせることを想起することには阻害要因がある。 旨の主張をしているので、当該主張についても検討する。 1.の点であるが、この種弾球遊技機において、パチンコ球はただ入賞口等に入れば良いというものでなく、適度な確率で入賞口等に入るようにしていることは常識である。 そのために、パチンコ球を入賞口等に入り易くする部材と、入り難くする部材とを適宜組み合わせて遊技機を構成することは周知である。 したがって、パチンコ球を入賞口等に入り易くする「誘導路」と、入り難くする「周壁」を組み合わせることに何ら阻害要因はない。 また、2.の点については、「周壁」についての周知技術として示された刊行物2?4には、周壁の下辺開放部に、周壁と一体となった棚状の部材を備えたものが記載されていることは認める。 しかしながら、特開平2-302285号公報に示された表示部を囲む周壁の下部に設けられた棚状の部材(第2図の52、56で示されている部分)は、パチンコ球がその上部に乗って一時的に遊動するかもしれないが、引用発明の「誘導路」のように、パチンコ球を入賞口の上部に誘導するようなものでないから、引用発明の「誘導路」と、前記のような周壁と一体になった棚状の部材を備えたものとを組み合わせることに不合理な点はない。 また、仮に当該周壁と一体になった前記棚状の部材がパチンコ球を中央部に誘導する作用を持つものであったとしても、さらにその下部に独立して引用発明のような「誘導路」があっても何ら不都合は生じないのであるから、引用発明において、表示手段を囲む周知例で示したような周壁を組み合わせることに阻害要因はないし、その組合せを想起することが困難であるともいえない。 以上のように、本願補正発明は、引用発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 したがって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、その特許出願の際に独立して特許を受けることができない。 (5)本願補正発明についてのまとめ 本件補正は、平成18年法律第55号附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について (1)本願発明及び引用文献に記載された発明 平成19年11月28日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、請求項に係る発明は、平成19年8月20日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載されたとおりのものである。 そして、その請求項1により特定される発明は次のとおりである。 「【請求項1】 遊技盤の面上に形成される遊技領域における遊技球の挙動により遊技が行われ、始動口への遊技球の入賞に起因して特別遊技を実行し、特別遊技が発生したか否かを示す特別図柄を表示する弾球遊技機において、 前記特別図柄を表示する表示部の上方及び左右を囲み、左下端と右下端との間を開放した開放部を有する周壁と、 前記周壁から分離し前記表示部の下方であって前記周壁の開放部下方に独立して前記遊技盤に装着されるステージとを備え、 前記ステージは、遊技球を落下させる前縁部を有し、該前縁部を前記始動口の上方に位置させた ことを特徴とする弾球遊技機。」 (以下、この発明を「本願発明」という。) 一方、原査定の拒絶の理由に引用された特願平10-113429号に記載された発明(引用発明)は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から「から離れた前記表示部」という技術事項を除いたものである。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、拒絶されるべきものである。 よって、結論の通り審決する。 |
審理終結日 | 2009-07-15 |
結審通知日 | 2009-07-21 |
審決日 | 2009-08-03 |
出願番号 | 特願2006-274617(P2006-274617) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A63F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 渡辺 剛史、大浜 康夫 |
特許庁審判長 |
立川 功 |
特許庁審判官 |
小原 博生 川島 陵司 |
発明の名称 | 弾球遊技機 |
代理人 | 名古屋国際特許業務法人 |