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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服200520859 審決 特許

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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1204270
審判番号 不服2005-3472  
総通号数 119 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-02-28 
確定日 2009-09-16 
事件の表示 特願2003-504911「ポリアミドゲル化剤を含む安定な化粧用エマルション」拒絶査定不服審判事件〔平成14年12月27日国際公開、WO02/102322、平成16年 9月30日国内公表、特表2004-529985〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は,平成14年6月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2001年6月21日(US)アメリカ合衆国、2002年6月11日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成16年11月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年2月28日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年3月28日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成17年3月28日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成17年3月28日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「水相及び非水相からなるエマルション、並びに、8を超えるHLBを有する少なくとも1種のアルキレンオキシド含有エマルション安定剤と前記非水相中に主要なゲル化剤として存在する非シロキサンベースの少なくとも1種のポリアミド樹脂からなるゲル化剤を含む化粧品組成物。」と補正された。
上記補正は、請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「少なくとも1種のアルキレンオキシド含有エマルション安定剤」を「8を超えるHLBを有する」ものに限定し、「非水相中に存在する非シロキサンベースの少なくとも1種のポリアミド樹脂」についてその存在を「主要なゲル化剤として」存在するものに限定したものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうかについて、以下に検討する。

(2)引用例の主な記載事項
当審における審尋に引用された、本願の優先権主張日前に頒布された米国特許第5,603,925号明細書(以下、「引用例A」という。)及び特開2001-81320号公報(以下、「引用例B」という。)には次の事項が記載されている。

引用例A
(A-1)「1「身体の悪臭を減少させるための組成物であって、
(1)身体の悪臭を減少するのに効果的な量の制汗活性材料;
(2)該組成物が固化するに充分な量の、組成物のためのポリアミドゲル化剤;及び
(3)前記制汗活性材料と前記ポリアミドのための溶媒系であって、この溶媒系はグリコールを含有せず、非イオン界面活性剤及び極性溶媒を含有し、前記極性溶媒は水を包含するものであり、該組成物は実質的に粘着することなく、前記溶媒系は前記ポリアミドが溶解することができ、しかも該ポリアミドがそこからゲル化できる量で提供されるものである、組成物。・・・・
5 更に透明なワックスを含む請求項1の組成物。・・・・
9 非イオン界面活性剤が1-20のアルキレンオキシド単位を有するアルコキシ化された脂肪アルコールである請求項8の組成物。
10 アルコキシ化された脂肪アルコールが組成物全重量に対し5-30重量%含む請求項9の組成物。
21 アルコキシ化された脂肪アルコールがラウレス-4である請求項10の組成物。・・・・・・
27 身体の悪臭を減少させるための組成物であって、以下の成分を含み
(a)組成物全重量の0.1-30重量%の制汗活性金属塩
(b)組成物全重量の2-40重量%の組成物のゲル化剤としてのポリアミド
(c)組成物全重量中に、制汗活性金属塩を溶かす最小の量から25%までの水
(d)組成物全重量に対し5-30重量%の非イオン界面活性剤
グリコールを含有しない組成物。
28 組成物がさらに透明ワックスを含み、透明なワックスに対する非イオン界面活性剤の重量比が1:1?1:5の範囲内である請求項27の組成物
29 透明ワックスがステアリルアルコールである請求項28の組成物。
30 非イオン界面活性剤がラウレス-4である請求項29の組成物。」(上記特許明細書の第13?16欄)
(A-2)「本発明は、特に、スティック又はゲル形態の透明又は半透明制汗剤組成物に関する。さらに詳しくは、本発明は、ポリアミドゲル化剤を含有する、透明又は半透明のゲル又はスティック形態の制汗剤組成物であって、活性成分(例えば、制汗活性材料)を含有し、前記ポリアミドゲル化剤は、酸性の制汗活性材料の存在下であっても安定である、組成物に関する。」(同第1欄16行?23行)
(A-3)「米国特許5,500,209号明細書で開示された、ポリアミド含有スティック又はゲルは、その安定性に関連して所望の性質を有しており、とくに、酸性の制汗活性材料の存在下で安定であり、透明又は半透明のゲル又はスティック組成物を提供するものであるが、種々の改良を必要としている。とくに、上記米国特許5,500,209号明細書に開示された組成物は、ポリアミドゲル化剤及び/又は制汗剤材料のためのグリコール溶媒(例、プロピレングリコール)を含有しており、不利益なほどに大きな粘着性を有している。さらに、グリコール溶媒を含有する特許5,500,209号明細書による組成物は比較的高温(例えば、約195°F)で処理する必要がある。」(同第3欄21行?33行)
(A-4)「したがって、本発明の第一の目的は、身体の悪臭に抗する(低減する)組成物で、例えばスティック又はゲル形態のものであって、不透明、半透明又は透明であることができ、制汗剤成分を含有し、任意に、デオドラント活性材料を含有し、さらにポリアミドゲル化剤を含有する組成物であって、良好な利益をもたらす審美的な特徴を有しており、実質的に粘着しない組成物、及びそのような組成物の製法を提供することである。」(同第3欄36行?43行)
(A-5)「一般に、前記ポリアミドゲル化剤は前記非イオン界面活性剤に溶解する。水は前記極性溶媒であり、非イオン界面活性剤とともに、制汗活性材料のための分散媒となるものである。水の量としては、制汗活性成分の透明又は半透明の溶液/エマルションを生ずるに充分な量の水が用いられる。」(同第4欄13行?19行)
(A-6)「グリコール溶媒の使用を避けることにより、粘着性が低下し、実質上粘着性のない組成物が提供される。グリコールを含まない組成物を利用することにより、実質的に粘着性のない組成物を達成することができる。」(同第4欄31行?34行)
(A-7)「不透明なワックス、例えばステアリルアルコールおよび/又は12-ヒドロキシステアリン酸メチルエステル、を該組成物中に含有させることによって、本発明のさらなる利点を得ることができる。この不透明なワックス(例、ステアリルアルコール)は前記溶媒系に含有される。この不透明なワックスは前記非イオン性界面活性剤(例、ラウレスー4)に溶解し、ポリアミドゲル化剤のこの非イオン性界面活性剤(より一般的には、前記溶媒系)における溶解度を高める。この不透明なワックスはまた、この溶媒系に溶解するポリアミドゲル化剤の溶解温度を低下させる。この不透明なワックスはさらに、前記組成物に付加的な構造を提供する。このことは、とくに、前記組成物が相対的に少量のポリアミドゲル化剤を含有している場合(例えば、スティックが、その組成物全量の7重量%のポリアミドゲル化剤を含有している場合)、そうである。前記組成物に含有された非イオン性界面活性剤の量と比較して、相対的に少量のワックスを含有させると、スティックの半透明性が増加する。(すなわち、ワックスを含有していない同様なスティックと比較して、相対的により透明なスティックが提供される。)そのワックスが不透明であるにもかかわらずである。そして、皮膚に適用された場合、光学的に透明な膜が提供される。さらに、前記溶媒系に追加的に不透明ワックスを含有させることにより、前記組成物の構造及び性質がさらに改善され、ゲル化された組成物を、より低温で製造できる。」(同第4欄36行?58行)
(A-8)「本発明の開示を通して、本発明は第一には制汗剤組成物との関連で記載されており、透明及び半透明の制汗剤ゲル及びスティック組成物を包含するものである。しかしながら、本発明はそのような組成物に限定されるものではなく、例えば、本発明による組成物は、デオドラント組成物であることができる。さらに、組成物に含有される付加的な活性成分により、前記組成物は、エモリエント組成物、サンスクリーン組成物等にもなり得る。」(同第5欄21行?29行)
(A-9)「本発明は、身体の悪臭を低減するためのゲルまたはスティックを企図するものであり、ポリアミドをゲル化剤として用い、制汗活性材料を含有し、該制汗活性材料及びゲル化剤は、ポリアミドゲル化剤及び制汗活性材料のための、グリコールを含有しない溶媒系に存在し、前記溶媒系はポリアミドが溶解し得るに十分な量で含有され、ポリアミドはその溶媒系から固化しゲル化された組成物を形成できるものである。このグリコールを含有しない溶媒系は、非イオン界面活性剤(このなかに前記ポリアミドゲル化剤は溶解され得る。)および極性溶媒(水を含有する)を含有する。」(同第6欄24行?37行)
(A-10)「本発明のさらなる局面として、前記組成物は不透明なワックスを含有する。このワックスは低融点ワックスまたは高融点ワックスであることができるが、好ましくは低融点ワックスである。この不透明なワックスは前記非イオン界面活性剤に溶解し、ポリアミドゲル化剤の非イオン界面活性剤における溶解度を上昇させ、ポリアミドが前記溶媒系に溶解する温度を低下させる。」(同第6欄43行?51行)
(A-11)「 この不透明なワックスはさらに前記組成物に付加的な構造を提供する。とくに、このポリアミドゲル化剤が相対的に少量(すなわち、組成物全量の7重量%)含有された場合そうである。このように、前記組成物が相対的に少量のポリアミドゲル化剤を含有している場合でも、前記不透明なワックスを含有させることにより、スティック組成物(ゲルというよりも)を形成することができる。この場合、このスティック組成物は少なくとも半透明であることができ、皮膚上に光学的に透明な膜を生成することができる。」(同第6欄57行?65行)
(A-12)「例示的には(限定するものではない)、出願人は驚くべきことに、前記組成物中の所定量の非イオン界面活性剤に対して、ステアリルアルコールや12-ヒドロキシステアリン酸エステルなどの不透明なワックスを組成物中に、組成物の全重量に対して5重量%、あるいはそれ以下の量、含有させると、前記組成物はより半透明(より不透明でなくなる)になり、皮膚に適用した場合に、ワックスが不透明であるにも拘わらず、光学的に透明なフィルムを生成する。」(同第6欄66行?第7欄7行)
(A-13)「ポリアミド類は、一般に、ポリマーの主鎖の必須部分としてのアミド基の繰り返し単位を有するポリマーである。・・・向上した溶解性を有する2つのクラスのポリアミドが、この発明に使用するポリアミドとして好ましい。(1)単純なナイロンのターポリマーをベースとするもの・・(2)複合脂肪酸をベースとするポリアミド・・」(同第8欄3行?23行)
(A-14)「本発明の組成物中でポリアミドゲル化剤として使用できる市販のポリアミド類の例は、「バーサミド」1655(ヘンケル社、CAS68915-56-0)、「バーサミド」744(ヘンケル社、CAS67989-30-4)、「ユニレッツ」2931(ユニオンキャンプ社、CAS68139-80-0)、・・・である。」(同第8欄46行?53行)
(A-15)「前記ポリアミドは前記組成物中に、前記ゲル化剤が組成物を全体としてゲル化し固化してゲル又はスティックの固さを有する固体を形成するに十分な量で、前記組成物中に含有される。一般的には、さらにゲル化剤や増粘剤を添加しない限り、ポリアミドの量が減少すればゲル組成物が生成し、一方、ポリアミド(あるいはポリアミドとともに共ゲル化剤又は増粘剤)の量が増加すればスティックを生成する。例示的には、ポリアミドは組成物の全重量の2-40重量%(好ましくは、組成物全重量の5-13重量%)含有される。」(同第8欄61行?第9欄4行)
(A-16)「本発明によれば、ポリアミド及び制汗活性材料(例えば、・・・)を共に溶解するための溶媒系は、グリコールを含有せず(例えば、プロピレングリコールを含有せず)、非イオン界面活性剤及び極性溶媒(水)を含有しなければならない。非イオン界面活性剤の例としてはラウレスー4(ラウリルアルコールのポリエチレングリコールエーテルであり、エチレンオキシド単位を4つ有する)がある。他のアルコキシル化されたアルコールで、直鎖又は分岐鎖を有し、飽和又は不飽和のものが同様に非イオン界面活性剤として利用できる。たとえば、エトキシル化及び/又はプロポキシル化された脂肪アルコールで、1-20のエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド単位を有し、ここにおいて、脂肪アルコールとはC8-C20の範囲内の炭素鎖長を有するものが、非イオン界面活性剤として利用できる。前記非イオン界面活性剤の含有量は、例示的には、組成物の全重量の5-30重量%である。」(同第9欄5行?23行)
(A-17)「水は本発明の組成物に必須のものである。水は、極性溶媒として(非イオン界面活性剤と併用して)制汗活性材料の分散媒として用いられ、組成物中に前記制汗活性材料(例。制汗活性金属塩)の透明又は半透明の溶液/エマルションを生成するのに充分な量で組成物中に含有される。例示的にかつ非限定的には、水は組成物全量の25重量%まで含有される。」 (同第9欄28行?37行)
(A-18)「望ましくは、そしてとくに、相対的に少量のポリアミドゲル化剤を前記組成物に含有させた場合、組成物の溶媒系はまた不透明なワックスを含有する。例示的でかつ好ましい不透明なワックスはステアリルアルコールである。しかしながら、本発明においては、不透明なワックスとして、ステアリルアルコールを使用する場合のみに限定されるものではない。他の低融点ワックス、たとえば、他の脂肪アルコールを不透明なワックスとして使用できる。例示すると、この脂肪アルコールはC8-C30,このましくはC12-C18の範囲の炭素鎖長を有しており、最も好ましくはステアリルアルコール(炭素鎖長C18)である。任意に、高融点不透明ワックスを前記低融点ワックスの少なくとも一部として利用できる。そのような高融点ワックスは公知であり、蜂ワックス、ひまし油ワックスなどが包含され、低融点ワックスの機能を有する。」(同第9欄42行?50行)
(A-19)「以下において、本発明の範囲内の組成物の具体例を示す。・・・。これらの実施例においては、透明な制汗剤スティックが示され・・。

実施例I
成分 Wt% 脱イオン水 12.50
ラウレス-4 10.00
DEA オレス-1-フォスフェート 1.00
ミレス-2-オクタノエート 3.00
ネオペンタン酸トリデシル 19.00
ポリアミド 6.00
ステアリルアルコール 5.00
12-ヒドロキシステアリン酸メチル 3.00
エチレンジオレアミド 2.00
シリコンジオキシド 1.00
シクロメチコーン(5量体) 16.35
シリコーンー5 Cs. 2.00
アルミニウム/ジルコニウム テトラクロロ 18.00
ハイドレックスーGly
香料 1.00
着色剤 0.15
全量 100.00」(同第11欄33行?61行)
(A-20)「このように、本発明によれば、透明又は半透明のスティック又はゲル組成物で、制汗活性材料及びポリアミドゲル化剤を含有し、良好な適用特性を有し、実質的に粘着性が無く、化粧品的に許容できる性質を有するものが達成できる。」(同第13欄29行?42行)

引用例B
(B-1)「【請求項1】エステル基によって骨格に結合した少なくと(審決注:少なくとも、の誤記)4つの炭素原子を有する少なくとも1つの末端アルキル鎖またはアルケニル鎖を有する少なくとも1つのポリアミド骨格ポリマーであって、少なくとも1つの室温で液状のHLBが8未満である両親媒性化合物に結合したポリマーによって構造化された液状脂肪相を含む、構造化された組成物。・・・
【請求項9】両親媒性化合物が極性部に結合した親油性部を有し、当該親油性部は少なくとも8個の炭素原子、好ましくは16から32の炭素原子、さらに好ましくは18から28の炭素原子を有する炭素含有鎖を有することを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】前記極性部が1から12のヒドロキシル基を有するアルコールまたはポリオール、少なくとも2つのオキシアルキレンと0から20のオキシプロピレン及びまたは0から20のオキシエチレン単位を有するポリオキシアルキレンから選択された残基であることを特徴とする請求項9に記載の組成物。・・・
【請求項22】水、抗酸化剤、精油、保存料、中性化剤、油溶解性ポリマー、フィラー、香料あるいはこれらの混合物から選択された少なくとも1種をさらに含有することを特徴とする請求項1ないし21のいずれかに記載の組成物。・・・
【請求項25】マスカラ、アイライナー、ファンデーション、口紅、頬紅、デオドラントまたはメイクアップ除去剤、体のメイクアップ用製品、アイシャドウ、抗小じわ製品の形態であることを特徴とする請求項1ないし24のいずれかに記載の組成物。」 (特許請求の範囲)
(B-2)「【発明の属する技術分野】本発明は、皮膚、毛髪を有する皮膚および唇の手入れ、トリートメントまたはメイクアップのための組成物であって、液状油分、ポリマー状のゲル化剤を含有する特に口紅のようなスティック状の製品であって、光沢を与え、にじまない製品に関するものである。」(段落[0001])
(B-3)「【発明が解決しようとする課題】本出願の発明者は、ロウを含有するスティックが光沢を失うのは、当該組成物の不均質な結晶構造に起因するものであることを発見した。この知見に基づき、ロウを含有しないスティックを製造することを目標とする。」(段落[0006])
(B-4)「本発明は口紅のように唇をメイクアップするための製品だけでなく、皮膚、頭皮や唇の手入れやトリートメントのための製品、たとえば顔の皮膚を太陽から保護するためのスティック状の製品、顔だけでなく体を含めた皮膚のメイクアップ用の製品、スティック状あるいはコンパクト状のファンデーション、抗しわ用製品、刺青模様用の製品、スティック状デオドラント製品のような衛生関連製品、クレヨン状アイライナーやマスカラのような目のメイクアップ製品に適用することができる。」(段落[0008])
(B-5)「本発明にかかる組成物はペースト、固体、クリームの状態で提供することができる。当該組成物は油中水、水中油、無水ゲル、固体または柔らかな組成物の性状を取ることができる。好ましくは、半透明または透明な無水ゲル、特にスティックまたはコンパクトに流し込んだ透明な無水ゲルであることが望ましい。」(段落[0014])
(B-6)「本発明において構造化のために使用することができるポリマーの例として、ブッシュボークアレン社がユニクリア80およびユニクリア100の名称で販売する製品を使用することができる。これらの製品は、鉱物オイルの中に80%ゲル(活性物質)、および100%ゲル(活性物質)化した状態で販売されている。これらの軟化点は88℃から94℃である。これらの製品はエチレンジアミンに凝縮されたC_(36)の二酸のコポリマーの混合物であって平均分子量は6000程度である。末端のエステル基はセチルアルコール、ステアリンアルコール(セチルステアリンアルコールとも称する)またはこれらの混合物で末端の酸をエステル化した結果物である。」(段落[0023])
(B-7)「本発明にかかる組成物はさらに、当該分野で通常使用される全てのフィラーを含有することができ、これらは例えば、場合によって親水性の乳化剤またはゲル化剤によって不透明化またはゲル化された水、抗酸化剤、精油、保存剤、香料、中性化剤、脂溶性ポリマー、保水剤、水分補給剤、ビタミン、エッセンシャル脂肪酸、サンフィルター等の化粧または皮膚科的活性物質及びこれらの混合物である。これらのフィラーは組成物の総重量に対して0から20重量%、好ましくは0から10重量%である。好ましくは、組成物は少なくとも化粧または皮膚科学的活性物質を含有する。」(段落[0037])
(B-8)本発明にかかる組成物は、スティック状の皮膚科学的色剤、皮膚、唇及び皮膚付属器のようなケラチン物質の手入れ剤、太陽光線防護剤、防臭剤やメークアップ除去のような体の衛生関連製品の形態で提供することができる。当該組成物は皮膚や皮膚付属器や唇の手入れ製品(リップクリーム、寒さ、太陽光線、風から唇を保護するための製品、皮膚、爪及び毛髪の手入れ用クリーム)の形態をとることができる。(段落[0039])
(B-9)
本発明にかかる組成物は又、皮膚のメイクアップ用の有色製品、特に手入れあるいはトリートメント効果を有することのあるファンデーション、頬紅及びアイシャドウ、小じわとり製品、アイライナー、体のメイクアップ用製品;手入れやトリートメント効果を有することのある口紅のような唇のメイクアップ用製品;マスカラのようなまつげ関連製品、眉毛及び髪の毛のためのクレヨンの形態をとることも可能である。特に、本発明の組成物は化粧および/または皮膚科的に活性な物質を含有することができる。(段落[0040])
(B-10)実施例1: 口紅
-ユニクリア80 25.0%
-パーリーム油 56.0%
-ポリグリセリル-2ポリヒドロキシステアレート 10.0%
-顔料(褐色酸化鉄+酸化チタニウム) 9.0%
準備:100℃において、ポリグリセリル-2ポリヒドロキシステアレートを使用してユニクリア80をパーリームオイルに溶解させ、次に顔料を添加する。これらを分散機(レイネリー)を使用して攪拌し、口紅の型に流し込んだ。このようにして、20℃においてTA-XT2分析器によって測定した硬度が425gである口紅が得られた。このようにして得られた口紅は光沢を有しにじみが無い。この特徴は従来品であるランコムのルージュアブソリュを比較対照として専門家のパネルに比較してもらった結果によっても確認された。本発明の口紅は従来技術のものに比較して全ての被験者に関して光沢に優れ適用から2時間後の時点でにじみが少ないものであった。」(段落[0051])

(3)対比、判断
上記(A-1)の請求項30に記載の組成物は、請求項27?29の記載を総合すると
「身体の悪臭を減少させるための組成物であって、
(a)組成物全重量の0.1?30重量%の制汗活性金属塩
(b)組成物全重量の2?40重量%の組成物のゲル化剤としてのポリアミド
(c)組成物全重量中に、制汗活性金属塩を溶かす最小の量から25%までの水
(d)組成物全重量に対し5?30重量%の非イオン界面活性剤としての
ラウレス-4
(e)ステアリルアルコールに対する非イオン界面活性剤の重量比が1:1?1:5の範囲内で透明ワックスとしてのステアリルアルコール
を含み、グリコールを含有しない組成物。」
が記載されているということができる。以下これを引用発明Aという。

上記(A-5)、(A-7)、(A-8)、(A-16)の記載から見て、引用発明においては、ゲル化剤としてポリアミドを含み、当該ポリアミドは組成物中の非イオン界面活性剤であるラウレス-4及び透明ワックスに溶解して非水相を形成しており、水相とエマルションを形成するものを含むと解される。
また、引用例Aの「ラウレスー4」は、ラウリルアルコールのポリエチレングリコールエーテルであり、エチレンオキシド単位を4つ含有する非イオン界面活性剤であって(上記(A-16))、そのHLBは9.7(米国特許第5,833,965号明細書、第17欄、下から8?5行参照)であること、さらに一般に界面活性剤が水相及び非水相からなるエマルションを安定化する性質を有することは周知であることからすると、「ラウレスー4」は本願補正発明の「8を超えるHLBを有するアルキレンオキシド含有エマルション安定剤」に相当する。
そこで、本願補正発明と引用発明Aとを比較すると、両者は、「水相及び非水相からなるエマルション、並びに8を超えるHLBを有する少なくとも1種のアルキレンオキシド含有エマルション安定剤と前記非水相中に主要なゲル化剤として存在する少なくとも1種のポリアミドからなるゲル化剤を含む組成物」である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
前者においては、ゲル化剤として「前記非水相中に主要なゲル化剤として存在する非シロキサンベースの少なくとも1種のポリアミド樹脂からなるゲル化剤」と特定しているのに対して、後者においては、かかる特定がされていない点。
(相違点2)
前者においては、組成物が「化粧品組成物」であるのに対して、後者においては「身体の悪臭を減少させるための組成物」である点。

そこで、これらの相違点について、以下に検討する。

(相違点1について)
引用例Aで使用されるポリアミドについては、単純ナイロンのターポリマーべース、及び複合脂肪酸ベースのもの2種があげられ、シロキサンベースのポリアミドについての言及はされてはいない上、使用できる市販のポリアミドの例として、「バーサミド」1655(ヘンケル社)、「ユニレッツ」など(上記(A-13)、(A-14))、本願明細書において使用可能なポリアミド樹脂として挙げられている市販製品と同じ物が記載されている。
そうすると、引用例Aのゲル化剤としてのポリアミドは、本願発明の非シロキサンベースのポリアミド樹脂からなるゲル化剤と格別に異なるものではない。さらに、上記(A-15)には「・・ポリアミドは・・ゲル化剤が組成物を全体としてゲル化し固化してゲル又はスティックの堅さを有する固体を形成するに十分な量で、前記組成物中に含有される。」との記載から、ポリアミドが主要なゲル化剤であることも明らかである。
したがって、この点にしても実質的な相違とはいえない。
なお、請求人は回答書(平成20年10月15日付け)で、引用例Aの組成物は、透明ワックスが存在するためポリアミドは主要なゲル化剤として使用されていないと主張するが、透明ワックスは組成物に付加的な構造を提供する(上記(A-7))ものであって、ゲル化させるものではないし、本願補正発明においてもワックスの使用が格別排除されているものではないから、その存在により、ポリアミドが主要なゲル化剤であることが否定されるものではない。

(相違点2について)
本願明細書段落[0020]には「・・制汗活性物質、特に、酸性金属塩である制汗活性物質を含まないことが好ましい。・・」との記載があり、これが本願発明の化粧品組成物の範疇から身体の悪臭を減少させるための組成物を排除する趣旨であるかは明確ではないが、段落[0021]の記載によれば、少なくともサンスクリーン活性物質を含む日焼け防止用化粧品やメイキャップ製品が含まれることは明白である。
一方、引用例Aの組成物は化粧品的に許容できる性質を有するものであり(上記(A-20))、消臭剤以外の適用例としてエモリエント剤やサンスクリーン剤などが挙げられている(上記(A-8))。また、引用例Bにおいても、ゲル化された液状脂肪層を有する組成物が、引用例Aと同様に防臭剤などの身体の衛生関連製品として使用されるほか、皮膚科学的色剤、太陽光線保護剤、ファンデーションやマスカラなどのメイクアップ用製品の形態を採りうることが記載されている(上記(B-8)(B-9))。
そうすると、引用発明Aの組成物についてその添加成分を適宜変更することにより各種の化粧品用組成物とすることは当業者が容易に行いうることである。
したがって、本願補正発明は引用例A及びBに記載された発明から当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

なお、請求人は、審尋に対する回答書において、本願発明の成分として「組成物の2.0重量%を超える量の着色成分」を追加し、化粧品組成物を「マスカラ、アイライナー、ファンデーション又はコンシーラーであるメーキャップ組成物」に特定する補正案を示している。しかし、引用例B(段落[0042]?[0044])には、組成物中に着色物質を組成物に最大40重量%含有させる点も開示されているのであるから、上記補正によっても特許要件を有する発明とはなり得ない。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成17年3月28日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成16年10月26日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。)

「水相及び非水相からなるエマルション、並びに、少なくとも1種のアルキレンオキシド含有エマルション安定剤と前記非水相中に存在する非シロキサンベースの少なくとも1種のポリアミド樹脂からなるゲル化剤を含む化粧品組成物。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由には、本願の優先権主張日前に頒布された特開2001-81320号公報(引用例B)が引用されている。

(2)対比・判断
引用例Bの請求項22において水を更に含有する請求項1の発明は、
「エステル基によって骨格に結合した少なくとも4つの炭素原子を有する少なくとも1つの末端アルキル鎖またはアルケニル鎖を有する少なくとも1つのポリアミド骨格ポリマーであって、少なくとも1つの室温で液状のHLBが8未満である両親媒性化合物に結合したポリマーによって構造化された液状脂肪相、更に水を含む、構造化された組成物。」である。以下、これを「引用発明B」という。
上記引用例Bにおける「両親媒性化合物に結合したポリマーによって構造化された液状脂肪層」の記載は、(B-10)の記載から見て、両親媒性化合物によりポリアミドが液状脂肪相へ溶解し構造化することを意味するものと解される。
そこで、本願発明(以下「前者」ともいう。)と引用発明B(以下、「後者」ともいう。)とを対比する。後者の「エステル基によって骨格に結合した少なくとも4つの炭素原子を有する少なくとも1つの末端アルキル鎖またはアルケニル鎖を有する少なくとも1つのポリアミド骨格ポリマー」は引用例Bの段落[0011]?[0023]の記載から見て非シロキサンベースのポリアミドということができ、また、このポリマーは液状脂肪相に存在するから、両者は、「水相、非水相、両親媒性化合物、非水相中に存在する非ポリシロキサンベースのポリアミド樹脂からなるゲル化剤を含む組成物」である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)前者は水相、非水相がエマルションを形成しているのに対し、後者はこの状態についての記載がない点
(相違点2)前者は両親媒性化合物が、少なくとも1種のアルキレンオキシド含有エマルション安定剤であると特定されている点
(相違点3)前者は化粧品組成物であるのに対し、後者はその用途の記載がない点。
そこで、これらの相違点について以下に検討する。

(相違点1について)
引用例Bには「本発明にかかる組成物はペースト、固体、クリームの状態で提供することができる。当該組成物は油中水、水中油・・の性状を取ることができる。」(上記(B-5))とあり、ここで「油中水」及び「水中油」とはエマルションの形態を意味することは明らかであるから、引用例Bに記載の組成物の水相、非水相をエマルション形態とすることに格別の困難性は認められない。

(相違点2について)
引用例Bには両親媒性化合物について、両親媒性化合物は極性部に結合した親油性部を有し、前記極性部が1から12のヒドロキシル基を有するアルコールまたはポリオール、少なくとも2つのオキシアルキレンと0から20のオキシプロピレン及びまたは0から20のオキシエチレン単位を有するポリオキシアルキレンから選択された残基であるものが例示(上記(B-1)、(B-2),(B-3))されている。したがって、引用発明Bにおいてアルキレンオキシド含有の両親媒性化合物を使用することにも格別の困難性は存しない。
また、一般に両親媒性化合物がエマルションの安定剤として作用しうることは周知であるから、引用例Bに記載の組成物の形態として油中水又は水中油エマルションを選択したときには、前記両親媒性物質がその安定化剤として作用することは容易に予測しうることである。

(相違点3について)
引用発明Bの組成物がマスカラやファンデーション等の形態を採りうることは上記(B-1)(B-7)に開示されているから、当該組成物の用途を化粧品とする点にしても当業者が容易に行いうることである。

上記のとおり相違点1?3には何れも格別の困難性はなく、本願発明の効果にしても、引用例Bから予想される効果を超えて著しく顕著なものとは認められないものである。
そうすると、本願発明は、引用例Bに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例Bに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-04-14 
結審通知日 2009-04-21 
審決日 2009-05-07 
出願番号 特願2003-504911(P2003-504911)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
P 1 8・ 575- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山田 靖福井 悟  
特許庁審判長 森田 ひとみ
特許庁審判官 星野 紹英
弘實 謙二
発明の名称 ポリアミドゲル化剤を含む安定な化粧用エマルション  
代理人 石井 貞次  
代理人 松任谷 優子  
代理人 平木 祐輔  
代理人 藤田 節  

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