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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N
管理番号 1204403
審判番号 不服2005-12576  
総通号数 119 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-07-04 
確定日 2009-09-24 
事件の表示 特願2000-512357「電話通信を改良および強化する装置および方法」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 3月25日国際公開、WO99/14951、平成13年10月 2日国内公表、特表2001-517038〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 経緯
1.手続
本件出願は1998年9月9日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1997年9月15日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成17年3月30日付けで拒絶査定がなされたものである。
本件は、上記拒絶査定を不服として平成17年7月4日付けで請求された拒絶査定不服審判である。当審において、平成20年7月10日付けで拒絶理由を通知したところ、平成21年1月15日付けで手続補正がなされた。

2.当審拒絶理由
平成20年7月10日付け通知の拒絶理由は、概略次のようなものである。

本件出願の請求項1?12に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


刊行物1:国際公開第97/28635号
刊行物2:川崎慎介、「コンピュータ・テレフォニの新潮流 進む低価格化 とWeb連携」、日経コミュニケーション、日経BP社、199 7年5月19日、第246号、p.104-109
刊行物3:有馬勲、「インターネットとコンピュータテレフォニ」、情報処 理、社団法人情報処理学会、1997年6月15日、第38巻、 第6号、p.451-456
刊行物4:「長距離通話料が格段に安い!インターネット電話の仕組みを探 る」、INTERNET magazine、株式会社インプレ ス、1997年8月1日、第31号、p.346-351

第2 本願発明
本件出願の請求項1?13に係る発明は、平成21年1月15日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1?13に記載されたとおりのものと認める。
そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「ホスティングエンティティとクライアント端末間にマルチメディア通信を提供するシステムにおいて、
インターネットに接続された、ホスティングエンティティにおけるウェブサイトでのウェブサーバであって、クライアントはコンピュータ端末によりインターネットを介して該ウェブサーバに接続し、且つウェブサーバにより提供されるウェブページと対話する、ウェブサーバと、
インターネットに接続された、コンピュータ化インターネットプロトコルネットワーク電話(IPNT)電話呼出およびスイッチングシステムとを具備し、
ウェブページとのクライアントの対話に応答して、ウェブサーバが、IPNT電話呼出およびスイッチングシステムに対して、クライアント端末におけるクライアントを識別し、クライアント端末とホスティングエンティティのエージェントステーションとの間のIPNT通話の確立を要求するデータを提供し、
コンピュータ化IPNT電話呼出およびスイッチングシステムは、所定の基準に基づいてIPNT通話においてクライアントと対話するのに最も適任な、ホスティングエンティティを代理するエージェントを選択し、コンピュータ化IPNT電話呼出およびスイッチングシステムにおけるルーティングポイントの、クライアント端末に送信されるべきインターネットプロトコル(IP)アドレスをウェブサーバに返信し、クライアント端末からルーティングポイントに到着した到来IPNT通話を選択されたエージェントステーションにルーティングするように構成されている、システム。」

第3 検討
1.刊行物の記載
国際公開第97/28635号(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に次の記載がある。
(ア)「Field of the Invention
This invention relates to data and telephone communications, and particularly to coordinating data and telephone communications so that they can be routed to desired places.」(1頁6?9行)
『発明の分野
この発明はデータ通信と電話通信に関し、特に所要の場所にルーティングできるようにデータ通信と電話通信を調整することに関する。』(特表平11-508430号公報(刊行物1の翻訳文に相当、以下「公表公報」という。)を参照にする際の対応する箇所は、5頁3?5行)

(イ)「Another technology that is gaining in popularity by the reduced costs of computers is the development of telephone call centers. In a call center, a large number of agents handle telephone communication with customers. The matching of calls between customers and agents is typically performed by software. A simple example is used here to describe a few of the many advantages of using call centers. When a call is made to a call center, the telephone number of the calling line is typically made available to the call center by a telephone carrier. Based on this telephone number, the software in the call center can access a database server to obtain information about the customer who has been assigned that phone number. The software can now route the call to an agent who can best handle the call based on predefined criteria (e.g., language skill, knowledge of products the customer bought, etc.). The software immediately transfers relevant information to a computer screen used by the agent. Thus, the agent can gain valuable information about the customer prior to receiving the call. As a result, the agent can more effectively handle the telephone transaction. 」(2頁20行?3頁4行)
『減少した価格のコンピュータにより人気を得ている他の技術は電話通話センタの発達である。通話センタでは、多数の代行者が顧客との電話通信を取り扱っている。顧客と代行者との間の通話のマッチングは、一般的にソフトウェアにより実行される。ここでは簡単な例を用いて、通話センタを使用する多くの利点のうちいくつかを説明する。通話センタに対して通話がなされると、通話回線の電話番号は一般的に電話通信事業者により通話センタに入手可能になる。この電話番号に基づいて、通話センタのソフトウェアがデータベースサーバにアクセスして、その電話番号が割り当てられている顧客についての情報を得ることができる。ソフトウェアは、予め定められた基準(例えば、語学のスキル、顧客が購入した製品についての知識など)に基づいてその通話を最も上手に取り扱うことができる代行者にその通話をルーティングすることができる。ソフトウェアはすぐに、代行者により使用されているコンピュータスクリーンに関連情報を送る。したがって、代行者は通話を受ける前に顧客についての価値のある情報を得ることができる。結果として、代行者は電話取引をさらに効率よく取り扱うことができる。』(公表公報を参照する際の対応箇所は、6頁17行?7頁2行)

(ウ)「Summary of the Invention
The present invention involves methods and systems for coordinating telephone and data communication between different sites. In a first embodiment of the present invention, a first site has at least a computer and a telephone. The computer in the first site displays a transaction (e.g., web pages originated from a server). A second site has a plurality of agents each associated with a computer and a telephone. The second site also has a telephone switch for directing incoming phone calls to these agents. The computer in the first site sends to the server, via a communication network, such as the Internet, data about the transaction and a request indicating an intention to call the second site. The request and the transaction data are delivered to a software module in the second site. Based on this transaction data, the second site can retrieve information about the intended caller in the first site (which has previously been stored in a database in the second site). A telephone number of a routing point of the telephone switch is reserved for this phone call, and the telephone number is sent to the first site via the digital communication network. When the switch receives an incoming call having this telephone number, this incoming call is routed to a telephone associated with a selected agent. The transaction originated from the server and the retrieved information of the first site are delivered to a computer associated with the selected agent. As a result, the agent can obtain information about the caller and immediately display the same information already displayed on the computer in the first site.」(3頁25行?4頁15行)
『発明の要約
本発明は、異なるサイト間の電話通信とデータ通信を調整する方法およびシステムを含んでいる。本発明の第1の実施形態では、第1のサイトが少なくとも1台のコンピュータと電話機を持っている。第1のサイトのコンピュータは取引(例えばサーバから生成されるウェブページ)を表示する。第2のサイトは、それぞれコンピュータおよび電話機と関係している複数の代行者を有している。第2のサイトは入ってくる電話通話をこれらの代行者に向ける電話スイッチも備えている。第1のサイトのコンピュータは、インターネットのような通信ネットワークを通して、取引についてのデータと第2のサイトを呼び出す意志を示すリクエストとをサーバに送る。リクエストと取引データは、第2のサイトソフトウェアモジュールに送られる。この取引データに基づいて、第2のサイトは第1のサイトの指定された発呼者についての(第2のサイト中のデータベースに前もって記憶されている)情報を検索することができる。電話スイッチのルーティングポイントの電話番号はこの電話通話に対して確保され、電話番号はデジタル通信ネットワークを通して第1のサイトに送られる。スイッチがこの電話番号を持つ入ってくる通話を受信すると、この入ってきた通話は選択された代行者に関係する電話機にルーティングされる。サーバから生成する取引と第1のサイトの検索された情報は、選択された代行者と関係するコンピュータに送られる。結果として、代行者は発呼者についての情報を得て、第1のサイトのコンピュータ上に既に表示されているのと同じ情報を即座に表示することができる。』(公表公報を参照する際の対応箇所は、7頁20行?8頁10行)

(エ)「Fig. 1 is a block diagram showing a voice/data communication system 100 operating in accordance with the present invention. System 100 comprises a provider site 102 and a customer site 104 connected by a data communication network 106, such as the Internet. It should be appreciated that the Internet is used here as an exemplary data communication network, ・・・ In this embodiment, provider site 102 and customer site 104 are engaged in electronic commercial transactions. Thus, provider site 102 sends (via Internet 106) product information, order forms, confirmation notices, etc. to customer site 104 and customer site 104 sends in (again via Internet 106) orders, shipping address, and payment information, etc. to provider site 102. In this system, provider site refers generally to a location which sells information, products or services and customer site refers to a location which requests such information, products or services. ・・・
Customer site 104 comprises a client computer 114 running a browser 116 of the present invention. Client computer 114 is connected to a modem 122 which is coupled to a TCP IP connection 124. As a result, client computer 114 is able to gain access to the Internet 106. A user in customer site 104 use browser 116 to communicate with other computers connected to Internet 106.」(6頁1?26行)
『図1は、本発明にしたがって動作する音声/データ通信システム100を図示しているブロック図である。システム100には、インターネットのようなデータ通信ネットワーク106により接続されたプロバイダサイト102と顧客サイト104が含まれている。ここでは例示的なデータ通信ネットワークとしてインターネットが使用されており、(略)この実施形態では、プロバイダサイト102と顧客サイト104は電子商取引において結合されている。したがって、プロバイダサイト102は(インターネット106を通して)製品情報、注文用紙、確認通知などを顧客サイト104に送り、顧客サイト104は(再度インターネット106を通して)注文、発送住所、支払情報などをプロバイダサイト102に差し出す。このシステムでは、プロバイダサイトは一般的に情報、製品またはサービスを販売する位置に関係しており、顧客サイトは情報、製品またはサービスなどを要求する位置に関係している。(略)
顧客サイト104には、本発明のブラウザ116が実行されているクライアントコンピュータ114が備えられている。クライアントコンピュータ114は、TCP/IP接続124に結合されているモデム122に接続されている。結果として、クライアントコンピュータ114はインターネット106に対するアクセスを得ることができる。顧客サイト104におけるユーザはブラウザ116を使用して、インターネット106に接続されている他のコンピュータと通信する。』(公表公報を参照する際の対応箇所は、9頁19行?10頁16行)

(オ)「Customer site 104 also contains a telephone 128 which allows the user in customer site 104 to make telephone communication with a service agent in provider site 102. Telephone 128 is coupled to a public switched telephone network (PSTN) 160 via a telephone channel 162. In the prior art system, it is not possible for the system to coordinate voice (via PSTN 160) and data (via Internet 106) communication between the user and the service agent. One aspect of the present invention allows such coordination to take place. As a result, the user and the service agent can display the same data (e.g., the same web page) at their respective computer screens and communicate orally (or visually if picture-phones are installed in both sites) at the same time.」(6頁27行?7頁5行)
『顧客サイト104は電話機128も含んでおり、この電話機128により顧客サイト104のユーザがプロバイダサイト102のサービス代行者と電話通信することができる。電話機128は公衆電話交換ネットワーク(PSTN)160と電話チャネル162を通して結合されている。従来のシステムでは、システムがユーザとサービス代行者との間の(PSTN160を通しての)音声通信と(インターネット106を通しての)データ通信を調整することができなかった。本発明の1つの観点によりこのような調整が可能となる。結果として、ユーザとサービス代行者はぞれぞれのコンピュータスクリーンに同じデータ(例えば同じウェブページ)を表示して、同時に口頭で(または両サイトにテレビ電話がインストールされているのであれば視覚的に)通信することができる。』(公表公報を参照する際の対応箇所は、10頁17?26行)

(カ)「Provider site 102 comprises a server 132 connected to Internet 106 through a TCP/IP connection 134. Server 132 supplies various web documents (e.g., product information, order forms, etc.) to browsers that request the documents. Provider site 102 contains a service assistance center 140 in which a number of service agents can take telephone calls from users in various customer sites. Service assistance center 140 contains a computer-telephony-integration (CTl) system 142 for accepting calls from PSTN 160 and routing calls to a plurality of telephones, one of them is shown as telephone 144. Service assistance center 140 also contains a plurality of computers, one of them is shown as computer 146. CTl system 142 is coupled to PSTN 160 via a high bandwidth telephone channel 164, such as a primary rate interface (PRI) as defined in the CCITT ISDN 1.431 standard. The service agents use both the computers and telephones to efficiently provide services to various users in the customer sites.」(7頁6?19行)
『プロバイダサイト102は、TCP/IP接続134を通してインターネット106に接続されているインターネットサーバ132を備えている。サーバ132はドキュメントを要求しているブラウザに対して、さまざまなウェブドキュメント(例えば製品情報、注文用紙など)を供給する。プロバイダサイト102にはサービス支援センタ140が含まれており、このセンタ140では、多数のサービス代行者がさまざまな顧客サイトのユーザから電話通話を取ることができる。サービス支援センタ140には、PSTN160から通話を受けて、その1つが電話機144として示されている複数の電話機に対して通話をルーティングするコンピュータ・電話統合(CTI)システム142が備えられている。サービス支援センタ140には、その1つがコンピュータ146として示されている複数のコンピュータも備えられている。CTIシステム142は、CCITT ISDN1.431標準規格で規定されているような一次レートインターフェース(PRI)のような広帯域幅の電話チャネル164を通してPSTN160に結合されている。サービス代行者はコンピュータと電話機の両方を使用して、顧客サイトのさまざまなユーザに対して効率的にサービスを提供する。』(公表公報を参照する際の対応箇所は、10頁27行?11頁12行)

(キ)「The Internet side of the invention is first described. Browser 116 is a piece of software that can display information sent by server 132. A protocol for communication between customer site 104 and provider site 102 using Internet 106 is the HTTP or web protocol. One of the advantages of web protocol is that the display on browser 116 is a graphic document (commonly called a web page) containing text, images, and other information. Each web page has an address in a recognized format -- the URL, or Uniform Resource Locator -- that enables computers all over the world to access it. Browser 116 sends a request to the URL of a web page in server 132. Server 132 respond with a file encoded in a special language called the hypertext markup language (HTML). This language contains "tags" which allows a programmer to specify the appearance of the web page and set up hyperlinks to other HTML documents (located in the same or other servers). As a result, the user in customer site 104 is able to use browser 116 to access information in server 132.」(7頁29行?8頁11行)
『本発明のインターネット側を最初に説明する。ブラウザ116はサーバ132により送られた情報を表示することができる1つのソフトウェアである。インターネット106を使用する顧客サイト104とプロバイダサイト102との間の通信用プロトコルは、HTTPまたはウェブプロトコルである。ウェブプロトコルの利点の1つは、ブラウザ116上の表示がテキスト、画像、他の情報を含んだ(普通ウェブページと呼ばれる)グラフィックスドキュメントであることである。各ウェブページは、識別されたフォーマット、URLすなわちユニフォーム・リソース・ロケータのアドレスを持っており、このアドレスにより世界中のコンピュータがウェブページにアクセスすることができる。ブラウザ116はサーバ132中のウェブページのURLに対してリクエストを送る。サーバ132は、ハイパーテキストマークアップ言語(HTML)と呼ばれる特別な言語によりエンコードされたファイルで応答する。この言語には“タグ”が含まれており、このタグによりプログラマがウェブページの出現を指定して、(同じサーバまたは他のサーバに配置されている)他のHTMLドキュメントに対するハイパーリンクをセットアップすることができる。結果として、顧客サイト104のユーザは、ブラウザ116を使用してサーバ132中の情報にアクセスすることができる。』(公表公報を参照する際の対応箇所は、11頁21行?12頁9行)

(ク)「When the user in customer site 104 is reviewing information on browser 116 or is about to place an order, the user may request the attention of a service agent in service assistance center 140. For example, the user may want to ask additional information or provide confidential information (such as a credit card number) orally to the service agent. It is desirable for the service agent to display on his/her computer 146 the same web page displayed on browser 116 while interaction with the user through telephone. It is also desirable for the service agent to obtain as much information about customer site 104 as possible prior to commencing telephone communication with the user.」(8頁19?27行)
『顧客サイト104のユーザがブラウザ116上の情報を見ているか、今にも注文しようしている時に、ユーザはサービス支援センタ140のサービス代行者のアテンションを要求する。例えばユーザが追加的な情報を尋ねたかったり、(クレジットカード番号のような)秘密情報を口頭でサービス代行者に提供したいかもしれない。電話機を通してユーザと相互対話している間に、サービス代行者が自分のコンピュータ146上に、ブラウザ116上に表示されているのと同じウェブページを表示させることが好ましい。サービス代行者がユーザとの電話通信を開始する前に顧客サイト104についてできるだけ多くの情報を得ることが好ましい。』(公表公報を参照する際の対応箇所は、12頁17?25行)

(ケ)「One aspect of the present invention provides automatic coordination between the telephone communication and the Internet communication. As an example, when the telephone communication is established, the web page displayed by browser 116 is automatically displayed on computer 146 together with information about customer site 104. As a result, the service agent may anticipate the user's needs and immediately provides desired services to the user. It should be appreciated that telephone communication in the present system includes voice and/or video communication through PSTN 160.」(9頁6?13行)
『本発明の1つの観点は、電話通信とインターネット通信との間の自動的な調整を提供することである。例として、電話通話が確立された時、ブラウザ116により表示されているウェブページは、顧客サイト104についての情報とともにコンピュータ146上に自動的に表示される。結果として、サービス代行者はユーザのニーズを予想することができ、ユーザに対して所要のサービスを即座に提供することができる。このシステムの電話通信にはPSTN160を通しての音声および/またはビデオ通信が含まれていることを理解すべきである。』(公表公報を参照する際の対応箇所は、13頁7?13行)

(コ)「In the present invention, the web page originated from server 132 contains an icon, such as a button 118, positioned at a convenient location of the web page. This icon is displayed by browser 116. When the user wishes to initiate telephone communication with service assistance center 140, he/she can click on (i.e., select) button 118.」(9頁14?18行)
『本発明では、サーバ132から生成したウェブページに、ウェブページの便利な位置に配置されたボタン118のようなアイコンが含まれている。このアイコンはブラウザ116により表示される。ユーザがサービス支援センタ140との電話通信を開始したい時に、ユーザはボタン118をクリックオン(すなわち選択)することができる。』(公表公報を参照する際の対応箇所は、13頁14?18行)

(サ)「When button 118 is clicked, browser 116 sends a telephone service request to "phone.html" in server 132. Server 132 then sends the request and associated data (e.g., the identity of customer site 104 and the HTML document associated with the web page displayed on browser 116) to a service request process (SRP) 168. SRP 168 is a software module which could run on server 132 or on a separate data processing device. SRP 168 selects an available service agent in accordance with predetermined criteria (e.g., availability of agents, previous interaction between a certain agent and customer site 104). Assuming that the service agent associated with computer 146 is selected, the HTML document previously sent to customer site 104 is delivered to computer 146. Computer 146 contains a browser and can display the HTML document. As a result, the service agent who will interact with the user in customer site 104 is able to see the same web page the user is seeing. As explained below, other information about customer site 104 can also be sent to computer 146. This information is accessible by the service agent.」(10頁1?15行)
『ボタン118がクリックされた時、ブラウザ116は電話サービスリクエストをサーバ132中の"phone.html"に送る。その後サーバ132はリクエストと関連データ(例えば顧客サイト104の識別子、ブラウザ116上に表示されているウェブページと関連するHTMLドキュメント)をサービスリクエストプロセス(SRP)168に送る。SRP168は、サーバ132上または独立したデータ処理装置上で実行することができるソフトウェアモジュールである。SRP168は、予め定められた基準(例えば代行者の利用可能性、ある代行者と顧客サイト104との間の以前の相互対話)にしたがって手の空いているサービス代行者を選択する。コンピュータ146と関係するサービス代行者が選択されたと仮定すると、顧客サイト104に対して前に送られているHTMLドキュメントがコンピュータ146に送られる。コンピュータ146にはブラウザが含まれており、コンピュータ146はHTMLドキュメントを表示することができる。結果として、顧客サイト104のユーザと相互対話するサービス代行者は、ユーザが見ているのと同じウェブページを見ることができる。以下に説明するように、顧客サイト104についての他の情報をコンピュータ146に送ることもできる。この情報はサービス代行者によりアクセス可能である。』(公表公報を参照する際の対応箇所は、14頁2?17行)

(シ)「CTI system 142 comprises a switching device 202 for accepting calls from PSTN 160. Examples of switching device 202 are (but not limited to) an automatic call distributor (ACD)/private branch exchange (PBX) and a PSTN switch. It should be appreciated that switching device 202 (hereinafter "PBX 202") can be a customer premise equipment or may be provided by a telephone communication carrier. PBX 202 contains a high bandwidth port 204 (for connecting to PSTN 104) and a plurality of low bandwidth ports (such as ports 206-209). Each of the low bandwidth ports is assigned one or more directory numbers. Some of these ports can be connected to telephones used by service agents (such as telephones 213 and 216). 」(10頁21?30行)
『CTIシステム142には、PSTN160からの通話を受け入れるスイッチング装置202が含まれている。スイッチング装置202の例は、(これらに限定されるものではないが)自動通話分配機(ACD)/私設交換機(PBX)やPSTNスイッチである。スイッチング装置202(以下“PBX202”と呼ぶ)は顧客構内の装置でもまたは電話通信事業者により提供されてもよいことを理解すべきである。PBX202には、(PSTN160に接続するための)広帯域ポート204と(ポート206?209のような)複数の狭帯域幅ポートが備えられている。各狭帯域幅ポートは、1つ以上のディレクトリ番号に割り当てられている。これらのポートのいくつかは、サービス代行者により使用されている(電話機213、216のような)電話機に接続することができる。』(公表公報を参照する際の対応箇所は、14頁23行?15頁4行)

(ス)「In order to facilitate the operation of service agents, each agent has easy access to a telephone and a computer. In Fig. 2, a telephone and a computer is set up as a station and assigned to a service agent. For example, telephone 213 and a computer 214 is grouped as a station 215 while telephone 216 and a computer 217 is grouped as a station 218. When a service agent logs in, he/she can enter his/her identification information to computers 214 and 217, respectively. As explained above, information on the service agents (such as language skill, knowledge of products, etc.) could be used by SRP 168 as some of the factors in selecting an appropriate service agent to interact with a particular user.」(11頁1?10行)
『サービス代行者の操作を促進するために、各サービス代行者は電話機およびコンピュータに対するアクセスが容易になっている。図2において、電話機とコンピュータはステーションとしてセットアップされており、サービス代行者に対して割り当てられている。例えば、電話機213とコンピュータ214はステーション215としてグループ分けされている一方、電話機216とコンピュータ217はステーション218としてグループ分けされている。サービス代行者がログインする時、サービス代行者は自分の識別情報をコンピュータ214、217にそれぞれ入力することができる。先に説明したように、(語学のスキル、製品の知識などのような)サービス代行者の情報は、特定のユーザと相互対話するために適切なサービス代行者を選択する際のいくつかの要因としてSRP168により使用することができる。』(公表公報を参照する際の対応箇所は、15頁5?15行)

(セ)「PBX 202 is connected to a CTl server 222 through a CTl link 220. CTl system 142 also comprises a stat-server 224 and a routing server 226. Stat- server 224 stores all relevant activities of CTl system 142 (e.g., the current status and history of activities of all low bandwidth ports). Routing server 226 routes calls to appropriate low bandwidth ports based on factors such as the information contained in stat-server 224, the information delivered by PBX 202 and the status of various low bandwidth ports. CTl system 142 contains a database server 228 containing information of provider site 102, e.g., agent skills, and information pertaining to the customers of provider site 102, including information of customer site 104. CTl system 142 also contains an external router 230, working together with SRP 168, for reserving a specific telephone channel between customer site 104 and the telephone in the station of the selected service agent.」(11頁11?23行)
『PBX202は、CTIリンク220を通してCTIサーバ222に接続されている。CTIシステム142には、STATサーバ224とルーティングサーバ226も備えられている。STATサーバ224は、CTIシステム142のすべての関連アクティビィティ(例えば、すべての低帯域幅ポートのアクティビィティの現在のステータスと履歴)を記憶している。ルーティングサーバ226は、STATサーバ224に含まれている情報、PBX202により送られた情報、さまざまな狭帯域幅ポートのステータスのような要因に基づいて適切な狭帯域幅ポートに対して通話をルーティングする。CTIシステム142には、例えば代行者のスキルであるプロバイダサイト102の情報と、顧客サイト104の情報を含むプロバイダサイト102の顧客に適切な情報とを含んでいるデータベースサーバ228が備えられている。CTIシステム142には外部ルータ230も備えられている。この外部ルータ230はSRP168とともに機能し、選択されたサービス代行者のステーション中の電話機と顧客サイト104との間の特定の電話チャネルを確保する。』(公表公報を参照する際の対応箇所は、15頁16行?16頁1行)

(ソ)「In one embodiment of the present invention, stat-server 224, external router 230, routing server 226, external router 230, and computers 214 and 217 are connected to a communication network 234. In the present embodiment, the function of these servers and external router 230 are provided by software modules running in one or more computers.」(12頁8?12行)
『本発明の1つの実施形態において、STATサーバ224、外部ルータ230、ルーティングサーバ226、コンピュータ214、217は、通信ネットワーク234に接続されている。この実施形態において、これらのサーバおよび外部ルータ230の機能は、1台以上のコンピュータで実行されているソフトウェアモジュールにより提供される。』(公表公報を参照する際の対応箇所は、16頁18?22行)

(タ)「SRP 168 is connected to external router 230 and communication network 234. After a user in customer site 104 clicks on button 118 and issues a request, SRP 168 determines the status of the agent computers (e.g., whether computers 214 and 217 have been turned on) and the identity of agents in the stations. SRP 160 may need to access database server 228 and stat-server 224 to obtain the necessary information. SRP 168 then selects an appropriate agent and notifies external router 230. External router 230 selects a telephone number of a routing point of PBX 202 and associate this telephone number with the directory number of PBX 202 which connects to the telephone of the selected service agent. The routing point is a component in PBX 202 which generates a CTl redirect request to CTl server 222 whenever a call reaches this component. This routing point could be a control directory number, virtual directory number, or a trunk/dial number identification system (DNIS). The exact nature of the telephone number is not important, as long as it is a number which can reach the routing point. Thus, the telephone number could be a private network number, a public network number or an international number.」(12頁17行?13頁2行)
『SRP168は、外部ルータ230と通信ネットワーク234に接続されている。顧客サイト104のユーザがボタン118をクリックオンして、リクエストを発行した後に、SRP168は代行者コンピュータのステータス(例えば、コンピュータ214、217が電源投入されているか否か)と、ステーション中の代行者の識別子を決定する。SRP168は、必要な情報を得るためにデータベースサーバ228とSTATサーバ224にアクセスする必要があるかもしれない。その後SRP168は、適切な代行者を選択して外部ルータ230に通知する。外部ルータ230はPBX202のルーティングポイントの電話番号を選択して、選択されたサービス代行者の電話機に接続するPBX202のディレクトリ番号をこの電話番号と関連付ける。ルーティングポイントはPBX202中の構成部品であり、通話がこの構成部品に到達するたびにCTIサーバ222に対するCTIリダイレクトリクエストを発生させる。このルーティングポイントは、コントロールディレクトリ番号、仮想ディレクトリ番号、またはトランク/ダイヤル番号の識別システム(DNIS)でもよい。電話番号の正確な性質は、ルーティングポイントに到達することができる番号である限り重要ではない。したがって、電話番号は私設ネットワーク番号、公衆ネットワーク番号、または国際番号でもよい。』(公表公報を参照する際の対応箇所は、16頁26行?17頁14行)

(チ)「External router 230 notifies CTl server 222 and SRP 168 of this telephone number. SRP 168 causes server 132 to send this telephone number to browser 116 in customer site 104. Browser 116 can either display this number so that the user can dial it manually or dial the number electronically and notifies the user about the status of the telephone connection. When PBX 202 receives a call having this telephone number, it directs the call to CTl server 222. CTl server 222 sends the call to external router 230, which then delivers this call to the directory number associated with the selected service agent.」(13頁3?10行)
『外部ルータ230は、この電話番号をCTIサーバ222とSRP168に通知する。SRP168はサーバ132がこの電話番号を顧客サイト104のブラウザ116に送るようにさせる。ブラウザ116は、ユーザがこの電話番号を手動でダイヤルできるように表示するか、あるいは番号を電子的にダイヤルすることができ、電話接続のステータスについてユーザに通知する。PBX202がこの電話番号を持つ通話を受信すると、この通話をCTIサーバ222に向ける。CTIサーバ222はこの通話を外部ルータ230に送信し、その後外部ルータ230はこの通話を選択されたサービス代行者に関係するディレクトリ番号に送る。』(公表公報を参照する際の対応箇所は、17頁15?23行)

2.刊行物1に記載された発明
上記(エ)によれば、刊行物1には、音声/データ通信システム100が記載されており、このシステムには、インターネット106により接続されたプロバイダサイト102と顧客サイト104が含まれている。
上記(オ)によれば、顧客サイト104には電話128が含まれ、公衆電話交換ネットワーク(PSTN)を介して、プロバイダサイト102のサービス代行者と電話通信することができる。
上記(エ)(カ)(キ)によれば、プロバイダサイト102は、インターネット106に接続されたインターネットサーバ132を備え、顧客サイト104のユーザはクライアントコンピュータ114のブラウザ116を使用してサーバ132中の情報にアクセスすることができる。
上記(カ)によれば、プロバイダサイト102にはサービス支援センタが含まれており、サービス支援センタには、公衆電話交換ネットワーク(PSTN)160から通話を受けて、複数の電話機に対して通話をルーティングするコンピュータ電話統合(CTI)システム142が備えられている。
上記(コ)(サ)によれば、サーバ132から生成されたウェブページにボタン118のようなアイコンが含まれ、ユーザがサービス支援センタ140と電話通信したいときにユーザがボタン118をクリックすると、ブラウザ116は電話サービスリクエストをサーバ132に送る。サーバ132はリクエストと顧客サイト104の識別子をサービスリクエストプロセス(SRP)168に送り、SRP168は予め定められた基準にしたがってサービス代行者を選択する。
上記(シ)(セ)によれば、CTIシステム142は、スイッチング装置202(PBX202)、CTIサーバ232、ルーティングサーバ226、外部ルータ230を備えているのであるから、CTIシステム142は、スイッチング装置202(PBX202)、CTIサーバ232、ルーティングサーバ226、外部ルータ230の機能を備えているといえる。そうすると、上記(シ)(ス)(セ)(タ)(チ)によれば、CTIシステム142は、PSTN160からの通話を受け入れ、SRPシステムとともに機能し、選択されたサービス代行者のステーションの電話機と顧客サイト104との間の特定の電話チャンネルを確保する。顧客サイト104のユーザがボタン118をクリックオンして、リクエストを発行した後に、SRP168は、適切な代行者を選択してCTIシステム142に通知し、CTIシステム142はルーティングポントの電話番号を選択して、選択されたサービス代行者の電話機に接続するディレクトリ番号をこの電話番号と関連付ける。CTIシステムは、この電話番号をSRP168に通知し、SRP168はサーバ132がこの電話番号を顧客サイト104のブラウザ116に送るようにする。CTIシステムがこの電話番号を受信するとこの通話を選択されたサービス代行者に関係するディレクトリ番号に送る。

以上によれば、刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。

「プロバイダサイト102と顧客サイト104との間で音声/データ通信をするシステム100において、
インターネット106に接続された、プロバイダサイト102でのインターネットサーバ132であって、顧客サイトのユーザはクライアントコンピュータ114によりインターネットを介してインターネットサーバ132に接続し、且つインターネットサーバ132中の情報(ウェブページ)にアクセスする、インターネットサーバ132と、
公衆電話交換ネットワーク(PSTN)160に接続されたコンピュータ・電話統合(CTI)システム及びサービスリクエストプロセス(SRP)168とを具備し、
ユーザがサービス支援センタの代行者と電話通話したいときにウェブページのボタン118をクリックオンすると、インターネットサーバ132が、サービスリクエストプロセス(SRP)168に対して電話サービスリクエストと顧客サイト104の識別子を送り、
SRP168は、予め定められた基準にしたがって適切なサービス代行者を選択し、CTIシステム142に通知し、CTIシステム142はルーティングポントの電話番号を選択して、選択されたサービス代行者のステーションの電話機に接続するディレクトリ番号をこの電話番号と関連付け、この電話番号をSRP168に通知し、SRP168はサーバ132がこの電話番号を顧客サイト104のブラウザ116に送るようにし、CTIシステムがこの電話番号を受信するとこの通話を選択されたサービス代行者に関係するディレクトリ番号に送るように構成されている、システム。」

3.対比
(1)「ホスティングエンティティとクライアント端末間にマルチメディア通信を提供するシステム」

刊行物1発明の「プロバイダサイト102」は、インターネットサーバ132、コンピュータ・電話統合(CTI)システム及びサービスリクエストプロセス168を具備しているから、本願発明における「ホスティングエンティティ」といえる。また、刊行物1発明の「プロバイダサイト102」は、顧客サイトのクライアントコンピュータ114とデータ通信をするものであり、また、プロバイダサイト102のサービス代行者は顧客サイトのユーザと電話通信するものであるから、マルチメディア通信を提供するといえる。そして、「顧客サイト104」のユーザは「クライアント」といえる。
そうすると、刊行物1発明の「プロバイダサイト102と顧客サイト104との間で音声/データ通信をするシステム100」は、本願発明でいう「ホスティングエンティティとクライアント間にマルチメディア通信を提供するシステム」といえる。
もっとも、刊行物1発明においては、クライアントはクライアントコンピュータ114及び電話機128によりプロバイダサイト102(本願発明にいう「ホスティングエンティティ」に相当する。)と通信を行うものであるのに対し、本願発明においては「クライアント端末」により通信を行う点で相違する。

(2)「ウェブサーバ」

刊行物1発明の「インターネットサーバ132」は、インターネット106に接続されており、顧客サイトのユーザはクライアントコンピュータ114によりインターネットを介してインターネットサーバ132に接続し、且つインターネットサーバ132中の情報(ウェブページ)にアクセスするから、本願発明における「インターネットに接続された、ホスティングエンティティにおけるウェブサイトでのウェブサーバであって、クライアントはコンピュータ端末によりインターネットを介して該ウェブサーバに接続し、且つウェブサーバにより提供されるウェブページと対話する、ウェブサーバ」といえる。

(3)「インターネットに接続された、コンピュータ化インターネットプロトコルネットワーク(IPNT)電話呼出およびスイッチングシステム」
および
「コンピュータ化IPNT電話呼出およびスイッチングシステムは、所定の基準に基づいてIPNT通話においてクライアントと対話するのに最も適任な、ホスティングエンティティを代理するエージェントを選択し、コンピュータ化IPNT電話呼出およびスイッチングシステムにおけるルーティングポイントの、クライアント端末に送信されるべきインターネットプロトコル(IP)アドレスをウェブサーバに返信し、クライアント端末からルーティングポイントに到着した到来IPNT通話を選択されたエージェントステーションにルーティングするように構成されている」

刊行物1発明は、「ユーザがサービス支援センタの代行者と電話通話したいときにウェブページのボタン118をクリックオンすると、インターネットサーバ132が、サービスリクエストプロセス(SRP)168に対して電話サービスリクエストと顧客サイト104の識別子を送り、SRP168は、予め定められた基準にしたがって適切なサービス代行者を選択し、CTIシステム142に通知し、CTIシステム142はルーティングポントの電話番号を選択して、選択されたサービス代行者のステーションの電話機に接続するディレクトリ番号をこの電話番号と関連付け、この電話番号をSRP168に通知し、SRP168はサーバ132がこの電話番号を顧客サイト104のブラウザ116に送るようにし、CTIシステムがこの電話番号を受信するとこの通話を選択されたサービス代行者に関係するディレクトリ番号に送るように構成されている」ものである。刊行物1発明の「SRP168」および「CTIシステム142」は、ユーザがサービス支援センタの代行者と電話通話したいときにウェブページのボタン118をクリックオンすることに起因して、ユーザからの通話を代行者に送るのであるから、「電話呼出およびスイッチングシステム」といえ、さらに、「電話呼出およびスイッチングシステム」はコンピュータ化されているといえるので、「コンピュータ化電話呼出およびスイッチングシステム」ともいえる。そうすると、刊行物1発明においては「電話呼出およびスイッチングシステムは、予め定められた基準にしたがって適切なサービス代行者を選択し、ルーティングポントの電話番号を選択して、選択されたサービス代行者のステーションの電話機に接続するディレクトリ番号をこの電話番号と関連付け、サーバ132がこの電話番号を顧客サイト104のブラウザ116に送るようにし、電話呼出およびスイッチングシステムがこの電話番号を受信するとこの通話を選択されたサービス代行者に関係するディレクトリ番号に送るように構成されている」ということができる。
以上より、刊行物1発明と本願発明とは、「コンピュータ化電話呼出およびスイッチングシステム」を具備する点で一致するが、刊行物1発明においてはインターネット電話を用いていないため、「コンピュータ化電話呼出およびスイッチングシステム」がインターネットに接続されておらず、「コンピュータ化インターネットプロトコルネットワーク(IPNT)電話呼出およびスイッチングシステム」でないのに対し、本願発明においてはインターネット電話を用いており、「コンピュータ化電話呼出およびスイッチングシステム」がインターネットに接続されており、「コンピュータ化インターネットプロトコルネットワーク(IPNT)電話呼出およびスイッチングシステム」である点で相違する。
さらに、刊行物1発明と本願発明とは、「コンピュータ化電話呼出およびスイッチングシステムは、所定の基準に基づいて通話においてクライアントと対話するのに最も適任な、ホスティングエンティティを代理するエージェントを選択し、コンピュータ化電話呼出およびスイッチングシステムにおけるルーティングポイントの、クライアントに送信されるべき情報をウェブサーバに返信し、クライアントからルーティングポイントに到着した到来通話を選択されたエージェントステーションにルーティングするように構成されている」点で一致しているが、刊行物1発明においてはインターネット電話を用いていないためIPNT通話ではなく、コンピュータ化電話呼出およびスイッチングシステムにおけるルーティングポイントの情報が電話番号であり、インターネットプロトコル(IP)アドレスでない点で、本願発明と相違する。そして、上記(1)の相違点に伴い、刊行物1発明においてはクライアントが電話機により通話するのに対し、本願発明においてはクライアントがクライアント端末により通話を行う点でも相違する。

(4)「ウェブページとのクライアントの対話に応答して、ウェブサーバが、IPNT電話呼出およびスイッチングシステムに対して、クライアント端末におけるクライアントを識別し、クライアント端末とホスティングエンティティのエージェントステーションとの間のIPNT通話の確立を要求するデータを提供し、」

刊行物1発明における「ユーザがサービス支援センタの代行者と電話通話したいときにウェブページのボタン118をクリックオンする」ことは、本願発明の「ウェブページとのクライアントの対話に応答して」に相当する。上記(2)のとおり刊行物1発明の「インターネットサーバ132」は、本願発明の「ウェブサーバ」に相当し、上記(3)のとおり刊行物1発明の「SRP168」は、「CTIシステム142」とともに本願発明における「コンピュータ化電話呼出およびスイッチングシステム」に相当するから、刊行物1発明における「ユーザがサービス支援センタの代行者と電話通話したいときにウェブページのボタン118をクリックオンすると、インターネットサーバ132が、サービスリクエストプロセス(SRP)168に対して電話サービスリクエストと顧客サイト104の識別子を送」ることは、本願発明における「ウェブページとのクライアントの対話に応答して、ウェブサーバが、電話呼出およびスイッチングシステムに対して、クライアントを識別し、クライアントとホスティングエンティティのエージェントステーションとの間の通話の確立を要求するデータを提供」することに相当する。
もっとも、上記(3)と同様に、刊行物1発明においてはインターネット電話を用いていないため、「電話呼出およびスイッチングシステム」が「IPNT電話呼出およびスイッチングシステム」ではなく、「通話」が「IPNT通話」でないのに対し、本願発明においてはインターネット電話を用いているため、「電話呼出およびスイッチングシステム」が「IPNT電話呼出およびスイッチングシステム」であり、「通話」が「IPNT通話」である点で相違する。さらに、上記(1)の相違点に伴い、刊行物1発明においてはクライアントが電話機により通話するのに対し、本願発明においてはクライアントがクライアント端末により通話を行う点で相違する。

4.一致点・相違点
上記3によれば、本願発明と刊行物1発明との一致点、相違点は次のとおりである。

(一致点)
ホスティングエンティティとクライアント間にマルチメディア通信を提供するシステムにおいて、
インターネットに接続された、ホスティングエンティティにおけるウェブサイトでのウェブサーバであって、クライアントはコンピュータ端末によりインターネットを介して該ウェブサーバに接続し、且つウェブサーバにより提供されるウェブページと対話する、ウェブサーバと、
コンピュータ化電話呼出およびスイッチングシステムとを具備し、
ウェブページとのクライアントの対話に応答して、ウェブサーバが、電話呼出およびスイッチングシステムに対して、クライアントを識別し、クライアントとホスティングエンティティのエージェントステーションとの間の通話の確立を要求するデータを提供し、
コンピュータ化電話呼出およびスイッチングシステムは、所定の基準に基づいて通話においてクライアントと対話するのに最も適任な、ホスティングエンティティを代理するエージェントを選択し、コンピュータ化電話呼出およびスイッチングシステムにおけるルーティングポイントの、クライアントに送信されるべき情報をウェブサーバに返信し、クライアントからルーティングポイントに到着した到来通話を選択されたエージェントステーションにルーティングするように構成されている、システム。

(相違点)
本願発明においてはインターネットプロトコルネットワーク電話を用いているのに対し、刊行物1発明においてはインターネットプロトコルネットワーク電話を用いておらず、この相違に伴い、
本願発明においては、
「コンピュータ化電話呼出およびスイッチングシステム」が、インターネットに接続された「コンピュータ化インターネットプロトコルネットワーク(IPNT)電話呼出およびスイッチングシステム」であり、
「通話」が「IPNT通話」であり、
コンピュータ化電話呼出およびスイッチングシステムにおけるルーティングポイントの「情報」が、「インターネットプロトコル(IP)アドレス」であり、
クライアントが「クライアント端末」により通信を行うのに対し、
刊行物1発明においては、
「コンピュータ化電話呼出およびスイッチングシステム」が、インターネットに接続されておらず、「コンピュータ化インターネットプロトコルネットワーク(IPNT)電話呼出およびスイッチングシステム」でなく、
「通話」が「IPNT通話」でなく、
コンピュータ化電話呼出およびスイッチングシステムにおけるルーティングポイントの「情報」が、「インターネットプロトコル(IP)アドレス」でなく、
クライアントが、クライアントコンピュータ及び電話機により通信を行う点。

5.相違点の判断
(1)周知技術
インターネット電話(インターネットプロトコルネットワーク電話)は、周知技術である。このことは、例えば、上記刊行物2?4に示されている。具体的な記載は下記のとおりである。
記(周知技術)
(a)「インターネット電話なら回線は1本
願客との通話にインターネット電話を使うタイプの製品は、コール・センター側にインターネット電話を受けるためのゲートウェイを設置する必要があるが、インターネット・アクセスと通話が電話回線1本で可能という点は魅力的だ。
さらに、多くのインターネット電話ソフトは通話機能だけではなく、パソコン上の画面共有機能(ホワイトボード)やアプリケーション共有機能を備えている。この機能を活用すれば、顧客のパソコン上の画面をコール・センター側に取り込み、オペレーターが顧客の画面を見ながら具体的な操作を指示することもできる。
インターネット電話を使ったインターネット・コール・センターの仕組みは図の3-4のようになる。
まず、顧客は自分のパソコンにインターネット電話ソフトをインストールし、起動しておく(略)。その上でホームページ上の電話アイコンをクリックして、コール・センター側に通話要求を送る。その後の処理は、基本的にには通話に通常の電話を使うタイプのインターネット・コール・センターの仕組みと変わらない。
WWWサーバーがCTIサーバーに顧客が入力した電話番号などの情報を送り、CTIサーバーがPBXとCTIアプリケーションにこれらの情報を伝える。CTIアプリケーションはデータベースを検索してオペレータのパソコン上に顧客データを表示する。最後にPBXが顧客との通話を開設する際に、オペレータの電話とインターネット電話用ゲートウエイを接続し、通話を可能にする。」(上記刊行物2、108頁中欄9行?109頁右欄17行)
(b)「4.コンピュータテレフォニとインターネットテレフォニの融合による新しい価値の提供
現在のコンピュータテレフォニシステムでは電話ケーブルとLAN ケーブルが別にあって,音声は電話ケーブルを通り、呼の制御信号はLANケーブルを通る。これに対し、インターネットテレフォニを使う場合は呼の制御信号ばかりでなく音声もLANケーブルを通す。いわば、ネットワークの統合が可能となる。
また、アプリケーションからみた場合、インターネットテレフォニはコンビュータテレフォニの新しいコンポーネントととらえることができる。インターネットは電話に並ぶ新しいコミュニケーションチャネルと考えることができ導入の意義は大きい。
図-5にインターネットテレフォニを取り込んだCTIシステムの典型的を構成例を示す。
コールセンタアプリケーションにおいては、インターネットテレフォニを導入することにより企業と顧客間の新しいコミュニケーションチャネルが構成できる、たとえばWWW上の製品情報を閲覧していてもっと詳しい情報が知りたい場合には、インターネット経由でそのメーカの顧客サポートの担当者と通話することができる。この際インターネットテレフォニゲートウェイを介することにより、顧客サポートのオペレータはインターネットからの問合せも電話からの問合せと同じようにオぺレー夕の電話機で受けることができる。また、Webブラウザを介して顧客とコールセン夕のオペレータが情報を共有するといったアブリケーションも考えられる。」(上記刊行物3、455頁右欄1行?456頁3行)
(c)「コンピュータを使ってやり取りする方式の場合、話す人のコンピュータはあらかじめ両方ともインターネットに接続していることが必要だ。両者が専用線やOCNで常時接続しているのなら、電話機で電話番号をプッシュするように、相手のIPアドレスを入力するだけで呼び出せるが、両方ともダイアルアップの時などは前もって始める時刻を打ち合わせておいたり、インターネットに接続後に携帯電話などでお互いのIPアドレスを教え合ったりすることが必要だ。また、一度それぞれのソフトウェアで指定されているインターネット用のサーバーにアクセスし、そこにアクセスしている他の人のアドレスや名前の一覧から通話したい人を選んで接続するという方法もある。」(上記刊行物4、348頁左欄1行?中欄2行)

(2)相違点の判断
上記(1)のとおり、インターネットプロトコルネットワーク電話は周知技術であり、インターネットプロトコルネットワーク電話において、インターネットプロトコルアドレスを用いることは当然である。
刊行物1発明における通話手段としての電話を通話手段として周知のインターネットプロトコル電話に置き換えることに困難性はなく、その際、刊行物1発明におけるコンピュータ化電話呼出およびスイッチングシステムをインターネットプロトコル電話に適用できるようにし、コンピュータ化電話呼出およびスイッチングシステムにおけるルーティングポイントの「情報」を「インターネットプロトコル(IP)アドレス」にすることは、当業者にとって容易になし得たことである。
そして、インターネットプロトコルネットワーク電話をコンピュータと共に1つの端末とすることは上記(1)(a)に示されており、刊行物1発明における通話手段としての電話を通話手段として周知のインターネットプロトコル電話に置き換える際に、コンピュータとインターネットプロトコルネットワーク電話を1つの端末、すなわちクライアント端末にすることは当業者にとって容易になし得たことである。

(3)請求人の主張について
請求人は、平成21年1月15日付け意見書において、本願発明のIPNT技術を取り入れた呼制御および独自の装置は、刊行物1?4から容易に想到できるものではないと主張している。
しかしながら、刊行物1発明および周知技術(刊行物2?4)より本願発明が容易になし得たことは上記のとおりであり、IPNT電話を適用したことによる具体的な構成が格別なものとは認められず、発明の詳細な説明を見てもインターネットプロトコルネットワーク電話に関する記載は、段落【0005】、【0209】?【0212】にあるものの、IPNT技術を取り入れたことによる独自の技術的事項が具体的に記載されておらず、請求人の主張は採用できない。

(4)まとめ
上記のように相違点に係る相違は、当業者が容易に想到できたことであり、その効果は刊行物1に記載された発明及び周知技術から予測できるものであって格別のものといえない。
したがって、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許することができない。

第4 むすび
以上、検討したとおりであるから、本件出願の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
それ故、本願の他の請求項2?13について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-04-24 
結審通知日 2009-04-28 
審決日 2009-05-11 
出願番号 特願2000-512357(P2000-512357)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 菅原 道晴  
特許庁審判長 奥村 元宏
特許庁審判官 小池 正彦
岩井 健二
発明の名称 電話通信を改良および強化する装置および方法  
代理人 大崎 勝真  
代理人 川口 義雄  
代理人 坪倉 道明  
代理人 小野 誠  

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