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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04B
管理番号 1204404
審判番号 不服2005-19213  
総通号数 119 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-10-05 
確定日 2009-09-24 
事件の表示 特願2000-536113「固定干渉源の適応型キャンセラ」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 9月16日国際公開、WO99/46829、平成14年 3月 5日国内公表、特表2002-507071〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、1999年1月7日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1998年3月12日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成17年7月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年11月4日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項8に係る発明は、平成17年11月4日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項8に記載されたとおりの次のものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「他の送受信局からの信号を受信する主アンテナ(181)を有し少なくとも一つの干渉源が既知である送受信局との連携用の干渉消去システムであって、
前記主アンテナ(181)の近傍に設けられ第1の既知の干渉源に向けられた第1の狭ビーム指向性アンテナ(183)を含み、
前記主アンテナ(181)と前記指向性アンテナ(183)とを、前記送受信局の第1および第2の無線周波数(RF)受信機(191,193)であって前記主アンテナおよび前記指向性アンテナの受信した信号を復調する第1および第2のRF受信機(191,193)に接続し、
前記第1および第2のRF受信機(191,193)に接続され、前記復調された指向性アンテナ信号に重みづけして消去信号を生ずる手段と、前記消去信号を前記復調された主アンテナ信号と加算する手段とを含み、その加算手段が前記既知の干渉源からの干渉の影響を実質的に除去した信号を出力するようにする干渉キャンセラ(185)を含む
干渉消去システム。」

3.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開昭48-8437号公報(以下、「引用例1」という。)、及び特開平7-245519号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(引用例1)
A.「この発明は、マイクロ波通信回線等の多段無線中継方式において、通信目的である相手局以外の方向から混入してくる干渉混信電波を除去させる無線中継用アンテナシステムに関するものである。」(第1頁右下欄第6?10行)

B.「第1図はこの発明の構成実施例であって、(1)は相手局送信アンテナ、(3)は混信波を発する局の送信アンテナであり、そのサイドローブによる漏洩放射が斜め方向よりアンテナ(2)に向けられている。(4)は上記自局アンテナ(2)の近傍に設置された干渉波受信用の補助アンテナであり、その主軸は上記アンテナ(3)に向けられている。
補助アンテナ(4)の信号出力は減衰器(5)、移相(審決注:公報最終頁の「6.補正の内容」に従って、「位相」を「移相」に補正。)器(6)を経て、引算合成を行うハイブリッド回路(7)に至り、こゝでアンテナ(2)の信号出力と合流し、受信機(8)に導かれる。以下これらの動作関係を詳述すれば送信アンテナ(1)から受信アンテナ(2)に至る放射電波の伝搬経路は周知の正規電波伝搬を表わしている。こゝにおいて周波数を一にする近傍混信波発振局が設定された場合、その送信アンテナ(3)のサイドローブ特性などにより、側方放射がなされる。これが電波(3)(審決注:この「(3)」との記載は「(13)」の誤記であるものと認められる。)」となり受信アンテナ(2)に達し、電波(11)および(13)で干渉をおこすこととなる。
・・・(中略)・・・
(7)式を達成させるには、振巾レベルとベクトルの逆相加算を意味することから、電子回路上では減衰器(5)で振巾レベルを合わせ、また逆位相にするため可変移相器(審決注:公報最終頁の「6.補正の内容」に従って、「可変位相器」を「可変移相器」に補正。)(6)を調整することで実施出来る。
・・・(中略)・・・
以上の関係をベクトル図を用いて説明すれば、アンテナ(2)の出力は、第2図(イ)に示すとおりである。電波(11)によるベクトル表示を(15)とすれば混信電波(13)はベクトル(16)で表わされる。同様にしてアンテナ(4)の出力は第2図(ロ)に示す如く、電波(14)をベクトル(17)、電波(12)はベクトル(18)で表わされる。ここで、干渉ベクトル(16)を消去するため、ベクトル(17)の振巾を等しくするのに減衰器(5)を使用して、第3図の(17)′とすれば、それに従い(18)は(18)′となる。また位相角を180度(審決注:公報最終頁の「6.補正の内容」に従って、「位相角を」を「位相角を180度」に補正。)の逆相にするため、移相器(審決注:公報最終頁の「6.補正の内容」に従って、「位相器」を「移相器」に補正。)(6)をもって調整し、ハイブリッド回路(7)で混合すれば、第3図に示す相互関係となり、ハイブリッド出力にベクトル(19)を得る。このベクトル(19)はベクトル(15)と(18)′の合成であるから、アンテナ(1)から放射された目的電波成分のみとなる。
つまりアンテナ(2)に受信されていた混信電波(13)は完全に除去されて相手局目的電波のみ受信機(8)に導入されていく。
このことは干渉妨害電波到来方向に鋭い落ちこみを示す指向性アンテナを実現したことになる。」(第2頁右上欄第8行?第3頁右上欄14行)

C.「なお、上記実施例は受信機系の主アンテナに補助アンテナを合成させた場合について一例をのべたが、可逆性回路を使用しているので、送信機系の主アンテナに補助アンテナを合成させても同様の効果が期待でき、また送信系および受信系の両者において夫々補助アンテナを施せばその効果は更に著るしく、補助アンテナの大きさは小くとも利得にして3dB(審決注:公報最終頁の「6.補正の内容」に従って、「3αβ」を「3dB」に補正。)以下の低利得アンテナでよいことになるから一段と小形化出来る。
また混信波を送出する局を1カ所として説明したが、複数個存在する場合には、これに対応する複数個の補助アンテナを設定して合成すれば良い。」(第3頁右上欄第20行?左下欄第13行)

上記A?Cの記載及び関連する図面を参照すると、引用例1には、次の発明が記載されているものと認められる。(以下、「引用例1記載の発明」という。)
「相手局からの電波(11)を受信する自局アンテナ(2)を有し、少なくとも一つの近傍混信波発振局を含む無線中継用アンテナシステムであって、
前記自局アンテナ(2)の近傍に設けられ主軸が前記近傍混信波発振局のアンテナ(3)に向けられた干渉波受信用の補助アンテナ(4)を含み、
前記補助アンテナ(4)の信号出力の振巾、位相を調整する減衰器(5)及び可変移相器(6)と、前記減衰器(5)及び可変移相器(6)の出力を前記自局アンテナ(2)の信号出力から引算合成するハイブリッド回路(7)とを含み、
前記自局アンテナ(2)に受信されていた混信電波(13)が完全に除去され相手局送信アンテナ(1)から放射された目的電波成分のみとなっている前記ハイブリッド回路(7)の出力を受信機(8)に導入する
無線中継用アンテナシステム。」

(引用例2)
D.「【0002】
【従来の技術】従来のこの種のサイドローブキャンセラーとして、例えば特開昭60-41802に示されたものがあり、図15は上記文献に示されたサイドローブキャンセラー装置の構成図である(従来例1と呼ぶ)。図において、1は所望信号方向にゲインを有する主アンテナ、2a,2bは補助アンテナ、3,4a,4bは受信機、5a,5bは補助アンテナ2a,2bの受信信号に重み付けをする乗算器、7は重み付けをする乗算器5a,5bの出力信号を加算する加算器、6は主アンテナの受信信号と加算器7の出力信号の差をとる減算器、8は減算器6の出力である差信号と補助アンテナ2a,2bの受信信号から重みを計算する荷重計算手段、10は適応フィルタである。Sは所望波、J_(0),J_(1)は干渉波、d(k)は主アンテナ1の受信信号、x_(0)(k),x_(1)(k)はそれぞれ補助アンテナ2a,2bの受信信号、y(k)は適応フィルタ10の出力信号、z(k)は減算器の出力信号、w_(0),w_(1)は乗算器5a,5bに印加する荷重である。上記信号の表記式におけるkは時間を表す因子である。また、信号はすべて複素信号とする。
・・・(中略)・・・
【0003】・・・(中略)・・・サイドローブキャンセラの使用環境では所望波の電力に比べ、干渉波の電力が非常に大きいため無指向性の補助アンテナで受ける所望波は無視できる。
・・・(中略)・・・
【0011】差信号z(k)はサイドローブキャンセラの出力信号であり、また荷重計算手段8に転送される。荷重計算手段8では、特開昭60-41802で示されるように、差信号z(k)と補助アンテナ2a,2bの受信信号x_(0)(k),x_(1)(k)の相関をとり、差信号z(k)の出力信号が最小となるように荷重w_(0),w_(1)を決定する。所望波S、干渉波J_(0),J_(1)、及び受信機の内部雑音がそれぞれ統計的に独立であり、補助アンテナ2a,2bで受ける所望波Sが無視できる場合、減算器6において、主アンテナ1の受信信号d(k)に含まれる所望波信号および受信機雑音を抑圧することはないので、差信号z(k)に含まれる所望波信号は保存される。このためz(k)の電力を最小化するとき、z(k)に含まれる干渉波成分のみが最小化され、サイドローブキャンセラの干渉波抑圧性能は最高になる。」

上記Dの記載及び図15を参照すると、引用例2には、次の周知技術が記載されているものと認められる。(以下、「引用例2記載の周知技術」という。)
「所望波及び干渉波を受信する主アンテナと干渉波を受信する補助アンテナとをそれぞれ受信機に接続し、
前記主アンテナに接続された受信機の出力と前記補助アンテナに接続された受信機の出力に重み付けした信号との差を計算することにより、干渉波を抑圧した信号を得ること。」

4.対比
本願発明と引用例1記載の発明とを対比すると、次のことがいえる。

(あ)引用例1の上記Cの「なお、上記実施例は受信機系の主アンテナに補助アンテナを合成させた場合について一例をのべたが、可逆性回路を使用しているので、送信機系の主アンテナに補助アンテナを合成させても同様の効果が期待でき、・・・」との記載からすると、引用例1記載の発明において、「自局」及び「相手局」は、「送信機系」及び「受信機系」のどちらも有してよいものであると解される。
よって、引用例1記載の発明における「自局」及び「相手局」は、本願発明における「送受信局」及び「他の送受信局」に相当する。

(い)引用例1記載の発明における「近傍混信波発振局」は、本願発明における「干渉源」に相当する。

(う)引用例1の上記Bの「(4)は上記自局アンテナ(2)の近傍に設置された干渉波受信用の補助アンテナであり、その主軸は上記アンテナ(3)に向けられている。」と記載によれば、引用例1記載の発明における「補助アンテナ(4)」は、その主軸が「近傍混信波発振局のアンテナ(3)」に向けられたものである。
ここで、補助アンテナ(4)の主軸を近傍混信波発振局のアンテナ(3)に向けるということは、当然、近傍混信波発振局のアンテナ(3)が自局からみてどの方向に存在するかがわかっている、すなわち干渉源である「近傍混信波発振局」が「既知」であることが前提である。
よって、引用例1記載の発明において、干渉波受信用の補助アンテナ(4)を有する「自局」は、「少なくとも一つの近傍混信波発振局が既知である自局」であり、本願発明における「少なくとも一つの干渉源が既知である送受信局」に相当する。

(え)本願発明における「他の送受信局からの信号を受信する主アンテナを有し少なくとも一つの干渉源が既知である送受信局との連携用の干渉消去システム」は、翻訳前の原文では、“An interference cancellation system for use in conjunction with a communication station having a main antenna for receiving signals from other communication stations where at least one interference source is known”とされている構成である。
すなわち、翻訳後の「・・・である送受信局との連携用の干渉消去システム」は、原文では、“An interference cancellation system for use in conjunction with a communication station having ・・・”とされているものであり、“a communication station having ・・・”と連携しての使用のための(for use in conjunction with)“An interference cancellation system”とされているものである。
一方、引用例1記載の発明における「無線中継用アンテナシステム」は、「近傍混信波発振局」からの「混信電波(13)」すなわち「干渉波」を消去する機能を有するシステムであるから、「干渉消去システム」と呼ぶことができるものであって、該干渉消去システムは、自局アンテナ(2)と補助アンテナ(4)を有する「自局」と連携しての使用のための干渉消去システムである。
よって、引用例1記載の発明における「相手局からの電波(11)を受信する自局アンテナ(2)を有し、少なくとも一つの近傍混信波発振局を含む無線中継用アンテナシステム」は、本願発明における「他の送受信局からの信号を受信する主アンテナを有し少なくとも一つの干渉源が既知である送受信局との連携用の干渉消去システム」に相当するということができる。

(お)引用例1記載の発明における「自局アンテナ(2)の近傍に設けられ主軸が近傍混信波発振局のアンテナ(3)に向けられた干渉波受信用の補助アンテナ(4)」は、引用例1の上記Bの記載及び第2図(ロ)から明らかなように、その受信信号のベクトルは、相手局からの電波(12)によるベクトル(18)よりも近傍混信波発振局からの電波(14)によるベクトル(17)の振巾の方が大きなものである。すなわち、上記「補助アンテナ(4)」は、「近傍混信波発振局」の方向に狭ビーム指向性を有するものである。
そして、上記(う)で述べたように、引用例1記載の発明における「近傍混信波発振局」は「既知」のものであるから、「第1の既知の干渉源」を構成しているということができる。
よって、引用例1記載の発明における「自局アンテナ(2)の近傍に設けられ主軸が近傍混信波発振局のアンテナ(3)に向けられた干渉波受信用の補助アンテナ(4)」は、本願発明における「主アンテナの近傍に設けられ第1の既知の干渉源に向けられた第1の狭ビーム指向性アンテナ」に相当する。

(か)引用例1記載の発明において、「減衰器(5)及び可変移相器(6)」は、「自局アンテナ(2)の信号出力」に含まれる混信電波成分を打ち消すための信号成分、すなわち本願発明における「消去信号」に対応する信号成分を出力する構成である。
一方、本願発明における「第1および第2のRF受信機に接続され、復調された指向性アンテナ信号に重みづけして消去信号を生ずる手段」は、「復調された」信号であるものの「指向性アンテナ信号」に重みづけして消去信号を生ずる手段である。
そして、引用例1記載の発明における「補助アンテナ(4)の信号出力」は、本願発明における「指向性アンテナ信号」に対応する信号である。
よって、引用例1記載の発明における「補助アンテナ(4)の信号出力の振巾、位相を調整する減衰器(5)及び可変移相器(6)」と、本願発明における「第1および第2のRF受信機に接続され、復調された指向性アンテナ信号に重みづけして消去信号を生ずる手段」とは、「指向性アンテナ信号に重みづけして消去信号を生ずる手段」である点で共通するものである。

(き)引用例1記載の発明において、「ハイブリッド回路(7)」は、「減衰器(5)及び可変移相器(6)の出力」すなわち本願発明における「消去信号」に対応する信号を「自局アンテナ(2)の信号出力」すなわち本願発明における「主アンテナ信号」に対応する信号から引算合成するものである。
一方、本願発明における「消去信号を復調された主アンテナ信号と加算する手段」は、「復調された」信号であるものの「主アンテナ信号」を消去信号に対して加算する手段である。
ここで、引用例1記載の発明における「引算合成」は、片方の信号をマイナスにして加算することに相当するから、「加算」の一種であるということができる。
よって、引用例1記載の発明における「減衰器(5)及び可変移相器(6)の出力を自局アンテナ(2)の信号出力から引算合成するハイブリッド回路(7)」と、本願発明における「消去信号を復調された主アンテナ信号と加算する手段」とは、「消去信号を主アンテナ信号と加算する手段」である点で共通するものである。

(く)引用例1記載の発明における「減衰器(5)及び可変移相器(6)」と「ハイブリッド回路(7)」よりなる構成は、「自局アンテナ(2)に受信されていた混信電波(13)が完全に除去され相手局送信アンテナ(1)から放射された目的電波成分のみ」をハイブリッド回路(7)からの出力として得るための構成であるから、「加算手段が既知の干渉源からの干渉の影響を実質的に除去した信号を出力するようにする干渉キャンセラ」として機能しているということができる。

上記(あ)?(く)の事項を踏まえると、本願発明と引用例1記載の発明とは、次の点で一致し、また、相違するものと認められる。

(一致点)
本願発明と引用例1記載の発明とは、ともに、
「他の送受信局からの信号を受信する主アンテナを有し少なくとも一つの干渉源が既知である送受信局との連携用の干渉消去システムであって、
前記主アンテナの近傍に設けられ第1の既知の干渉源に向けられた第1の狭ビーム指向性アンテナを含み、
指向性アンテナ信号に重みづけして消去信号を生ずる手段と、前記消去信号を主アンテナ信号と加算する手段とを含み、その加算手段が前記既知の干渉源からの干渉の影響を実質的に除去した信号を出力するようにする干渉キャンセラを含む
干渉消去システム。」
である点。

(相違点)
本願発明は、「主アンテナと指向性アンテナとを、送受信局の第1および第2の無線周波数(RF)受信機であって前記主アンテナおよび前記指向性アンテナの受信した信号を復調する第1および第2のRF受信機に接続」するものであって、「消去信号を生ずる手段」が、「第1および第2のRF受信機」に接続されるとともに「復調された」指向性アンテナ信号に重みづけして消去信号を生ずるものであり、「加算する手段」が、消去信号を「復調された」主アンテナ信号と加算するものであるのに対し、引用例1記載の発明は、ハイブリッド回路(7)の出力を受信機(8)に導入するものである点。

5.当審の判断
そこで、上記相違点について検討する。
上記引用例2記載の周知技術によれば、主アンテナが受信する干渉波を補助アンテナが受信する干渉波により抑圧する場合に、主アンテナ、補助アンテナそれぞれを受信機に接続し、該主アンテナに接続された受信機の出力と該補助アンテナに接続された受信機の出力に対して重み付けした信号とを用いて計算を行うことにより、干渉波を抑圧するようにすることは、周知技術にすぎないものである。そして、一般に、無線周波数(RF)帯の信号を受信する受信機において、受信した無線周波数(RF)帯の信号を復調した信号を得る構成までも含めて「受信機」と称することはごく普通のことであり、そのような場合には、上記引用例2記載の周知技術は、主アンテナに接続された受信機からの復調された出力と補助アンテナに接続された受信機からの復調された出力に対して重み付けした信号とを用いての計算を行うことにより干渉波を抑圧するものとなる。
してみれば、引用例1記載の発明に対して上記引用例2記載の周知技術を参酌することにより、「主アンテナと指向性アンテナとを、送受信局の第1および第2の無線周波数(RF)受信機であって前記主アンテナおよび前記指向性アンテナの受信した信号を復調する第1および第2のRF受信機に接続」するものとし、「消去信号を生ずる手段」を、「第1および第2のRF受信機」に接続するとともに「復調された」指向性アンテナ信号に重みづけして消去信号を生ずるものとし、「加算する手段」を、消去信号を「復調された」主アンテナ信号と加算するものとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

そして、本願発明の構成によってもたらされる効果も、引用例1記載の発明及び引用例2記載の周知技術から当業者が容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1記載の発明及び引用例2記載の周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-04-20 
結審通知日 2009-04-24 
審決日 2009-05-08 
出願番号 特願2000-536113(P2000-536113)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 畑中 博幸高橋 宣博溝本 安展  
特許庁審判長 長島 孝志
特許庁審判官 真木 健彦
飯田 清司
発明の名称 固定干渉源の適応型キャンセラ  
代理人 阿部 和夫  
復代理人 渡邉 直幸  
代理人 谷 義一  

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