• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F23G
管理番号 1204438
審判番号 不服2007-3764  
総通号数 119 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-02-08 
確定日 2009-09-24 
事件の表示 平成9年特許願第87379号「廃棄物焼却装置および焼却方法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年10月9日出願公開、特開平10-267237号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件に係る出願(以下「本件出願」という。)は、平成9年3月21日の特許出願であって、平成18年12月28日付けで拒絶査定がなされ(発送日:平成19年1月9日)、これに対し、平成19年2月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされた。そして、平成21年4月10日付け(発送日:同年4月14日)で当審にて拒絶理由が通知され、同年6月10日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2.本願発明について
(1)本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成21年6月10日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下「本願発明」という。)。

「廃棄物焼却部、焼却残渣分離部、焼却残渣分離部で分離した燃焼ガス(PCBを主体とする被焼却物の燃焼ガスは除く)を二次燃焼室に接線方向に導入する燃焼ガス路、下向き角度αが10?30°、水平断面に於ける法線に対する角度βが8?40°で取り付けた下向きの旋回流を形成させる複数の二次空気導入ノズルおよびバーナーを有する上部が円柱形の二次燃焼室よりなる廃棄物焼却装置を用い、該燃焼ガス路の燃焼ガス流速15m/s以上、二次空気の導入速度を30m/s以上として二次燃焼室内で燃焼ガス温度を900℃以上に維持しながら下向きの旋回流をおこさせ、燃焼ガス中の粒径10μm以上の煤塵金属微粒子を100mg/Nm^(3)以下まで分離するとともに燃焼ガスを1秒以内に90℃以下に湿式急冷処理することにより排ガス中のダイオキシン類の再合成を防止する廃棄物焼却方法。」

(2)刊行物
当審が通知した拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された特開昭53-30043号公報(以下、「刊行物」という。)には、次の事項が記載されている。
ア.「本発明はボイラ、焼却炉等から発生する不完全燃焼ガスを無害化する処理方法に関する。
ボイラ、焼却炉等から発生する燃焼ガス中には相当量のすすを始めとする不完全燃焼物が含まれ、大気汚染の大きな原因の一つとなつている。」(第1頁左下欄第13ないし同第17行、下線は当審にて付与。以下同様。)
イ.「本発明は上述の技術的課題を解決することを目的としている。そのため遠心分離法とは逆に、不完全燃焼ガスを直立円筒の中心に集まるように導き、下降する高温ガスの旋回流の中を通して該高温ガスと良好に接触させ完全に燃焼させようとするものであつて、その方法として直立円筒に、円筒接線に対し45?85度の角度をなして中心に寄つた方向で且つ0?30度に取付けられたノズルから500℃以上の高温ガスを吹込んで下降する高温ガスの旋回流を形成させ、該直立円筒の下部からは、上記下降する高温ガスの旋回流と同一回転方向で上向きの旋回流を形成させた不完全燃焼ガスを導入して、高温ガスの下降旋回流の渦の中心の減圧部を通つて上昇させることにより、不完全燃焼ガスの上向き旋回流中の不完全燃焼物を、高温ガス吹込ノズル附近に形成される●(●は左が火、右上がつめかんむり、右下が臼、以下同様。)幕中に移行させて、燃焼させるものである。」(第1頁右下欄第13行ないし第2頁左上欄第10行、下線は当審にて付与、以下同様。)
ウ.「直立円筒1の上部において、円筒横断面の接線とβの角度をなしまた下向きにαの角度をなすノズル2、2が円筒壁を貫通して設けられている。該ノズル2、2は800℃の高温ガス流3を円筒1内に吹込むものである。5は不完全燃焼ガスを発生する炉で、不完全燃焼ガス7はダクト6を通つて直立円筒1の下部から該円筒1内に流入する。この場合ダクト6の該円筒への取付けは、ノズル2と同方向で上向きに不完全燃焼ガスが流入するように構成する。」(第2頁左上欄第15行ない同右上欄第5行)
エ.「直立円筒1の上部外壁に設けられた複数個のノズル2から円筒の中心線と交わらない方向で且つやや下向きに熱風を送れば、下向きの旋回流4が生じ、特にノズル2に近い上部には水平に高温の●幕が形成される。この場合旋回流4の中心部が最も風圧の低い減圧部となり、この減圧部は上部が狭く下部の広がつた山形となる。この時、円筒下部から上向きに不完全燃焼ガス7の旋回流を送れば、該ガス7は下向き旋回流4の減圧された渦の中心部を通つて上昇する。この不完全燃焼ガス7の下向き旋回流と同方向の旋回運動のため該不完全燃焼ガス7中に含まれるすす等の固体粒子は上昇の過程において遠心力により上昇する不完全燃焼ガスの旋回流の外周部に押出され、下向きの高温ガス4の旋回流の山形の裾に混入する結果、減圧部の形状に応じた山形をなして上昇し上部で狭められ細くなつて●幕中に移行し、すすは効果的に燃焼して清浄ガス流9となつて上方へ排出される。上昇流中に灰のような不燃物が含まれる場合、これらも当然下向き旋回流に移行し、サイクロン効果により円筒内壁を伝わつて下方に分離されるので、この処理装置から出る排ガス中には粉塵は殆ど含まれなくなる。
次に本発明の構成に必要な諸条件について説明する。
直立円筒内に上述の適当な●幕を作り得るような下向きおよび上向き旋回流8を形成するための条件としては、
(a)高温ガス吹込ノズル2は直立円筒1の上方部に設ける。
(b)吹込ノズルの数nは、n≧2
(c)高温ガス吹込ノズルの下向き角度αは、
0°<α≦30°
(d)高温ガス吹込ノズルの円筒1の水平断面に於ける円周接線に対する傾き角度βは
45°<β<85°
(e)高温ガス吹込ノズルにおける温度Tは、
T≧500℃
である。
高温ガス吹込ノズルの数nが1の場合は、安定した下降旋回流を形成する事が極めて困難であるから、通常は2以上とし、装置の形状により適宜選択するものとする。
角度αが0度以下では、高温ガスの下降旋回流は形成されない。角度αが30度を越すと、未燃焼ガスの上昇旋回流との摩擦が強くなり圧力損失が大きくなる。好ましいのは5°≦α≦15°である。
角度βは、高温ガス旋回流発生点の渦中心部の直径をd、旋回流発生点の円筒1の直径をDとすると、これらの間にd=Dsin(90°-β)の関係があり、後述する0.1<d/D<0.7の条件を加味すると、必然的に45°<β<85°となる。
本発明者等の実験によれば、βは65?82度の範囲が最も適当である。」(第2頁右上欄第12行ないし第3頁左上欄第8行)
e.「次に下向きの高温ガスの旋回流の温度は、吹込ノズル出口で少なくとも500℃であることが必要で、600℃以上が適当である。なお酸素は下向き旋回流となる高温ガス中に含めても良いし、上向き旋回流となる不完全燃焼ガス中に含めるようにしてもよい。
次に不完全燃焼ガスの上向き旋回流を生じさせるには本発明の構成に関して既述したように、円筒下方から、円筒中心軸を外れ且つ水平または上向き方向に、下向き旋回流と同方向に旋回するように不完全燃焼ガスを流入させるか、或は円筒部下方に入口を設け、入口附近に固定のひねり格子またはフアンを設けて旋回流を生じさせてもよい。本発明の方法の実施例による効果は次のとおりである。ポリエチレンを燃焼させた場合、ノズル2から高温ガスを全く吹込まない時には排出ガス中の煤塵量が2g/Nm^(3)であるのに対し、常温の空気をノズル2から吹込んだとき煤塵量は0.03g/Nm^(3)であつた。これに対して800℃の空気をノズル2から吹込むと煤塵量は0.003g/Nm^(3)となつた。
以上のとおり本発明の方法は、不完全燃焼ガス中に含まれるすすのような処理し難い物質の無害化処理について著しい効果を持つものであり、その他の未燃焼物についても同様に効果あるものである。この方法を実施する装置は、小型に製作できるから容易に既存のボイラ、燃焼炉等に隣接して設置することができるものであり、またこの方法は不完全燃焼ガスの浄化に限らず、燃焼装置にも応用し得るものである。」(第3頁右上欄第17行ないし同右下欄第7行)

上記記載事項及び図面の記載内容からみて、刊行物には、次の発明が記載されている。
「不完全燃焼ガスを発生する炉5、
不完全燃焼ガス7をノズル2と同方向に上向きの旋回流が発生するように直立円筒1内に流入させる直立円筒1の下部に取付けたダクト6、
下向きの旋回流4を生じる複数個のノズル2を、下向き角度αが0°<α≦30°、円周接線に対する傾き角度βが45°<β<85°で取り付けた不完全燃焼ガスを完全燃焼させる直立円筒1からなる装置を用い、
直立円筒1内にノズル2から、T≧500℃の空気を吹き込むことにより下向きの旋回流4を生じさせ、すすを●膜中で効果的に燃焼させ、不完全燃焼ガス中の灰のような不燃物を煤塵量が0.003g/Nm^(3)となるように分離した、
前記装置を用いた処理方法。」

(3)対比
本願発明と刊行物に記載された発明とを対比する。
刊行物に記載された発明の「不完全燃焼ガスを発生する炉5」は、本願発明の「廃棄物」が、発明の詳細な説明に「都市ゴミおよび産業廃棄物」(段落【0012】)と記載されているように産業廃棄物を含むものであり、「廃棄物焼却部」は、都市ゴミや産業廃棄物を焼却する焼却炉(段落【0007】)であることから、本願発明の「廃棄物焼却部」に相当し、以下同様に、
「不完全燃焼ガス7をノズル2と同方向に上向きの旋回流が発生するように直立円筒1内に流入させる直立円筒1の下部に取付けたダクト6」は「燃焼ガスを二次燃焼室に接線方向に導入する燃焼ガス路」に、
「下向き旋回流4を生じる複数個のノズル2」は「下向きの旋回流を形成させる複数の二次空気導入ノズル」に、それぞれ相当する。
また、刊行物に記載された発明の「下向き角度αが0°<α≦30°」と本願発明の「下向き角度αが10?30°」とは、「下向き角度αが10?30°」である点で一致する。
同様に、刊行物に記載された発明の「円周接線に対する傾き角度βが45°<β<85°」は、傾き角度βが円周接線に対する角度であるから、これを法線に対する角度β’で表すと、5°<β’<45°となることから、刊行物に記載された発明の「円周接線に対する傾き角度βが45°<β<85°」と本願発明の「水平断面に於ける法線に対する角度βが8?40°」とは、「水平断面に於ける法線に対する角度βが8?40°」である点で一致する。
また、刊行物に記載された発明の「直立円筒1」は、炉5で発生した不完全燃焼ガスを完全燃焼させる二次燃焼室であることから、本願発明の「上部が円柱形の二次燃焼室」に相当し、同様に、
「装置」は、炉5、ダクト6および直立円筒1よりなるから、廃棄物焼却部、燃焼ガス路および二次燃焼室よりなる「廃棄物焼却装置」に、それぞれ相当する。
そして、刊行物に記載された発明の「直立円筒1内にノズル2から、T≧500℃の空気を吹き込むことにより、・・・すすを●膜中で効果的に燃焼させ」と本願発明の「二次燃焼室内で燃焼ガス温度を900℃以上に維持しながら」とは、「二次燃焼室内で燃焼ガス温度を高温に維持しながら」で共通する。
さらに、刊行物に記載された発明の「下向きの旋回流4を生じさせ」と、本願発明の「燃焼ガス路の燃焼ガス流速15m/s以上、二次空気の導入速度を30m/s以上として二次燃焼室内で・・・下向きの旋回流をおこさせ」とは、「下向きの旋回流をおこさせ」る点で共通するものである。
ところで、都市ごみや産業廃棄物などの焼却により生じる焼却灰や飛灰は金属元素を含むものであることから(例えば、特開平9-40453号公報の段落【0006】や、特開平9-24240号の段落【0001】、【0016】や、特開平8-285254号公報の段落【0003】参照。)、刊行物に記載された発明の焼却炉5により発生した「灰」も被焼却物の種類によっては、金属元素を含むものである。そして、刊行物に記載された発明は、「不完全燃焼ガス中の灰のような不燃物を煤塵量が0.003g/Nm^(3)となるように分離」するものであり、灰に含まれる種々の直径の金属元素を含めた不燃物の含有量を、0.003g/Nm^(3)以下とするものである。したがって、刊行物に記載された発明の「不完全燃焼ガス中の灰のような不燃物を煤塵量が0.003g/Nm^(3)となるように分離し」と、本願発明の「燃焼ガス中の粒径10μm以上の煤塵金属微粒子を100mg/Nm^(3)以下まで分離する」とは、「燃焼ガス中の粒径10μm以上の煤塵金属微粒子を3mg/Nm^(3)以下まで分離する」点で一致する。
刊行物に記載された発明の「装置を用いた処理方法」は、その構成および機能からみて本願発明の「廃棄物焼却方法」に相当する。

したがって、本願発明と刊行物に記載された発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「廃棄物焼却部、燃焼ガスを二次燃焼室に旋回流を発生するように導入する燃焼ガス路、下向き角度αが10?30°、水平断面に於ける法線に対する角度βが8?40°で取り付けた下向きの旋回流を形成させる複数の二次空気導入ノズルを有する上部が円柱形の二次燃焼室よりなる廃棄物焼却装置を用い、二次燃焼室内で燃焼ガス温度を高温に維持しながら下向きの旋回流をおこさせ、燃焼ガス中の粒径10μm以上の煤塵金属微粒子を3mg/Nm^(3)以下まで分離する廃棄物焼却方法。」

[相違点1]
廃棄物焼却装置が、
本願発明では、焼却残渣分離部を備え、焼却残渣分離部で分離した燃焼ガスを二次燃焼室に導入するものであるのに対して、
刊行物に記載された発明では、この発明特定事項を備えない点。

[相違点2]
本願発明では、二次燃焼室に二次空気導入ノズルとバーナーを有するのに対して、
刊行物に記載された発明では、二次燃焼室に二次空気導入ノズルを有するが、バーナーを有しない点。

[相違点3]
下向きの旋回流を起こさせるために、
本願発明では、燃焼ガスを二次燃焼室に接線方向に導入する燃焼ガス路を備え、燃焼ガス路の燃焼ガス流速15m/s以上とし、また、下向きの旋回流をおこさせる二次空気導入ノズルを備え、二次空気の導入速度を30m/sとしたのに対して、
刊行物に記載された発明では、燃焼ガスを二次燃焼室に接線方向に導入する燃焼ガス路と、下向きの旋回流を起こさせる二次空気導入ノズルを備えているが、燃焼ガス流速および二次空気の導入速度は不明である点。

[相違点4]
本願発明では、二次燃焼室内で燃焼ガス温度を900℃以上に維持し、燃焼ガスを1秒以内に90℃以下に湿式急冷処理することにより排ガス中のダイオキシン類の再合成を防止するものであるのに対して、
刊行物に記載された発明では、二次燃焼室内にT≧500℃の空気を吹き込むことにより、すすを●膜中で効果的に燃焼させるものである点。

(4)当審の判断
以下、上記相違点について検討する。
(4-1)上記相違点1について
廃棄物焼却装置の技術分野において、一次焼却路と二次焼却路との間に焼却残渣分離部を備え、焼却残渣分離部により分離された燃焼ガスを二次焼却路に導入することは、本願出願前周知の技術事項である(例えば、特開平09-042642号公報の段落【0009】、【0010】、【図1】や実願昭50-153120号(実開昭52-066168号)のマイクロフィルムの図面参照のこと。)。
したがって、刊行物に記載された発明に、上記周知の技術事項を適用して、一次燃焼室(焼却炉5)と二次燃焼室(直立円筒1)との間に焼却残渣分離部を備え、焼却残渣分離部により分離された燃焼ガス(不完全燃焼ガス)を二次燃焼室(直立円筒1)に導入するようにすることは、当業者が容易になし得たものである。

(4-2)上記相違点2について
廃棄物焼却装置の技術分野において、二次燃焼室に空気ノズルおよびバーナーを備えることは、本願出願前周知の技術事項である(実願昭50-153420号(実開昭52-066168号)のマイクロフィルムにおける二次空気吹込管7及び助燃バーナ8や特開平02-273510号公報におけるノズル手段10a、10b及びバーナー4等参照。)。
そして、刊行物に記載された発明は、二次燃焼室に、T≧500℃の空気を吹き込むことにより、燃焼を生じさせるものである。
したがって、刊行物に記載された発明に、上記周知の技術事項を適用し、二次燃焼室内で燃焼をより生じやすくするために、二次空気導入ノズル(ノズル2)に換えて、空気ノズルおよびバーナーを備えるようにすることは、当業者が容易になし得たものである。

(4-3)上記相違点3について
刊行物に記載された発明は、二次燃焼室(直立円筒1)に、燃焼ガス(不完全燃焼ガス7)を旋回流が発生するように導入させる燃焼ガス路(ダクト6)を備え、また、下向き角度αが0°<α≦30°、円周接線に対する傾き角度βが45°<β<85°で、下向きの旋回流4を形成させる複数の二次空気導入ノズル(高温ガス吹込ノズル2)を備えるものである。そして、この発明特定事項を備えることにより、刊行物に記載された発明は、その発明の詳細な説明に記載された「円筒下部から上向きに不完全燃焼ガス7の旋回流を送れば、該ガス7は下向き旋回流4の減圧された渦の中心部を通つて上昇する。この不完全燃焼ガス7の下向き旋回流と同方向の旋回運動のため該不完全燃焼ガス7中に含まれるすす等の固体粒子は上昇の過程において遠心力により上昇する不完全燃焼ガスの旋回流の外周部に押出され、下向きの高温ガス4の旋回流の山形の裾に混入する結果、減圧部の形状に応じた山形をなして上昇し上部で狭められ細くなつて●幕中に移行し、すすは効果的に燃焼して清浄ガス流9となつて上方へ排出される。上昇流中に灰のような不燃物が含まれる場合、これらも当然下向き旋回流に移行し、サイクロン効果により円筒内壁を伝わつて下方に分離されるので、この処理装置から出る排ガス中には粉塵は殆ど含まれなくなる。」(上記2(2)エ参照。)という作用を奏するものである。
そして、本願発明が燃焼ガス流速および二次空気の導入速度について、数値範囲を特定したことに臨界的意義を確認することはできない
したがって、刊行物に記載された発明において、燃焼ガス(不完全燃焼ガス7)を旋回流となるように二次燃焼室(直立円筒1)に導入し、空気(二次空気)を下向き旋回流となるように二次燃焼室に導入するために、燃焼ガスの燃焼ガス路(ダクト6)内における流速および空気の導入速度等の数値範囲を、燃焼ガスおよび空気の流量、二次燃焼室の容積および形状、あるいは、燃焼ガス路の容積および形状等に応じて、実験的に最適化することは、当業者の通常の創作能力の発揮であって、当業者が容易になし得たものである。

(4-4)上記相違点4について
ダイオキシンの発生を防止するために、二次燃焼室の燃焼ガス温度を900℃以上とすることは、本願出願前周知の技術事項である(例えば、特開平7-174316号公報の段落【0002】、【0003】、【0006】、【0007】や特開平7-229610号公報の段落【0009】、【0022】参照。以下、「周知の技術事項1」という。)。
また、廃棄物焼却装置の技術分野において、ダイオキシン類の再合成を防止するために、冷却水をスプレーすることにより、燃焼ガスを短時間にダイオキシン類が再合成される温度以下まで急冷することは、本願出願前周知の技術事項である(例えば、特開平6-147447号公報の段落【0014】、【0016】、【0043】、【0044】や特開平7-213849号公報の【請求項1】、段落【0004】、【0007】、【0014】、【0016】参照のこと。以下、「周知の技術事項2」という。)。
そして、刊行物に記載された発明は、「不完全燃焼ガス中の灰のような不燃物を煤塵量が0.003g/Nm^(3)となるように分離」するものであり、ダイオキシンの発生源となる燃焼ガス中の粒径10μm以上の煤塵金属微粒子を100mg/Nm^(3)以下まで分離することにより、ダイオキシンの発生を防止するものであるといえる。
したがって、刊行物に記載された発明において、ダイオキシンの発生をさらに防止するために、二次燃焼室に500℃以上の空気を吹き込み未燃ガスを燃焼させるに際して、上記周知の技術事項1に倣って、燃焼ガス温度を900℃以上とし、また、ダイオキシン類の再合成を防止するために、上記周知の技術事項2に倣って、冷却水をスプレーすることにより、燃焼ガスを短時間にダイオキシン類が再合成される温度以下まで急冷することは、当業者が容易になし得たものである。
また、当該適用に際して、燃焼ガスの急冷時間やダイオキシンの再合成温度以下まで急冷した後の最終温度をどのような値とするのかは、廃棄物の種類、再合成により生成するダイオキシンの許容上限濃度、冷却設備の構成や冷却能力等の諸要因に応じて、実験的に最適化することであって、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない。

(4-5)まとめ
本願発明の奏する効果についてみても、刊行物に記載された発明および周知の技術事項により奏される効果から当業者が予測できる範囲内のものである。
よって、本願発明は、刊行物に記載された発明および周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物に記載された発明および周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-07-15 
結審通知日 2009-07-16 
審決日 2009-08-04 
出願番号 特願平9-87379
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F23G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉澤 伸幸長清 吉範  
特許庁審判長 岡本 昌直
特許庁審判官 長崎 洋一
清水 富夫
発明の名称 廃棄物焼却装置および焼却方法  
代理人 藤野 清也  
復代理人 石井 良夫  
代理人 藤野 清也  
復代理人 石井 良夫  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ