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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01N |
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管理番号 | 1204475 |
審判番号 | 不服2007-32770 |
総通号数 | 119 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-11-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-12-05 |
確定日 | 2009-09-24 |
事件の表示 | 平成10年特許願第268019号「GaAs、GaN系化合物半導体の透過電子顕微鏡用試料の作製方法及びそれを用いる積層構造解析法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年4月7日出願公開、特開2000-97821〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成10年9月22日の出願であって、平成19年10月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年12月27日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成19年12月27日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成19年12月27日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲は、 「GaAs又はGaN系化合物半導体に、集束イオンビームを照射して観察領域を薄膜化したのち、湿式の化学エッチングを行うことによりアモルファス層を除去することを特徴とする透過電子顕微鏡用試料の作製方法であって、GaAs系化合物半導体において、湿式の化学エッチングに0.01?0.1重量%の濃度のリン酸溶液を用い、エッチング時間を30秒?10分の範囲とする透過電子顕微鏡用試料の作製方法。」 と補正された。 上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「湿式の化学エッチング」について、「エッチング時間を30秒?10分の範囲とする」との限定を付加したものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)引用刊行物記載の発明 原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である、刊行物1(原査定の引用例1)、刊行物2(同引用例2)及び刊行物3(同引用例4)には以下の事項がそれぞれ記載されている。以下、下線は当審で付与したものである。 (刊行物1:特開平4-361132号公報の記載事項) (1a)「【請求項2】最初に、試料内部の観察領域をはさむ両側の部分を、観察したい位置の深さ以上の深さまで選択的にエッチングすることにより、該観察領域近傍を観察用の断面部として薄く残してその断面部の前後に電子線の通路となる溝を形成し、次に、前記断面部の面に垂直な向きに低速でエッチングすることにより、前記観察領域を含む部分を所望の厚さにまで薄く仕上げることを特徴とする透過電子顕微鏡用試料の作製方法。」 (1b)「【0009】図1は本発明の第1の実施例の試料構造を示す斜視図である。本実施例は、GaAs(100)単結晶基板上にAlGaAsエピタキシャル成長層が形成され、さらにその上にGaAsエピタキシャル成長層が形成されて成る試料において、AlGaAsエピタキシャル成長層の一部を断面観察する場合を例とする。なお、以下の各実施例についても同様とする。」 (1c)「【0014】以下に、上記構造の試料の作製方法を述べる。図6は本発明の透過電子顕微鏡用試料作製方法の実施例を示す工程説明図である。ここでは、図1に示す試料構造を例に説明する。まず、(a)に示すように短冊状の試料(単結晶基板11)に対し、最初に電子線の通路となる溝15を形成するために、集束イオンビーム(FIB)を用いて試料の表面側から選択的に深さ方向のエッチングE_(1)を行ない、観察領域を含む部分を厚さ1μm程度のみ残す。次に、(b)に示すように観察断面に垂直な向きである厚さ方向に低入射角のイオン・ミリング等の方向を用いて比較的小さい速度のエッチングE_(2)で削り、最終的に1000オングストローム程度あるいはそれ以下の所望の厚さの断面部10となるまで仕上げる。このように、本発明によれば、最初に観察領域のみを選択的に1μm程度にまで均一に薄くすることができるため、その後の工程で、制御性良く所望の厚さに仕上げることが可能となるとともに、特定の場所を試料化できかつ試料化が容易になる。このことは、特に、デバイス化した後で所定の領域を観察する場合に極めて有効である。上記実施例の試料は、観察対象がエピタキシャル成長層(結晶性膜)であるため0.1μm程度の厚さで観察可能であるが、観察対象によっては断面部10をさらに薄く仕上げることが可能である。」 (刊行物2:特開平5-18873号公報の記載事項) (2a)「【特許請求の範囲】 【請求項1】GaAs/Al_(x) Ga_(1 - x) As(0<x≦1)ヘテロ構造を有する半導体層を、イオンミリングにより薄片化する工程と、該半導体層の表面を化学的にエッチングする工程を有することを特徴とする透過電子顕微鏡用の試料作製方法。」 (2b)「【0005】 【発明が解決しようとする課題】イオンミリングを用いると、断面観察試料の表面に格子欠陥等のダメージが入る。これらのダメージは、イオンミリングの際の加速電圧を下げることや、試料を冷却してミリングすることによって低減されることは知られているが、これらの対策によってもダメージを完全になくすことはできない。図1は、電子顕微鏡試料におけるイオンミリングによるダメージのようすを模式的に示した図である。これらのダメージは、電子顕微鏡観察の際に観察像に重なって観測されるため、観察像を不鮮明にし、その解釈を困難にする。」 (2c)「【0009】 【実施例】以下に本発明による、GaAs/AlGaAsの透過電子顕微鏡〈1、-1、0〉試料作製方法を示す。 【0010】試料はGaAs基板1上にAlGaAs(またはAlAs)成長層2が形成されたものであり、イオンミリングは、Arイオンを用い加速電圧2-3kV、入射角10-15度、イオン電流1mAで行う。これは、GaAs等の結晶に対し、一般的に用いられているイオンミリングの条件である。このときダメージ層3が表面に形成される。図1は、薄片化された透過電子顕微鏡断面試料の縁の部分の断面図であり、イオンミリングによる試料のダメージとこれを観測する電子線の入射方向を説明するための図である。 【0011】これに続きブロムメタノールによるエッチングで、ダメージ層3を除去する。エッチングの条件は、エッチャントとして0.4(vol.)%のブロムメタノールを用い、常温、かくはんの下で4-7秒間エッチングする。これにより試料が完成し、この後、電子顕微鏡を用いて図1に示した方向4から電子線を入射させて、試料のヘテロ界面構造の観察を行う。 【0012】一般的に行われている方法で作製された試料の観察像では、ダメージ層の像が格子像に重なって観察されるため、格子像の背景には不規則に変化する濃淡がみられ、また、局所的に格子の乱れも観察されるなど、イオンミリングのダメージが観察像に影響し、界面構造の原子レベル分解能での観察を妨げる。一方、本発明の方法により作製した電子顕微鏡試料では、この様なダメージはまったく観察されず、ヘテロ構造が明瞭に観察されている。」 (刊行物3:特開平9-133618号公報) (3a)「【請求項2】予め所定の厚さ以下に粗研摩した試料を、真空中に保持し、該試料にイオンビームを照射し所定の箇所およびその周辺部を薄膜化したのち、直ちに該箇所およびその周辺部に化学研磨液の蒸気を噴射し、化学研磨を行うことを特徴とするイオンダメージ層のない薄膜の作製方法。」 (3b)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、透過型電子顕微鏡観察に適用できる薄膜を作製できる薄膜作製装置および薄膜作製方法に関する。」 (3c)「【0002】 【従来の技術】透過電子顕微鏡(以下透過電顕という)を用いて材料組織を観察することは、材料評価の1手段として、従来から行われているが、透過電顕で観察するには、電子線が透過できるように、試料を0.1?0.3μm 程度まで薄くする必要がある。試料を薄膜化するために、金属材料の場合は、一般に電解研磨法が、半導体あるいはセラミックの場合は、適当な電解液がないためイオン研磨法が主に用いられている。・・・ 【0003】イオン研磨法では、数mmφのイオンビームを用いることが多いが、さらに、イオンビームを収束し、0.1μm 以下のイオンビームを用いる集束イオンビーム(FIB)加工も断面観察用薄膜作製に利用されるようになっている。例えば、特開平5-231997号公報には、試料全体に高分子膜を成膜したのち、集束イオンビーム加工と、フッ化水素酸を用いた薬液処理とを順次利用し観察箇所を薄膜壁として残すという、半導体デバイスの断面形状を観察するための試料作製方法が提案されている。しかしながら、イオン研磨法では、イオンの加速電圧が、通常5kV程度であるため、イオンが試料中に打ち込まれ、試料表層にアモルファス化したイオンダメージ層が形成される。イオン研磨法に比べさらに加速電圧が30kV程度と高いFIB加工では、イオンダメージ層は深い。イオン研磨法の場合、約10nm程度の厚さのイオンダメージ層が知られている。 【0004】このようなイオンダメージ層が存在すると、透過電顕による高分解能観察に際し像質の低下を生じたり、また、エネルギー分散型X線分析(EDX分析)による元素分析に際し、打ち込まれたイオンが分析スペクトルに現れるなどの問題を生じていた。」 (3d)「【0007】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、イオンダメージ層を除去するためには化学研磨法が特に有効である」 (3e)「【0011】FIB加工では、さらに、加速電圧は20kV?50kV、イオン電流は1μA?3μAが好ましい。イオン源はとくに限定しないが、イオンビームを集束した際にも十分なイオン電流密度が得られる点で、Ga等の液体金属イオン源が好適である。・・・ 【0012】化学研磨液は、研磨する材料により決定され、真空容器の系外に設置された化学研磨液貯蔵タンク9から、配管6により供給されノズル7により試料5aに蒸気として噴射される。噴射は、片面あるいは両面から行うことができる。化学研磨は、観察位置以外の研磨を最小にするためイオン研磨終了後直ちに同一場所について行うことが肝要である。」 (3f)「【0014】・・・材料が単結晶シリコンの場合、研磨液として10vol%フッ酸水溶液を用いる」 (3)対比・判断 上記刊行物1の摘記事項(上記(1a)(1b)(1c))から、刊行物1には、 「GaAs(100)単結晶基板上にAlGaAsエピタキシャル成長層が形成され、さらにその上にGaAsエピタキシャル成長層が形成されて成る試料内部の観察領域をはさむ両側の部分を、最初に、集束イオンビームを用いて、観察したい位置の深さ以上の深さまで選択的にエッチングすることにより、該観察領域近傍を観察用の断面部として薄く残してその断面部の前後に電子線の通路となる溝を形成し、次に、前記断面部の面に垂直な向きにイオン・ミリングを用いた低速のエッチングをすることにより、前記観察領域を含む部分を所望の厚さにまで薄く仕上げる透過電子顕微鏡用試料の作製方法」の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。 そこで、本願補正発明と刊行物1発明とを比較する。 (ア)刊行物1発明の「GaAs(100)単結晶基板上にAlGaAsエピタキシャル成長層が形成され、さらにその上にGaAsエピタキシャル成長層が形成されて成る試料」、「集束イオンビームを用いて」は、本願補正発明の「GaAs系化合物半導体」、「集束イオンビームを照射して」にそれぞれ相当する。 (イ)刊行物1発明の「集束イオンビーム」を用いたエッチング及び「イオン・ミリングを用いた低速のエッチング」は、いずれもイオンビームを用いたものであり、本願補正発明の「集束イオンビームを照射して観察領域を薄膜化」することも、イオンビームを用いたものであるから、刊行物1発明の「観察領域をはさむ両側の部分を、集束イオンビームを用いて、観察したい位置の深さ以上の深さまで選択的にエッチングすることにより、該観察領域近傍を観察用の断面部として薄く残してその断面部の前後に電子線の通路となる溝を形成し、次に、前記断面部の面に垂直な向きにイオン・ミリングにより低速のエッチングすることにより、前記観察領域を含む部分を所望の厚さにまで薄く仕上げる」ことと、本願補正発明の「集束イオンビームを照射して観察領域を薄膜化」することとは、イオンビームを用いて観察領域を薄膜化する点で共通している。 したがって、両者の間には、下記のような一致点及び相違点がある。 (一致点) GaAs又はGaN系化合物半導体をイオンビームを用いて観察領域を薄膜化する透過電子顕微鏡用試料の作製方法である点。 (相違点1) イオンビームを用いた観察領域の薄膜化が、本願補正発明では、集束イオンビームを照射することによるものであるのに対して、刊行物1発明では、最初に集束イオンビームを用いエッチングを行い、次にイオン・ミリングを用いて低速のエッチングをすることによるものである点。 (相違点2) 本願補正発明では、観察領域を薄膜化したのち、GaAs系化合物半導体において、0.01?0.1重量%の濃度のリン酸溶液を用い、エッチング時間を30秒?10分の範囲とする湿式の化学エッチングを行うことによりアモルファス層を除去するのに対して、刊行物1発明では、湿式の化学エッチングを行わない点。 そこで、上記各相違点について検討する。 (相違点1について) 刊行物3には、透過型電子顕微鏡観察用の半導体等の薄膜を、数mmφのイオンビームを用いるイオン研磨法、又はイオンビームを収束し0.1μm以下のイオンビームを用いる集束イオンビーム加工により作製する方法が記載されており、さらに、例えば、特開平8-43279号公報(【0002】、【0005】)、特開平6-268037号公報(【実施例】)には、GaAs系半導体の透過型電子顕微鏡観察用の薄膜化を集束イオンビーム加工で行うことが記載されており、GaAs系半導体も含め半導体の透過型電子顕微鏡観察用の薄膜化を集束イオンビーム加工で行うことは、本願出願前の周知技術であったといえるから、刊行物1発明において、GaAs系化合物半導体を、集束イオンビーム加工の後のイオン・ミリングを用いた加工を行わずに薄膜化することは、当業者が容易になしえたものといえる。 (相違点2について) 刊行物2には、GaAs系化合物半導体をイオンミリングにより薄膜化すると断面の表面に格子欠陥等のダメージが入り、透過型電子顕微鏡観察の際に観察を妨げるダメージ層が形成されること、イオンミリングによる薄膜化の後に化学的エッチングをすることにより、ダメージ層のない透過型電子顕微鏡用の試料を作製することができること記載されている。そして、イオンダメージ層について、刊行物3には、半導体の薄膜をイオン研磨法で作製すると試料表面にアモルファス化したイオンダメージ層が形成され、イオン研磨法より加速電圧の高い集束イオンビーム加工では、イオンダメージ層がより深いことが記載されている。ここで、イオン研磨法は、数mmφのイオンビームを用い、集束イオンビーム加工よりも加速電圧が低いものであることから、刊行物1、2に記載されたイオンミリングに相当するものといえ、また、刊行物2に記載されたダメージ層は、刊行物3に記載されたイオンダメージ層と同様にアモルファス化した層であることは、例えば、特開平9-318509号公報(【0005】)にも記載されるとおりである。上記刊行物3の記載から、半導体の薄膜化加工をイオン研磨法で行った場合も集束イオンビーム加工で行った場合も、程度の差こそあれ、加工面にアモルファス層が形成されていることが理解でき、このことが、GaAs系半導体の薄膜化加工においても同様におこることは、当業者であれば予測しうることである。 そうすると、刊行物1発明において、上記(相違点1について)で記載したように、GaAs系化合物半導体の薄膜化を集束イオンビームで行った場合、刊行物3の上記記載から、イオンミリングを行った場合よりもダメージ層が深くなるといえ、刊行物2及び3に記載された、ダメージ層により透過型電子顕微鏡観察が妨げられること及びそれを化学的エッチングで除去できることを知れば、集束イオンビームで薄膜化したGaAs系化合物半導体を透過型電子顕微鏡で観察するためには、ダメージ層の除去が必要であることは、当業者であれば当然気付くことである。 さらに、化学的なエッチングについて、刊行物3に、イオンダメージ層を化学研磨法により除去すること、化学研磨液は研磨する材料により決定されることが記載されているように、最適な化学研磨液、つまりエッチング液やエッチング条件を、エッチングする材料に応じて決定することは、本願出願前より通常行われていたことであるところ、特開平10-107076号公報(【0039】には、GaAs基板をリン酸エッチング液でエッチングすることが記載されている。)、特開平10-4101号公報(【0004】には、GaAs基板のアモルファス化された不純物活性層をリン酸系溶液でエッチングすることが記載されている。)にも記載されるように、GaAs系化合物半導体のエッチング液としてリン酸溶液は、本願出願前に周知であったといえる。 以上のことから、刊行物1発明において、上記(相違点1について)で記載したように、GaAs系化合物半導体の薄膜化を集束イオンビームを照射して行うことに伴い、刊行物2、3に記載されるように化学的なエッチングを行いダメージ層であるアモルファス層を除去し、その際に、GaAs系化合物半導体のアモルファス層のエッチングに適した溶液及び条件を実験を行うことにより決定し、0.01?0.1重量%の濃度のリン酸溶液を用い、エッチング時間を30秒?10分の範囲とすることは、当業者が容易になしえたものといえる。 (本願補正発明の効果について) GaAs系半導体の積層構造解析に適した透過型電子顕微鏡用試料が作製できるという効果は、刊行物1ないし3及び周知技術から予測しえたものであり、格別顕著なものとはいえない。 したがって、本願補正発明は、刊行物1ないし3に記載された発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (4)むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について 平成19年12月27日付けの手続補正は上記のとおり却下されることとなったので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成19年9月19日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「GaAs又はGaN系化合物半導体に、集束イオンビームを照射して観察領域を薄膜化したのち、湿式の化学エッチングを行うことによりアモルファス層を除去することを特徴とする透過電子顕微鏡用試料の作製方法であって、GaAs系化合物半導体において、湿式の化学エッチングに0.01?0.1重量%の濃度のリン酸溶液を用いる透過電子顕微鏡用試料の作製方法。」 (1)引用刊行物の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物、および、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、前記「2.」で検討した本願補正発明から「湿式の化学エッチング」の限定事項である「エッチング時間を30秒?10分の範囲とする」との構成を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3)」に記載したとおり、刊行物1ないし3に記載された発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1ないし3に記載された発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明は、刊行物1ないし3に記載された発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その他の請求項に係る発明についての判断を示すまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-07-22 |
結審通知日 | 2009-07-28 |
審決日 | 2009-08-10 |
出願番号 | 特願平10-268019 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G01N)
P 1 8・ 575- Z (G01N) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 野村 伸雄、榎本 吉孝 |
特許庁審判長 |
秋月 美紀子 |
特許庁審判官 |
後藤 時男 田邉 英治 |
発明の名称 | GaAs、GaN系化合物半導体の透過電子顕微鏡用試料の作製方法及びそれを用いる積層構造解析法 |
代理人 | 中山 亨 |