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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02C
管理番号 1204505
審判番号 不服2008-2888  
総通号数 119 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-02-07 
確定日 2009-09-24 
事件の表示 特願2006- 87848「眼鏡」拒絶査定不服審判事件〔平成19年10月11日出願公開、特開2007-264207〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成18年(2006年)3月28日に出願した特願2006-87848号であって、平成20年1月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年2月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同年3月10日付けで手続補正がなされたものである。
その後、平成21年4月30日付けで当審において平成20年3月10日付けの手続補正を却下し、同日付けで拒絶理由の通知をし、これに対して同年7月3日付けで意見書が提出され、同日付けで手続補正がなされた。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成21年7月3日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項に特定される次のとおりのものである。

「左右のレンズ部を保持するレンズ支持部を備える眼鏡本体と、テンプル部と、テンプル部の先端に設けられるモダン部と、このモダン部に着脱可能に連結され、眼鏡の前後方向及び左右方向での重心バランスを調整するバランスウェイト部材とを備えた眼鏡であって、
上記バランスウェイト部材は、上記モダン部の後方先端につながるバランスウェイト部材本体と、このバランスウェイト部材本体から上記モダン部側に向かって突出し、矩形、楕円形、多角形のいずれかの形状の断面を有する凸状部とを有し、これらバランスウェイト部材本体および凸状部が磁石により構成されるとともに、左右のバランスウェイト部材の重さが上記レンズ部の重さと同等に設定され、
上記モダン部は、上記凸状部と嵌合可能な矩形、楕円形、多角形のいずれかの断面形状をもつ凹状部を有するように合成樹脂により形成され、この凹状部の底部に上記凸状部と磁力で互いに引き合う金属部もしくは磁石部が設けられ、この磁力により、左右のバランスウェイト部材が各モダン部に対して着脱可能に連結されることを特徴とする眼鏡。」

第3 引用例
1 引用例1
当審で通知した拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である登録実用新案第3112016号公報(以下、「引用例1」という)には、次の事項が記載されている。(後述の「引用例1に記載された発明の認定」において発明の認定に直接関係する記載に下線を付した。)

「【考案を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本考案を実施するための最良の形態を図に基いて説明する。
図1?図5は本考案にかかる眼鏡枠のモダンに関する図であって、図1?図3に示す例の眼鏡枠のモダン1は、モダン本体2と、係止部材3と、錘部材4と、モダン後部5とによって構成されている。
【0013】
モダン本体2は、プラスチック樹脂によって細長く形成されていて、先端部2a側からテンプル6が差し込まれている。モダン本体2の後端2bは平坦に形成してあり、かつモダン本体2の後端部2cである後端2bから内側に、係止部材3(係止部)を嵌着する嵌合凹部7が形成してある。嵌合凹部7は、奥側に幅広凹部7aを有している。
【0014】
上記の嵌合凹部7に嵌着する係止部材3は、モダン本体2の後端部2c内に収納できるように、プラスチック樹脂によって幅の狭い略直方体形状に形成され、かつ先端側に上記の幅広凹部7aに係止する鍔部8を形成するとともに、中央に雌ネジ9を形成したものである。
【0015】
錘部材4は、所定の重さを有する金属製またはプラスチック樹脂製のものであって、中央に貫通孔10を形成してあり、係止部材3と鍔部8以外の横断面と同一の直方体形状のものである。さらにこの錘部材4は、モダン本体2の嵌合凹部7に嵌着した係止部材3の後端3aからモダン本体2の後端2bまでの隙間内に収納される大きさに形成してある。錘部材4は、所定の重さのもの、或いは段階的に僅かに重さの異なる複数のものを揃えておく。
【0016】
モダン後部5は、プラスチック樹脂製のものであって、先端部5aを平坦にし後部5bを円く形成した半楕円形状であり、先端部5aの中央に、上記錘部材4の貫通孔10に挿入して、モダン本体2に設けられた係止部材3の雌ネジ9にネジ付けできる雄ネジ軸11を有している。このモダン後部5は、モダン本体2に取り付けた際に、モダン本体2の後端2bに先端部5aを密着するとともに、先端部5a寄りの外周面12がモダン本体2の後端部2cの外周面13と面一になるように形成してある。
【0017】
上記のような構成からなるモダン1のモダン本体2をテンプル6に設けた眼鏡枠にあっては、眼鏡店において、顧客の目に合った度数のレンズを眼鏡枠に装着した後に、眼鏡枠の前部のパッドの部分を顧客の鼻に掛けるとともに、モダン本体2と錘部材4およびモダン後部5からなる上記したモダン1を耳に掛ける。
【0018】
そして、顧客に眼鏡を掛けた時の鼻と耳に掛かる負荷の状態(眼鏡の掛け具合)を聞き、レンズ側(鼻側)が重く感じるようであれば、一旦眼鏡を外し、モダン本体2から錘部材4とモダン後部5を外し、他の重さの錘部材4と交換して、この錘部材4をモダン本体2にモダン後部5によって取り付ける。錘部材4を交換して眼鏡のレンズ側(鼻側)とモダン1側(耳側)との重さバランスを変更したら、再びこの眼鏡を顧客の顔に掛けて上記した眼鏡の掛け具合を聞く。この交換した錘部材4の重さでレンズ側(鼻側)とモダン1側(耳側)とのバランスがよければ、眼鏡のバランス調整を完了して眼鏡を顧客に渡せばよい。また、まだバランスが悪ければ、再び他の重さの錘部材4に交換してバランス良くなるまで錘部材4に交換を繰り返せばよい。
【0019】
このように上記した本考案にかかるモダン1によれば、バランス調整に最適な重さの錘部材4を選定してバランス調整すれば、眼鏡枠のテンプルを屈曲させたりしてバランス調整することなく、また高度な調整技術を要求されることもない。またテンプルは、繰り返し折り曲げ調整によって損なわれるといったこともない。
【0020】
次に図4、図5は本考案にかかる他の例のモダン1を示す。なお、図中符合は便宜上、上記した例と同じ符合を使用する。この例におけるモダン1は、モダン本体2と、所定の重さのモダン後部5、または重さの異なる複数のモダン後部5(図は1つだけ示す。)とからなる。
【0021】
このモダン本体2は、先の例と同様にプラスチック樹脂によって細長く形成され、先端部2a側から眼鏡枠のテンプル6が差し込まれて、このテンプル6に取り付けられる。モダン本体2の後端2bは平坦に形成してあり、かつモダン本体2の後端部2cである後端2bから内側に、モダン後部5の係止突起14(係止部)を着脱可能に係止するフック状の2つの係止孔15(係止部)が所定間隔をもって形成してある。
【0022】
モダン後部5は、プラスチック樹脂によって形成したもの、或いは内部に金属片(図示せず)を設けて全体を樹脂成形したものであって、先端部5aを平坦にし後部5bを円く形成してあり、先端部5a側に、モダン本体2の係止孔15に着脱可能に係止する2つの係止突起14を有している。
【0023】
上記のような構成からなるモダン1のモダン本体2を、テンプル6の後部に設けた眼鏡枠にあっては、先の例と同様に眼鏡店において、顧客の目に合った度数のレンズを眼鏡枠に装着した後に、眼鏡枠の前部のパッドの部分を顧客の鼻に掛けるとともに、モダン本体2とモダン後部5からなる上記したモダン1を耳に引っ掛ける。
【0024】
そして、上記した説明と同じように顧客に、眼鏡を掛けた時の鼻と耳に掛かる負荷の状態(眼鏡の掛け具合)を聞き、レンズ側(鼻側)が重く感じるようであれば、一旦眼鏡を外し、モダン本体2からモダン後部5を外し、他の重さのモダン後部5と交換して、このモダン後部5をモダン本体2に取り付ける。モダン後部5を交換して眼鏡のレンズ側(鼻側)とモダン1側(耳側)との重さバランスを変更したら、再びこの眼鏡を顧客の顔に掛けて上記した眼鏡の掛け具合を聞く。この交換したモダン後部5の重さでレンズ側(鼻側)とモダン1側(耳側)とのバランスがよければ、この眼鏡のバランス調整を完了して眼鏡を顧客に渡せばよい。もし、まだバランスが悪ければ、再び他の重さのモダン後部5に交換してバランス良くなるまで、モダン後部5を交換すればよい。
【0025】
この例の本考案にかかるモダン1でも、眼鏡枠のテンプルを屈曲させて調整することなく、重さの異なるモダン後部5を交換するだけで、レンズ側(鼻側)とモダン1側(耳側)とでバランスを調整することができ、高度な調整技術を要求されることもなく、またテンプルを屈曲の繰り返しによって損なうこともない。」

2 引用例1に記載された発明の認定
上記記載事項を総合勘案すると、引用例1には、
「モダン本体2と、所定の重さのモダン後部5、または重さの異なる複数のモダン後部5とからなる眼鏡枠のモダン1を有する眼鏡であって、
モダン本体2は、プラスチック樹脂によって細長く形成され、先端部2a側から眼鏡枠のテンプル6が差し込まれて、このテンプル6に取り付けられ、モダン本体2の後端2bは平坦に形成してあり、かつモダン本体2の後端部2cである後端2bから内側に、モダン後部5の係止突起14(係止部)を着脱可能に係止するフック状の2つの係止孔15(係止部)が所定間隔をもって形成してあり、
モダン後部5は、先端部5aを平坦にし後部5bを円く形成してあり、先端部5a側に、モダン本体2の係止孔15に着脱可能に係止する2つの係止突起14を有しており、
重さの異なるモダン後部5を交換するだけで、レンズ側(鼻側)とモダン1側(耳側)とでバランスを調整することができる眼鏡。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

3 引用例2の記載事項
当審で通知した拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2005-257759号公報(以下、「引用例2」という)には、次の事項が記載されている。

「【0001】
本発明は、フレームのブリッジ部に対し左右の各レンズ部が、適宜、交換可能な眼鏡に関するものである。」

「【0025】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施例に係る眼鏡について説明する。なお、眼鏡の構成は左右対称であるため、以下では、左側の部品を中心に説明し、右側の部品については説明を適宜省略している。
【実施例1】
【0026】
図1および図2に示すように、眼鏡1は、フレーム2と、フレーム2に対し着脱可能に装着した左右一対のレンズ部3,3と、で左右対称に構成されている。フレーム2は、半円弧状の形状をなす左右のブローバー部5,5と、左右のブローバー部5,5の内側部位同士を互いに連結するブリッジ部6と、各ブローバー部5,5の後方に延びる端部にヒンジを介して開閉可能に取り付けられた左右のテンプル部7,7と、で構成されている。またフレーム2には、ブリッジ部6の背面側から垂下するように鼻当てパッド8が設けられている。
【0027】
ブリッジ部6は、左右のブローバー部5,5に一体に連なる本体ブリッジ11と、左右のレンズ部3,3をそれぞれ着脱可能に保持するひと続きのレンズ保持部材12と、で構成されている。レンズ保持部材12は、筒状(パイプ状)の部材からなり、本体ブリッジ11に沿ってこれの正面側に設けられている。すなわち、本体ブリッジ11を挟んだ前後には、レンズ保持部材12と鼻当てパッド8とが位置している。レンズ保持部材12は、本体ブリッジ11と一体成型され或いは本体ブリッジ11に溶着されることで設けられ、本体ブリッジ11を補強する機能をも有している。
【0028】
左右の各レンズ部3,3は、レンズ本体21と、レンズ本体21のブリッジ部6側に設けたレンズ取付部22と、で構成されている。レンズ本体21の上端面は、ブローバー部5の形状と相補的な形状をなしている。また、レンズ本体21の厚みや種別に関らず、レンズ部3をフレーム2に対し装着することができるようになっている。すなわち、実施例1では、フレーム2は、比較的薄い度無しのレンズ本体21が装着された場合には、レンズ本体21とブローバー部5との間にある程度の隙間C(図1参照)が形成されるように設計されており、比較的厚い度有りのレンズ本体21が装着された場合には、レンズ本体21とブローバー部5との間の隙間Cが狭まるように設計されている。
【0029】
図3に示すように、レンズ保持部材12の略円筒状の中空内部は、水平方向の左右に延在しており、その中間部に円柱状の磁石31が配設されると共に左右の両外端部が開放した凹部32となっている。すなわち、レンズ保持部材12の両端内部がそれぞれ凹部32となり、単一の磁石31が、各凹部32の底部を構成するようにしてレンズ保持部材12に埋め込まれている。そして、レンズ保持部材12の左半部および磁石31の左半部により、左側のレンズ取付部22に対応するレンズ保持部が構成され、レンズ保持部材12の右半部および磁石31の右半部により、右側のレンズ取付部22に対応するレンズ保持部が構成されている。なお、磁石31は凹部32に隠蔽されるため、ゴミ等の付着が好適に防止される。
【0030】
一方、レンズ取付部22は、凹部32に係脱可能に挿入する凸部41と、凸部41をレンズ本体21に固定する固定部42と、で構成されている。固定部42は、凸部41の基部側から連なり、レンズ本体21の中央側へと略L字状に屈曲して延びるL字部43のほか、L字部43の端部をレンズ本体21に固定するねじ等の締結手段44を有している。
【0031】
このような固定部42の構造を採用することで、既製品のレンズ本体21に対しても、穿設等の簡単なレンズ加工作業により、フレーム2に対応するレンズ部3を簡単に提供することができる。例えば、レンズ本体21のブリッジ部6側に貫通孔を穿設し、ボルトおよびナット等からなる締結手段44により、この貫通孔を介して凸部41をレンズ本体21に固定すればよい。
【0032】
また、L字部43の凸部41側の端面は、凸部41を凹部32に係合させた際に、装着位置を規制する受け(ストッパ)として機能する。なお、凸部41の先端面が磁石31の端面に当接するようにして、磁石31の端面をストッパとして機能させてもよい。
【0033】
凸部41は、凹部32に対応して略円柱状に形成され、水平方向に延在している。このため、凸部41と凹部32との係脱は、図中で示す矢印方向に、レンズ部3を水平方向に移動させて行うことができる。凸部41は、磁石31によって吸着される磁性体材料で構成されている。磁性体材料としては、例えば、鉄、フェライト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼など各種金属、合金等が挙げられる。この場合、凸部41およびL字部43の全体が、磁性体材料で一体に形成された磁性体部となっている。
【0034】
そして、磁石31と磁性体材料からなる凸部41とにより、凸部41を凹部32にマグネット吸着させる吸着保持手段51が構成されている。吸着保持手段51は、レンズ部3の装着状態では、凸部41の先端面を磁石31の端面に突き当てるように磁力により引き寄せ、レンズ部3がブリッジ部6から脱落しないように、レンズ部3をフレーム2に保持させる。」

「【0039】
次に、本発明の他の実施例に係る眼鏡1について図面を参照して説明する。なお、実施例2から実施例6では、実施例1との相違点である回止め手段52を中心に説明する。また、実施例1における変形例(例えば、吸着保持手段51など)についても、他の実施例において構造上可能であれば適用することができるが、その説明は省略する。
【実施例2】
【0040】
図4に示すように、本実施例では、レンズ部3の凸部41は、四角柱に形成されて水平方向に延在している。また、ブリッジ部6のレンズ保持部材12(凹部32)は、穴の形状が凸部41に対応して四角形に形成されている。このため、磁石31も四角柱に形成されている。したがって本実施例では、凸部41および凹部32が、係合状態で回止め可能に互いに略相補的形状から構成されて、回止め手段52を兼ねている。これにより、キーなどによる回止め手段52を別途設けなくて済む。なお、四角形に限らず、五角形などの多角形でも同様であることは、いうまでもない。
【実施例3】
【0041】
図5に示すように、レンズ部3の凸部41は、断面長円形に形成されて水平方向に延在している。また、レンズ保持部材12(凹部32)は、穴の形状が凸部41に対応して長円形に形成されている。このため、磁石31も断面長円形に形成されている。本実施例の場合も、凸部41および凹部32の形状が、実施例2と同様に回止め手段52を兼ねている。なお、長円形の向きは、同図に示す前後方向のほか、上下方向であってもよい。」

4 引用例3の記載事項
当審で通知した拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である登録実用新案第3019999号公報(以下、「引用例3」という)には、次の事項が記載されている。

「【0006】
【課題を解決するための手段】
本考案の組立式メガネフレームは該フレームを構成する部材を組み合わせることによって作られる。ここで組み合わせ形態は特に限定しないが、連結部には強力な磁石が用いられる。そして単に磁石による磁気力だけでなく、連結部の一方には凹部を有し、他方には凸部を形成している。従って、凸部は凹部に嵌合した状態で上記磁石によって固定される。」

5 引用例4の記載事項
当審で通知した拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平1-136114号公報(以下、「引用例4」という)には、次の事項が記載されている。

「本発明は、耳の後方にマグネットを設け、このマグネットの錘によりメガネの重心を耳より後に移し、メガネが鼻部を圧迫して神経にストレスを与えたり、お化粧はげをつくることを防ぐのみならず、その重錘としたマグネットにより後頭部血管にフレミング右手の法則により血流を促進せしめ頭脳の働きを良くするメガネに関する発明である。
第1図は本発明実施例を示し、レンズlをはめたメガネフレーム2に取付けたつる3の先端部に、フェライトを扁平円筒形に成型したもの又は永久磁石4を設けたものであり、つる3と耳5との接点6から前方の重心7までの距離をL1、重心7の重さW1、接点6から後方の重心8までの距離をL2、重心8の重さをW2とすると、
W1×L1=W2×L2
として前後が等モーメントとされている。
これによりメガネのレンズ間のブリッヂが鼻をおさえて荷重がからず、又鼻から浮くので鼻付近の神経を圧迫したり、頭痛が生じることがなく、又、鼻に跡がついたり、化粧がはがれることがない。
マグネット4は、つるや他のメガネ材料よりも比重が大きいので重錘として小型で有効である。
このようにマグネット4は、鼻にメガネの荷重を欠けぬ重錘となると共に、その磁力が頸部に作用して血行を促進し、凝りをなくするという二重の効果を本発明は狙ったものである。」(第1ページ左下欄第7行?同ページ右下欄第17行)

第3 本願発明と引用例1に記載の発明との対比
(1)対比
本願発明と引用発明とを対比する。

引用発明の「眼鏡枠」は、当然に、「左右のレンズ部を保持するレンズ支持部」を備えるものであるから、引用発明の「眼鏡枠」が、本願発明の「左右のレンズ部を保持するレンズ支持部を備える眼鏡本体」に相当する。

引用発明の「テンプル6」は、本願発明の「テンプル部」に相当する。

引用発明の「モダン本体2」は、プラスチック樹脂によって細長く形成され、先端部2a側から眼鏡枠のテンプル6が差し込まれて、このテンプル6に取り付けられるものであるから、本願発明の「テンプル部の先端に設けられるモダン部」に相当する。

引用発明の「モダン後部5」は、モダン本体2の後端部2cに着脱可能に係止されるものであるから「モダン部に連結され」るものであり、また、重さの異なるモダン後部5を交換するだけで、レンズ側(鼻側)とモダン1側(耳側)とでバランスを調整することができるものであるから「前後方向」に「重心バランスを調整する」ものであるということができ、さらに、当然に、左右の両方のモダン本体の後端部に取り付けられることが想定されていて、「左右方向」にも「重心バランスを調整する」ものであるということができるから、引用発明の「モダン部5」は、本願発明の「モダン部に着脱可能に連結され、眼鏡の前後方向及び左右方向での重心バランスを調整するバランスウェイト部材」に相当する。

上記の相当関係を勘案すると引用発明と本願発明とは次の点で一致する。
引用発明の「モダン後部5は、先端部5aを平坦にし後部5bを円く形成してあり、先端部5a側に、モダン本体2の係止孔15に着脱可能に係止する2つの係止突起14を有して」いることと、本願発明の「上記バランスウェイト部材は、上記モダン部の後方先端につながるバランスウェイト部材本体と、このバランスウェイト部材本体から上記モダン部側に向かって突出し、矩形、楕円形、多角形のいずれかの形状の断面を有する凸状部とを有し、これらバランスウェイト部材本体および凸状部が磁石により構成される」こととは、「バランスウェイト部材は、モダン部の後方先端につながるバランスウェイト部材本体と、このバランスウェイト部材本体から上記モダン部側に向かって突出する凸状部とを有し」ていることで一致する。

引用発明の「重さの異なるモダン後部5を交換するだけで、レンズ側(鼻側)とモダン1側(耳側)とでバランスを調整することができる」ことと、本願発明の「左右のバランスウェイト部材の重さが上記レンズ部の重さと同等に設定され」ることとは、「左右のバランスウェイト部材の重さがレンズ部の重さとのバランスを調整するように設定され」ることで一致する。

引用発明の「係止突起14」及び「係止孔15」は、それぞれ、本願発明の「凸状部」及び「凹状部」に相当するといえるから、引用発明の「モダン本体2は、プラスチック樹脂によって細長く形成され、先端部2a側から眼鏡枠のテンプル6が差し込まれて、このテンプル6に取り付けられ、モダン本体2の後端2bは平坦に形成してあり、かつモダン本体2の後端部2cである後端2bから内側に、モダン後部5の係止突起14(係止部)を着脱可能に係止するフック状の2つの係止孔15(係止部)が所定間隔をもって形成してあ」ることと、本願発明の「上記モダン部は、上記凸状部と嵌合可能な矩形、楕円形、多角形のいずれかの断面形状をもつ凹状部を有するように合成樹脂により形成され、この凹状部の底部に上記凸状部と磁力で互いに引き合う金属部もしくは磁石部が設けられ、この磁力により、左右のバランスウェイト部材が各モダン部に対して着脱可能に連結される」こととは、「モダン部は、凸状部と嵌合可能な凹状部を有するように合成樹脂により形成され、この凹状部と上記凸状部とが嵌合するとともに、左右のバランスウェイト部材が各モダン部に対して着脱可能に連結される」ことで一致する。

(2)一致点
よって、本願発明と引用発明は、
「左右のレンズ部を保持するレンズ支持部を備える眼鏡本体と、テンプル部と、テンプル部の先端に設けられるモダン部と、このモダン部に着脱可能に連結され、眼鏡の前後方向及び左右方向での重心バランスを調整するバランスウェイト部材とを備えた眼鏡であって、
上記バランスウェイト部材は、上記モダン部の後方先端につながるバランスウェイト部材本体と、このバランスウェイト部材本体から上記モダン部側に向かって突出する凸状部とを有し、左右のバランスウェイト部材の重さが上記レンズ部の重さとのバランスを調整するように設定され、
上記モダン部は、上記凸状部と嵌合可能な凹状部を有するように合成樹脂により形成され、この凹状部と上記凸状部とが嵌合して、左右のバランスウェイト部材が各モダン部に対して着脱可能に連結される眼鏡。」の発明である点で一致し、次の各点で相違する。

(3)相違点
ア 相違点1;
本願発明においては、バランスウェイト部材本体および凸状部が磁石により構成され、モダン部の凹状部の底部に上記凸状部と磁力で互いに引き合う金属部もしくは磁石部が設けられ、この磁力により、左右のバランスウェイト部材が各モダン部に対して着脱可能に連結されるのに対して、引用発明にはそのような限定がない点。

イ 相違点2;
左右のバランスウェイト部材の重さがレンズ部の重さとのバランスを調整するように設定するにあたり、本願発明においては、バランスウエイト部材の重さをレンズ部の重さと同等に設定されているのに対して、引用発明にはその点の特定がない点。

ウ 相違点3;
嵌合部の凹状部及び凸状部の形状に関して、本願発明においては、凸状部は、矩形、楕円形、多角形のいずれかの形状の断面を有し、凹状部は、上記凸状部に嵌合可能な矩形、楕円形、多角形のいずれかの断面形状をもつとされているのに対して、引用発明にはその点の特定がない点。

第4 当審の判断
1 上記各相違点について検討する。
(1)相違点1について;
眼鏡フレームにおいて、2つの部材の着脱可能な結合を、凹凸部の嵌合及び磁石の磁力によって行うことは、引用例2及び引用例3にも記載されているように周知の技術である(引用例2は特に下線部参照)。
バランスウェイト部材のモダン部の端部への連結の手段として、上記周知技術を採用し、凹状部及び凸状部の嵌合及び磁石の磁力によって、バランスウェイト部材をモダン部の端部へ連結する構造とすることは当業者が容易に想到し得ることである。そして、凹状部及び凸状部の嵌合及び磁石の磁力による連結構造を採用するにあたり、凹状部及び凸状部をそれぞれどちら側に設けるかという選択や、磁石を配置する位置については当業者が必要に応じて適宜設定し得る事項に過ぎない。
また、バランスウェイト部材自体を磁石とすることについても、引用例4に記載されているように周知の技術である。
以上を勘案すれば、引用発明においても、バランスウェイト部材とモダン部の連結構造に関して、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易に想到し得たことであるといえる。

(2)相違点2について;
バランスウェイトの重さを調整するに際し、顧客の掛け具合に応じてバランスウェイト部材の重さを調整することは引用例1にも記載されている(【0017】【0018】【0023】【0024】段落参照。)ように通常行われていることであり、当該バランスウェイト部材の重さを具体的にどの程度とするかは、当業者が必要に応じて適宜設定し得る事項である。したがって、バランスウェイト部材の重さを、具体的に「レンズ部の重さと同等に設定」すると特定することは当業者が容易になし得たことである。

(3)相違点3について;
引用例2には、眼鏡フレームにおいて、嵌合部の凹状部及び凸状部の形状について、凸状部は、断面が矩形(四角形)、楕円形(長円形)又は多角形(五角形)に形成され、凹状部の断面は、凸状部に嵌合可能な矩形(四角形)、楕円形(長円形)又は多角形(五角形)に形成されていることが記載されている(下線部参照)。
引用発明と引用例2に記載された発明は、眼鏡フレームという技術分野に属する点で共通するから、引用発明において、上記の引用例2に記載された技術を採用し、上記相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易に想到し得たことである。

2 本願発明が奏する作用効果
そして、本願発明によってもたらされる効果は、引用発明及び引用例2ないし4に記載された技術的事項から当業者が予測し得る程度のものである。

3 まとめ
したがって、本願発明は、引用発明及び引用例2ないし4に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび
以上より、本願発明は、引用発明及び引用例2ないし4に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-07-17 
結審通知日 2009-07-21 
審決日 2009-08-13 
出願番号 特願2006-87848(P2006-87848)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G02C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 堀井 康司  
特許庁審判長 村田 尚英
特許庁審判官 森林 克郎
今関 雅子
発明の名称 眼鏡  
代理人 樋口 次郎  
代理人 小谷 悦司  

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