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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02N
管理番号 1204508
審判番号 不服2008-5324  
総通号数 119 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-03-04 
確定日 2009-09-24 
事件の表示 平成10年特許願第125747号「超音波モータ及び超音波モータ付電子機器」拒絶査定不服審判事件〔平成11年11月30日出願公開、特開平11-332261〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願の発明
本願は、平成10年5月8日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成20年1月7日付の手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。
「支持軸により支持された振動体と、前記振動体に接合された圧電素子とを有し、前記圧電素子の振動で生じる振動波に基づいて駆動力を得る超音波モータにおいて、
前記振動体は、前記支持軸に支持される部位に、前記支持軸に接しつつ前記支持軸の軸線方向に対して前記圧電素子の厚みを超えて突出する突出部を有し、前記突出部の高さは前記振動体の厚み以上であることを特徴とする超音波モータ。」

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された実願昭63-110438号(実開平2-33596号)のマイクロフィルム(以下、「引用例」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

・「本考案は、波動モータの振動体と中心軸の補強支持構造に関するものである。」(明細書2頁1?2行)

・「従来、波動モータの構造は・・・圧電素子に電圧を加えることによって振動体を振動させ前記振動体と同軸に回転可能に支持されたロータを前記振動体の進行波によって回転させるという構造がある。」(同書2頁12?18行)

・「第1図は、本考案を用いた波動モータの組立断面図である。中心軸2は、ベース1に固定されており、軸端部2cでcリング8で係着されている加圧ばね7によって摺動部2bで回転可能に軸支されたロータ5を圧電素子4を下面に貼り付けた振動体3の振動作用部3aに圧接しており、該振動体3は前記中心軸2の打込み部2aに打込み固定し、振動体上面から補強リング6を打込んで固定している。」(同書3頁18行?4頁6行)

・「第2図は第1図の補強リング6の代わりに前記振動体3の下面の中心穴近傍に振動体平面より突出して肉厚部3bを設けたものであり」(同書4頁8?11行)

・「この考案は以上説明したように、波動モータの肉薄の・・・振動体の中心穴近傍を肉厚にすることにより、振動体の喰い付きを強化することができ、その結果として小型の波動モータを提供することができるという効果がある。」(同書4頁19行?5頁4行)

・第2図には、中心軸2に支持される部位に、前記中心軸2に接しつつ前記中心軸2の軸線方向に対して圧電素子4の厚み方向に突出する肉厚部3bを有する振動体3の構造が示されている。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例には第2図実施例に係る次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「中心軸2により支持された振動体3と、前記振動体3に貼り付けた圧電素子4とを有し、前記圧電素子4に電圧を加えることによって前記振動体3を振動させロータ5を前記振動体3の進行波によって回転させる波動モータにおいて、
前記振動体3は、前記中心軸2に支持される部位に、前記中心軸2に接しつつ前記中心軸2の軸線方向に対して前記圧電素子4の厚み方向に突出する肉厚部3bを有し、前記肉厚部3bの厚みにより前記中心軸2への前記振動体3の喰い付きを強化することができる波動モータ。」

3.対比
本願発明と引用発明を対比すると、その機能・作用からみて、後者における「中心軸2」が前者における「支持軸」に相当し、以下同様に、「貼り付けた圧電素子4」が「接合された圧電素子」に、「圧電素子4に電圧を加えることによって振動体3を振動させロータ5を前記振動体3の進行波によって回転させる波動モータ」が「圧電素子の振動で生じる振動波に基づいて駆動力を得る超音波モータ」に、それぞれ相当している。
また、後者の「圧電素子4の厚み方向に突出する肉厚部3b」と前者の「圧電素子の厚みを超えて突出する突出部」とは、「圧電素子の厚み方向に突出する突出部」との概念で共通し、後者の「肉厚部3bの厚みにより中心軸2への振動体3の喰い付きを強化することができる」態様と前者の「突出部の高さは振動体の厚み以上である」態様とは、「突出部は所定の高さを有する」との概念で共通している。

したがって、両者は、
「支持軸により支持された振動体と、前記振動体に接合された圧電素子とを有し、前記圧電素子の振動で生じる振動波に基づいて駆動力を得る超音波モータにおいて、
前記振動体は、前記支持軸に支持される部位に、前記支持軸に接しつつ前記支持軸の軸線方向に対して前記圧電素子の厚み方向に突出する突出部を有し、前記突出部は所定の高さを有する超音波モータ。」
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点1]
突出部の「圧電素子の厚み方向に突出する」態様に関し、本願発明は、「圧電素子の厚みを超えて突出する」態様であるのに対し、引用発明は、突出の程度が明確にされていない点。
[相違点2]
「突出部は所定の高さを有する」態様に関し、本願発明が「突出部の高さは振動体の厚み以上である」としているのに対し、引用発明は、突出部の高さの程度が明確にされていない点。

4.判断
上記相違点について以下検討する。

引用発明において、突出部(肉厚部)に関する「圧電素子の厚み方向に突出する」程度や「所定の高さ」の程度については、当業者が、突出部の厚みにより中心軸への振動体の喰い付きを強化することができる範囲内のものとして、任意に設定し得るものであり、特に、「圧電素子の厚みを超えて突出する」態様としたり、「突出部の高さは振動体の厚み以上である」態様とする際に、格別の技術的困難性が伴うものとも認められない。
一方、本願明細書を参酌しても、本願発明において、「圧電素子の厚みを超えて突出する突出部」で特定される突出部の突出量の最低基準である「圧電素子の厚み」自体や、「突出部の高さは振動体の厚み以上」とする構成で特定される突出部の高さの最低基準である「振動体の厚み」自体に、格別の臨界的意義が存在するものとも認められない。
そうすると、引用発明において、突出部を上記相違点1及び2に係る本願発明のように特定することは、当業者が必要に応じて適宜なし得る設計的事項にすぎないものというべきである。

そして、本願発明の全体構成により奏される効果も、引用発明から当業者が予測し得る範囲内のものである。
したがって、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないため、本願は、同法第49条第2号の規定に該当し、拒絶をされるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-07-08 
結審通知日 2009-07-14 
審決日 2009-08-12 
出願番号 特願平10-125747
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H02N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西村 泰英佐々木 訓  
特許庁審判長 仁木 浩
特許庁審判官 田良島 潔
黒瀬 雅一
発明の名称 超音波モータ及び超音波モータ付電子機器  
代理人 松下 義治  

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