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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1204526
審判番号 不服2008-31318  
総通号数 119 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-12-11 
確定日 2009-09-24 
事件の表示 特願2003-124321「減圧吸収壁を備えた合成樹脂製ボトル型容器」拒絶査定不服審判事件〔平成16年11月18日出願公開、特開2004-323100〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成15年4月28日の出願であって、平成20年11月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対し同年12月11日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
本願の請求項1に係る発明は審査段階において平成20年10月2日に補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである(以下「本願発明」という)。
「【請求項1】容器本体胴部に減圧吸収壁を備えた合成樹脂製のボトル型容器であって、
前記減圧吸収壁の上端域及び下端域のそれぞれに、直線と曲線の組合せからなる輪郭線にて区画されるとともに該減圧吸収壁の平面内でその中央部に向けて指向する頂点を有する略三角形状の膨出部を設け、
該膨出部の基部における輪郭線は、該基部に向けて凸となる逆R状の曲線よりなり、該膨出部の基部と容器本体胴部との境界に段差を設けたことを特徴とする減圧吸収壁を備えた合成樹脂製ボトル型容器。」

2.引用刊行物記載の発明
(1)これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前である2002年(平成14年)6月27日に頒布された国際公開第02/49926号 (以下「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。
(a)「容器の中心軸線に対して対象となる左側面と右側面とを有する胴部を含む合成樹脂製壜体容器であって、該左側面及び右側面の各々において、胴部中央域を含む領域に、容器内圧の変化に対応する歪み吸収用の凹陥部が形成されている。該左側面の凹陥部と右側面の凹陥部とは、相似形で、同寸法である。該凹陥部の各々は、上縁と下縁と底面とを含み、該底面は、周壁の母線方向と周方向の少なくとも何れか一方において略緩凹弧面とされている。凹陥部の各々には、その上部及び下部に凸出面の補強部が形成されており、該補強部は、凹陥部の上縁及び下縁から底面に向かって徐々に減少させられた凸出高さを有し、また、上縁及び下縁から底面に向かって徐々に減少させられた横幅を有し、それによって、補強部は、略三角形の正面形状を有する。」(明細書第1頁第26行から第2頁第6行)
(b)「図1ないし図4は、本発明の実施例の一例である、容量2リットルのPET樹脂製2軸延伸ブロー成形ボトルを示している。
図示例の容器主体1は、長筒状の胴部2と、胴部の上に設けられた肩部3と、該肩部の上に設けられた口頸部4と、前記胴部の下に設けられた底部5とよりなる。これら胴部2、肩部3、口頸部4の具体的構造は、本発明の要部と直接の関連は無いので、周知の合成樹脂製ボトルの胴部、肩部、口頸部と置換して理解してよい。」(明細書第2頁第26行から第3頁3行)
(c)「歪み吸収用の凹陥部9,10の各々は、底面13を有している。底面13は、横断面においては、図3に示される如く、周方向において全体として略緩円弧面11を形成し、胴部母線方向の断面においては、図4に示される如く、略平面12を形成する。
凹陥部9,10の上縁14と下縁15との各々には、補強部18,19が形成されている。補強部18,19の各々は、略三角形の正面形状を有し、外側に膨出しており、凸出高さHと横幅Wとを有する。補強部18,19の各々の前記凸出高さHは、胴部周面16,17から凹陥部9,10の底面13に向かって徐々に減少されている。補強部18,19の各々の横幅Wは、前記上縁14又は下縁15から凹陥部9,10の底面13に向かって徐々に減少されている。」(明細書第3頁第17?26行)
(d)図1を参照すると、略三角形の正面形状を有する補強部18,19は、歪み吸収用凹陥部9内でその中央に向けて指向する頂点を有していると認めることができる。
(e)図4を参照すると、略三角形状の補強部は基部(補強部18は凹陥部9の上縁14側、補強部19は下縁15側)にそれぞれ容器主体1の長筒状の胴部2の胴部周面16,17との境界に位置する段差を有しているものと認められる。
以上の記載及び図1?4によれば、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。

「容器主体の胴部に歪み吸収用凹陥部を備えた合成樹脂製のボトル型容器であって、前記歪み吸収用凹陥部の上縁と下縁の各々に、該歪み吸収用凹陥部内でその中央に向けて指向する頂点を有する略三角形状の膨出部を設け、該膨出部の基部と容器主体の胴部周面との境界に段差を設けた合成樹脂製のボトル型容器」

3.対比
そこで、本願発明と引用発明とを比較すると、引用発明の「容器主体」は、本願発明の「容器本体」に相当し、同様に、「容器主体の胴部」は「容器本体胴部」に、「歪み吸収用凹陥部」は「減圧吸収壁」に、「上縁」は「上端域」に、「下縁」は「下端域」に、それぞれ相当する。
また、本願発明では「膨出部の基部と容器本体胴部との境界に段差を設けた」となっているが、本願発明の容器が口部1、肩部2、容器本体胴部3、底部4から構成され(段落【0013】及び図1参照)、図2からみて、容器本体胴部3のうち、減圧吸収壁5や周溝を設けていない部分の胴部周面と膨出部6の境界に段差7が設けてあるものと認められるので、膨出部の基部と容器本体胴部の周面との境界に段差を設けたものと解することができる。
したがって、本願発明と引用発明を対比すると、両者は、
「容器本体胴部に減圧吸収壁を備えた合成樹脂製のボトル型容器であって、 前記減圧吸収壁の上端域及び下端域のそれぞれに、該減圧吸収壁内でその中央部に向けて指向する頂点を有する略三角形状の膨出部を設け、該膨出部の基部と容器本体胴部との境界に段差を設けた合成樹脂製ボトル型容器。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本願発明では、略三角形状の膨出部が「減圧吸収壁の平面内でその中央部に向けて指向する頂点を有する」のに対して、引用発明では略三角形状の膨出部の減圧吸収壁の中央部に向けて指向する頂点が減圧吸収壁の平面内に位置するのか明確ではない点。
[相違点2]
本願発明では、略三角形状の膨出部が直線と曲線の組み合わせからなる輪郭線にて区画されるものであって、該膨出部の基部における輪郭線は基部に向けて凸となる逆R状の曲線からなるのに対して、引用発明では略三角形状の膨出部の輪郭線が、直線と曲線の組合わせからなるのか明確ではない点。

4.当審の判断
[相違点1」について
引用発明の歪み吸収用凹陥部9,10の底面13を、平面部を有するものとし、当該平面部内に略三角形状の膨出部の歪み吸収用凹陥部の中央部に向けて指向する頂点が位置するようにすることは当業者が適宜なす程度の事項にすぎない。
[相違点2」について
構造体の力の加わる部所に応力集中部が形成されないようにすることは、一般的に行われる設計的な事項であって、容器の減圧によって力の加わる減圧吸収壁内にできるだけ応力集中部が形成されないようにすることは当然考慮されるべき事項である。
凹陥部である減圧吸収壁内に略三角形状の膨出部を設ければその基部において、角を伴った凹部が生じ、そこが応力集中部となるなることは当業者にとって明らかな事項であり、一方、角を伴った凹部を逆R状の曲線を用いた凹部とすることで、角をなくし、応力集中を防いで剛性をあげることは当業者にとって慣用技術にすぎないので、引用発明の略三角形状の膨出部の基部における輪郭線を基部に向けて凸となる逆R状の曲線として、略三角形状の膨出部が直線と曲線の組み合わせからなる輪郭線にて区画されるものとすることは当業者が容易になし得たことである。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び慣用技術から当業者が予測できる範囲のものであり、格別顕著なものとはいえない。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-07-23 
結審通知日 2009-07-28 
審決日 2009-08-10 
出願番号 特願2003-124321(P2003-124321)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石田 宏之  
特許庁審判長 栗林 敏彦
特許庁審判官 村山 禎恒
熊倉 強
発明の名称 減圧吸収壁を備えた合成樹脂製ボトル型容器  
代理人 杉村 憲司  
代理人 澤田 達也  

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