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審決分類 |
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H03H 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H03H 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H03H |
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管理番号 | 1204567 |
審判番号 | 不服2007-9519 |
総通号数 | 119 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-11-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-04-05 |
確定日 | 2009-10-01 |
事件の表示 | 特願2002-507515「弾性表面波装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 1月10日国際公開、WO02/03549〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2001年6月29日(優先権主張2000年6月30日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成19年2月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成19年4月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成19年4月20日付けで手続補正がなされたものである。 第2 平成19年4月20日付けの手続補正についての補正却下の決定 〔結論〕 平成19年4月20日付けの手続補正を却下する。 〔理由〕 1.補正内容 平成19年4月20日付けの手続補正(以下、「本件補正」と呼ぶ。)は、特許請求の範囲の請求項1を、下記の<補正前の請求項1>から<補正後の請求項1>に変更する補正を含むものである。 <補正前の請求項1> 「【請求項1】 圧電基板の弾性表面波伝搬路上に配置された入力用インターデジタルトランスデューサと出力用インターデジタルトランスデューサとを有し, 前記入力用又は,出力用のインターデジタルトランスデューサの電極指の交差幅をXとする時,前記出力用又は,入力用インターデジタルトランスデューサは,それぞれ交差幅を略X/2とする電極指を持つ2つの分割インターデジタルトランスデューサを有し, 前記2つの分割インターデジタルトランスデューサは,共通電極により直列接続され, 且つそれぞれの分割インターデジタルトランスデューサの前記共通電極側の電極指と対を成す電極指は,平衡端子対に接続され,前記平衡端子対における信号が180°位相が異なる様に配置され,且つ 前記2つの分割インターデジタルトランスジューサの共通電極が隣接するインターデジタルトランスジューサの接地電位側の電極指に接続されていることを特徴とする弾性表面波装置。」 <補正後の請求項1> 「【請求項1】 圧電基板の弾性表面波伝搬路上に配置された入力用インターデジタルトランスデューサと出力用インターデジタルトランスデューサとを有し, 前記入力用又は,出力用のインターデジタルトランスデューサの電極指の交差幅をXとする時,前記出力用又は,入力用インターデジタルトランスデューサは,それぞれ交差幅を略X/2とする電極指を持つ2つの分割インターデジタルトランスデューサを有し, 前記2つの分割インターデジタルトランスデューサは,共通電極により直列接続され, 且つそれぞれの分割インターデジタルトランスデューサの前記共通電極側の電極指と対を成す電極指は,平衡端子対に接続され,前記平衡端子対における信号が180°位相が異なる様に配置され,且つ 前記2つの分割インターデジタルトランスデューサの共通電極が隣接するインターデジタルトランスデューサの接地電位側の電極指に前記共通電極の中心位置を点対称として接続されていることを特徴とする弾性表面波装置。」 なお、上記<補正後の請求項1>中の「前記共通電極の中心位置を点対称として」は、その意味するところが文言上は必ずしも明確ではないが、本審決では審判請求人が補正の根拠箇所として主張している図16や図20の記載等を参酌して、「前記共通電極の中心位置を対称の中心とする互いに点対称な位置で」の意味に解釈した。 2.本件補正に対する判断 当審は、本件補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書等」と呼ぶ。)に記載した事項の範囲内においてしたものではなく、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものであると判断する。 また、その点をさておくとしても、補正後における特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定される発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではなく、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものであると判断する。 理由は以下のとおりである。 (1)本件補正を、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではないと判断する理由 本件補正による補正後の請求項1は、「前記2つの分割インターデジタルトランスデューサの共通電極が隣接するインターデジタルトランスデューサの接地電位側の電極指に前記共通電極の中心位置を点対称として接続されている」なる発明特定事項を含んでいるが、該発明特定事項は、当初明細書等に記載されておらず、当初明細書等の記載から自明な事項ともいえない。そして、請求項1を、該発明特定事項を含んだものとする補正を含む本件補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。 上述したように審判請求人は、上記発明特定事項を含んだものとする補正は、出願当初の図16及び図20の記載に基づくものである旨主張しており(平成19年4月20日付けの審判請求書の請求の理由を補正対象とする手続補正書(方式)の【本願発明が特許されるべき理由】の「1.独立請求項1,2に係る発明」の欄)、該図16及び図20に、「2つの分割インターデジタルトランスデューサの共通電極が、隣接する両側のインターデジタルトランスデューサの接地電位側の電極指に、前記共通電極の中心位置を対称の中心とする互いに点対称な位置で、接続されている」なる表現に当てはまる構成の例が示されていることは事実であるが、そうであるからといって、上記発明特定事項で規定される技術的事項を、当初明細書等に記載した事項の範囲内のものということはできない。 なぜならば、当初明細書の図16及び図20についての説明箇所には、共通電極の接地電位への接続に関しては、 「図16は、図15の実施例に対し、平衡出力端子対OUT1,OUT2における信号の位相差を改善した実施例構成である。平衡出力端子対OUT1、OUT2に繋がる分割IDT201と202の共通電極206及び、分割IDT203と204の共通電極207をアース電位GNDに接続している。なお、共通電極206と共通電極207の両側の隣接IDT114と113,IDT113と115を通してアース電位GNDに接続しているのは、より接地を強化するためである。」 「図20は、図19の実施例において平衡出力OUT1、OUT2の位相差を改善した実施例である。先の図7、図16の実施例と同様に分割IDT201,202の共通電極206をアース電位GNDに接続した構成である。」 の記載があるのみであり、それらの記載と上記図16及び図20の記載のみから、技術的思想としての「2つの分割インターデジタルトランスデューサの共通電極が、隣接する両側のインターデジタルトランスデューサの接地電位側の電極指に、前記共通電極の中心位置を対称の中心とする互いに点対称な位置で、接続されている」という技術的事項を読み取ることはできないからである。 よって、上記発明特定事項は当初明細書等に記載された事項の範囲内のものとはいえず、本件補正は当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえない。 (2)本件補正による補正後の発明を、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないと判断する理由 (2-1)本件補正による補正後の請求項1に係る発明 本件補正による補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」と呼ぶ。)は、上記1.の<補正後の請求項1>に転記したとおりのものである。 (2-2)本願補正発明についての優先権主張の効果 上記本願補正発明の発明特定事項中の「前記2つの分割インターデジタルトランスデューサの共通電極が隣接するインターデジタルトランスデューサの接地電位側の電極指に前記共通電極の中心位置を点対称として接続されている」に対応する事項は、本願において優先権主張の基礎とされている特願2000-199279号の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載されていないから、本願補正発明には、本願において主張される優先権の効果は及ばない。 (2-3)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第01/13514号(以下、「引用例」と呼ぶ。)には、以下の事項が記載されている。 なお、引用例は独語により国際公開されたものであるが、該引用例と同一の内容を日本語で開示していると認められる特表2003-507917号公報が存在しているので、以下の引用例の記載事項の摘記については、検討の便宜を考慮し、該特表2003-507917号公報からの摘記で代用する。したがって、以下の摘記箇所の段落番号も、該特表2003-507917号公報におけるものである。 「 【0001】 本発明は、有利には、デュアルモード表面波(OFW=Oberflaeschenwellen/SAW)フィルタ(DMSフィルタ)と称されるタイプの、極めて選択性の高い高周波表面波フィルタに関する。このフィルタに対しては縦モード共振器フィルタ(Longitudinalmodenresonatorfilter)という名称も使用される。このような表面波フィルタとは、変換器および共振器など構造要素が圧電基板の表面に配置されている電気機械式フィルタのことである。」 「 【0007】 本発明の課題は、不平衡または平衡の入力信号において、関連するフィルタの出力信号の平衡性をさらに改善することである。」 「 【0010】 図1にはデュアルモード1トラックフィルタが示されており、このデュアルモード1トラックフィルタは、図13Aと同様にここでも電気的に並列接続された(第2の)変換器21および22を有し、これらは例えば入力側として設けられている。この入力側は、平衡な入力側としても、また不平衡な入力側として作動させることができる。参照符号11によって、ここでは本発明にしたがって実施された(第1の)変換器が示されており、これは平衡に駆動すべき出力側変換器として接続されている。この変換器11は本発明により偶数個の変換器フィンガー、ここでは例えば4つのフィンガーを有する。この変換器は、本発明の枠内でインターディジタルに咬合し合う任意の別の(実践に関連する)偶数個の変換器フィンガーを有することができ、したがって従来技術とは原理的に異なる。すなわち奇数個のフィンガーを有する変換器1とは異なるのである。」 「 【0011】 図1のフィルタは、平衡の入力信号時にも、不平衡の入力信号時にも共に平衡の出力信号を供給し、しかも課題のように極めて高い平衡性を提供する。」 「 【0031】 図12には変換器のいくつかの実施例が示されており、これらは例えば本発明の第1および第2の変換器ないしは説明した実施形態のタイプに使用することが可能である。すなわち重み付き変換器(図12A)として、および/またはインピーダンス変換を有する変換器(図12B?12D)として使用することが可能である。図12Aのこのような変換器もすべて偶数のフィンガー個数を有する。同じことは図12B,12Cおよび12Dの変換に対しても当てはまる。図12Bの変換器は、1:4(ないしは4:1)のインピーダンス変換比を有する。図12Cおよび12Dの変換器は、これらが(選択可能な)偶数ではないインピーダンス変換比を有する形成するように構成されている。本発明において実質的であり図12A?12Dのこれらの変換器にの共通であるのは、これらの変換器がその平衡性の点から点対称に実施されていることである。」 ここで、上記【0031】中の「図12には変換器のいくつかの実施例が示されており、これらは例えば本発明の第1および第2の変換器ないしは説明した実施形態のタイプに使用することが可能である。すなわち重み付き変換器(図12A)として、および/またはインピーダンス変換を有する変換器(図12B?12D)として使用することが可能である。」なる記載等によれば、引用例では、図12Bに示される変換器を、図1の第1の変換器11の代わりに使用することも想定されていると認められる。 また、引用例の図12Bの電極配置を技術常識に照らせば、「その共通電極側のフィンガーと対を成すフィンガーであってOUT bal.の対に接続されるフィンガーは、前記OUT bal.の対における信号が180°位相が異なる様に配置されている」と認められる。 そして、上記各記載と、各図面の記載とを参酌し、上記図1の第1の変換器11の代わりに図12Bに示される変換器を使用したものを考えると、引用例には、 「圧電基板の弾性表面波伝搬路上に配置された入力用変換器と出力用変換器とを有し, 前記入力用又は,出力用の変換器の電極指の交差幅をXとする時,前記出力用又は,入力用変換器は,それぞれ交差幅を略X/2とするフィンガーを持つ2つの分割変換器を有し, 前記2つの分割変換器は,共通電極により直列接続され, 且つそれぞれの分割変換器の前記共通電極側のフィンガーと対を成すフィンガーは,OUT bal.の対に接続され,前記OUT bal.の対における信号が180°位相が異なる様に配置され,且つ 前記2つの分割変換器の共通電極が接地に接続されている弾性表面波装置。」の発明(以下、「引用例記載発明」と呼ぶ。)が記載されているといえる。 (2-4)対比 本願補正発明と引用例記載発明とを比較すると、以下の対応関係が認められる。 ・引用例記載発明の「変換器」は、本願補正発明の「インターデジタルトランスデューサ」に相当する。 ・引用例記載発明の「フィンガー」は、本願補正発明の「電極指」に相当する。 ・引用例記載発明の「OUT bal.の対」は、本願補正発明の「平衡端子対」に相当する。 したがって、本願補正発明と引用例記載発明の間には、以下の一致点、相違点があるといえる。 (一致点) 「圧電基板の弾性表面波伝搬路上に配置された入力用インターデジタルトランスデューサと出力用インターデジタルトランスデューサとを有し, 前記入力用又は,出力用のインターデジタルトランスデューサの電極指の交差幅をXとする時,前記出力用又は,入力用インターデジタルトランスデューサは,それぞれ交差幅を略X/2とする電極指を持つ2つの分割インターデジタルトランスデューサを有し, 前記2つの分割インターデジタルトランスデューサは,共通電極により直列接続され, 且つそれぞれの分割インターデジタルトランスデューサの前記共通電極側の電極指と対を成す電極指は,平衡端子対に接続され,前記平衡端子対における信号が180°位相が異なる様に配置され,且つ 前記2つの分割インターデジタルトランスデューサの共通電極が接地に接続されている弾性表面波装置。」である点。 (相違点1) 本願補正発明では、「2つの分割インターデジタルトランスデューサの共通電極」が「隣接するインターデジタルトランスデューサの接地電位側の電極指」に接続されているのに対し、引用例記載発明では、「2つの分割変換器の共通電極」が接地に接続されてはいるものの、「隣接するインターデジタルトランスデューサの接地電位側の電極指」に相当するものに接続されているわけではない点。 (相違点2) 本願補正発明の「2つの分割インターデジタルトランスデューサの共通電極」は、「前記共通電極の中心位置を点対称として(前記共通電極の中心位置を対称の中心とする互いに点対称な位置で)」接地電位側の電極指に接続されているのに対し、引用例記載発明の「2つの分割変換器の共通電極」は、「前記共通電極の中心位置を点対称として(前記共通電極の中心位置を対称の中心とする互いに点対称な位置で)」接地に接続されているわけではない点。 (2-5)判断 ア.相違点1について 引用例の段落【0010】の「図1にはデュアルモード1トラックフィルタが示されており、このデュアルモード1トラックフィルタは、図13Aと同様にここでも電気的に並列接続された(第2の)変換器21および22を有し、これらは例えば入力側として設けられている。この入力側は、平衡な入力側としても、また不平衡な入力側として作動させることができる。」なる記載等によれば、引用例の図1の変換器21および22を不平衡な入力側として作動させる場合には、図1中の「IN(ground/bal.)」と記載された端子は、接地に接続されるものと認められる。 そしてそのようにする場合には、上記引用例記載発明のように図1の第1の変換器11の代わりに図12Bに示される変換器を使用する際、図12Bに模式的に示されるアースは、図1の前記変換器21、22の前記「IN(ground/bal.)」と記載された端子に接続される側のフィンガーに接続するのが簡便であることが、該図1及び図12Bから明らかである。そして、そのようにすることを妨げる事情はなんら認められない。 さらに、拒絶査定で審査官が特開昭55-5573号公報、特開平8-79000号公報を例示して説示するように、インターデジタルトランスデューサの電極指を接地電位に電気的に接続する際、隣接するインターデジタルトランスデューサの接地電位側の電極指に電気的に接続する手法自体は、周知であったと認められる。 してみれば、引用例記載発明において、「2つの分割変換器の共通電極」を接地に接続する際、「隣接するインターデジタルトランスデューサの接地電位側の電極指」に相当ものに接続するようにすることは、当業者が容易になし得たことというべきである。 よって、上記相違点1の存在によっては、本願補正発明の進歩性は肯定されない。 イ.相違点2について 上記ア.の項で検討したように、引用例の図1の第1の変換器11の代わりに図12Bに示される変換器を使用する際、図12Bに模式的に示されるアースを、図1の変換器21、22の「IN(ground/bal.)」と記載された端子に接続される側のフィンガーに接続するようにすることは、当業者が容易になし得たことというべきであるが、以下の点を勘案すると、その際に前記図12Bに模式的に示されるアースを「2つの分割変換器の共通電極の中心位置を点対称として(2つの分割変換器の共通電極の中心位置を対称の中心とする互いに点対称な位置で)」前記図1の変換器21、22の「IN(ground/bal.)」と記載された端子に接続される側のフィンガーに接続するようにすること、すなわち、上記相違点2に係る本願補正発明の構成を採用することも、当業者が容易になし得たことというべきである。 a)引用例の段落【0007】の「本発明の課題は、不平衡または平衡の入力信号において、関連するフィルタの出力信号の平衡性をさらに改善することである。」なる記載や、段落【0031】の「本発明において実質的であり図12A?12Dのこれらの変換器にの共通であるのは、これらの変換器がその平衡性の点から点対称に実施されていることである。」なる記載によれば、当業者は、変換器の電極配置を点対称にすることが、当該変換器を用いたフィルタの出力信号の平衡性の改善につながるとの認識を有していたものと認められ、該認識によれば、当業者は、接地のための電極配置についても、点対称とすることに容易に想到すると考えられる。 b)引用例の図1に示されるように、接地に接続され得る電極を有する変換器21、22は、図12Bに示される変換器で代替され得る変換器11の両側に存在しており、前記図12Bに模式的に示されるアースを「2つの分割変換器の共通電極の中心位置を点対称として(2つの分割変換器の共通電極の中心位置を対称の中心とする互いに点対称な位置で)」前記図1の変換器21、22の「IN(ground/bal.)」と記載された端子に接続される側のフィンガーに接続するようにすることは、電極配置を少し変更するだけで可能である。 よって、上記相違点2の存在によっても、本願補正発明の進歩性は肯定されない。 ウ.本願補正発明の効果について 本願補正発明の構成によってもたらされる効果は、引用例に記載された発明及び周知技術から当業者ならば容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。 (2-6)むすび 以上のとおりであるから、本願補正発明は、引用例記載発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」と呼ぶ。)は、平成18年11月13日付けの手続補正書の請求項1に記載されたとおりのものであり、上記「第2」の「1.」の<補正前の請求項1>に転記したとおりのものである。 2.本願発明についての優先権主張の効果 本願発明の発明特定事項中の「前記2つの分割インターデジタルトランスデューサの共通電極が隣接するインターデジタルトランスデューサの接地電位側の電極指に接続されている」に対応する事項も、本願において優先権主張の基礎とされている特願2000-199279号の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載されていないから、本願発明にも、本願において主張される優先権の効果は及ばない。 3.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、上記「第2」の「2.」の「(2)」の「(2-3)」の項に記載したとおりである。 4.対比・判断 本願発明は、上記「第2」で検討した本願補正発明から、「前記2つの分割インターデジタルトランスデューサの共通電極が隣接するインターデジタルトランスデューサの接地電位側の電極指に接続されている」を、「前記2つの分割インターデジタルトランスデューサの共通電極が隣接するインターデジタルトランスデューサの接地電位側の電極指に前記共通電極の中心位置を点対称として接続されている」に限定する限定事項を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに特定の限定を施したものに相当する本願補正発明が、上記「第2」の「2.」の「(2)」に記載したとおり、引用例記載発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用例記載発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例記載発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について、検討するまでもなく拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-07-29 |
結審通知日 | 2009-08-04 |
審決日 | 2009-08-17 |
出願番号 | 特願2002-507515(P2002-507515) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H03H)
P 1 8・ 121- Z (H03H) P 1 8・ 561- Z (H03H) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 崎間 伸洋、橋本 和志 |
特許庁審判長 |
小曳 満昭 |
特許庁審判官 |
長島 孝志 池田 聡史 |
発明の名称 | 弾性表面波装置 |
代理人 | 林 恒徳 |
代理人 | 土井 健二 |