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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E21D
管理番号 1204591
審判番号 不服2007-34677  
総通号数 119 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-12-25 
確定日 2009-10-01 
事件の表示 平成10年特許願第300874号「再利用可能なシールド掘進機」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 5月 9日出願公開,特開2000-130074〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,平成10年10月22日の出願であって,平成19年11月26日付けで拒絶査定され,これに対し,同年12月25日に拒絶査定不服の審判が請求されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成19年8月20日受付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,次のとおりのものである。
(本願発明)
「回転体と、
回転体の回転中心以外の位置に突設した偏心軸と、
回転体駆動源を収納して収納容器を構成し、
この収納容器を、
解体可能な状態で積み重ねることによって複数本の偏心軸を前面に突設した収納容器組立体を構成し、
この収納容器組立体の外周を包囲する状態でシールド外殻を配置し、
この収納容器組立体の前面の全偏心軸にカッタ盤を取り付け、
シールド外殻の内部には推進ジャッキなどの機器を設置して構成した、
再利用可能なシールド掘進機」

3.刊行物に記載された事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用され,本願の出願日前に頒布された刊行物である特開平9-195682号公報(以下「刊行物1」という。)には,図面とともに,次の事項が記載されている。
(1a)「【請求項1】 フードが着脱自在に構成される元となる内部円筒本体2に、任意の外形を持った外殻体18およびフード部を着脱自在に取り付け、前記内部本体2の内部の前側に回転駆動装置30を取り付け、前記内部本体2の切羽側には複数個の回転子36を設置するとともに、前記回転子36を偏心回転可能に前記回転駆動装置30に連結し、前記複数個の回転子36の端部に共通に、掘削具37のカッタフレーム38を着脱自在に取り付け、前記掘削具37を正面から見て外殻体18の外形とほぼ同形の坑を掘削可能に構成したことを特徴とする異径,異形シールド。」
(1b)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主として推進工法やシールド工法にかかるシールドに係り、さらに詳しくは地中に異径,異形の函渠,洞道,地下道,用水・上下水道等を構築する場合に用いられる異径,異形シールドに関する。」
(1c)「【0017】これらの図に示す実施例の掘進機1では、元となる内部本体2に、外殻体18を着脱自在に取り付けるようにしている。」
(1d)「【0028】前記内部本体2の前半部3の前端部に固定された隔壁5には、回転駆動装置30が取り付けられており、同隔壁5の前方には掘削具37が装備されている。」
(1e)「【0029】前記回転駆動装置30は、図1および図2に示すように、例えば3台配置されかつ隔壁5の内側に固定されたギアボックス31と、各ギアボックス31に取り付けられたモータ32と、各モータ32の回転軸に設けられたピニオンギア33と、ギアボックス31に支持されかつ当該ピニオンギア33に噛み合わされたギア34と、各ギア34に設けられかつ隔壁5を貫いて前方に突出された複数の回転駆動軸35と、当該回転駆動軸35に対して所定の距離偏心させかつ当該回転駆動軸35の前端部に取り付けられた回転子36とを備えている。そして、前記回転駆動装置30はこの実施例では3個の回転子36を、当該回転駆動軸35に対して、所定の偏心距離を回転半径として、回転させ得るように構成されている。」
(1f)「【0030】前記掘削具37は、カッタフレーム38と、前記回転駆動装置30の回転子36に対応させて設けられたカッタフレーム支持部39と、カッタフレーム38の前面および側面に設けられた多数の掘削刃45とを有している。前記カッタフレーム支持部39には、図5および図6に示すように、一端部にカッタフレーム38に形成された角穴に嵌合する角軸40が設けられ、他端部から内部に向かって、回転駆動装置30の回転子36への嵌合用穴42が形成されている。そして、各カッタフレーム支持部39はカッタフレーム38に形成された角穴に角軸40を嵌合させ、セットボルト41によりカッタフレーム38に一体に結合されている。また、各カッタフレーム支持部39は当該回転子36に嵌合用穴42を介して嵌合されており、回転子36と嵌合用穴42間にはベアリング43と、シール部材44とが装着されている。その結果、掘削具37のカッタフレーム38は回転駆動装置30の複数個の回転子36の端部に共通に取り付けられ、かつ着脱自在に取り付けられている。しかも、前記掘削具37は回転駆動装置30の複数個の回転子36が回転するに伴い、正面から見て外殻体18の外形とほぼ同形の坑を掘削し得るように構成されている。」
(1g)「【0065】この図18に示す実施例では、元となる内部本体2の内部に、前記図1,図12に示すごとき機器,設備のほかに、シールドジャッキ61と、このシールドジャッキ61に取り付けられたスプレッダ62と、エレクタ63とを装備している。」
(1h)図10及び図11には,内部本体2の外周を包囲する状態で外殻体18を配置したことが示されている。
そして,上記記載事項(1a)ないし(1h)に記載された内容及び図面の記載並びに当業者の技術常識を総合すると,刊行物1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
(引用発明)
「内部本体2の内部に複数個の回転駆動装置30を取り付け,
回転駆動装置30は,回転駆動軸35,回転駆動軸35の前端部に偏心して取り付けられた回転子36,及び回転駆動軸35を駆動するモータ32を備え,
内部本体2の外周を包囲する状態で外殻体18を配置し,
内部本体2の切羽側に設置された複数個の回転子36の端部に共通に,掘削具37のカッタフレーム38を取り付け,
内部本体2の内部にシールドジャッキ61と,スプレッダ62と,エレクタ63を装備した,
シールド」

4.対比
本願発明と引用発明とを比較すると,引用発明の「回転駆動軸35」は本願発明の「回転体」に,以下同様に,「回転駆動軸35の前端部に偏心して取り付けられた回転子36」は「偏心軸」に,「モータ32」は「回転体駆動源」に,「外殻体18」は「シールド外殻」に,「掘削具37」は「カッタ盤」に,「シールドジャッキ61と,スプレッダ62と,エレクタ63」は「推進ジャッキなどの機器」に,それぞれ相当する。
また,引用発明の「内部本体2」と本願発明の「収納容器組立体」とは,ともに回転体と偏心軸と回転体駆動源を収納するものであるから,「収納体」である点で共通している。
また,引用発明の「内部本体2の内部」と本願発明の「シールド外殻の内部」とは,「シールド掘進機の内部」である点で共通している。
してみれば,両者の一致点及び相違点は,次のとおりである。

<一致点>
「回転体と,
回転体の回転中心以外の位置に突設した偏心軸と,
回転体駆動源を収納して,複数本の偏心軸を前面に突設した収納体を構成し,
この収納体の外周を包囲する状態でシールド外殻を配置し,
この収納体の前面の全偏心軸にカッタ盤を取り付け,
シールド掘進機の内部には推進ジャッキなどの機器を設置して構成した,
シールド掘進機」

<相違点1>
収納体が,本願発明は「収納容器組立体」であって,回転体と偏心軸と回転体駆動源を収納した収納容器を解体可能な状態で積み重ねることにより構成した,再利用可能なものであるのに対し,引用発明は,回転体と偏心軸と回転体駆動源からなる回転駆動装置30を,その内部に複数個取り付けたものであるが,(収納容器に相当する構成を備えていないため)回転駆動装置30を収納した収納容器を解体可能な状態で積み重ねることによって収納容器組立体を構成するものではなく,再利用可能なものかどうか明らかでない点。

<相違点2>
推進ジャッキなどの機器を設置する場所が,本願発明は「シールド外殻の内部」であるのに対し,引用発明は収納体(内部本体2)の内部である点。

5.当審の判断
まず,上記相違点1について検討する。口径の大きなシールド掘進機を工場から現地まで輸送する際に,シールド掘進機を小ブロックに分割して輸送することは慣用技術であって,分割するにあたり,どのような小ブロックに分けるかは,製作上のコスト,組立の容易性,製品精度・製品機能の確保等を考慮して決められるものであることも技術常識である(例えば,実願平2-4877号(実開平3-99094号)のマイクロフィルムの2頁4?9行等参照。)から,引用発明において,複数個の回転駆動装置30を取り付けた内部本体2を,回転駆動装置30ごとに小ブロック化することは,当業者が容易になし得たことである。
そして,原査定の拒絶理由で引用された特開平10-131665号公報及び特開平8-260885号公報には,シールド掘進機を共用化又は再利用可能とするために,シールド掘進機自体をユニット化し,複数の小シールド掘進機を解体可能な状態で積み重ねて大きなシールド掘進機合成体とする技術が開示されており,これらの技術によれば,小ブロック(複数の小シールド掘進機)は,解体可能な状態で積み重ねて大ブロック(大きなシールド掘進機合成体)を構成することができるように,複数の容器に収納されたものとなっている。
そうすると,引用発明において,内部本体2を小ブロック(回転駆動装置30)毎に分割するにあたり,それぞれの小ブロック(回転駆動装置30)を,解体可能な状態で積み重ねて内部本体2を構成することができるように,複数の容器に収納して構成し,本願発明の上記相違点1に係る構成を相当することは,当業者が容易になし得たことである。

次に,上記相違点2について検討する。推進ジャッキなどの機器は,セグメントとシールド掘進機の間に配置され,シールド掘進機を推進させるものであり,引用発明において,推進ジャッキなどの機器を,シールド外殻(外殻体18)の内部に設置しても,収納体(内部本体2)の内部に設置しても,どちらも同様に,シールド掘進機を推進させることができることは明らかである。そうすると,引用発明において,推進ジャッキなどの機器をシールド外殻(外殻体18)の内部に設置するか,収納体(内部本体2)の内部に設置するかは,当業者が適宜選択し得たことであり,推進ジャッキなどの機器をシールド外殻(外殻体18)の内部に設置することに特段の創作性は認められない。

また,本願発明の作用効果も,引用発明および刊行物2記載の技術から当業者が予測できた範囲内のものであって,格別なものということはできない。

したがって,本願発明は,引用発明及び周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,本願の他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-07-27 
結審通知日 2009-07-28 
審決日 2009-08-14 
出願番号 特願平10-300874
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E21D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 本郷 徹  
特許庁審判長 伊波 猛
特許庁審判官 関根 裕
宮崎 恭
発明の名称 再利用可能なシールド掘進機  
代理人 山口 朔生  

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