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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G08G
管理番号 1204663
審判番号 不服2007-32674  
総通号数 119 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-11-06 
確定日 2009-09-29 
事件の表示 平成11年特許願第376072号「視覚障害者電磁誘導歩行援助システム」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 6月 8日出願公開、特開2001-155287〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成11年11月29日の出願であって、平成19年10月1日付で拒絶査定がなされ同年11月6日に審判請求がなされたものである。
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認められる。
「聴力正常な視覚障害者が、駅や病院、学校や空港など特定の場所において、目的の所に行くのは非常に困難である。このような不便さを解消するために発明した電磁誘導を利用した装置である。この装置は、ループアンプに取り付けたループアンテナからの発生磁界を電磁誘導により、視覚障害者が体に取り付けているループイヤーの誘導コイルに起電力を導き、増幅した信号をイヤホンを通して視覚障害者の耳に音声などの信号として伝達し、視覚障害者の歩行を援助するシステムである。このシステムの使用場所として、駅や病院、学校や空港、そして横断歩道や歩道など、つまり人が行き来する場所に敷設することが出来る。」

2.引用刊行物
(1)これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開平3-86000号公報(以下「引用刊行物」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
・「第2図及び第3図は電磁型イヤホーンに受信用コイルを取り付けた音響発生器であり、電磁型イヤホーン本体(5)の入力に接続電線(7)及び(8)を介してコイル(6)を並列接続したものである。
コイル(6)に音声電流により発生させた交番磁界が作用すると、コイル(6)に誘起された起電力により電磁形イヤホーン本体(5)が作動する。
第2図に示すものは電磁型イヤホーン本体(5)の外部に、コイル(6)を固定したものであり、第3図はコイル(6)を短い電線で懸垂状態に取り付けたものである。
音響発生器に音声信号を結合させるための交番磁界発生コイルは第4a図に外観を第4b図に断面を示す。 可撓性絶縁電線をリング状に巻いて作られた交番磁界発生用コイル(12)は、2芯コード(13)によりコネクタ(14)に接続されている。 コネクタ(14)より音声電流を供給することにより音声電流に応じた交番磁界を発生するものである。 第5a-5b図はコイル形状を円盤状としたものであり、第6a-6b図は主として固定設置を目的としたもので、巻枠(15)にコイルを巻いたものである。
本発明の全体構成を第7-9図に示す。
第7-8図は全てを身体に装着したもので、音声電流出力装置(19)より音声電流供給電線(18)によって交番磁界発生用コイル(17)に音声電流が送られると、肩(21)周辺に交番磁界が発生し、本発明による耳に装着した音響発生器(16)が電磁的結合により作動する。 第9図は主として公衆的使用を対照(当審注:「対象」の誤記)とする場合で、交番磁界発生コイルを身体以外の工作物等に固定した例を示す。
(発明の効果)
本発明は、以上説明したように構成されているので、従来必要とした耳部に連なる電線が不要なため、頭部の運動は拘束されず、外見上も目だたない形態とすることが出来た。
また、音響発生器側は電源等不要で構造が簡単であり、有効な交番磁界内であれば、数量、位置等に制限なく伝達できるため、公衆用として交番磁界発生コイルを設置し、特定者にたいする情報伝達、盲人用誘導案内等に応用することが容易である。」(2頁左上欄9行?左下欄14行)

この記載事項及び図示内容を総合すれば、引用刊行物には、次の事項からなる発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「公衆的使用を対象とする場合で、交番磁界発生用コイル(17)を身体以外の工作物などに固定したものであって、音声電流出力装置(19)より音声電流供給電線(18)によって交番磁界発生用コイル(17)に音声電流が送られると、交番磁界が発生し、耳に装着した、電磁型イヤホーン本体(5)に受信用コイル(6)を取り付けた音響発生器(16)が電磁的結合により作動することで音響を発生して盲人用誘導案内に応用できる装置。」

3.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「公衆的使用を対象とする……盲人用誘導案内に応用できる装置」は、電磁型イヤホーン本体(5)に受信用コイル(6)を取り付けた音響発生器(16)が作動して公衆的使用、すなわち公共の場所で盲人の誘導案内を行うものであるから、「聴力正常な視覚障害者が、公共の場所において、目的の所に行くのは非常に困難である。このような不便さを解消するために発明した」「装置」であるということができる。
したがって、後者の「公衆的使用を対象とする……盲人用誘導案内に応用できる装置」と、前者の「聴力正常な視覚障害者が、駅や病院、学校や空港など特定の場所において、目的の所に行くのは非常に困難である。このような不便さを解消するために発明した電磁誘導を利用した装置」とは、「聴力正常な視覚障害者が、公共の場所において、目的の所に行くのは非常に困難である。このような不便さを解消するために発明した電磁誘導を利用した装置」である点で共通するものといえる。
また、後者の「交番磁界発生用コイル(17)」は、引用刊行物の第4a図に記載されるようなループ状のコイルを含むものであるから、前者の「ループアンテナ」に相当するといえ、後者の「電磁形イヤホーン本体(5)」に取り付けられた「受信用コイル(6)」は前者の「体に取り付けているループイヤーの誘導コイル」に相当し、後者の装置が盲人の誘導案内を行うものであることから、後者の「交番磁界発生用コイル(17)を身体以外の工作物などに固定したものであって、音声電流出力装置(19)より音声電流供給電線(18)によって交番磁界発生用コイル(17)に音声電流が送られると、交番磁界が発生し、耳に装着した、電磁型イヤホーン本体(5)に受信用コイル(6)を取り付けた音響発生器(16)が電磁的結合により作動することで音響を発生して盲人用誘導案内に応用できる装置」は、前者の「ループアンテナからの発生磁界を電磁誘導により、視覚障害者が体に取り付けているループイヤーの誘導コイルに起電力を導き、信号をイヤホンを通して視覚障害者の耳に音声などの信号として伝達し、視覚障害者の歩行を援助するシステム」に相当するものといえる。
さらに、「敷設」とは、「装備や施設などを設置すること。備えつけること。」[株式会社岩波書店 広辞苑第六版]を意味するものであるから「工作物などに固定」することも敷設といえるので、後者の「公衆的使用を対象とする場合で、交番磁界発生用コイル(17)を身体以外の工作物などに固定したもの」と前者の「このシステムの使用場所として、駅や病院、学校や空港、そして横断歩道や歩道など、つまり人が行き来する場所に敷設することが出来る。」とは、「この装置の使用場所として、公共の場所、つまり人が行き来する場所に敷設することが出来る。」との概念で共通するものといえる。
したがって両者は、
[一致点]
「聴力正常な視覚障害者が、公共の場所において、目的の所に行くのは非常に困難である。このような不便さを解消するために発明した電磁誘導を利用した装置である。この装置は、ループアンテナからの発生磁界を電磁誘導により、視覚障害者が体に取り付けているループイヤーの誘導コイルに起電力を導き、信号をイヤホンを通して視覚障害者の耳に音声などの信号として伝達し、視覚障害者の歩行を援助するシステムである。このシステムの使用場所として、公共の場所、つまり人が行き来する場所に敷設することが出来る。」というものである点で一致し、
[相違点]
(ア)「公共の場所」に関し、本願発明が「駅や病院、学校や空港など特定の場所」及び「駅や病院、学校や空港、そして横断歩道や歩道など」であるのに対し、引用発明は「公衆的使用を対象とする」ものであるがその場所については特定されていない点、
(イ)「ループアンテナ」に関して、本願発明が「ループアンプに取り付け」たものとしているのに対して引用発明ではそのような特定がされていない点、
(ウ)「イヤホンを通して視覚障害者の耳に……伝達」する「音声などの信号」に関し、本願発明では「増幅した信号」を伝達するものとしているのに対し,引用発明ではそのような特定をしていない点,及び
(エ)この装置を設ける場所に関し、本願発明では「駅や病院、学校や空港、そして横断歩道や歩道など」であるのに対し、引用発明では「公衆的使用を対象とする場合で、……工作物など」である点
で相違している。

4.相違点に対する判断
相違点(ア)及び(エ)について
引用発明は、公衆的使用を対象とするものであり、盲人の誘導案内を行うものであるから、そのような「公衆的使用」に供される場所として、駅や病院、学校や空港、そして横断歩道や歩道など、つまり人が行き来する場所が想定されることは自明の事項というべきであるから、この点は実質的な相違点ということはできない。
そうすると、引用発明において、公共の場所として、駅や病院、学校や空港、そして横断歩道や歩道を例示することで相違点(ア)及び(エ)に係る本願発明の構成とすることは当業者に容易である。
相違点(イ)及び(ウ)について
本願発明の「ループアンプ」は、その構成が明細書に明確には記載されていないが、【発明の詳細な説明】の「テープデッキからループアンプを介してループアンテナに音声電流として流しておく」との記載、及び図面を参照すれば、周知の、音声信号など増幅する「アンプ」であると認めることが出来る。そうすると、音声などの信号を伝達する際に、アンプなどを用いて増幅することは常套手段であるから、引用発明においてもループアンテナをアンプ(ループアンプ)に取り付けることやイヤホンを通して伝達する信号を増幅することは適宜設計し得るものであることも明らかである。
したがって、引用発明において、相違点(イ)及び(ウ)に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことと認められる。

また、本願発明の全体構成により奏される効果は、引用発明、上記自明の事項及び上記常套手段から予測し得る程度のものと認められる。

なお、請求人は審判請求書において、本願発明に関し「復路アンテナ線は磁気遮蔽されており往路アンテナ線からの信号を、電磁誘導によりイヤホンから歩行音声信号として視覚障害者が聴き、視覚障害者を連続的に歩行援助することが目的で現実的である。」と主張しているが、上記のようなループアンテナの構成やどのように敷設するかについては請求項において何ら特定されておらず、この主張は請求項の記載に基づくものではないので採用できない。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用発明、上記自明の事項及び上記常套手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-07-23 
結審通知日 2009-07-28 
審決日 2009-08-10 
出願番号 特願平11-376072
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G08G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 白石 剛史  
特許庁審判長 田良島 潔
特許庁審判官 小川 恭司
大河原 裕
発明の名称 視覚障害者電磁誘導歩行援助システム  

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